「ホーキング放射の一般解」の導出
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さてBHはPbhの運動量をもって運動している。
そうしてそのBHの静止質量はm。
その時は一般論として相対論的なエネルギーの扱い(注1)よりBHのエネルギーEは
E^2=Pbh^2+m^2
となります。
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さてそれで運動しているBHに仮想粒子が運動量Pで飛び込みます。
当初のBHのエネルギーはこうでした。
E^2=Pbh^2+m^2
ホーキング放射はマスレスmassless粒子でおきるのでした。これはホーキングのホーキング放射定式化の前提でもあります。
そこに質量ゼロの仮想粒子が運動量Pを運びこみます。
ここで仮想粒子が持っている運動量Pの方向は任意とします。
その結果、BHは運動量Pbh+Pで動き出します。
ただし運動量の合成はベクトル合成になります。
その時のBHの相対論的なエネルギーE2は
E2^2=(Pbh+P)^2+m2^2 ・・・②式
ここでm2はBHに仮想粒子が運動量Pを運びこんだ後のBHの静止質量で、(Pbh+P)はベクトル合成したベクトルの大きさ(=絶対値)となります。。
一方でマスレスmassless粒子が運動量Pを持つ時のエネルギーE1は
E1=P*C となります。
それでこれはC=1の自然単位系では、
E1=P となります。
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さてエネルギー保存則よりBHのもともと持っていたエネルギーEにそこに飛び込んだ仮想粒子が持っていたエネルギーE1を足したものは、仮想粒子吸収後のBHの持つエネルギーE2に等しくなります。
従って
E+E1=E2
つまり
sqrt(Pbh^2+m^2)+P=sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)
両辺を二乗してm2^2について整理すると
(sqrt(Pbh^2+m^2)+P)^2-(Pbh+P)^2=m2^2
m2^2=(sqrt(Pbh^2+m^2)+P)^2-(Pbh+P)^2 ・・・①式
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この時仮想粒子に真空が貸し出したエネルギーは、仮想粒子2個分だから
2*E1=2*P です。
このエネルギーを真空は仮想粒子が飛び込んだBHから回収するのだから、結局、ホーキング放射を出した後のBHのエネルギーE3は
E3=sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)-2*E1
=sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)-2*P ・・・②式
となる。
但しこの②式の中のm2はホーキング放射を出す前のBHの静止質量=BHに仮想粒子が運動量Pを運びこんだ後のBHの静止質量
さてそれで質量m1のBHが運動量(Pbh+P)で移動している時の相対論的なエネルギーは
sqrt((Pbh+P)^2+m1^2) ・・・③式
です。
ここでm1はBHがホーキング放射を出した後のBHの静止質量を示す。
そうして当然、②式と③式は同じ状態のBHのエネルギーについての計算だから
②式=③式 となる。
従って
sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)-2*P=sqrt((Pbh+P)^2+m1^2)
両辺を二乗して
(sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)-2*P)^2=(Pbh+P)^2+m1^2
m1^2を左辺に移動(m1^2について解く)
m1^2=(sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)-2*P)^2ー(Pbh+P)^2
m1について解くと
m1=sqrt((sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)-2*P)^2ー(Pbh+P)^2)
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さてホーキング放射を出した後のBHの質量m1はゼロ以上である事が必要です。
従ってルートの中身
(sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)-2*P)^2ー(Pbh+P)^2
はゼロ以上である事が必要です。(注2)
それで上記式を展開して整理すると
((Pbh+P)^2+m2^2)ー2*2*P*sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)+4*P^2-(Pbh+P)^2
=m2^2ー4*P*sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)+4*P^2
=(m2^2+4*P^2)ー4*P*sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)・・・④式
④式が注目すべき関数です。
ここで(Pbh+P)=R と置き換える(この置き換えはウルフラムに入れる為に必要)
これをターゲット関数④式に代入して
(m2^2+4*P^2)ー4*P*sqrt((Pbh+P)^2+m2^2)
=(m2^2+4*P^2)ー4*P*sqrt(R^2+m2^2)・・・⑤式
さてm2^2は①式より
m2^2=(sqrt(Pbh^2+m^2)+P)^2-(Pbh+P)^2
ここでも(Pbh+P)=R と置き換えると
m2^2=(sqrt(Pbh^2+m^2)+P)^2-(Pbh+P)^2
=(sqrt(Pbh^2+m^2)+P)^2-R^2・・・⑥式
ターゲット関数⑤式に⑥式を代入して
(m2^2+4*P^2)ー4*P*sqrt(R^2+m2^2)
=(((sqrt(Pbh^2+m^2)+P)^2-R^2)+4*P^2)ー4*P*sqrt(R^2+((sqrt(Pbh^2+m^2)+P)^2-R^2))
ここでPbh=Q と置き換えると(この置き換えもウルフラムに入れる為に必要)
上式=(((sqrt(Q^2+m^2)+P)^2-R^2)+4*P^2)ー4*P*sqrt(R^2+((sqrt(Q^2+m^2)+P)^2-R^2))・・・⑦式
以上で準備終了です。
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さてそれで⑦式をウルフラムに入れて整理すると
実行アドレス
「m,P,Q,Rを実数と仮定した場合の別の形」を経て最終的に
「m,P,Q,Rを正と仮定した場合の別の形」=「整理された形」を得る(注3)
整理された形
-2P*sqrt(m^2+Q^2)+(m^2+Q^2)+P^2-R^2 ・・・⑧式
この式の値がゼロ以上である事がこのBHがホーキング放射を出すことが出来る仮想粒子の運動量Pを決めている。
なんとなれば「ホーキング放射を出した後のBHの質量はゼロ以上である事が必要だから」ですね。
そうであれば ⑧式≧0がホーキング放射の起きる事が可能である事を示す判定式、ホーキング放射の一般解となります。
但しここでQ=PbhであってそれはこのBHが最初に持っていた運動量の大きさ、mは仮想粒子が飛びこむ前のBHの静止質量、PはBHに飛び込んだ仮想粒子の運動量の大きさ(=Pベクトルの絶対値)。
そうしてRはR=(Pbh+P)で(Pbh+P)は当初のBHの運動量ベクトルPbhとそのBHに飛び込んだ仮想粒子の運動量Pをベクトル合成したベクトルの大きさ(=絶対値)となります。
従ってm,P,Q,Rの値はいずれもゼロ以上の値となり⑧式成立の条件を満たします。
以上が「ホーキング放射の一般解の導出」となります。
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注1:ういき 静止エネルギー: https://archive.md/cVn2L :によれば
『特殊相対性理論によれば、運動する物体のエネルギーは次の式で表される。
E=sqrt(m^2*C^4+P^2*C^2)
ここで、E はエネルギー、m は質量、Pは運動量、C は光速である。』
但しこの場合運動量Pはもともとベクトルであるがこの式に代入するPはその運動量ベクトルの大きさ(=絶対値)を代入するのである。
これを書き換えると
E^2=P^2*C^2+m^2*C^4
となる。
そうしてC=1の自然単位系をもちいるならば
E^2=P^2+m^2
となる。
注2:ここが「相対論がホーキング放射を制約する」という話のキーポイントです。
ここでルートの中身がマイナスに落ちると、ホーキング放射を出した後のBHの質量m1は虚数となります。
そうしてマイナスの質量、と言うのはある程度は想定できるが、虚数の質量と言うのは相当に現実的ではない。
従ってこの条件がBHがホーキング放射として出すことが出来る仮想粒子のエネルギーの大きさを制約している事になります。
それでこの条件はBHの質量がプランクスケールよりも相当に大きい場合は無視できますが、プランクスケールに近づくにつれて無視できなくなるのです。
注3:ここでウルフラムの存在の大きさについて言及せざるを得ません。
そうして当方の諸式運用の力では⑦式から⑧式への簡約はほとんど絶望的である。
これはもうウルフラムの力技に脱帽、おんぶにだっこ状態である。
ちなみにいまはやりの ChatGPTでもトライしたが、途中までは簡約できるが最終解には到達できなかった。
ChatGPTもそれなりにやる事はやるがウルフラムの数式処理能力とは比較にならない模様です。