「ローパスフィルターになったBHについての寿命式の導出」の3
4.補正係数R(X)の寿命式への導入
前のページで出された補正係数R(X)を寿命式に入れる事でローパスフィルターになったBHの近似寿命式が出来ます。
手順は「その7-3・静止しているブラックホールの寿命計算」で示した単位時間あたりにBHがホーキング放射で出すエネルギーを示している式に補正係数R(X)をかけます。
その式は 1/(15360*M^2*(pi)) でした。
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=1%2F%2815360*x%5E2*%28pi%29%29
最初のグラフではM=0の時に出力エネルギーが発散する事を示している。
しかしながらそこでの継続時間がゼロなので、出力エネルギーは発散しません。
2番目のグラフはそのあたりの状況が分かる様に拡大表示されている。
これを見ると2プランク質量あたりからホーキング放射で出てくるエネルギーが増加し始め、1プランク質量ではすでに暴走状態になっている事がわかるのです。
この式に補正係数R(X)をかけます。
R(x)=9.9294*x^4
こうして修正された単位時間あたりにBHがホーキング放射で出すエネルギーを示している式が出ます。
修正式=1/(15360*M^2*(pi))*R(x)
=9.9294*M^4/(15360*M^2*(pi))
=9.9294*M^2/(15360*(pi))
このあとの手順は 通説の寿命式導出の手順を示した「その5-3・ブラックホールの寿命計算」に戻ります。
ブラックホールが単位時間あたりに放つエネルギーを質量の欠損によるものとして
E=M*C^2 より
dE=dM*C^2
C=1 なので
dE=dM
従って単位時間当たり(=1プランク秒あたり)のBHの質量減少率は
-dM/dt=E
=1/(15360*M^2*(pi))*R(M)
=9.9294*M^2/(15360*(pi))
と通説の諸式運用ではそうなっていますのでこれに従います。
変数分離をすると
15360*(pi)/(9.9294*M^2)dM=dt
左辺をウルフラムで定積分すると寿命がでてくるのでした。
15360*(pi)/(9.9294*x^2) の0から0.5まで積分
実行アドレス
答えは「積分は収束しません」
積分の視覚的表現を見ると分かります様に「BHの質量がゼロに近づくにつれて積分の値が上昇していく、発散していく事」がわかります。
そうして「積分の値が寿命を示します」ので「BHの質量が小さくなればなるほどBHの質量の減り方は遅くなっている」という事がこのグラフから分かります。
「その理由は」といいますれば「通説ではBHが軽くなればそれだけBHがホーキング放射で出すエネルギーは上昇する」のですが、相対論による規制がそれに加わりますと「1プランク質量を越えたあたりから相対論による制約=BHがローパスフィルターになる効果」が効き始めて、それがBHの質量が減れば減る程さらに効く、とうことになっています。
その為に通説とは逆に「BHの質量が減ればそれだけホーキング放射によるBHのエネルギー減少が少なくなる」=「BHの質量減少が小さくなる」のです。
そうしてこのR(X)という補正係数式の場合は「どれほどたってもBHの質量はゼロには到達できない」という事になります。
ちなみにここで注意が必要な事は「BHそのもののホーキング温度の上昇は通説が主張するように、BHの質量が小さくなればそれだけ高くなる」のです。
相対論による規制が働く場合もその状況に変わりはありません。
ただ異なってくるのは「発生した仮想粒子のうち、エネルギーの高いものをBHが無視するようになる」という事です。
その為にホーキング放射のエネルギーレベルはBHが小さくなればなるほど少なくなるのです。
さてそれで、ここで再度R(X)の挙動を確認しておきましょう。
y=0,y=1,x=0.0000001,y=9.9294*x^4,x=0.4737,y=0.5 の0<x<1,-0.0001<y<1.1 プロット
実行アドレス・・・図6
x=0.4737で0.5=50%
黒体放射100%でホーキング放射を許している通説の補正係数は1です。
これは図6では水平の赤いラインで表されています。
それに対して静止しているBHに許される補正係数R(x)は緑色で示された4次曲線で表されます。
その曲線はx=0.4737で0.5=50%であり、xがゼロに近づくにつれて急速にゼロになっていきます。
これが今回導出された補正係数R(x)となります。
この補正係数がホーキング放射のエネルギーを抑え込む状況は次のようになっています。
y=0,x=0.000001, y=1/(15360*x^2*(pi))*(9.9294*x^4), y=1/(15360*x^2*(pi)) の0<x<0.5,-0.000001<y<0.001 プロット
実行アドレス
通説の寿命式でのエネルギー放出は緑色の上昇するカーブです。
それに対して修正されたエネルギー放出カーブはコトブキ色で示されています。
もう少しBH質量が0.5プランク質量のあたりを拡大してみましょう。
y=0,x=0.000001, y=1/(15360*x^2*(pi))*(9.9294*x^4), y=1/(15360*x^2*(pi)) の0.3<x<0.5,-0.000001<y<0.0003 プロット
実行アドレス
今度はBH質量が0プランク質量のあたりを拡大してみましょう。
y=0,x=0.000001, y=1/(15360*x^2*(pi))*(9.9294*x^4), y=1/(15360*x^2*(pi)) の0.<x<0.1,-0.000001<y<0.000003 プロット
実行アドレス
以上の様にして相対論による規制がBHにかかるために、BHの寿命は通説とは逆に無限になるのであります。
そうしてその有様はまた「BH消滅不可能定理」の数式による検証にもなっています。
追記:35.4%の出力を50%と大きめに近似したにも関わらずBHの寿命が無限になりました。
それでこの近似では14.6%ほど実際よりBHがホーキング放射で出すエネルギーを多めに近似していますので、この部分を補正しますと寿命はさらに40%ほど伸びる事になります。
無限に1.4倍しても無限ですから「静止しているBHは消えない」という結論に変わりはありませんが、BH質量の減少速度が実際は近似寿命式が示すはやさより遅くなる、という事は認識しておく必要があります。