mapio's STREETS OF MOVIE

観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

インサイド・マン Inside Man

2008年05月15日 | Weblog
監督:スパイク・リー
脚本:ラッセル・ジェウィルス
製作:ブライアン・グレイザー
製作総指揮:ダニエル・M・ローゼンバーグ 
ジョン・キルク 
カレン・ケヘラ・シャーウッド 
キム・ロス
撮影:マシュー・リバティック, ASC 
プロダクション・デザイン:ウィン・トーマス 
編集:バリー・アレキサンダー・ブラウン
音楽:テレンス・ブランチャード
共同製作:ジョナサン・フィリー
衣装:ドンナ・バーウイック
キャスト:
デンゼル・ワシントン:キース・フレイジャー(NY市警)
クライブ・オーウェン:ダルトン・ラッセル(銀行強盗のリーダー)
クリストファー・プラマー:アーサー・ケイス(銀行の取締役会長)
ウィレム・デフォー:ジョン・ダリウス(警部)
キウェテル・イジョフォー:ビル・ミッチェル
カルロス・アンダース・ゴメス:スティーブ
キム・ディレクター:スティービー
ジェームス・ランソン:スティーブ-O
ピーター・ジェレティ:コフリン
2006年/米/138min. ☆☆☆★

 ニューヨーク、マンハッタン信託銀行で立てこもり事件が発生。頭脳明晰な犯人グループのリーダーは人質全員に自分たちと同じ格好をさせ、警察側の目をくらますと同時に、人質同士でも誰が犯人で誰が人質なのか判別できない状態にしてしまうという陽動作戦をとり、やがて神経をすり減らすような心理戦が繰り広げられていく。警察の包囲にも焦りを見せない犯人。これはただの強盗なのか?彼らの本当の狙いは?ところが計算し尽くされているこの計画には、信じられないような衝撃的結末が用意されているのだった…。
 この映画界の常識を覆すようなプロットを最初に手にしたのは『ビューティフル・マインド』でアカデミー賞に輝き『フライトプラン』から『ダ・ヴィンチ・コード』まで、数々の名作・話題作を手がけている名プロデューサー、ブライアン・グレイザーと、代表作『マルコムⅩ』をはじめ、常に社会派の問題作を作り続けるフィルム・メイカー、スパイク・リーでした。脚本に魅せられた二人は、極限まで研ぎ澄まされた時間・空間の中で目まぐるしく展開していく完璧な犯罪ドラマには、完璧な演技力が必要であると考え、今回のキャスティングを実現しました。映画史上に残る究極の“完全犯罪”で犯人と渡り合うキース・フレイジャー捜査官役には『グローリー』『トレーニングデイ』で2度のアカデミー賞に輝くデンゼル・ワシントン。時間の経過とともに変化していく“犯人側からのルール”に翻弄されながらも次第に事件の核心に迫っていく姿は流石です。観客は彼を通して完全犯罪を目撃していくことになります。映画の展開はダルトンの仕掛けたものではありますが、ラストに待ち受けているカタルシスはフレイジャーが支えているといっても過言ではありません。冷静沈着な頭脳犯ダルトン・ラッセルを演じるのは『クローサー』でゴールデン・グローブ賞受賞、アカデミー賞ノミネートのクライブ・オーウェン。知的でクールな演技の中に激しさと圧倒的な存在感を包みながら、ストーリーの全てをその手に握っています。冒頭の彼の独白から始まる本作。まっすぐにこちらを見据える彼の瞳に宿る揺るぎない自信が、これから起こる完全犯罪の成立に期待を抱かせます。向こうを張るデンゼルに、一歩も引けを取らない、このオーウェンの油の乗りっぷりが、作品のバランスを保たせました。そしてストーリーを刑事と犯人の“双方向の物語”だけに終わらせないキーパーソンとして登場するのが、『告発の行方』『羊たちの沈黙』のオスカー女優であり、近年では『フライト・プラン』『パニック・ルーム』などサスペンス映画でも実力を発揮しているジョディ・フォスター。本作品はその集大成ともいえます。彼女が演じる女性弁護士マデリーン・ホワイトは銀行からの極秘ミッションという“爆薬”を携えて現場に登場し、立て籠もる側と包囲する側の神経戦に拍車をかけます。更に、この完璧なドラマを創造しているのは3人のメイン・キャストだけでなく、緊迫感を高めるに相応しい演技派の俳優たちも脇を固めています。『プラトーン』『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』でアカデミー賞にノミネートされ、最近では『スパイダーマン』でも強い印象を残したウィレム・デフォー(個人的には『ストリート・オブ・ファイヤー』が一押し)が、現場を統括するダリウス警部を演じています。また事件の舞台となる銀行の会長役には『インサイダー』で全米映画批評家協会賞、LA映画批評家協会賞を受賞し『シリアナ』にも出演しているベテラン俳優クリストファー・プラマー。そして『堕天使のパスポート』『ラブ・アクチュアリー』のキウェテル・イジョフォーがフレイジャーの相棒役で出演しています。
 本作の驚くべき世界観を構築している脚本は、これが初の映画化作品となるラッセル・ジェウィルスとアダム・エルバッカーが共同で執筆。プロデューサー、監督、俳優陣からも絶賛された新感覚の感性は、一躍ハリウッドの注目を集めています。編集のバリー・アレクサンダー・ブラウン、音楽のテレンス・ブランチャード、プロダクション・デザイナーのウィン・トーマスは、これまでもスパイク・リー監督と組んだ経験を持ち、撮影は『フォーン・ブース』『ゴシカ』等、緊張感溢れるカメラワークを得意とするマシュー・リバティックが担当。彼らをはじめとして職人的ともいえるスタッフが監督の下に結集し、見事なチームワークを披露しています。R・A・ラフマーンのリズミカルなインド音楽もスリリングな雰囲気を高めるのに貢献しています。眠い時には見ない方がいい、考えながらゆっくり長編を見るのが好きな人にお薦めの1本。

 「目に見えるもの全てがキーワード」であるが、「目に見えるものだけが全て」ではない。今までの映画のルールはまったく通用しない!タイトルこそが最大のヒント!? 
「私はダルトン・ラッセル。二度と繰り返さないからよく聞け。私は銀行を襲う完全犯罪を計画し、そして、実行する…。」
 “パーフェクト塗装サービス”のバンがマンハッタン信託銀行の前に停車し、ジャンプスーツを着た男たちが降りてくる。やがて彼らは銀行の中へと進む。それが史上空前の完全犯罪の始まりだった。完全武装した犯人たちは銀行内にいた従業員と客を人質に取り、全て計画通りに素早く行動を開始。「全員床に伏せろ!これから我々はこの銀行から多額の金を引き出す。」。犯人グループはリーダーのダルトン・ラッセル(クライブ・オーウェン)以外に3人。互いに“スティーブン”“スティーブO(オー)”“スティービー”と呼び合い、駆けつけた警官に「ヒトジチトッタ。チカヅイタラ、ヒトジチコロス」と外国なまりで伝えるのだった。急報を受けたのは、NY市警のフレイジャー(デンゼル・ワシントン)とミッチェル(キウェテル・イジョフォー)。フレイジャーは以前かかわった麻薬事件で14万ドルの小切手が紛失するという事態に巻き込まれ、内務調査課から汚職の疑いをかけられていた。それだけに今回の事件は汚名返上のチャンスであり、意気揚々と現場に駆けつけたのだった。強盗人質事件発生の連絡を受けたのは警察だけではなかった。マンハッタン信託銀行の取締役会長アーサー・ケイス(クリストファー・プラマー)は明らかに狼狽し、言葉を失っていた。そして彼は警察に事態を確認するよりも先に、ニューヨークでも指折りの有能な弁護士マデリーン・ホワイト(ジョディ・フォスター)を自ら呼び出すのだった。
 強盗人質事件の現場は膠着状態となり、指揮を執る敏腕捜査官フレイジャーですら解決の糸口が見つけられずにいた。犯人グループのリーダー、ダルトンから“型通り”の要求はあったものの、彼らからは焦りが全く感じられない…。徐々に追い詰められていくのは包囲している警官隊の方だった。銀行内ではダルトンたちが着々とプランを進行。人質全員にジャンプスーツと覆面を着用させて、自分たちと同じ格好をさせていた。これでは人質同士でも誰が誰なのか見分けがつかないどころか、人質か犯人かすら区別できない状態となる。犯人グループは想像以上に頭の切れる連中だった。人質と犯人の見分けがつかない以上、突入作戦も不可能。「犯人たちは相当にキレる奴らだ。でも何かがおかしい、時間稼ぎをしているのか…」。やがて銀行の会長ケイスによってネゴシエイター役に指名された女性弁護士ホワイトが現れ“事件の根本”が次第に露呈していく。しかしダルトンは一切の交渉にも挑発にも応じない。ダリウス警部(ウィレム・デフォー)率いる作戦指令車には、犯人との電話回線等、全ての準備が整った。その時、人質の老人が解放され、犯人からのメッセージが伝えられる。「警官がドアに近づいたら人質を2人殺す」。そして犯人グループが4人であることと、ペンキ職人を装っていたことが判明する。一方、ケイスはマデリーンに仕事の依頼をしていた。「銀行の貸金庫には、私にとって大切な物が保管されている。それには誰の手も触れさせたくはない。私だけの秘密なのだ」――ケイスにとって金庫の金を奪われるよりも重要な意味を持つ物とは…。“それ”が露見することは、自分の身の破滅につながることを彼は知っているのだった。人質がまたひとり解放された。そして遂に犯人からの要求が明らかになる。人質の首に下げられたボードに書かれていたのは、《ケネディ空港にジャンボ機とパイロットを用意しろ。夜の9時以降、1時間ごとに人質を殺す。銀行には爆弾が仕掛けてある》。警察側は食料も要求されていたことを逃さず、ピザの箱に盗聴器をセットして銀行内に運び込む。そんな時、マデリーンが市長を伴って現場に現れ、政治レベルの問題をちらつかせながら事件に介入してくる。事件は益々混迷の度を深めていくが、フレイジャーは遂にダルトンとのコンタクトに成功する。ダルトンの声には立てこもり犯特有の焦りが全く感じられず、極めて冷静で自信に溢れていた。主導権は完全に犯人側に握られていた。そんな局面を打開するため、マデリーンが交渉役として銀行内に入ることになった。「依頼人の“ある利益”を守るため、あなたたちの要求をのむことにする」――しかし、結局はマデリーンの交渉も決裂する。やがてフレイジャーの頭に疑問が浮かんできた。時間稼ぎをしているのは奴らの方だ。何かがおかしい…」。今度はフレイジャーが自ら銀行内に入り、中の状況を確認することになった。捜査官と犯人が直接対峙する緊迫した状況。フレイジャーは何とか解決へ の突破口を探るため、様々な言葉でダルトンを挑発。しかし彼は冷静な態度を一切崩さない。それどころか逆に、「そうすべき時が来たら、堂々と正面から出ていくさ」と、フレイジャーに対して挑戦的な言葉を投げかけるのだった。事態は完全に膠着状態だった。そしてついに人質が射殺されるという事態が発生。初めて犠牲者が出たことで、現場の緊張感が一気 に高まる。そして遂に警官隊による突入準備が開始された。問題はどのようにして犯人と人質を見分けるか。全員が同じ格好をしている以上、それは非常に困難だった。ところがまたしてもダルトンの方が一枚上手だった。最初の要求を出したボードに盗聴器を仕掛け、警察の動きを全て知り尽くしていたのだ。しかしすでに警官隊の突入は止められない。そして――。突入と同時に、次から次へと同じジャンプスーツに覆面姿の人々が銀行から飛び出して来る!誰が犯人で、誰が人質なのか…?銃を構えて待ち受ける警官たち。しかし彼らも咄嗟のことに事態が飲み込めず、ただ呆然と立ち尽くすしかない。しかも本当の完全犯罪は、ここから始まったのだった…。



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