mapio's STREETS OF MOVIE

観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

少林少女 Shaolin Girl

2008年05月30日 | Weblog
監督:本広克行
製作:亀山千広
エグゼクティブプロデューサー:チャウ・シンチー
脚本:十川誠志、十川梨香
音楽:菅野祐悟
撮影:佐光朗
照明:加瀬弘行
美術:相馬直樹
装飾:田中宏
編集:田口拓也
アクション監督:野口彰宏
選曲:藤村義孝
武術指導:マーク武蔵
主題歌 mihimaru GT『ギリギリHERO』
出演:
「国際星館大学女子ラクロス部」
柴咲コウ:桜沢凛(背番号0,AT)
山崎真実:清水真実(背番号1,MF)
工藤あさぎ:近藤あさぎ(背番号2,MF)
原田佳奈:北野佳奈(背番号3,AT)
乙黒えり:黒岩えり(背番号4,AT)
蒲生麻由:山田麻由(背番号5,AT)
いとう麻見:田伏麻見(背番号6,DF)
千野裕子:加地裕子(背番号7,DF)
千代谷美穂:琢磨美穂(背番号8,G)
西秋愛菜:緒方愛菜(背番号9,MF)
キティ・チャン:ミンミン[劉](背番号10,MF)
沢井美優:金川美優(背番号11,DF)
柳沢なな:松本なな(背番号12,DF)
石井明日香:志井明日香(背番号13,G)
尾家輝美:中野輝美(背番号14,DF)
桂亜沙美:長野亜沙美(背番号15,MF)
渡辺奈緒子:湯浅奈緒子(背番号16,DF)
花形綾沙:二階綾沙(背番号17,MF)
満島ひかり:高橋ひかり(背番号18,DF)

岡村隆史:田村龍司(教務課、ラクロス部監督)
仲村トオル:大場雄一郎(学長。自らも武道の達人)
江口洋介:岩井拳児(店長。凛の祖父の門下生で、かつての凛の師匠)
ティン・カイマン:ティン(店員):
ラム・チーチョン:ラム(同上)
麿赤児:凛の師匠
富野由悠季:凛の祖父(劇中では既に故人となっており、遺影での登場)
トータス松本:電器店の店主

2008年/日本・香港/107min. ☆☆

 『踊る大捜査線』シリーズの亀山千広プロデューサーと本広克行監督のコンビに『少林サッカー』で脚本・監督・主演を務めたチャウ・シンチーが、エグゼクティブプロデューサーとして加わって送り出す、痛快カンフーエンターテインメントと銘打たれて公開された作品ですが、2匹目の『少林サッカー』を期待して観るといささか拍子抜けします。少林拳の達人・桜沢凛(りん)が、兄弟子の岩井やラクロス部の仲間たちの中で成長し、真の強さに目覚めていく姿を描きます。主演の柴咲コウはこの作品のために1年間の武術特訓を敢行し、実際の撮影ではアクションシーンも吹き替え殆ど無しで臨むという気合いの入れ様です。その結果、とても女優とは思えない見事なカンフーアクションを披露してくれます。彼女の脇を固める江口洋介、岡村隆史ら個性的な面々の演技も光り、ギャグに笑ってアクションで爽快になれる作品の筈ですが…。

 本広監督と製作者の意向により撮影手法、合成方法等は「極秘」とされており、「広報」「ブログ」等でもあまり具体的な製作過程は公開されませんでした。出演者女優の多くが特撮番組出演経験者であるのも特徴的です。また柴咲コウが単独主演としてクレジットされる映画は『着信アリ』以来4年ぶりです。それだけ話題性が有ったとはいえ、完成したフィルムからは、その期待大なイメージの10分の1も感じられないのです。それが本作、最大の問題です。
さらに、チャウ・シンチーをエグゼクティブ・プロデューサーに迎え、なま卵ネタ他、キャラクターもギャグも『少林サッカー』を引き継ぎながら、観客が期待する“ラクロス版『少林サッカー』”というコンセプトは全く感じられません。その代わりに焦点が当てられたのは、柴咲演じる主人公・凛の持つシリアスな精神人情世界。カンフー映画を製作するうえで、決して間違いとは思いませんが、そこに比重がかかり過ぎると、作品全体のバランスに支障をきたします。ホラー映画もそうですが、日本映画は漂う雰囲気から暗いのです。“豪華キャスト共演のアクション映画”としての醍醐味は、味わう事はできます。でも話がバラバラでまとまりに欠けます。その割には、無駄にセットやCGは凝っています。mihimaru GTの“ギリギリHERO”音楽クリップを先に見て大いに期待しましたが、残念ながらあれ以上は有りませんでした。チャウシンチーはどの位製作に関わったのでしょうか。『少林サッカー』の時の「楽しめる映画を作りたい」というビシビシ伝わってきた気持ちがこの作品では感じられませんでした。柴咲コウが、努力してあんなに格闘シーン頑張っているのに可哀そうです。悪役をしてもソフト感の抜けない仲村トオル、『アンフェア』のようなキレが出てない江口洋介。この二人は活かされていません。脚本のせいかな。対照的に岡村隆史は実に活き活きと楽しんでいるように感じました。ラスト・エンドクレジットは香港映画にありがちなNG集かと思いきや、みんなで仲良く少林ラクロス部を応援するようになってハッピーエンドな幕切れ。そう、これは誰も死なないファンタジー映画なのでした。

 中国・少林拳武術学校――三千日の修業を終えた少女が 今まさにこの地を旅立とうとしていた。「日本で少林拳を広めたい」という願いを持つこの少女のことを老師たちを心配していた。それはこの少女の体には未知数の力を持つ気が潜んでいたから、それが闇の力に落ちることを恐れていた…。彼女の名は、桜沢凛(柴咲コウ)。 日本へと戻ってきた凛は、少林拳を世に広めるという自分の夢のために祖父が開いた懐かしの少林拳練功道場へと向かう。しかしかつて学んだ祖父の道場はすでに廃虚と化し、門下生も道場の閉鎖と共に散り散りに。道場がなぜ閉められることになったのか知りたい凛は兄弟子のところを訪ね歩き、先生と慕った岩井拳児(江口洋介)が町外れで中華食堂を営んでいることを知る。中華食堂を訪れた凛は、中華食堂の店長として料理を作る岩井の変わり果てた姿にショックを受けながらも、道場に何があったのかを問い詰める。しかし岩井は「少林拳はもうやめた」と突き放すばかりで理由を答えてはくれない。凛は「私の居場所は道場です!」と店を飛び出していく。凛は岩井に反発して朽ちた道場に1人寝泊りすることを選ぶ。その翌朝、朽ち果てた道場でひとり眠っていた凛をひとりの女のコが訪ねてくる。岩井の中華食堂で働いていた劉(キティ・チャン)だ。彼女は凛が店に入ってきた時に彼女を止めようとした店員のティン(ティン・カイマン)とラム(ラム・チーチョン)を軽くさばき、飛んできたチャーハンをラクロスのクロスでキャッチした腕前を見て、彼女をラクロスへと誘おうと考えていた。
が少林拳を習うことを交換条件にラクロスをやることになった凛は、に連れられ、彼女が通う国際星館大学へ。そこで女子ラクロス部のメンバーに紹介された凛は、すかさず「私、ラクロスやります!そのかわり、みんなで少林拳もやろう!」とアピール。そのKYな感じにラクロス部員たちはあきれるが、試し打ちしたボールを少林拳仕込みのパワーで空高く飛ばした凛にはド肝を抜かれてしまう。そのボールを拾ってきた教務課職員・田村龍司(岡村隆史)の機転で部員として無事申請される。そんな凛の能力を肌で感じ取っていたのが国際星館大学の学長・大場雄一郎(仲村トオル)。常に最強であることを願い、強い者を追い求め、闘い続けてきた彼は凛に秘められた恐ろしいほどの気の力を感じ、次第に彼女と闘いたいと願うようになっていく…。

ホステル2  HOSTEL: PART II

2008年05月21日 | Weblog
監督・脚本:イーライ・ロス
製作:マイク・フレイス/イーライ・ロス/クリス・ブリッグス
撮影:ミラン・チャディマ
美術:ロブ・ウィルソン・キング
音楽:ネイサン・バール
衣装:スザンナ・プイスト
出演:ローレン・ジャーマン
ロジャー・バート
ヘザー・マタラッツォ
ビジュー・フィリップス
リチャード・バージ
ヴェラ・ヨルダノーヴァ
ミラン・クニャシュコ
スターニスラフ・イワネフスキー
2007/米/97min. ☆☆☆★

 全てを手に入れた金持ちたちが集う拷問殺人同好会「エリート・ハンティング」に、生贄となる若者を提供するホステル経営者を荒唐無稽さを抑えて映画にした『ホステル』のイーライ・ロス監督以下、製作チームが再集結して作り上げた、戦慄のホラー第2弾。今回のターゲットはローマで美大に通う美しいアメリカ人女子大生。なぜならアメリカ人の若い娘は、誰よりも高く売れるから。良質な天然温泉があると聞いてスロバキアのブラティスラバという街のホステル(秘密拷問クラブと提携する悪夢の館)にやってきたアメリカ人留学生少女3人組が標的となり、彼女らが自分の知らぬ間に世界中のセレブ会員相手のオークションにかけられ、いつのまにか誰かに“好きなやり方で拷問して殺してよい”権利を買われてむごい拷問にかけられるさまを徹底的に見せます。不運な留学生役に『テキサス・チェーンソー』のローレン・ジャーマン、『プリティ・プリンセス』シリーズのヘザー・マタラッツオらが扮し、命がけの名演を披露します。よりパワーアップした拷問シーンと、思いがけないストーリー展開に目が釘付けになります。特筆すべきは、1作目と同じホステルを舞台にしながらまったくマンネリ感を感じさせない脚本にしたところでしょう。具体的には、犠牲者視点ではなく加害者視点(少女を買った金持ちセレブの視点)でメインに描いた事です。また犠牲者の美少女たちが自分たちの運命と必死に戦う緊迫感溢れるストーリーと並行して、前作の血塗られたホステルの舞台裏も一見させてくれる辺りが今回の見所でしょう。R-18指定なのは裸もヘアも残酷シーンも遠慮なく出るからです。『ホステル2』は傑作の続編として、二番煎じにならずに正しい方向性を見つけることができた、成功パターンの作品と言えます。
 廃工場から逃亡したパクストン(ジェイ・ヘルナンデス)は元カノのステファニー(ジョーダン・ラッド)を頼る。その頃ローマで美術留学中の美しいアメリカ人女子大生、ベス(ローレン・ジャーマン)とホイットニー(ビジュー・フィリップス)はプラハへの小旅行を予定していた。出発の日、ご令嬢のベスはホームシックで泣いていた同国人ローナ (ヘザー・マタラッツォ)を一緒に連れだし、3人での旅行がスタートする。プラハ行き国際列車の中で、彼女らの美術の時間に出逢った美しい裸婦モデルだったアクセル(ヴェラ・ヨルダノーヴァ)が、イタリア人旅行者に絡まれた三人を偶然救うことになる。そしてアクセルから、天然のスパの情報を聞いた3人は、早速行き先を変更、スロバキアへと向かう。美しい温泉療養地ブラティスラバという街のホステルにチェックインした3人は、街の祭りに参加し休暇を楽しむ。そのホステルで自分たちがオークションにかけられるとは知らずに。一方、サーシャ(ミラン・クニャシュコ)率いるエリート・ハンティングでは活発なオークションが行われ、ホイットニー(ビジュー・フィリップス)はトッド(リチャード・バージ)に、ベスはスチュアート(ロジャー・バート)に落札される…。

インサイド・マン Inside Man

2008年05月15日 | Weblog
監督:スパイク・リー
脚本:ラッセル・ジェウィルス
製作:ブライアン・グレイザー
製作総指揮:ダニエル・M・ローゼンバーグ 
ジョン・キルク 
カレン・ケヘラ・シャーウッド 
キム・ロス
撮影:マシュー・リバティック, ASC 
プロダクション・デザイン:ウィン・トーマス 
編集:バリー・アレキサンダー・ブラウン
音楽:テレンス・ブランチャード
共同製作:ジョナサン・フィリー
衣装:ドンナ・バーウイック
キャスト:
デンゼル・ワシントン:キース・フレイジャー(NY市警)
クライブ・オーウェン:ダルトン・ラッセル(銀行強盗のリーダー)
クリストファー・プラマー:アーサー・ケイス(銀行の取締役会長)
ウィレム・デフォー:ジョン・ダリウス(警部)
キウェテル・イジョフォー:ビル・ミッチェル
カルロス・アンダース・ゴメス:スティーブ
キム・ディレクター:スティービー
ジェームス・ランソン:スティーブ-O
ピーター・ジェレティ:コフリン
2006年/米/138min. ☆☆☆★

 ニューヨーク、マンハッタン信託銀行で立てこもり事件が発生。頭脳明晰な犯人グループのリーダーは人質全員に自分たちと同じ格好をさせ、警察側の目をくらますと同時に、人質同士でも誰が犯人で誰が人質なのか判別できない状態にしてしまうという陽動作戦をとり、やがて神経をすり減らすような心理戦が繰り広げられていく。警察の包囲にも焦りを見せない犯人。これはただの強盗なのか?彼らの本当の狙いは?ところが計算し尽くされているこの計画には、信じられないような衝撃的結末が用意されているのだった…。
 この映画界の常識を覆すようなプロットを最初に手にしたのは『ビューティフル・マインド』でアカデミー賞に輝き『フライトプラン』から『ダ・ヴィンチ・コード』まで、数々の名作・話題作を手がけている名プロデューサー、ブライアン・グレイザーと、代表作『マルコムⅩ』をはじめ、常に社会派の問題作を作り続けるフィルム・メイカー、スパイク・リーでした。脚本に魅せられた二人は、極限まで研ぎ澄まされた時間・空間の中で目まぐるしく展開していく完璧な犯罪ドラマには、完璧な演技力が必要であると考え、今回のキャスティングを実現しました。映画史上に残る究極の“完全犯罪”で犯人と渡り合うキース・フレイジャー捜査官役には『グローリー』『トレーニングデイ』で2度のアカデミー賞に輝くデンゼル・ワシントン。時間の経過とともに変化していく“犯人側からのルール”に翻弄されながらも次第に事件の核心に迫っていく姿は流石です。観客は彼を通して完全犯罪を目撃していくことになります。映画の展開はダルトンの仕掛けたものではありますが、ラストに待ち受けているカタルシスはフレイジャーが支えているといっても過言ではありません。冷静沈着な頭脳犯ダルトン・ラッセルを演じるのは『クローサー』でゴールデン・グローブ賞受賞、アカデミー賞ノミネートのクライブ・オーウェン。知的でクールな演技の中に激しさと圧倒的な存在感を包みながら、ストーリーの全てをその手に握っています。冒頭の彼の独白から始まる本作。まっすぐにこちらを見据える彼の瞳に宿る揺るぎない自信が、これから起こる完全犯罪の成立に期待を抱かせます。向こうを張るデンゼルに、一歩も引けを取らない、このオーウェンの油の乗りっぷりが、作品のバランスを保たせました。そしてストーリーを刑事と犯人の“双方向の物語”だけに終わらせないキーパーソンとして登場するのが、『告発の行方』『羊たちの沈黙』のオスカー女優であり、近年では『フライト・プラン』『パニック・ルーム』などサスペンス映画でも実力を発揮しているジョディ・フォスター。本作品はその集大成ともいえます。彼女が演じる女性弁護士マデリーン・ホワイトは銀行からの極秘ミッションという“爆薬”を携えて現場に登場し、立て籠もる側と包囲する側の神経戦に拍車をかけます。更に、この完璧なドラマを創造しているのは3人のメイン・キャストだけでなく、緊迫感を高めるに相応しい演技派の俳優たちも脇を固めています。『プラトーン』『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』でアカデミー賞にノミネートされ、最近では『スパイダーマン』でも強い印象を残したウィレム・デフォー(個人的には『ストリート・オブ・ファイヤー』が一押し)が、現場を統括するダリウス警部を演じています。また事件の舞台となる銀行の会長役には『インサイダー』で全米映画批評家協会賞、LA映画批評家協会賞を受賞し『シリアナ』にも出演しているベテラン俳優クリストファー・プラマー。そして『堕天使のパスポート』『ラブ・アクチュアリー』のキウェテル・イジョフォーがフレイジャーの相棒役で出演しています。
 本作の驚くべき世界観を構築している脚本は、これが初の映画化作品となるラッセル・ジェウィルスとアダム・エルバッカーが共同で執筆。プロデューサー、監督、俳優陣からも絶賛された新感覚の感性は、一躍ハリウッドの注目を集めています。編集のバリー・アレクサンダー・ブラウン、音楽のテレンス・ブランチャード、プロダクション・デザイナーのウィン・トーマスは、これまでもスパイク・リー監督と組んだ経験を持ち、撮影は『フォーン・ブース』『ゴシカ』等、緊張感溢れるカメラワークを得意とするマシュー・リバティックが担当。彼らをはじめとして職人的ともいえるスタッフが監督の下に結集し、見事なチームワークを披露しています。R・A・ラフマーンのリズミカルなインド音楽もスリリングな雰囲気を高めるのに貢献しています。眠い時には見ない方がいい、考えながらゆっくり長編を見るのが好きな人にお薦めの1本。

 「目に見えるもの全てがキーワード」であるが、「目に見えるものだけが全て」ではない。今までの映画のルールはまったく通用しない!タイトルこそが最大のヒント!? 
「私はダルトン・ラッセル。二度と繰り返さないからよく聞け。私は銀行を襲う完全犯罪を計画し、そして、実行する…。」
 “パーフェクト塗装サービス”のバンがマンハッタン信託銀行の前に停車し、ジャンプスーツを着た男たちが降りてくる。やがて彼らは銀行の中へと進む。それが史上空前の完全犯罪の始まりだった。完全武装した犯人たちは銀行内にいた従業員と客を人質に取り、全て計画通りに素早く行動を開始。「全員床に伏せろ!これから我々はこの銀行から多額の金を引き出す。」。犯人グループはリーダーのダルトン・ラッセル(クライブ・オーウェン)以外に3人。互いに“スティーブン”“スティーブO(オー)”“スティービー”と呼び合い、駆けつけた警官に「ヒトジチトッタ。チカヅイタラ、ヒトジチコロス」と外国なまりで伝えるのだった。急報を受けたのは、NY市警のフレイジャー(デンゼル・ワシントン)とミッチェル(キウェテル・イジョフォー)。フレイジャーは以前かかわった麻薬事件で14万ドルの小切手が紛失するという事態に巻き込まれ、内務調査課から汚職の疑いをかけられていた。それだけに今回の事件は汚名返上のチャンスであり、意気揚々と現場に駆けつけたのだった。強盗人質事件発生の連絡を受けたのは警察だけではなかった。マンハッタン信託銀行の取締役会長アーサー・ケイス(クリストファー・プラマー)は明らかに狼狽し、言葉を失っていた。そして彼は警察に事態を確認するよりも先に、ニューヨークでも指折りの有能な弁護士マデリーン・ホワイト(ジョディ・フォスター)を自ら呼び出すのだった。
 強盗人質事件の現場は膠着状態となり、指揮を執る敏腕捜査官フレイジャーですら解決の糸口が見つけられずにいた。犯人グループのリーダー、ダルトンから“型通り”の要求はあったものの、彼らからは焦りが全く感じられない…。徐々に追い詰められていくのは包囲している警官隊の方だった。銀行内ではダルトンたちが着々とプランを進行。人質全員にジャンプスーツと覆面を着用させて、自分たちと同じ格好をさせていた。これでは人質同士でも誰が誰なのか見分けがつかないどころか、人質か犯人かすら区別できない状態となる。犯人グループは想像以上に頭の切れる連中だった。人質と犯人の見分けがつかない以上、突入作戦も不可能。「犯人たちは相当にキレる奴らだ。でも何かがおかしい、時間稼ぎをしているのか…」。やがて銀行の会長ケイスによってネゴシエイター役に指名された女性弁護士ホワイトが現れ“事件の根本”が次第に露呈していく。しかしダルトンは一切の交渉にも挑発にも応じない。ダリウス警部(ウィレム・デフォー)率いる作戦指令車には、犯人との電話回線等、全ての準備が整った。その時、人質の老人が解放され、犯人からのメッセージが伝えられる。「警官がドアに近づいたら人質を2人殺す」。そして犯人グループが4人であることと、ペンキ職人を装っていたことが判明する。一方、ケイスはマデリーンに仕事の依頼をしていた。「銀行の貸金庫には、私にとって大切な物が保管されている。それには誰の手も触れさせたくはない。私だけの秘密なのだ」――ケイスにとって金庫の金を奪われるよりも重要な意味を持つ物とは…。“それ”が露見することは、自分の身の破滅につながることを彼は知っているのだった。人質がまたひとり解放された。そして遂に犯人からの要求が明らかになる。人質の首に下げられたボードに書かれていたのは、《ケネディ空港にジャンボ機とパイロットを用意しろ。夜の9時以降、1時間ごとに人質を殺す。銀行には爆弾が仕掛けてある》。警察側は食料も要求されていたことを逃さず、ピザの箱に盗聴器をセットして銀行内に運び込む。そんな時、マデリーンが市長を伴って現場に現れ、政治レベルの問題をちらつかせながら事件に介入してくる。事件は益々混迷の度を深めていくが、フレイジャーは遂にダルトンとのコンタクトに成功する。ダルトンの声には立てこもり犯特有の焦りが全く感じられず、極めて冷静で自信に溢れていた。主導権は完全に犯人側に握られていた。そんな局面を打開するため、マデリーンが交渉役として銀行内に入ることになった。「依頼人の“ある利益”を守るため、あなたたちの要求をのむことにする」――しかし、結局はマデリーンの交渉も決裂する。やがてフレイジャーの頭に疑問が浮かんできた。時間稼ぎをしているのは奴らの方だ。何かがおかしい…」。今度はフレイジャーが自ら銀行内に入り、中の状況を確認することになった。捜査官と犯人が直接対峙する緊迫した状況。フレイジャーは何とか解決へ の突破口を探るため、様々な言葉でダルトンを挑発。しかし彼は冷静な態度を一切崩さない。それどころか逆に、「そうすべき時が来たら、堂々と正面から出ていくさ」と、フレイジャーに対して挑戦的な言葉を投げかけるのだった。事態は完全に膠着状態だった。そしてついに人質が射殺されるという事態が発生。初めて犠牲者が出たことで、現場の緊張感が一気 に高まる。そして遂に警官隊による突入準備が開始された。問題はどのようにして犯人と人質を見分けるか。全員が同じ格好をしている以上、それは非常に困難だった。ところがまたしてもダルトンの方が一枚上手だった。最初の要求を出したボードに盗聴器を仕掛け、警察の動きを全て知り尽くしていたのだ。しかしすでに警官隊の突入は止められない。そして――。突入と同時に、次から次へと同じジャンプスーツに覆面姿の人々が銀行から飛び出して来る!誰が犯人で、誰が人質なのか…?銃を構えて待ち受ける警官たち。しかし彼らも咄嗟のことに事態が飲み込めず、ただ呆然と立ち尽くすしかない。しかも本当の完全犯罪は、ここから始まったのだった…。


アイ・アム・レジェンド I AM LEGEND

2008年05月12日 | Weblog
監督:フランシス・ローレンス
原作:リチャード・マシスン “I Am Legend”(吸血鬼/地球最後の男/アイ・アム・レジェンド ハヤカワ文庫)
脚本マーク・プロトセヴィッチ、アキヴァ・ゴールズマン
撮影:アンドリュー・レスニー
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
制作:アキヴァ・ゴールズマン、デヴィッド・ヘイマン、ジェームズ・ラシター、 ニール・H・モリッツ、アーウィン・ストッフ
プロダクションデザイン:ナオミ・ショーハン
衣装デザイン:マイケル・キャプラン
VFX:ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス
出演:
ウィル・スミス:ロバート・ネヴィル
サリ・リチャードソン:ゾーイ・ネヴィル
アリーシー・ブラガ:アナ
ダッシュ・ミホク:アルファ・メイル
チャリー・ターハーン:イーサン
エマ・トンプソン:アリス・クルピン博士
2007/米/100min. ☆☆☆☆★

 リチャード・マシスンの小説『吸血鬼(地球最後の男)』の3度目の映画化作品で『コンスタンティン』のフランシス・ローレンス監督が、『幸せのちから』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたウィル・スミスを主演に迎え、人類が殆ど絶滅した近未来を舞台(無人と化したニューヨーク)に、自分以外の生存者を探す科学者が希望と絶望が混在する究極の孤独の中で人類再生の道を模索する使命感に燃える姿を描くSF巨編です。オリジナル版の『地球最後の男』では吸血鬼が集団でゆっくりと歩き、主人公は家に立て籠もる事が多く、それがジョージ・A・ロメロ監督のホラー『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)に登場したゾンビや舞台設定に大きな影響を与えたと言われています。今作は劇場では2007年12月14日、日米同時公開されました。また、この作品は1990年に『グラディエーター』のリドリー・スコット監督でアーノルド・シュワルツネッガー主演の話もありましたが、制作費が膨大なために断念しています。 
 SF独特の設定ながら、視聴者は主人公に心から同情し、強く惹き付けられます。そんな大役を見事にこなしたウィル・スミスは言葉を使わずに、表情や体の動きを通して考えや感情の多くを伝えています。もちろん、誰もいない荒廃したニューヨークの風景(荒廃した街のシーンはCGではなく[一部使用も有り]、5番街で200日の区画封鎖撮影を敢行)、そして肉食性の感染者たちとの戦い(殺人ウィルスに感染して凶暴になり、暗闇でしか生きられないダーク・シーカーズの超人的な動き・強さはCG)など緊迫感あふれるアクション・シーンや斬新な視覚効果も満載ですが、本作のもっともパワフルな要素は、主人公の心の動きを細やかに追っているところでしょう。大規模な話を2時間弱に収めてしまっているので、つっこみ所は多々有ります。日本の宣伝では「唯1人生き残った」ウィル・スミスを強調していましたが、それは「元の体のままの人間」という意味で、圧倒的多数の変異した人間たちは、どうやって生きているのか、凶暴な動き以外は何も描かれていません。マシスンの原作では彼らこそが新人類で、それが『猿の惑星』のように最高の皮肉になっています。ウィルの日常生活、孤独や喪失感などは劇中で分かるのですが、表現されてない部分を考えると、無知の部分のあまりの大きさに驚かされます。コンピューターを破壊するだけでライフラインが停滞する時代にガスや電気が使えるのって何故?みたく思うかも知れませんが、この映画のスケールと勢いある展開の前では気にならない人が大多数でしょう。
余談ですが、本作に登場する米軍兵士はすべて現役で、撮影の10か月前にイラクから帰国したばかりだそうです。

 2009年、女性科学者アリス・クルピン博士(エマ・トンプソン)が、はしかウィルスを元にガンの治療薬を開発。治療薬は1万9人のガン患者に投与され、全員が助かったかに見えたが、米国陸軍中佐であり科学者のロバート・ネヴィル(ウィル・スミス)は治療薬を投与した者の一部が狂犬病に似た症状で死亡したことに疑問を感じて調査した結果、治療薬が人間を死に至らしめる危険なK.V(クルピン・ウィルス)であることを発見する。そしてニューヨークがK.Vの感染源になったことで大統領はニューヨークの封鎖を決定し、軍を出動させる。ネヴィルの妻子を含む非感染者をニューヨークに設置させた検問所から脱出させ、感染者への隔離処置が始まるが、空軍の戦闘機が封鎖を徹底すべくニューヨークと外部を結ぶ橋をミサイルで破壊した際に、パニック状態に陥った群集の一部が離陸直後のヘリコプターに飛び付き、これによってバランスを失い暴走した機が、ネヴィルの妻子を乗せたヘリコプターに空中衝突し、ネヴィルは妻子を失う。その後、K.Vは空気感染によって世界中へと拡散する。ネヴィルの試算によると世界人口60億人中54億人が死滅。ネヴィルを含む1200万人の免疫保有者と、K.Vの影響で理性や知能と太陽光(紫外線)への耐性を失いつつも、常人を遙かに上回る身体能力を持ち、昼間は地下や建物の中に潜み、太陽の光が消え去ると、いっせいにうごめき出す不気味な影、5億8800万人の生存患者、ダーク・シーカーズだけが生き残った…。
 それから3年後の2012年、廃墟と化したニューヨーク。ウイルス感染により、世界人口の60億が絶滅していくなかでネヴィルは3年もの間、シェパードの愛犬サムと共に、動物園から逃げ出したインパラを狩り、公園でトウモロコシを収穫しながらK.Vの研究をしつつ、一日も欠かさず生存者を捜し求めて無線でメッセージを発信し続けていた。最終目標はダーク・シーカーズを人間に戻せる血清の開発であり、そのためにK.Vを投与したマウスや太陽光に晒さないように生け捕りにしたダーク・シーカーズをサンプルにして、実験を繰り返した。だが、部分的に知能が低下し、逆にある程度の知能を有している1人のダーク・シーカーズが放ったK.Vに感染した犬に襲われ、ネヴィルは無事だったが噛まれたサムは治療の甲斐なく感染犬と化し、ネヴィルはやむなく自らの手で絞め殺さなければならなくなった。これに自暴自棄になったネヴィルは夜中に車で街に出かけ、襲い来るダーク・シーカーズを車で次々と轢き殺すが、逆に彼らに車を転倒され、窮地に陥る。だが、ネヴィルが3年間無線で送り続けたメッセージを聞いてやって来たアナとイーサンの親子によって救われる。かくして自分以外の生存者と初めて遭遇したネヴィルであったが、アナがバーモントの山中に寒さでウィルスが死滅したため生存者達が暮らす村があると話したときはそれを信じず、その根拠が神の言葉だという彼女に対して神を否定する発言をした。そして、自分はあくまでK.Vの感染源であるニューヨークで戦うと主張するが、アナの不注意な行動が災いして安全だったはずのネヴィルの家はダーク・シーカーズに突き止められ、襲われてしまう。必死の戦いの末、ネヴィルはアナとイーサンを連れて地下の研究室に逃れ、そこで血清の開発のために捕まえていた女性のダーク・シーカーに回復の兆候があるのを発見する。だが、ダーク・ シーカーズは研究室に入り込み、ネヴィル達を守る強化ガラスのドアを力任せに体当たりで破ろうとする。これに対しネヴィルは「君達を救えるんだ」と叫ぶも、ダーク・ シーカーズは誰1人耳を傾けようとしなかった。何故ならダーク・シーカーズたちにとっては、彼こそが、多くの仲間を誘拐し謎の実験で殺害し続けた敵だったからである。ここに至り、ネヴィルは回復中のダーク・シーカーから採血するとそれを入れたカプセルをアナに手渡し、緊急用の脱出路からイーサンと共に逃がす。そして自らは逃げる親子を守るべく研究室に備えていた手榴弾の安全ピンを抜き、強化ガラスを突き破って襲ってきたダーク・シーカーズに飛び込み、壮絶な自爆を遂げた。
 それからしばらくして、バーモント山中の道路を車で進むアナとイーサンは、道路をふさぐ巨大な壁を発見。2人で車を降り壁に寄ると壁は電子音と共に開き、武装した2人の兵士が現れた。ここでは生き残った者達が山地という地理的条件に加えて兵士達と広く張り巡らされた防御壁によってK.Vからも守られており、平和が保たれていた。新しい生存者として彼等に迎えられたアナはネヴィルの形見になったカプセルを手渡した。かくして、K.Vの治療薬を開発したネヴィルは、アナの証言にてその功績が明らかとなり、伝説(レジェンド)となった…。


ヘアスプレー Hairspray

2008年05月06日 | Weblog
監督/振付/製作総指揮:アダム・シャンクマン『キャプテン・ウルフ』
製作:クレイグ・ゼイダン&ニール・メロン『シカゴ』
作曲/作詞/製作総指揮:マーク・シェイマン
作詞/製作総指揮:スコット・ウィットマン
脚本:レスリー・ディクソン
撮影:ボジャン・バゼリ
編集:マイケル・トロニック
出演:
ニッキー・ブロンスキー(トレイシー・ターンブラッド)
ジョン・トラヴォルタ(エドナ・ターンブラッド)
クリストファー・ウォーケン(ウィルバー・ターンブラッド)
ミシェル・ファイファー(ヴェルマ・フォン・タッスル)
ブリタニー・スノウ(アンバー・フォン・タッスル)『キャプテン・ウルフ』
アマンダ・バインズ(ペニー・ピングルトン)
アリソン・ジャネイ(プルディ・ピングルトン)
ジェームズ・マースデン(コーニー・コリンズ)
クイーン・ラティファ(モーターマウス・メイベル)
ザック・エフロン(リンク・ラーキン)
イライジャ・ケリー(シーウィード)
ジェリー・スティラー(ミスター・ピンキー)
2007/米/117min.  ☆☆☆☆☆

 この2007年版ヘアスプレー(Hairspray)は1987年のオリジナル同名映画(ジョン・ウォーターズ監督によるコメディ映画)を原作に舞台化し、2003年度のトニー賞で8部門を獲得した、大人気ブロードウェイ・ミュージカル劇を『シカゴ』の製作陣が映画化したものです。ジョン・トラヴォルタが特殊メイクで巨漢の女性を演じた事でも話題を呼びました。オリジナル映画から、ヒロインは新人を起用することや、母親のエドナ役は男性俳優が演じること等は、今回もしっかり踏襲しています。ヒロインを演じるのは、1000人以上の中から選出された18歳のシンデレラ・ガール、ニッキー・ブロンスキー。さらにエドナ役には、『シカゴ』への出演を3度断ったジョン・トラヴォルタを、約1年かけて口説き落としたそうです。この母と娘2人の息が不思議なほどピッタリだし、ニッキーから溢れ出る(!)“幸せ”パワーと言ったら、人種差別というシリアスな問題に話がいっても、ハッピーな作品の雰囲気がまったく色褪せません。ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン、「ハイスクール・ミュージカル」で大人気のザック・エフロンなど、豪華な脇役陣の歌う各ナンバーも最高です(※文末参照)。60年代のヒットナンバーをあえて使わず、このミュージカルのために作曲したナンバーにしたのが、より良い結果につながった気がします。また映像は、60年代の小道具を使いつつも、現代のビデオクリップを観ている人でも飽きさせないような躍動感溢れるもので楽しめます。参考までに、1988年版の監督のジョン・ウォーターズは、「近所の露出狂のおじさん」役で少し顔を出しています。また、ジョン・ウォーターズ版で父親ウィルバーを演じたジェリー・スティラーが洋品店の主人役で出演しています。
 映画冒頭からまさに「ブロードウェイミュージカル」って感じのノリのいい曲に元気一杯の歌詞。朝だっていうのに主人公のトレイシーのテンションの高さ。始まってすぐにHAIR SPRAYの世界に引き込まれます。キャラクター達も魅力的です。ダサかっこいい主人公の憧れの人、リンク。見た目はド迫力なのに、実は乙女な主人公のママ。いつもは頼れる存在なのに、天然でどこか抜けてる主人公のパパ。そして、何と言っても主人公のトレイシー。彼女が持ち前の明るさとパワーで困難に立ち向かい、周りの人を変えて、勇気を与える姿があなたにも届きます。冷静に考えるとストーリー的に無理がある所もありますが、これはミュージカル、音楽、テンポの良さ、そして主人公トレイシーのパワーと底抜けの明るさがあれば大丈夫って思えます。彼女はとても活き活きしてます。踊っているときの笑顔と言ったらホントにキュートです。でも一番可愛いのは、なんと言っても母親役のジョン・トラボルタです。スタイルで勝負しているダンサーよりも年齢・性別を通り越して全然素敵なのです。彼女(?)だけでも見る価値があります。歌も踊りも見てるだけで楽しい気分になります。つらい時、ちょっと落ち込んでいる時にでも前向きな気持ちになれる、明るくてハッピーな映画です。
 
 1962年、アメリカ合衆国ボルチモアに住む16歳のトレイシーは、ダンスとおしゃれが大好きなビックサイズの女の子。夢はヘアスプレー企業が贈る、ティーンに人気なボルチモアで最高にホットなダンステレビ番組『コーニー・コリンズ・ショー』に出演して憧れの人気ダンサー、リンクと踊るという、体型など一向に気にしない天真爛漫ぶりであった。
 ある日、ショーのメンバーのオーディションが開催されることを知ったトレイシーは一生のチャンスと思い、受けさせて欲しいと両親にお願いする。巨漢の母親エドナは、体型の事を言われてトレイシーが傷つくのではないかと心配して反対する。しかし父親のウィルバーから「ビッグなのだからビッグになれ」と激励され、明るく前向きに生きるトレーシーは学校を休み、オーディションに飛び込み参加する。結果は、番組のプロデューサーのヴェルマから、太っているとの理由で一方的に落とされてしまう。その日、オーディションのために遅刻したトレイシーは居残りをさせられることになり、教室に向かうと、そこではシーウィードを始めとする黒人の生徒達が踊っていた。すぐに皆と打ち解け、教えてもらったR&Bのステップを踏むトレイシーをリンクが目撃、「君なら番組に出られる」と言われてトレイシーは有頂天。また、トレイシーの親友ペニーはシーウィードと恋に落ちる。その後、学校のダンスパーティーにたまたまいたコーニーのお眼鏡に叶い、コーニー自らのスカウトにより番組出演の夢が叶う。トレイシーのおかげでヘアスプレーは売れ、スポンサーも大喜び。初めは反対していたエドナもテレビで活躍する娘の姿に父親ウィルバーと共に娘を応援するようになる。それと共に、今まで家事とクリーニングの仕事だけで家に引きこもりがちだった生活から、外の世界へと足を踏み出す変化を遂げる。しかしプロデューサーのヴェルマはトレイシーの成功が面白くなく、父親のウィルバーを誘惑しようとしたり、あの手この手でトレイシーを番組から追い出そうとしはじめる。
 『コーニー・コリンズ・ショー』には月に1回“ニガー・デー”(劇中訳では“ブラック・デー”)という黒人のみが出演する日があったが、司会者のコーニー・コリンズは差別の廃止を提案。しかしヴェルマは聞く耳を持たず、“ニガー・デー”自体を廃止してしまう。気落ちした黒人たちは、トレイシーの発案でテレビ局までデモ行進をすることにする。デモはつつがなく進行したが、テレビ局の前で警官ともみ合いになり、逃げたトレイシーは警察から追われる身となってしまう。明日は「ミス・ヘ アスプレー・コンテスト」。トレイシーはコンテストに出場できるのだろうか…?
 

1. グッド・モーニング・ボルチモア:ニッキー・ブロンスキー オープニング場面で、トレーシーがダンサーになる夢を元気いっぱい歌うナンバー。
2. ザ・ナイセスト・キッズ・イン・タウン:ジェームズ・マースデン ボルティモア中の高校生が夢中のTV番組「コーニー・コリンズ・ショー」のオープニング曲。
3. イット・テイクス・トゥー:ザック・エフロン 番組の中でリンクが歌うドゥーワップ・ソング。
4. (ザ・レジェンド・オブ・)ミス・ボルチモア・クラブス:ミシェル・ファイファー 番組のプロデューサー、ヴェルマが昔の栄光を貫禄たっぷりに歌います。
5. アイ・キャン・ヒア・ザ・ベルズ:ニッキー・ブロンスキー 憧れのリンクと急接近したトレーシーが、乙女心を歌ったラブソング。
6. レディーズ・チョイス:ザック・エフロン 映画版のための新曲。オーディション場面でリンクが歌います。
7. ザ・ニュー・ガール・イン・タウン:ブリタニー・スノウ アンバーが番組の中で歌うガールズ・ポップ。ミュージカル版では未使用曲ですが、今回の映画版で陽の目を見ました。
8. ウェルカム・トゥ・ザ・60s:ニッキー・ブロンスキー&ジョン・トラヴォルタ トレーシーが母エドナを外に連れ出す場面で、二人が歌うデュエット。
9. ラン・アンド・テル・ザット!:イライジャ・ケリー トレーシーの友人、シーウィードが黒人の素晴しさを歌うソウルフルなナンバー。
10. ビッグ・ブロンド・アンド・ビューティフル:クイーン・ラティファ 黒人居住区を初めて訪れたトレーシーたちを、シーウィードの母メイベルが迎えるブルース。 11. ビッグ・ブロンド・アンド・ビューティフル(リプライズ):
ジョン・トラヴォルタ&ミシェル・ファイファー
映画版のための新アレンジ。ヴェルマがトレーシーの父ウィルバーを誘惑する場面で使用。
12. (ユアー・)タイムレス・トゥ・ミー:ジョン・トラヴォルタ&クリストファー・ウォーケン
エドナとウィルバーが夫婦愛を確かめ合う、ゴージャスなデュエット。
13. アイ・ノウ・ホエア・アイヴ・ビーン:クイーン・ラティファ
公民権を求めるメイベルたちが、抗議デモで歌う感動的なナンバー。
14. ウィズアウト・ラヴ:ザック・エフロン、ニッキー・ブロンスキー、イライジャ・ケリー、アマンダ・バインズ
リンクがトレーシーへの想いを歌い上げるラブソング。
15. (イッツ・)ヘアスプレー:ジェームズ・マースデン
生放送番組「ミス・ヘアスプレー・コンテスト」のオープニング曲。
16. ユー・キャント・ストップ・ザ・ビート:
ニッキー・ブロンスキー、ザック・エフロン、アマンダ・バインズ、イライジャ・ケリー、ジョン・トラヴォルタ、クイーン・ラティファ
コンテストのクライマックスを盛り上げる、圧巻のアンサンブル・ナンバー。
17. カム・ソー・ファー(ゴット・ソー・ファー・トゥ・ゴー):
クイーン・ラティファ、ニッキー・ブロンスキー、ザック・エフロン、イライジャ・ケリー 映画版のための新曲。エンドロールで流れます。
18. クーティーズ:エイミー・アレン
エンドロール使用曲。
19. ママ、アイム・ア・ビッグ・ガール・ナウ:リッキー・レイク、マリッサ・ジャレット・ウィノカー、ニッキー・ブロンスキー

最後にクィーン・ラティファが歌っていたお気に入りのフレーズを!
 「♪自分を見て あなたは最高に魅力的♪」