社長日記

日々の出来事や、感じることなど、思いつくままに・・

世襲 第一部 「 崖 」 第十一話

2013-12-05 16:20:32 | Weblog

いつもこのブログを見て頂いて有難うございます。

 

フェイスブック、ラインなどSNSと呼ばれるツールを利用する事が増えた昨今、非常に

便利なツールで有ると共に、「 言葉で話す 」という事の正確さが身にしみて感じる

気がします。

又、ラインなどはまだしも一対一のやりとりが出来るのに対して、フェイスブックは

複数の目にさらされる訳ですので、意味の取り違いや訂正しなくちゃならない事など

について、ある種「 パブリックな場 」である事をより認知する必要がある様に感じます。

 

 

      世襲 第一部 「 崖 」  

 

                

              第十一話

 

 

ついに○○町の不動産物件は、その九割をXさん、残る一割をZさんにそれぞれ引き渡す事ができた。

これは、決済が終了した事を意味し、不動産屋の仕事としてはひとまず完了したと言える。

 

私は、契約に至るまでの長いやり取りからくる心労がたまってはいたが、共に取り組んだA氏と

感慨深くその土地を眺めていた。

お互いをねぎらい、とても長い上り道を共に進んできた事による達成感を二人で噛み締めていた。

 

 

決済がすんだ数日後、私は休日で有る事もあり、友人と、とあるゴルフ練習場でアプローチの練習に

いそしんでいた。

 

その時である。

 

プルルルルル

 

私「 はい、西本です。あの件、無事に済みまして良かったです。 Kさんも安堵されたんじゃないですか? 」

 

電話の相手は、九割を購入頂いたお客様の新居を、購入頂いた土地の上にこれから建築を行う会社の

担当者だった。

名前を聞けば誰でも知る大手メーカーの和歌山担当者である。

 

Kさん 「 あ、西本さん、そうですね。一安心ですよね。と言いたい所なんですがちょっと問題が発生しまして・・」

 

不動産取引を行い、後に建築を行う会社から土地の事についての質問や処理してほしい事等のリクエストを

決済後に依頼される事は頻繁にある。

しかし、そのほとんどは、土地の契約を行う際にほとんどを調べつくしている私ども不動産業者の知る範囲内で

あり、解決できない問題等は過去にない。

この電話を受けた時も、私はアプローチ用のSWを片手に、「 あ~どうされましたか^^ 」と余裕があった。

 

 

Kさん 「実はですね。あの土地ですが、隣地より3m程高くてその境界に擁壁(ようへき)がありますよね。

     今日は建築を行った際の地盤とその擁壁の強度について調査に入ったんですわ。

    で、崖下の隣地側から見ないと分からないんで、お隣さんに許可を頂いてお庭に入らせてもらった

    んですよ。まぁ擁壁の強度はこのままで問題ないという結果が出たんですけどね。 」

 

※(ようへき → ブロック等ではなくコンクリートで造った崖を支える壁

※造成工事等では最もお金のかかる部分と認識されている

 

私 「 あ~そうですね、良かったじゃないですか、やり直さなくてもそのまま建築にかかれますね^^ 」

ひとまず、SWを置き、マイルドセブンに火をつけながら私は当然の回答をした。

 

Kさん 「 それはそうなんですけどね。実は調査が終わって、崖上のお客さんの土地で地盤調査を

     している時に、お隣さんが下から降りてきてくれって言うんで、お隣さんの事務所に入ったんですよ。

   そしたらですね、そこのご主人が、この境界の壁はこちら側に越境していて、ある日突然○○さん(売り主)

   の親父さんがうちの敷地内に壁を作ったっていうんですよ・・・・・でこの壁を撤去して全てやり直せって

  言われてしまいまして・・・・・ 」

 

 

 

 

 

 

ぽろっとマイルドセブンが私の口から落ちた・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

ちなみにその擁壁の高さは約3m、奥行き30mはある。

瞬間に計算しただけでも2000万円は新設にかかるであろう事は容易に想像がついた。

しかも、その壁は、お隣の建物すれすれ、しくは一部はお隣の屋根の軒に接触していそうな程の、繊細な位置

にある事は既に確認できている。

これを撤去する事は容易な事ではなく、特殊な技術とかなり繊細な近隣対策を要する事は間違いなかった。

私は、重要事項説明書を作る際の調査手順をKさんの話を聞きながら思い返していた。

 

 

・擁壁は古く、境界位置を指し示す杭やプレートは現場になかったはず。

・また、一般常識的に考えて、自分の土地の中に隣が無断で壁を作る事などはありえないはず。

・しかもその壁は高さ3m、奥行き30mもあり、工事に相当の期間日数がかかる一大建造物である。

・当事者の隣の主人には、正月明けにAさんが挨拶におもむき、売却を考えているが後に問題を

 残さない様に、現在の売り主との間に何も協議事項がなく、問題もない事の確認が済んでいる事を

 A氏から聞いてある。(決済は GWを過ぎた時期である為、半年も前に確認はすんである)

・お隣からは、売り主さんのご家族はとても親切で仲良くさせて頂いていたと聞いてあり、後の問題も

 人間関係的な問題も何もない事を本人の言葉で確認してある。

 

 

売り主はこの不動産を世襲したが、ここにはほとんど住んだ実績もない事から、お隣へのヒアリングを

あえて行ったのだ。

お隣は少なくとも3世代は続くお家で有る事は間違いなく、通算で60年以上はこの土地に居住している

はずである。

もし、無断で壁を作られた等の常識では考えられない一大事があれば、当初から揉めているはずであり

当人同士が理解している事はおろか、わざわざ第三者のこの土地の管理人であるA氏が訪ねた際

その事を真っ先に訴えるはずである。

 

あえてそう呼ばせてもらうが、後にそうと分かる事となる、この悪意のかたまりの隣地のとぼけた老人

所有者が変わるその瞬間を待っていたのだ!!

老人とは言ったが、身なりもきっちりとし、社会的地位もあり、世間的には事業人として知る人は多いと思われる。

当然、思考もしっかりとしており、計算づくでこの時を狙っていた事は疑う余地もなかった。

 

 

私は、全てを整理し、Kさんにひとまず断りを入れ、A氏に電話を入れた。

 

A氏は、「 そんなあほな^^ 自分ちの庭に壁作られて、しかもあんな巨大な壁、工事してんの知らんかったって

      あるわけないわな^^まこっちゃん、ほんでその人と僕話したで。前にも言ったと思うけど、紳士的で

     協力しますよ~って温和な方やで^^なんかの間違いちゃう^^? 」

 

 

私もその言葉を信じたかった。

いや、むしろ疑う方がおかしいのである。

A氏は子供ではない。プロの不動産屋の私とも不動産について対等のやり取りを行い、その職業知識や

先見にも何の問題もなく、むしろとても優れた人物なのである。

しかし、長年不動産取引に関わって来た私は、一抹の不安をぬぐえなかった。

 

※このストーリーは事実に着想を得た、フィクション(ほぼ事実と言えるが全てを書けない為)だが、この部分に関しては

私に加えA氏も共に体験している紛れもない事実である。

 

不動産の様な高額の取引を行う際は、突拍子もないアクシデントは起こりうる。

又、何か一つのキッカケで、態度をひるがえし、金銭を要求する隣地所有者も過去にいた事も事実である。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、人はうそをつく

 

 

 

 

 

真実をねじまげ、物事の一点を取り上げ、だからこういう事を言うのだという大義名分を身勝手に造りあげるのである。

私は職業柄、こういう人を何人も見て来たし、結論、その目的は多くが金銭であった事も体験している。

この時も、私の脳裏には過去の苦い経験と、そういった人々が見せる 「 守銭奴顔 」への不快感がこみ上げていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

                               続く・・・・・・・・・・

 

 

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