評価
「2020年七十歳死亡法案が可決された。これにより日本国籍を有する者は誰しも七十歳の誕生日から30日以内に死ななければならないことになった。例外は皇族だけである。尚、政府は安楽死の方法を数種類用意する方針で、対象者がその中から自由に選べるように配慮するという。」
超高齢化社会の国家財政の行き詰まり打破のために突飛な法案が成立して、寝たきりの義母の介護に生活の全てを奪われていた宝田東洋子は「あと2年の我慢?あと2年も我慢?」と複雑な心境だった。如何せん、夫は人生残り少ないことを理由に早期退職し友人と二人で世界旅行に出かけ、息子は一流企業を退職し引きこもり、娘は独立して家に寄りつかない状況で東洋子しか義母の世話をする者がいなかったのだ。で、ある時、義母の態度にブチ切れた東洋子が家出!さー、大変、残された宝田家の人々の奮闘が始まる。
結局、七十歳死亡法案は時の首相が国民に国家財政の危機を知らしめるためのショック療法で、実は増税への布石だったのだが、自分自身に置き換えて「あとX年」と思うと「俺はどうやって暮らすだろう・・・?」と自問自答。いつも垣谷さんの作品にはわが国が抱えている社会問題と家族について考えさせられます。