mapio's STREETS OF MOVIE

観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

グエムル 漢江の怪物 Gwoemul  THE HOST

2006年11月30日 | Weblog
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ/ハ・ジョンウォン/パク・チョルヒョン
製作:チェ・ヨンベ
製作総指揮:チェ・ヨンベ/キム・ウテク/チョン・テソン
出演:ソン・ガンホ/ピョン・ヒボン/パク・ヘイル/ペ・ドゥナ/コ・アソン/イ・ドンホ/イ・ジェウン

2006/韓国/120mins. ☆☆☆☆★
 
☆今年のカンヌ国際映画祭で最高の映画だ!(ニューヨーク・タイムズ)と評され、韓国では歴代動員記録を塗り替えたモンスター・パニック映画。
 舞台は、韓国で1番大きく、最も美しく、常に穏やかな河、漢江。そこへ突如現れた謎の生き物グエムルに娘をさらわれた河川敷で売店を営む父親と祖父・兄弟が、何とか彼女を救い出そうと奔走することになります。 娘をさらい、姿を消した≪グエムル≫に、1人立ち向かう父親。父は娘を取り戻すことができるのか? そして≪グエムル≫の正体とは…!? 
 出演は「シュリ」「JSA」のソン・ガンホ(これまでと全く違うタイプのキャラクターを天然とも思えるほど上手く演じてます)と「リンダ リンダ リンダ」のペ・ドゥナ。クリーチャー製作は「ロード・オブ・ザ・リング」「ハリーポッターと 炎のゴブレット」のスタッフ。
 映画は冒頭、とある研究所で大量のホルムアルデヒトを流し捨てるシーンから始まる。その影響で変異した生物がグエムルか?といった伏線から、この作品は環境汚染を批判する映画とも感じました。
 日ざし溢れる平和な漢江河川敷、父(ピョン・ヒボン)が運営する漢江の売店でぐっすりと昼寝をしていたカンドゥ(ソン・ガンホ)は寝耳に聞こえる「パパ」という声にむっくり起きあがると中学生になった娘ヒョンソ(コ・アソン)が怒っている。取り出すのも恥ずかしい古い携帯電話と、学父兄参観授業に酒の臭いを漂わせながら来た叔父(パク・ヘイル)のせいである。カンドゥは悩んだ末、釣銭を誤魔化して貯めてきた小銭がいっぱい入ったカップめん容器を取り出して見せる。しかしヒョンソには目障りなだけ、ちょうど始まった叔母(ペ・ドゥナ)の国体アーチェリー競技に熱中します。「火山高」でも弓道部主将はカッコ良かった。
 開始早々から怪物が姿を現わすのがいい。怪物映画で怪物の登場をもったいぶって遅らせるのは平凡ですが、いきなり遠くの方からグエムルが人々の群れに突進してきて(画面でも縦位置のカメラでグエムルの姿があれよあれよという間に大きくなってきて迫力充分!)あっという間に逃げ惑う人々を襲って喰い始め、そして逃げる途中に娘のヒョンソはその怪物にさらわれてしまう。哀しみにくれるパク一家。特に普段から頼りない男だったカンドゥは、娘を失い、もはや抜け殻のようになってしまう。だがある日、カンドゥの携帯電話に着信が──「お父さん助けて!」──ヒョンソの声を聞いた父と一家は、政府に追われながらも漢江に向かう!途中の間の取り方も最高。病院から変装しての逃亡とか、隠れ家でのインスタントラーメンを食うところとか、家族で立ち向かおうという意気込みが感じられないのです。加えてカンドゥの弟の経歴が如何にも韓国的。大学入ったはいいけど、民主化運動にのめり込んで、デモで火炎瓶投げてたのに、今ではフリーター。大学の先輩は、いつのまにか携帯電話会社で月給取りになってるとか、分かり易すぎて微笑んでしまいます。その場面以降、一家離散、個別にグエムル追撃、各個撃破してから再び、という展開は見事だった。バトンを渡すかの如く話が進み、最後に集結して、家族でグエムルと対決するシーンは素敵です。でも決してハッピーエンドではないのです。向こうの人は強いなあ、と思いました。二本足と尻尾しかないグエムルの動きの特撮はそれだけでも一見の価値があります。

ブレス・ザ・チャイルド BLESS THE CHILD

2006年11月12日 | Weblog
監督: チャック・ラッセル
製作: メイス・ニューフェルド
原作: キャシー・キャッシュ・スペルマン 
脚本: トーマス・リックマン 
クリフォード・グリーン 
エレン・グリーン
撮影: ピーター・メンジース・Jr
キャスト:
キム・ベイシンガー 
クリスティーナ・リッチ 
ルーファス・シーウェル 
ジミー・スミッツ 
ホーリストン・コールマン 
アンジェラ・ベティス
イアン・ホルム
マイケル・ガストン
2000/米/1h47m  ☆☆☆

 復活祭直前のNY。6歳の幼児ばかりを狙った連続誘拐殺人事件。ひとつの共通点、子供たちは何故か全員12月16日生まれだった…。その裏に潜む邪悪な悪魔崇拝……。たったひとりの姪を守るため、恐怖と戦う女性の姿を描いたオカルト・スリラー。主演は「L.A.コンフィデンシャル」でアカデミー助演女優賞受賞のキム・ベイシンガー。共演に「バッファロー66」「スリーピー・ホロウ」のクリスティーナ・リッチ。監督は「マスク」「イレイザー」のチャック・ラッセル。製作者のメイス・ニューフェルドは、『オーメン』(76)以来、この作品に見劣りし ない超自然スリラーの新作を見出す日を、待ち望んでいたと言います。彼の願いは、1993年、後に小説「ブレス・ザ・チャイルド」として出版される準備原稿に彼が出会った時,実現しました。
 1993年のニューヨーク、キリストの誕生を告げるヤコブの星が二千年ぶりに輝いたクリスマスの夜、精神科の看護婦マギー・オコナー(キム・ベイシンガー)の家に、音信不通になっていた妹ジェンナ(アンジェラ・ベティス)が現われる。ジェンナはドラッグ中毒になっていて、連れていた女の赤ん坊を「誕生日は12月16日」とだけ伝え、マギーのもとに置いて消える。六年後、復活祭直前のニューヨークで、1993年12月16日生まれの少年少女ばかりを狙った連続誘拐殺人事件が起こる。被害者の遺体には悪魔崇拝の生贄のマークが刻印されていた。神学校出身でFBIのカルト犯罪専門捜査官ジョン・トラヴィス(ジミー・スミッツ)が捜査に加わ る。一方、ジェンナの娘コーディ(ホーリストン・コールマン)も六歳になっていた。自閉症と診断されていたコーディは、情緒障害児の施設に通っているが、不思議な能力を発揮し始めていた。マギーとコーディは実の親子のように暮らしていたがそんな時、ジェンナが新しい夫で薬物中毒患者の救済などを掲げて急成長した自己啓発セミナーの主宰者エリック・スターク(ルーファス・シーウェル)を伴って突然現われ、親権を主張してコーディを連れ去ってしまう。
 悪魔を崇拝する人間が、キリストの生まれ変わりを探し出して自らの支配下に置き、世界を意のままにしようと企むという話だが、随所に聖書を再現するエピソードが散りばめられている。また身体を丸める癖、反復運動、注意力散漫等が特徴の情緒障害児として現世に現われているという神の子の造型がユニークで、弱者に心を寄せるだけで決して全能ではないところなど、よく考えられていると思います。特撮を駆使し空中に悪魔を舞わせたり寝室に夥しい鼠の群を描いてみたり、と如何にもオカルティックな描写を交えながら、実は事態の解決そのものにオカルトの要素は殆ど用 いられておらず(ただコーディの能力だけが明らかなのだ)、ベースはあくまでわが子を救うために奔走する母の物語であり、単純明快なサスペンスです。時間があれば見てもいいかも。

ガープの世界 The World According To Garp

2006年11月04日 | Weblog
製作総指揮:パトリック・ケリー
製作:ジョージ・ロイ・ヒル
   ロバート・L・クロフォード
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:スティーブ・テシック
撮影:ミロスラフ・オンドリチェク
原作:ジョン・アービング
出演:
ロビン・ウィリアムズ
メアリー・ベス・ハート
グレン・クロース
ジョン・リスゴー
ヒューム・クローニン
ジェシカ・タンディ
ジェニー・ライト
ブレンダ・カーリン
イアン・マクレガー

1982/米/2h17m  ☆☆☆☆☆

 現代アメリカ文学の輝ける旗手アーヴィングの自伝的長編であるベストセラーを名匠G・R・ヒルが映画化。一大ベストセラー(社会現象とまで言われた)になったものの、その筋とディーテイルの複雑さから「映画化は不可能」と言われていたこの原作を、G・R・ヒルは個々の断面を積み重ねる方法で見事に傑作に仕上げました。最近の例で言うとタランティーノが「パルプ・フィクション」で場面場面を織り込んで上手くまとめていったような感じです。
 子供だけが欲しいという思いから看護婦ジェニーは傷病兵と一方的に「欲望」抜きのセックスをして子供を作る。子供の名はT・S・ガープ。やがで成長したガープは、ふとしたきっかけで作家を志す。文章修業のため母ジェニーと赴いたウィーンで、ガープは小説の、母は自伝の執筆に励む。帰国後、ジェニーがガープのユニークな出生の経緯や、金を払って娼婦を取材したりして書いた自伝的小説『性の容疑者』はベストセラーとなりウーマンリヴの象徴的存在になるが、その事に端を発した騒動によって物語はあっけなく終息していく。
 この話の一番の魅力は「笑える」でしょう。勿論、大笑いするようなものではありません。話全体は悲劇的な出来事が多く起こり、不安な死の予感に満ち溢れています。登場人物は皆、どこか欠点や問題を抱えています。欲望に振り回され、人生を複雑にします。でも、そうした問題や出来事が過剰なユーモアで包まれているのです。例えば、ガープが憧れのヘレンと結婚して住む家を不動産屋に案内させていると、目の前の家に飛行機が突っ込んで大破します。そこでガープはその家に決めます。一度そういう事故があった所に2度ある確率は非常に低いからだと。ちなみに飛行機で突っ込んだ男は、監督のジョージ・ロイ・ヒルが演じています。
 ガープのR・ウィリアムズは適役だし、ガープ以上と言ってもいいくらいの重要人物(母親)であるジェニー・フィールズ役のG・クローズは、この映画デビュー作でいきなりオスカーにノミネートされ注目を浴びます。この役がはまり過ぎて、そのイメージを払拭するのに苦労したので「危険な情事」に出たとか。性転換して女になった元フットボールプレーヤー役のジョン・リスゴーはこの映画で芽がでた巨漢舞台役者。助演男優賞にノミネートされ、その後「トワイライト・ゾーン」「ハリーとヘンダーソン一家」「リコシェ」など出演作多数です。それと渋い所ではヒューム・クローニンとジェシカ・タンディがジェニーの両親役で出ています。この二人は双方共に一流キャリアの役者ですが、実生活面でも夫婦で映画「コクーン」や「ニューヨーク東8番街の奇跡」でも夫婦役で出演しています。
 映画冒頭、青い空に赤ん坊が舞うという美しいシーンにビートルズのポール・マッカートニーの「When I'm 64」が流れる。で、この絵はラストでも「I'm flying!」という言葉と共に繰り返されます。ガープは幼い頃から、パイロットだった父親に憧れ、絵に描いて空想上で一緒に空を飛んだりします。母親には想像もつかない事ですが。レスリング用のヘッドギアをして屋根の上でパイロットの真似をしたりもします。妻が妊娠したと判った時には喜んでパイロットの自分の絵を彼女のお腹に描きます。最後までガープにとってパイロットの父親は、素敵な夢であり喜びの代名詞であったような気がします。
 ラストシーンは突然、あまりにあっけない最後で締めくくられます。しかし、この映画がガープの母のセリフ“Everybody dies. I'm going to die, too.So will you. The thing is, to have a life before we die.”と訴えるなら、あのラストシーンは必要不可欠なものである。あんな風に終わってしまうからこそ、ガープの学生時代や妻となったヘレンとの人生が美しく映える。あの最期によって、人間は何時こんな風に「あっけない最期」を迎えるか分からないからこそ人生、今を大切にしなきゃいけない、というメッセージなのでしょう。“Now or Never”私の好きな言葉です。
 ガープによると「人生はX指定のメロドラマ "Life is an X-rated soap opera,"」と言っています。誰も否定は出来ないと思います。
 P.S.「Ewan McGregor - ... Ian」
 ガープの愛らしい次男ウォルト役の子がクレジットで“IAN McGregor”となっています。名前が似ているだけかも知れませんが、Ian-Ewan-Ieuan(ロシア語)は同じ名前と聞いた事があります。ユアン・マクレガーは92年に映画デビューとされてますが、1971年3月31日生まれだから当時11歳になるかどうか位なので年齢的には合致するのですが、別人なのかな?