MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

束の間の憩い

2010-08-20 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

08/20 私の音楽仲間 (199) ~ 私の室内楽仲間たち (179)




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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             (1) 念願の初対面
             (2) 3度への愛着
             (3) 3度への執着
             (4) 過去と現在
             (5) 蝋燭の燃え尽きるとき
             (6) 束の間の憩い




 この室内楽の場には、色々な仲間が参加しています。



 ・ 忙しいはずなのに、この場以外にも合奏の機会を
  たくさん持とうとする方。

 ・ この場で室内楽を初めて体験した方。

 ・ 療養や、長い中断を終え、やっと活動を再開できる方。

 ・ それぞれの様々な事情から、回数を限って参加する方。

 ・ ご自分の好きな曲を体験してみたいと、曲を推薦する方。

 ・ 隠れた名曲をインターネットで発掘し、紹介してくれる方。

 ・ 本番を控えているので、同じ曲を違うメンバーで練習
  したい方。

 ・ "何でもござれ" の方。

 ・ 大作曲家の手になるのに、演奏される機会が少ない曲を
 体験したい方。

 そして私のように、自分の意見を持たず、周囲に任せっきり
にしながら、ワイワイ尻馬に乗って楽しむ者までいます。




 もちろん一人一人の事情を、私が耳にしているわけではあり
ません。 その上、人間は単純ではないので、個々が上記の
様々な事情を、幾つか併せ持っているのが普通でしょう。

 ですから想像しても、私には分るはずがありません。 その方
の事情をよく知らず、「この場で音を一緒に出す機会がすべて」
ということさえありますから。




 しかし、それだけでも色々な事が解る場合が、中にはあります。

 「ひょっとすると この方は、この作曲家が大好きなのでは?
そして、いつかこの曲をやってみたいと、これまで何年もの間
夢見てこられたのではないだろうか…?」

 そんなことを勝手に想像しながら、一緒に音を出す場合も
少なくありません。



 それに止まらず、「この日のために、かなりの努力をされて
きたのではないか」と感じることすらあります。 そんなときは、
「自分なりに精一杯、気を入れてやらねば」と集中します。

 その方の音をよく聴き、尊重することです。 アンサンブルで
あれ、音量バランスであれ、テンポ感であれ。 少しでもその
努力が報われ、目標にしてきた この日を終えられるように。




 この曲はブラームスの最後の四重奏曲です。 しかし、その
「作曲開始の時点は、20歳以前に遡るのではないか?」

 私のそのような想像は、すでにお読みいただきました。



 もしそうなら、作曲の (最終的な) 完成が43歳の年で、初演が
その翌年だったことを思うと、「あの第一交響曲を上回る年数
を要した」とさえ、言うことが出来ます。




 そのうち第Ⅳ楽章は、安定した 2/4拍子で、主題と変奏から
成っています。 ただ調性は、変ロ長調、変ロ短調、変ニ長調、
変ト長調など、目まぐるしく変わります。

 後半では第楽章冒頭の主題が、様々な伏線の後に、明確な
形で再登場します。 活気のある 6/8拍子が何度も現われますが、
調性は柔らかい変ロ長調に落ち着き、いつの間にか、第楽章
の主題と一緒に組み合わされているのです。

 この楽章の主題は、落ち着いた 2/4拍子で、全曲は幸福感に
浸りながら終わります。



 それと共にブラームスは、自身の四重奏曲の世界を閉じました。

 後年は二曲の弦楽五重奏曲、そして不朽のクラリネット五重奏
曲が生まれることになります。




 さて、私たちの "束の間の憩い" も終わりました。

 ご一緒してくれた、Violin のSaさんViola のM(a)さん
チェロのM(i)さん、お疲れ様でした。



 みなさん、お元気で。



 ブラームスさん、本当にありがとう。




[譜例] 第楽章冒頭の主題は、いかにも若さと躍動感に
      満ちています。





[譜例] 第楽章の主題は、落ち着いた憩いを感じさせます。






           第Ⅳ楽章からの演奏例