いつもこのブログを見て頂いて有難うございます。
本日、田辺方面より、ただ今の帰社と相成りました。
やはり、長距離運転はしんどいですね。
本日は新連載 MY HOME への道 ⑦をお届けしようと思います。
このお話は100年に一度の大不況の最中、新築一戸建ての購入を目論んだ
とある30代半ばの自営業者にまつわるノンフィクションです。
第七話
~ 心理戦 ~
和歌山城を目前に建つ、とある都市銀行の前で、この物語の主人公の男は
タバコをふかしている。
気の早い事に、男の目的地である某銀行はシャッターが降りたままであった。
仮審査に通っている支援機構へ本審査の申込書を郵送し終えた男は、心なしか
気持ちが晴れ晴れとしているようでもある。
たとえ結果が、前述の某民間銀行の様にNGとなっても、やれる事は
やり終えたのである。
まさしく、「 人事を尽くして天命を待つ 」である。
支援機構に関しては、もうやるべき事は無いのだ!
しかし、この男はそれだけでは飽きたらなかった。
シャッターが上がり終えたのを見届けた男は、何故か銀行の中へ
すぐには入っていかない。
既にNGも経験し、銀行側の雰囲気も熟知している男は、イーグルアイ(鷹の目)
を手に入れたようだ。
頭上から立体的に、相談を受ける銀行側の姿勢、考え方、又第三者的に
相談に来る来店客である自分自身をも仮に配置し、見据える事が出来ている。
銀行側からすれば、朝一番にローン相談に駆け込んでくる客なんぞは
いぶかしい事この上ない。
念のため、断っておく。
上場企業に勤める、勤続年数の豊かな方には、銀行へ住宅ローンの相談を
する程度の事で、これほど意気込む必要は全く無い
しかし、一度NGを喰らった場合、一つでも何かその経験を活かさずして
やみくもに突っ込んで行くことは、ただの賭けである。
男はその性格上、都市銀行の考え方を調べ上げ、入念なリサーチを行ったうえで
別銀行へTRYしようとしているのだ。
一般的に知られていないが、住宅ローンの担当者のチェックリストには
相談に来た来店客の、服装、雰囲気にまで及び、チェックする銀行もある。
担当者は、恐らくそれほど注意を払っていないと思われるが、その程度の
チェックに「難有り」とマークされる様な行為ははっきり言って愚かである。
このチェックは振り落としの為だけに存在するからだ。
スーツを着た男は、ネクタイを締めなおし、一つ深呼吸をした。
開店後、30分程はたったであろうか・・・
ゆっくりと歩を進め、ビジネスかばんを片手に男は銀行へと入っていった。
いらっしゃいませ
若く、清潔感のある行員の女性を前に、男は落胆の色を隠せなかった。
二度手間決定の瞬間である
幾つかの銀行相談の経験上、管理職に近い男性、もしくは何十年とそこに
居座ってきたであろう、ファンデーション臭を感じない女性担当にめぐり合った時
その女性担当の役割は、お客さんへのヒアリングと商品説明にとどまる事を
男は知っている。
こういう場合、不安材料を率直に話す事は好ましくない。
その報告を聞いた、銀行の奥に潜んでいる主は、多くの場合、空手チョップの
手を横に振る。
グッバイ と
その結果、話も聞いてもらえず、スタートラインにすら立てなくなってしまうのだ。
男はひとまず、一通りの商品説明を聞く事にし、意外にもこの銀行の商品は
お得だと感じた。
話を聞いている最中、男はやや顔が硬直してきた。
「ナイスです、ナイスです」と頭の中でレーダーが繰り返す。
このローン商品は、金利が一般的よりも低いだけでなく、ローンの支払いが
融資実行後、6ヵ月後から始まるのだ。
家具、エアコン、建築中のマンションの家賃とローンの支払い、何かと
出費のかさむコアな時期に、ローンの支払いが無いことは、消極的になりがちな
この時期には、冷静な判断を下していく為には、かなりのメリットがある。
こと、家に関しては、消極的な選択の集大成で、近い将来により出費が発生
する事も少なくない。
男は女性行員の説明を聞きながら、この銀行で借りれた場合の毎月の返済額を
電卓で計算している。
怪訝な表情の女性行員を前に、男は不気味に微笑んだ
計算の結果、毎月の支払いは、今の家賃 + 数千円であった!
大した話もせず、不気味な表情で話を聞き続け、微妙な嫌がらせヤロウ的な
存在となった男は、意外にも「帰って検討します」と言った。
個人情報の提示を求める行員をさわやかにかわし、男は銀行をゆっくりとした
歩みで出て行く。
意外にも追いかけて来た女性行員を、やや冷ややかな目で見返した男が
何か言おうとした時、女性行員は、そっと駐車場のコインを男に渡した。
辺りが暗くなり始めた中、男は自分の事務所で腕を組んでいた。
点滅を繰り返す携帯電話の不在着信の数は、5となっている。
男は、連絡してきた主を確認すると、全く関係の無いところへ電話をかけた。
「ひさしぶりです」
電話に出た男は、あの若作りの設計士であった。
続く
和歌山の不動産物件情報はこちらから
http://www.create-mn.com/
本日、田辺方面より、ただ今の帰社と相成りました。
やはり、長距離運転はしんどいですね。
本日は新連載 MY HOME への道 ⑦をお届けしようと思います。
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とある30代半ばの自営業者にまつわるノンフィクションです。
第七話
~ 心理戦 ~
和歌山城を目前に建つ、とある都市銀行の前で、この物語の主人公の男は
タバコをふかしている。
気の早い事に、男の目的地である某銀行はシャッターが降りたままであった。
仮審査に通っている支援機構へ本審査の申込書を郵送し終えた男は、心なしか
気持ちが晴れ晴れとしているようでもある。
たとえ結果が、前述の某民間銀行の様にNGとなっても、やれる事は
やり終えたのである。
まさしく、「 人事を尽くして天命を待つ 」である。
支援機構に関しては、もうやるべき事は無いのだ!
しかし、この男はそれだけでは飽きたらなかった。
シャッターが上がり終えたのを見届けた男は、何故か銀行の中へ
すぐには入っていかない。
既にNGも経験し、銀行側の雰囲気も熟知している男は、イーグルアイ(鷹の目)
を手に入れたようだ。
頭上から立体的に、相談を受ける銀行側の姿勢、考え方、又第三者的に
相談に来る来店客である自分自身をも仮に配置し、見据える事が出来ている。
銀行側からすれば、朝一番にローン相談に駆け込んでくる客なんぞは
いぶかしい事この上ない。
念のため、断っておく。
上場企業に勤める、勤続年数の豊かな方には、銀行へ住宅ローンの相談を
する程度の事で、これほど意気込む必要は全く無い
しかし、一度NGを喰らった場合、一つでも何かその経験を活かさずして
やみくもに突っ込んで行くことは、ただの賭けである。
男はその性格上、都市銀行の考え方を調べ上げ、入念なリサーチを行ったうえで
別銀行へTRYしようとしているのだ。
一般的に知られていないが、住宅ローンの担当者のチェックリストには
相談に来た来店客の、服装、雰囲気にまで及び、チェックする銀行もある。
担当者は、恐らくそれほど注意を払っていないと思われるが、その程度の
チェックに「難有り」とマークされる様な行為ははっきり言って愚かである。
このチェックは振り落としの為だけに存在するからだ。
スーツを着た男は、ネクタイを締めなおし、一つ深呼吸をした。
開店後、30分程はたったであろうか・・・
ゆっくりと歩を進め、ビジネスかばんを片手に男は銀行へと入っていった。
いらっしゃいませ
若く、清潔感のある行員の女性を前に、男は落胆の色を隠せなかった。
二度手間決定の瞬間である
幾つかの銀行相談の経験上、管理職に近い男性、もしくは何十年とそこに
居座ってきたであろう、ファンデーション臭を感じない女性担当にめぐり合った時
その女性担当の役割は、お客さんへのヒアリングと商品説明にとどまる事を
男は知っている。
こういう場合、不安材料を率直に話す事は好ましくない。
その報告を聞いた、銀行の奥に潜んでいる主は、多くの場合、空手チョップの
手を横に振る。
グッバイ と
その結果、話も聞いてもらえず、スタートラインにすら立てなくなってしまうのだ。
男はひとまず、一通りの商品説明を聞く事にし、意外にもこの銀行の商品は
お得だと感じた。
話を聞いている最中、男はやや顔が硬直してきた。
「ナイスです、ナイスです」と頭の中でレーダーが繰り返す。
このローン商品は、金利が一般的よりも低いだけでなく、ローンの支払いが
融資実行後、6ヵ月後から始まるのだ。
家具、エアコン、建築中のマンションの家賃とローンの支払い、何かと
出費のかさむコアな時期に、ローンの支払いが無いことは、消極的になりがちな
この時期には、冷静な判断を下していく為には、かなりのメリットがある。
こと、家に関しては、消極的な選択の集大成で、近い将来により出費が発生
する事も少なくない。
男は女性行員の説明を聞きながら、この銀行で借りれた場合の毎月の返済額を
電卓で計算している。
怪訝な表情の女性行員を前に、男は不気味に微笑んだ
計算の結果、毎月の支払いは、今の家賃 + 数千円であった!
大した話もせず、不気味な表情で話を聞き続け、微妙な嫌がらせヤロウ的な
存在となった男は、意外にも「帰って検討します」と言った。
個人情報の提示を求める行員をさわやかにかわし、男は銀行をゆっくりとした
歩みで出て行く。
意外にも追いかけて来た女性行員を、やや冷ややかな目で見返した男が
何か言おうとした時、女性行員は、そっと駐車場のコインを男に渡した。
辺りが暗くなり始めた中、男は自分の事務所で腕を組んでいた。
点滅を繰り返す携帯電話の不在着信の数は、5となっている。
男は、連絡してきた主を確認すると、全く関係の無いところへ電話をかけた。
「ひさしぶりです」
電話に出た男は、あの若作りの設計士であった。
続く
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