mapio's STREETS OF MOVIE

観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

バトル・ロワイアル Battle Royale

2006年08月26日 | Weblog
監督:深作欣二
原作:高見広春
出演:
藤原竜也
前田亜季
山本太郎
栗山千明
紫咲コウ
安藤政信
ビートたけし

2000/日本/1h53m R-15  ☆☆☆☆

第5回日本ホラー大賞の最終選考に残りながら、全審査員より「非常に不愉快」「こんな事を考える作者が嫌」「賞の為には絶対マイナス」と、様々な非難を浴びつつも衝撃的な内容と徹底したエンターテインメント性ゆえ、静かに原稿が回し読みされた小説「バトルロワイヤル」(太田出版)。刊行と同時に「このミステリーがすごい」で99年の作品中4位、「99ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR」ミステリー・ホラー・SF部門3位、「週刊文春・99傑作ミステリー」国内部門5位と高評価を得た話題作の映画化。
新世紀の始め、ひとつの国が壊れた。自信をなくした大人たちは子供を恐れ、ある法案【=ゲーム】が可決された。全国の中学3年生4万3000クラスの中から無作為に選ばれた1クラスを、最後の1人になるまで殺し合わせる新世紀教育改革法・通称【BR(Battle Royale)法】…1人に1つずつ支給される様々な武器。ある種の規則を破ると爆発する自分では外せない首輪。外界から遮断された無人島で、42名の中学生たちの、血塗られた3日間が唐突に、そしてあまりに理不尽に幕を上げてゆく…。
3日以内に自分以外のクラスメート全員を殺すしか生き残る道はないという極限状況の中、現実が把握出来ないまま殺される者もいれば本能のまま殺人を重ねる生徒達まで、理解不能な凶行を繰り返す昨今の子供たちに怯える現代社会に衝撃を与える作品。監督は日本アクション映画の大御所・深作欣二。タランティーノやジョン・ウーなど海外の監督にも大きな影響を与えた斬新な演出が、本作でも発揮される。そして生徒役の藤原竜也、前田亜季、山本太郎、栗山千明、柴咲コウ、安藤政信をはじめ、研ぎ澄まされた静かな狂気で42人の中学生たちの殺し合いを監視する冷酷な元教師キタノをビートたけしが演じるなど、魅力的なメンツがそろい、終末的な崩壊への序曲とも取れる物語を現代日本に叩きつける。まあ強いて言うなら顔ぶれを見る限り、中学生というより高校生の方がリアリティが増したかも。何はともあれ、冒頭から緊迫感一杯でBR世界に引きずり込み、終わりまで一気に見せる演出は凄い。

富江 最終章~禁断の果実~

2006年08月25日 | Weblog
監督:中原 俊
企画:武内健、加藤東司
プロデューサー:清水 俊、尾西要一郎、東康彦
原作:伊藤潤二(朝日ソノラマ刊)
脚本:藤岡美暢
撮影:鈴木一博
美術:金田克美
編集:宮島竜治
音楽:TATSUYA
製作担当:小松 功
主題歌:安藤希「羽根」(日本クラウン)
キャスト:
安藤 希(富江)
宮崎あおい(橋本登美恵)
國村 隼(橋本和彦)
藤本由佳(京子/登美恵の友人)
二宮綾香(恵/登美恵の友人)
太田千晶(智子/登美恵の友人)
渡辺 哲(鈴木/和彦の上司)
斉藤亮太(橋本和彦/回想)
藤間宇宙(田島雅夫/和彦の友人)
田村泰二郎(管理人)

2002/日本/1h31m  ☆☆★

 富江tomie (1999)、富江replay (2000)、富江re-birth (2001)、富江 最終章 ~禁断の果実~ (2002)、富江 BEGINNING (2005)、富江 REVENGE (2005)と続く『富江』シリーズ第4弾の本作は、前3作で菅野美穂、宝生舞、酒井美紀が演った富江を、『さくや妖怪伝』等の出演や歌手としても活躍している安藤希が演じている。また、富江に憑かれる少女・登美恵役には『EUREKA ユリイカ』『害虫』等の演技や、雑誌、CMやテレビドラマで人気上昇中の宮崎あおいが登用されている。その二人に翻弄される登美恵の父親を『萌の朱雀』等の名脇役、國村隼が演じる。監督はポルノから『櫻の園』『12人の優しい日本人』『コンセント』等の幅広い作品層のある中原俊。「テーマはロリータとレズビアン」とは監督の弁。
 25年前、富江という名の美少女に魅せられたことを忘れられず、娘に登美恵と名付けた橋本和彦。その娘・登美恵は殻に閉じこもりがちな、いわゆるいじめられっ子の高校生だった。そんな登美恵の前に、富江と名乗る左目の下にほくろのある美少女が現われる。女王様然とした富江の奔放な振る舞いに不思議と惹きこまれる登美恵。二人が親密になるのに時間は要らなかった。ある日、そんな富江と出くわした和彦に25年前の富江と同人物と告げられる。何故そこで信じてしまうの?と思うが、 富江と言えば、富江(化け物)の魅力に吸い込まれて、抜け出せなくなる馬鹿な男の子、という図式が思い起こされる。美しさというものは、自分勝手で我が儘で矛盾に満ちた化け物までをも愛情の対象にさせてしまう。 がしかし、前作までの若い男は簡単に現実を捨て、美しさを追い求めたが、和彦は25年来の富江への愛情を露にするが、富江の悪意ある我が儘が自分が守るべき現実という領域を侵し始める(妻の位牌の焼却や登美恵への殺意)と、富江を捨て去り、現実を選択する。また登美恵も「育てる事が出来ない」というあまりにも現実的な理由で美しさ(富江)を捨てる。つまり家族愛がこれまで独走してきた化け物・富江の存在を否定するのである。だから~最終章~なのかな。
p.s.上に挙げた6作品以外にオリジナルビデオ作品で『富江アナザフェイス』もあります。

サイコ・ビーチ・パーティー Psycho Beach Party

2006年08月19日 | Weblog
監督:ロバート・リー・キング
脚本:チャールズ・ブッシュ
音楽:ベン・ヴォーン
出演:チャールズ・ブッシュ
   ローレン・アンブローズ
   トーマス・ギブソン
   キャサリン・ロバートソン
   ニコラス・ブレンダン
   ベス・ブロデリック

2000/米/1h34m ☆☆☆

 舞台劇の映画化という点で「ロッキー・ホラー・ショウ」には及ばないが、監督のロバート・リー・キングは、長編劇場作品はこれが初めてにしては上手くくだらなく見える様に計算して作っている。いわゆる60年代ビーチ映画&C級ホラーの雰囲気にヒッチコック風スリラーを加味した、チープでポップでお馬鹿な低予算パロディ。戯曲の原作と脚本を書いたチャールズ・ブッシュは、映画の中ではモニカ・スターク警部として女装して(さながら「ロッキーホラー~」のフランクフルター!)出演している。60年代のダイナー、ドライブイン・シアター、ゴーゴー、サーフィン、B級SF映画などのポップカルチャーを題材にして、明るくクレバーで面白い。おそらく戯曲の完成度が高かったのだろう。映像の面でも乏しい予算の範囲内でうまく仕上がっていて、おそろしくバカなことをやっていながらぜんぜん下品にならないところが素晴らしい。主人公のChickletを演じるローレン・アンブロースは、表情がくるくると変わって実にかわいい。その他、サーフィンの王者 Kanakaを演じるトーマス・ギブソン(『ダーマ&グレッグ』の人)、主人公のロマンスの相手Starcatを演じるニコラス・ブレンドン (『バフィー』の人)が熱演。B級映画の女優Bettinaを演じるキンバリー・デイヴィスは美しい。スウェーデンから来た交換留学生を演じるマット・ キースラーは『ラスト・デイズ・オブ・ディスコ』で検事補を演じていた人である。映画のクライマックス近く、ビーチでのパーティーで、ゴーゴー・ダンスのかなり本格的なミュージカル・シーンがある。ここが一番面白い。やはり元ネタがミュージカルだけある。当時のアメリカ若者風俗が原色バリバリの毒を持って再現されてます。現代風にブラックな部分としては、ゲイネタと、連続殺人事件の被害者達が全員、身体的欠陥・健康的疾患の持ち主であるという点。お約束ではありますが、ラストのどんでん返しはどこまで想定出来たか、考えながら観てみて下さい。低予算ながら、おバカの質は「オースティン・パワーズ」より上な位だ。

フレディVSジェイソン FREDDY VS. JASON

2006年08月17日 | Weblog
監督:ロニー・ユー
製作:ショーン・S・カニンガム
製作総指揮:ダグラス・カーティス
キャラクター創造:ウェス・クレイヴン
ヴィクター・ミラー
脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー
   ダミアン・シャノン
   マーク・スウィフト
撮影:フレッド・マーフィ
音楽:グレーム・レヴェル
   コーリー・テイラー
出演:ロバート・イングランド:フレディ・クルーガー
   ケン・カージンガー:ジェイソン・ボーヒーズ
   ジェイソン・リッター:ウィル
   モニカ・キーナ:ロリー
   ケリー・ローランド:キア
   ロックリン・マンロー:スタッブス代議員
   キャサリン・イザベル:ギブ
   ブレンダン・フレッチャー:マーク
   クリス・マークエット:リンダマン
2003/米/1h38m    ☆☆☆★

 ホラー映画の歴史に燦然と輝く2大キャラクター、「エルム街の悪夢」シリーズに登場し、その鋭利なナイフ爪と変身能力で人々を恐怖に巻き込んだフレディ・クルーガー、かたや「13日の金曜日」シリーズで、キャンプ場の若い男女を震え上がらせたホッケーマスクの殺人鬼ジェイソン・ボーヒーズ。この伝説的キャラクター同士の直接対決が実現したアクション・ホラー。監督は「チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁」「ケミカル51」のロニー・ユー。「チャイルド・プレイ~」でもそうだが、怖がらせるよりも自分自身が楽しい映画を作っている感がある。
 フレディが人々の夢に侵入し殺戮を繰り返した惨劇からすでに10 年。現在、エルム街に住む人々は、フレディの復活を怖れて夢を見ないよう名前を出さないよう細心の注意をしていた。もう若者たちの中にフレディの存在を知る者はほとんどいなかった。こんな状況はフレディにとってとても耐えられず、クリスタルレイクの殺人鬼ジェイソンを利用することで人々に恐怖をもたらし、その恐怖をエネルギーに再び地獄から這い出てエルム街に復活しようと目論んだフレディは、早速ジェイソンの夢に忍び込む。しかしジェイソンはフレディの支配から脱し、寧ろ邪魔な存在となり遂にこのふたりの戦いが始まるのであった…。
 まあ、人気シリーズの主人公2人を共演させたんだから期待通りの出来でした。可も無く、不可も無しと言ったところ。舞台はエルム街とクリスタルレイク・キャンプ場。話の広がりが見えてこない。翌年の「エイリアンvsプレデター」の方が規模が大きくていいかな。それと映画冒頭のセックス後にジェイソンに殺された若者と仲間達を指して、事件調査に来た警官が「All kids ~(子供達は)」とあっさり言うが、日本では同じ事があってもセックスするヤツを子供とはあんまり言わないなあ。お国柄の違いですね。

レイクサイド マーダーケース

2006年08月13日 | Weblog
監督:青山真治
原作:東野圭吾 『レイクサイド』(実業之日本社刊)
脚本:青山真治
   深沢正樹
撮影:たむらまさき
   池内義浩
美術:清水剛
音楽:長嶌寛幸
出演:役所広司:並木俊介
   薬師丸ひろ子:並木美菜子
   柄本明: 藤間智晴
   鶴見辰吾:関谷孝史
   杉田かおる:関谷靖子
   黒田福美:藤間一枝
   眞野裕子:高階英里子
   豊川悦司:津久見勝
   牧野有紗:並木舞華
   村田将平:藤間直人
   馬場誠:関谷拓也
2004/日本/1h58m ☆☆☆★

 『容疑者Xの献身』(文藝春秋刊)で第134回直木賞を受賞した東野圭吾の小説『レイクサイド』を「EUREKA」の青山真治が監督したミステリー。東野圭吾原作の映画化は『秘密』『g@me.』に続き3度目となる。3組の家族が中学受験の勉強合宿のために集まった湖畔の別荘で突発的な殺人事件が発生、それぞれの思惑を秘め協力して隠蔽を図る親たちの姿と意外な真相をミステリアスに綴る。いわゆるワンロケーションの密室劇なので俳優の技量にウェートがおかれる。役所広司、 薬師丸ひろ子、柄本明、豊川悦司らの実力派俳優陣が、それぞれの個性を遺憾なく発揮した演技合戦は見どころ。
 ある日、中学受験を控えた子どもを持つ3家族が講師を招き、湖畔の別荘で一緒に勉強合宿を開く。家族とは別居中の並木俊介も、中学受験には疑問を持ちつつも妻・美菜子と娘の舞華のために仲のよい夫婦を演じてこの合宿に参加した。そして講師・津久見の指導のもと、子どもの勉強や面接の訓練などに打ち込む3家族。そんな時、俊介の仕事仲間で愛人でもある英里子が突然別荘にやって来る。その晩、俊介は英里子と外で落ち合う約束をするが、英里子は現れず別荘に引き返すと妻と他の2夫婦に囲まれて英里子の死体が横たわっていた。「私が殺したの…」美菜子の言葉に愕然とする俊介をよそに、事件の受験への影響を恐れた親たちが死体を湖に沈め隠蔽工作を図ろうとするのだったが…。本格的推理ドラマを期待すると、謎解き要素は薄くて物足りないかもしれないが、真実が明らかになる瞬間はやはりゾッとする。ラストにルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」を思い起こす方もいるだろう。
 杉田かおるはバラエティ番組より映画の方が似合う。夫婦役の鶴見辰吾とはTVドラマ「金八先生」でも同期だった気がする。