「ローパスフィルターになったBHについての寿命式の導出」の2
3.補正係数R(X)の導出
前のページで出した図4を再度参照します。
y=-0.5556*(x-1.32),y=0.5556*(x-0.4737),y=0.5*x,y= 0.1122/x,y= 2.32*0.1122/x,x=0.4737 の0<x<1,-0.0001<y<1 プロット
実行アドレス・・・図4
計算対象は図4のx軸読み値で0.5から0までです。
そうしてまずはこの範囲での任意のXの値の時に黒体放射を前提とした時の仮想粒子の発生エネルギーに対する、相対論から出された規制式②で示される規制ラインよりも下側に発生する仮想粒子のもつエネルギーを求める事になります。
ちなみに規制式②は以下の通りです。
m/2 = P ・・・②式
ここでmはBHの静止質量をあらわし、Pはホーキング放射の運動量=エネルギーを示しています。
そうして図1の表現ではmはX軸にPはY軸になっています。
さてそれでまずはBHの質量がxの時の黒体放射前提の場合に発生する仮想粒子の合計エネルギーを求めます。
そうしてそれは図4で示した「50%ラインを頂点とする二等辺三角形の面積」で表すのでした。(その様に近似します。)
それでその二等辺三角形の面積は次のように計算されます。
三角形の底辺の長さ=「50%ラインのy値」*2
ここでBHの質量がxの時に「50%ラインのy値を示す関数」をf(x)とします。
そうしてこの時の三角形の高さをh(x)とします。
そうするとこの三角形の面積Sは
S=0.5*(50%ラインのy値*2)*h(x)
=0.5*f(x)*2*h(x)
次に規制ライン②式よりも下側にできる直角三角形の面積s1を求めます。
この直角三角形の頂点はx=0.5の時には上記の二等辺三角形の頂点と同じ位置にあります。
しかしながらxの値が0.5より小さくなりますと二等辺三角形の頂点は50%ライン上にあるために上方に上がっていきます。
他方で規制ライン上にある直角三角形の頂点は、規制ラインが下がるにしたがって同じように下がってきます。
たとえばBHの質量が0.3プランク質量の時は図5の様になります。
y=0.387,y=-0.5556*(x-1.7),y=0.5556*(x-0.3),y=0.5*x,y= 0.1122/x,y=0.15,x=0.3 の0<x<1,-0.0001<y<1 プロット
実行アドレス・・・図5
ここでBHを黒体放射100%と見た時の放射エネルギーは大きな二等辺三角形の面積で表されます。
それに対してBHはローパスフィルター=ハイカットフィルターになっているために実際にホーキング放射が許されるエネルギーレベルは規制ラインより下の部分の直角三角形の面積分だけになります。
さてそれでその時に規制ライン②式よりも下側にできる直角三角形の面積s1は次のようになります。
底辺の長さ=0.5x
これはBHの質量がxの時に規制ラインの式 m/2 = P のPの値に対応しています。
この時にできる直角三角形の高さH(x)は次のように考えます。
50%ラインでの高さはh(x)で与えられています。
そうしてこの高さh(x)は「50%ラインのy値」に対応しています。(注1)
それでH(x)は何に対応しているか、といいますと「底辺の長さ=0.5xに対応している」のです。
従って
H(x):h(x)=0.5x:「50%ラインのy値」=0.5x:f(x)
だから
H(x)=0.5x*h(x)/f(x)
従って直角三角形の面積s1は0.5*底辺の長さ*高さ より
s1=0.5*0.5x*0.5x*h(x)/f(x)
こうして補正係数R(X)が求まります。
R(X)=s1(X)/S(X) とすると
R(X)=(0.5*0.5x*0.5x*h(x)/f(x))/(0.5*f(x)*2*h(x))
=(0.5x*0.5x)/(2*f(x)^2)
ここでポイントとなるのはh(x)が消えてくれる事です。
さてそれでf(x)の正体は
f(x)=0.1122/x でした。
従いまして
R(x)=0.5*(0.5x)^2/(0.1122/x )^2
=(0.5)^3*x^4/(0.1122)^2
=(0.5)^3/(0.1122)^2*x^4
=9.9294*x^4
となります。
R(x)=9.9294*x^4 から
補正係数が0.5になるxの値は
x=0.4737・・・
と逆算されます。
そうしてこの数値は実際に50%ラインと②式で示される規制式がクロスする点のx座標になっています。
さてそれでR(x)=9.9294*x^4の挙動を見ておきます。
y=0,y=1,x=0.0000001,y=9.9294*x^4,x=0.4737,y=0.5 の0<x<1,-0.0001<y<1.1 プロット
実行アドレス・・・図6
x=0.4737で0.5=50%
黒体放射100%でホーキング放射を許している通説の補正係数は1です。
これは図6では水平の赤いラインで表されています。
それに対して静止しているBHに許される補正係数R(x)は緑色で示された4次曲線で表されます。
その曲線はx=0.4737で0.5=50%であり、xがゼロに近づくにつれて急速にゼロになっていきます。
これが今回導出された補正係数R(x)となります。
注1:ここで全ての温度Tの値に対してプランク分布形状は相似である、という事を使っています。