mapio's STREETS OF MOVIE

観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

ゴーストライダー GHOST RIDER

2007年09月29日 | Weblog
監督・原案・脚本:マーク・スティーヴン・ジョンソン
製作:アヴィ・アラッド、マイケル・デ・ルカ、ゲイリー・フォスター
   スティーヴン・ポール
製作総指揮:スタン・リー、ノーマン・ゴライトリー
   デヴィッド・S・ゴイヤー、E・ベネット・ウォルシュ
   アリ・アラッド、リンウッド・スピンクス
撮影:ラッセル・ボイド
プロダクションデザイン:カーク・M・ペトルッチェリ
衣装デザイン:リジー・ガーディナー
編集:リチャード・フランシス=ブルース
音楽:クリストファー・ヤング
出演:ニコラス・ケイジ:ジョニー・ブレイズ/ゴーストライダー
    マット・ロング:少年時代(17歳)のジョニー
    エヴァ・メンデス:ロクサーヌ・シンプソン(ケーブルニュースのレポーター)
    ラクウェル・アレッシ:少女時代(17歳)のロクサーヌ
    ピーター・フォンダ:メフィスト(悪魔/堕天使)
    ウェス・ベントリー:ブラックハート(メフィストの息子)
    ローレンス・ブレラス:グレジル(土のヒドゥン)
    ダニエル・フレデリクソン:ワロウ(水のヒドゥン)
    マシュー・ウィルキンソン:アビゴール(風のヒドゥン)
    サム・エリオット:カーター・スレイド/ケアテイカー(聖ミカエル教会の墓守)
    ブレット・カレン:バートン・ブレイズ(ジョニーの父)
    ドナル・ローグ:ランドール“マック”マッケンジー(バイクチームのチーフ)
2007/米/110   ☆☆☆☆

 「スバイダーマン」を始め、数々の人気シリーズを生み出してきたマーベル・コミックスの長い歴史の中でもひときわ異彩を放つキャラクターで、世代を超えて幾度もブームを巻き起こし、ファンの根強い熱狂的支持を獲得し続けてきた「ゴーストライダー」を遂に実写化したアクション娯楽大作です。長らく映画化が待ち望まれてきた、このクール&バッドテイストのコミック・ヒーローが、『スパイダーマン1,2,3』を手がけたソニー・ピクチャーズイメージワークスの最先端VFXと、豪華キャストを得て、遂にスクリーンに日の目を見ました。悪魔に魂を売り渡し、苦悩する男の戦いの日々を綴ります。バイク映画の名作『イージー・ライダー』のピーター・フォンダを悪魔役で登場させるなどの心憎い演出もあります。最高のバイク特撮アクションと、個性的な登場人物たちが魅力的な一篇です。
 主演は『ナショナル・トレジャー』『ワールド・トレード・センター』のニコラス・ケイジ。自称コミックファンで「一番やりたかったキャラクター」と公言してはばからないオスカー俳優ニコラス・ケイジがゴーストライダー/ジョニー・ブレイズ役で念願の人間臭いダークヒーローを熱演して楽しませてくれます。
『最後の恋のはじめ方』でブレイクし、無敵のセックス・アピールでハリウッドを代表するラテン系ビューティーとして熱い視線を集めているエヴァ・メンデスは、ジョニーの恋人で物語の鍵を握るロクサーヌ役。敵役ブラックハートには『アメリカン・ビューティ』で英国アカデミー賞にノミネートされた若手演技派ウェス・ベントリー。
 監督は『サイモン・バーチ』で絶賛されたマーク・スティーヴン・ジョンソン。『デアデビル』でも高い評価を得た彼が、自ら映画版用原案・脚本を書き下ろし、再びアメコミ・ヒーロー映画でメガホンを取りました。一時は実現不可能と恩われたプロジェクトに命を吹き込んでみせたのは、ハリウッド最強のプロデューサー達です。製作を務めるのは『スパイダーマン』『X・メン』などを成功へと導き.アメコミ映画ブームの牽引力となってきたアヴィ・アラド、マーベル・コミックス「デスロック」やTVゲーム「鉄拳」の映画化に取り組むスティーヴン・ポール、『ブレイド』シリーズをヒットさせたり『I am Sam/アイ・アム・サム』などクオリティ・ピクチャーも多く手がけるマイケル・デ・ルカ、そして大ヒット作『めぐり逢えたら』を手がけた後、ジョンソン監督と製作会社を設立、『デアデビル』などを製作してきたゲイリー・フォスター。製作総指揮には『キル・ビル』のE・ベネット・ウォルシュ、アメコミ・ ヒーロー映画『アイアンマン』を手がけるアリ・アラド、多くのマーベル製スーパーヒーローの生みの親として知られるマーベル・コミックス名誉チェアマンのスタン・リー、ニコラス・ケイジの製作会社サターン・フィルムズを率いるノーム・ゴライトリー、『ブレイド』シリーズや『バットマン ビギンズ』の脚本家デヴィッド・S・ゴイヤー、『ワイルド・スピードX3/TOKYO DRIFT』のリンウッド・スピンクスが名を連ねます。撮影は『マスター・アンド・コマンダー』でアカデミー賞を受賞したラッセル・ボイド。美術は『トゥーム・レイダー』シリーズを手がけたカーク・M・べトルッチェリ。編集は『ショーシャンクの空に』『セブン』などでアカデミー賞に三度ノミネートされているリチャード・フランシス=ブルース。視覚効果スーパーバイザーは『奇蹟の輝き』でアカデミー賞を受賞したケヴィン・マック。衣装は『プリシラ』でアカデミー賞に輝いたリジー・ガーディナー。音楽は『スバイダーマン3』のクリストファー・ヤング。
 五感を震わすゴーストライダーへの変身、悪魔との壮絶バトル、ヘルバイクのスーパーアクションが目を奪い、愛のために悪魔の使いとなった男と彼を愛した女との激しいドラマが胸を打ちます。
 17歳のスタント・ライダーのジョニー・ブレイズは、父親のバートンと共にスタント・ショーを行い、各地で人気となっていた。次々と危険なスタントに挑戦し、成功させることを生きがいとしている父を尊敬するジョニーにとって、いつか父を越えるのが夢だった。ある日、その父が癌に冒されていることが判明する。ジョニーは肺癌が全身に転移し、死に瀕した父親を治すことを条件に悪魔:メフィストと契約を結んだ。しかしバートンは健康な体になった直後にスタント中の事故で命を落としてしまう。メフィストはバートンの癌を治したが、事故で命を奪ったのだった。メフィストは“お前が必要になった時にまた現れる”と言い残して姿を消す。悲嘆にくれるジョニーは、サーカスも恋人のロクサーヌも捨てて旅に出る。
それから13年が過ぎ、不死身のバイクスタントとして名声を得ていたジョニーは、ケーブルテレビのレポーターとなったロクサーヌと再会する。ロクサーヌはジョニーに取材を申し込むが、ジョニーはロクサーヌをデートに誘う。だが、デートの当日、メフィストがジョニーの前に現れる。なぜならその頃、メフィストの息子:ブラックハートが地上に姿を現し、配下の3体の魔物“隠れしもの(ヒドゥン)”を呼び覚ましたから。彼は父メフィストを倒すため、千の悪しき魂を思うままにすることができる「サン・ヴェンガンザの誓約書」を探していた。悪魔にとって恐るべき力の源泉となる「サン・ヴェンガンザの誓約書」は、その強大な力をメフィストに渡すことを拒んだ先代のゴーストライダーによって何処かに持ち去られ、行方不明となっていたのだ。再びジョニーの前に現れたメフィストは、悪魔の契約からの開放を条件に魔界の反逆者ブラックハートを滅ぼすことを命令する。メフィストにより父の形見のバイク“ハーレー・ダビッドソン・グレイス”とジョニーの肉体を地獄の炎が包み、燃える髑髏の顔を持つゴーストライダーが誕生した。魔界の力を得たジョニーは紅蓮の炎を燃え上がらせて闇を切り裂く“地獄バイク”を駆り、ブラックハート率いる悪魔の軍団を追いつめてゆく。だが朝日を浴び墓地で倒れたジョニーを介抱したのは、墓守人のケアテイカーであった。ケアテイカーは、ジョニーが悪魔に魂を握られたバウンティー・ハンター(賞金の為に罪人を追う者)のゴーストライダーであると教え、その運命に従えと告げる。かつてのゴーストライダー、カーター・スレイドと同じように…。
街に戻ったジョニーは、前夜の行動を咎められ警察に逮捕される。留置場で悪党に囲まれたジョニーはゴーストライダーとなり、警察から逃げ出す。警察はその後を追うが、ゴーストライダーは炎を吹き上げるバイクに乗って逃走する。その現場を取材するロクサーヌの姿を目に留めたブラックハートは、自らの野望を実現するための生賛として、彼女をエサにゴーストライダーをおびき出そうとする。ロクサーヌがさらわれたと知ったジョニーは、ケアテイカーの先導で、対決の地、サン・ヴェンガンザに向かう…。
 まず感じるのは、若い頃のジョニーとロクサーヌは新鮮で他のマーベル映画のキャラクター設定を踏襲しているのに、13年経った位で別人に変わってしまってる事です。ニコラス・ケイジは若づくりして頑張っていたと思うけど、ちょっとアメコミヒーローに向いてないかも。彼のことが大好きな方は、そのミスマッチ感が良いと思うのでしょうが、そうでなかったら「このオヤジがヒーロー」って感じもします。足は長くてバイクもすごく似合うけど、顔見たら、とても肉体派には見えなくて、疲れたオヤジ役とかぴったりな顔で、でも脱ぐと、がっちりムキムキの身体で、腹筋が割れていて、鍛え上げたボディーに感心するシーンなのか、笑うところなのかよく分からなくなります。
 あとゴーストライダー最大の武器である“贖罪の目(ペナンス・ステア)”。燃える眼窩を見つめると、自らが犯した全ての悪事と他人に与えた全ての苦痛が本人に舞い戻り、過去の罪を悔い改めさせるけど悪魔のように魂を持たない相手には効き目が無い。これは接近戦でないと意味無いのかな。それと父の形見のバイクが、ゴーストライダーの変身に感応して、炎の車輪を持ち、車体各部から炎を吹き上げる姿に変化するヘルバイクですが、走る度にいろんなもん爆破したり、道路を熱で切り裂いたり全然関係ない所で派手過ぎです(笑)(日本の怪獣ヒーローモノも、ウルトラマンみたいに必要以上に街を無駄に破壊しまくりますが)。
 音楽はカーペンターズが使われてたのが印象深かったです。時代を感じて、クスッと笑ってしまう感じ。
 最後に炎の馬に乗った150年前の先輩ゴーストライダーが、何で決戦の前に帰ってしまったのか理解し辛かったですが、終わり方からすると2作目がありそうです。

タクシーNY

2007年09月25日 | Weblog
監督: ティム・ストーリー
製作: リュック・ベッソン
製作総指揮: アイラ・シューマン
    ロバート・シモンズ
脚本: トーマス・レノン
    ロバート・ベン・ガラント
    ジム・カウフ
撮影: ヴァンス・バーバリー
音楽: クリストフ・ベック
出演: クイーン・ラティファ
ジミー・ファロン
ベン・ソムボハールト
ジェニファー・エスポジート
アン・マーグレット
ジゼル・ブンチェン
ジェニファー・エスポジート
 ヘンリー・シモンズ
☆☆☆   2004/米=仏/97mins.

TAXI NY(タクシー・ニューヨーク)はフランス発のアクション・コメディ『TAXi』が、ニューヨークに舞台を移してハリウッド版として完全リメイクされた作品です。米国公開原題はTAXI。オリジナルの脚本・製作を務めたリュック・ベッソンが、プロデュースと原案を担当しているものの設定や物語は別物です。主演の、違反だらけでも憎めないドライバーは、本作では女性に設定され『シカゴ』のクイーン・ラティファがパワフルに演じています。また運転できない敏腕刑事にはコメディ・スターのジミー・ファロンが扮し、ラティファとのデコボコな掛け合いを披露します。リメイク版として、どうしてもオリジナリティには欠けるが、黄色い改造キャブが街を駆け抜ける面白さは味わえます。強盗団のリーダーには、スーパーモデルであり、かってレオナルド・ディカプリオの恋人として名を馳せたジゼル・ブンチェン(不安定な一時期は、後のブリトニー・スピアーズのように髪を剃ってしまった程の行動派)が扮し、本格的映画デビューを果しています。疾走するクラウン・ビクトリアはオリジナル版同様、迫力満点です。『TAXi』の魅力といえば、何と言ってもその疾走感とアクションの重量感ですが、道路いっぱいに車がひしめき合うマンハッタンを、スーパー改造車が疾走するスリルはなかなかのものです。
 有名なカー・レースでの優勝を目指す女性ドライバーのベル(クイーン・ラティファ)が、念願だったタクシーのライセンスを取得し、自慢の特別仕様のタクシーに乗ってマンハッタンを流していると、街で頻発するセクシー美女4人組の銀行強盗団を追うNY市警の刑事ウォッシュバーン(ジミー・ファロン)が乗り込んでくる。彼は子どもの時のトラウマが原因で車の運転が極度に下手だったため、やむなく犯人追跡にタクシーを利用したのだった。ベルのスーパー・ドライビング・テクニックで強盗団と壮絶なカー・チェイスを繰り広げ、あと一歩のところまで追い詰める2人だったが…。
 オープニングのメッセンジャーであるベルがタイムトライアルするシーンで、まず引き込まれます。その勢いが続けばいい作品だったのですが。ベルとコンビを組むのが敏腕刑事のウォッシュバーン、本当に敏腕なのかをかなり怪しく、車の運転だけは間違いなく猿以下子供レベルです。この映画、お笑い担当がウォッシュバーン刑事のみなんです。対決する強盗団はブラジル人のセクシー4人組みのスーパーレディ。縦列駐車から出るのに、前と後ろの車にバンバン当たりまくるシーンは面白いけれども、ちょっと奇を衒い過ぎではと思います。それは他の登場人物がまとも過ぎて、コメディにしては中途半端に浮いてしまっているからと思います。クイーン・ラティファが元気一杯の好演ですが、二番煎じ感は否めません。

ドリームガールズ DREAMGIRLS

2007年09月22日 | Weblog
監督・脚本:ビル・コンドン(『シカゴ』の脚本家)
製作:ローレンス・マーク
製作総指揮:パトリシア・ウィッチャー
原作:トム・アイン
撮影:トビアス・シュリッスラー
プロダクションデザイン:ジョン・マイヤー
衣装デザイン:シャレン・デイヴィス
編集:ヴァージニア・カッツ
振付:ファティマ・ロビンソン
作詞:トム・アイン
音楽:ヘンリー・クリーガー
音楽スーパーバイザー:ランディ・スペンドラヴ
マット・サリヴァン

出演:ジェイミー・フォックス:カーティス・テイラーJr.
ビヨンセ・ノウルズ:ディーナ・ジョーンズ
エディ・マーフィ:ジェームス・“サンダー”・アーリー
ジェニファー・ハドソン:エフィー・ホワイト
アニカ・ノニ・ローズ:ローレル・ロビンソン
ダニー・グローヴァー:マーティー・マディソン
キース・ロビンソン:C.C.ホワイト
シャロン・リール:ミシェル・モリス
ヒントン・バトル:ウェイン
ジョン・リスゴー:ジェリー・ハリス
ロバート・チッチーニ:ニッキー・カッサーロ
ジョン・クラシンスキー
2006/米/130mins.    ☆☆☆☆★

 60年代から70年代のモータウン・サウンド隆盛期を背景に、女性ボーカル・グループ”ドリーメッツ”が、時代を代表するスーパースター”ザ・ドリームズ”になるまでを描く、エンターテインメント・ムービー。
 オリジナルは1981年12月20日、ニューヨークのブロードウェイにあるインペリアル・シアターでオープニングを迎え、連日、スタンディング・オベーションによる喝采を浴びたマイケル・ベネット演出による伝説のミュージカル「ドリームガールズ」です。ブロードウェイ・ミュージカル史上燦然と輝くこのショーは、4年間に渡り1522回の公演を記録、その後、全米各地や日本を含む世界各国で上演され、82年にはトニー賞の13部門ノミネート、6部門受賞となる快挙を成し遂げました。
 そのミュージカルの映画化である『ドリームガールズ』は第64回ゴールデン・グローブ賞にて作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、助演男優賞(エディ・マーフィ)、助演女優賞(ジェニファー・ハドソン)の主要3部門を受賞。また第79回アカデミー賞にて助演男優賞(エディ・マーフィ)、助演女優賞(ジェニファー・ハドソン)、美術賞、衣装デザイン賞、歌曲賞(リッスン/ラブ・ユー・アイ・ドゥ/ペイシェンス)、録音賞と、本年度最多の、6部門8ノミネート。
 オリジナルの舞台が上演された年に生まれたビヨンセは、母親からいつも「ドリームガールズ」の素晴らしさを聞かされて育ちました。時代に求められる歌手ディーナ役は、まさに彼女に演じられる為にありました。10キロの減量に挑み、憧れのダイアナ・ロスに会って、この役に挑んだそうです。当代きってのディーバが「リッスン」を熱唱するクライマックスは圧巻です。
 そして、ビヨンセを超える存在感、圧倒的歌唱力と迫真の演技を披露するのが新人ジェニファー・ハドソンです。実力と自信に満ち溢れながらも時代や仲間と折り合いが付かず、孤独な人生を歩まざるを得ないエフィー役を熱演します。
 やり手であったが為に反面、ビジネスの悪の部分に手を染めてしまうマネージャー、カーティス役は『Ray/レイ』でアカデミー主演男優賞に輝くジェイミー・フォックス。時代を象徴し、時代にとり残されるベテランシンガー、ジェームス・“サンダー”・アーリーをパワフルかつ切なく演じるエディ・マーフィ。さらにベテラン・マネージャーのマーティ役に名優ダニー・グローバー、ザ・ドリームズのメンバー、ローレル役にトニー賞受賞のアニカ・ノニ・ローズなど、超一流キャストが最高のパフォーマンスで迫ります。
 1962年アメリカの自動車産業の中心地、デトロイトで遥かな未来に夢を馳せる三人のハイティーンの少女達がいた。彼女らの名前はエフィー・ホワイト(ジェニファー・ハドソン)、ローレル・ロビンソン(アニカ・ノニ・ローズ)、そしてディーナ・ジョーンス(ビヨンセ・ノウルズ)。“ドリーメッツ”というトリオを組み、音楽で成功すること、その夢を追いかけるため、今日もデトロイト・シアターの公開での新人オーディション・イベントに参加していた。  その様子に舞台裏から熱い視線を送る男がいた。中古車販売会社を経営するカーティス・テイラーJr.(ジェイミー・フォックス)は、扱う商品を自動車からサウンドに持ち替える機会を虎視眈々と狙っていた。そして彼はドリーメッツという原石を見つける。「君らに必要なのはアマチュア相手のコンテストじゃない、チャンスだ。それをもたらすことの出来る俺のような男だ」と三人の前で熱弁をふるうカーティス。その裏にはしたたかな計算があった。デトロイト・シアターで抜群の人気を誇るジェームズ・“サンダー”・アーリー(エディ・マーフィ)がバック・コーラスを探しているという情報を彼は知っていたのだった。  ショー・ビジネスの片隅に参加できるこのチャンスに、ディーナとローレルは歓喜の声を上げる中、唯一人エフィーだけが私たちの夢はステージの真ん中に立つことだと反対するが、仲間の説得と夢にまで見た世界への誘惑には勝てない。何より出口の見えない現実から抜け出る唯一のチャンスかもしれない、そして彼らの快進撃が始まった。ジミー・アーリー&ドリーメッツのパワフルなステージングと楽曲はデトロイトの若者のみならず、全米の注目を一気に集め、レコードセールスでも、黒人アーティストがランクインすることのないポップスのヒットチャート入りを果たした。そして、ベテランマネージャーのカーティス(ダニー・ グローヴァー)からジミー・アーリーのマネージメント権を奪ったカーティスは勝負に出た。残った車を叩き売り、自らのレーベルである”レインボー・レコード”を立ち上げたのだ…。
 同じタイプの映画「ザ・コミットメンツ」(アラン・パーカー監督)を思い起こしました。あっちの方がリアリティがあるかな。

リクルート THE RECRUIT

2007年09月17日 | Weblog
監督: ロジャー・ドナルドソン
製作: ジェフ・アップル
   ゲイリー・バーバー
   ロジャー・バーンバウム
製作総指揮: ジョナサン・グリックマン
   リック・キドニー
脚本: ロジャー・タウン
   カート・ウィマー
   ミッチ・グレイザー
撮影: スチュアート・ドライバーグ
編集: デヴィッド・ローゼンブルーム
音楽: クラウス・バデルト

出演: アル・パチーノ:ウォルター・バーク
   コリン・ファレル:ジェイムズ・クレイトン
   ブリジット・モイナハン:レイラ・ムーア
   ガブリエル・マクト:ザック
   ユージン・リピンスキ:ハスキー
   ケン・ミッチェル:アラン
   クリス・オーウェンズ
2003/米/115mins.    ☆☆☆★

 CIAのリクルート活動とスパイ養成を題材にしたサスペンス。CIAにスカウトされたエリート学生が、過酷な訓練の過程で張り巡らされた数々の罠と、背後に蠢く陰謀に悩み、翻弄されていく姿をスリリングかつトリッキーに描いています。実際にCIAスポークスマンの協力を得て、複雑な新人採用のプロセスや育成の方法といったCIAの知られざる内幕をリアルに描写してます。主演は、名優アル・パチーノと、注目の若手「マイノリティ・リポート」「フォーン・ブース」のコリン・ファレル。監督は「カクテル」「13デイズ」のロジャー・ドナルドソン。
 マサチューセッツ工科大学の学生ジェームズ・クレイトン(コリン・ファレル)は、その優秀な成績から、卒業後の進路もPCメーカーから特別に誘いを受けるなどエリート街道を約束されていた。ジェームズはある日、アルバイト先のバーでCIAの首席教官であるウォルター・バーク(アル・パチーノ)にリクルートされる。バークはジェイムズに関する情報を全て調べ上げたうえ、その能力を見込んで採用するために訪れたのだった。ジェームズは、父の死の謎がCIAにあることを知り、この申し出を受ける。特別施設に集められたジェームズたちは、過酷な現場訓練と心理操作を叩き込まれていく。やがて彼は、訓練生のレイラと心を通わせるが、バークの仕組んだ拷問に屈したため訓練から外される。これは、ジェームズを秘密工作員に仕立てるための偽装。そして最初の任務は、二重スパイの容疑がかかるレイラの監視だった…。
 興奮するスパイ映画は数あれど、本作はスパイ養成の時点というよりスパイへの勧誘の時点からハラハラさせられる、徹底的なサスペンスです。秀才のジェームズとベテラン教官バークの出会いから、何を信じていいのかわからないスリルに満ちています。果たして、CIAの新人採用はどのように行われているのか? 秘密工作員はどんな風に育てられるのか? 現実には、映画の中に登場する特別訓練所「ファーム」の存在も、その中身も明確にされていないが、『リクルート』では、これまでベールに隠されてきたエージェントの訓練施設を、CIAの全面的な協力のもとリアルに映し出しています。
 幾重にも仕掛けられたトリックを潜り抜けるのは誰か? 役者たちの間にも緊張感が張り詰めています。特に、ベテランの風格で隙なく行動していくアル・パチーノ、惑わされながらも鋭い勘を発揮していくコリン・ファレルという図式は、ストーリーの上でも演技の上でも効果的に表されていたようです。
 前半は、CIA(だけではないと思いますが)がどうやって新入社員を採用し、育てるのか、その過程をじっくり見せてくれます。よく考えると絶対あり得ないような…いえ、きっとスパイたちはこんなにも厳しいOJTをやっているのだ! 何せ本物のCIA広報部が、「映画史上、もっとも正確にわが組織を描いた作品だ」とまで語ったそうだから、ここは彼らを信じきって見ましょう。
 サスペンスとしての出来は平凡ですが、二転三転する意外な結末はなかなか。なにより題材選びが秀逸です。CIAに興味がある方なら、より楽しめるでしょう。

ソウ2 SAW II

2007年09月14日 | Weblog
監督: ダーレン・リン・バウズマン
製作: マーク・バーグ
グレッグ・ホフマン
オーレン・クールズ
製作総指揮: ジェームズ・ワン
リー・ワネル
ピーター・ブロック
ジェイソン・コンスタンティン
ステイシー・テストロ
脚本: ダーレン・リン・バウズマン
リー・ワネル
撮影: デヴィッド・A・アームストロング
キット・ホイットモア
プロダクションデザイン: デヴィッド・ハックル
編集: ケヴィン・グルタート

出演: ドニー・ウォールバーグ :エリック・マシューズ
ショウニー・スミス :アマンダ
トビン・ベル :ジグソウ
フランキー・G :ザヴィエル
グレン・プラマー :ジョナス
ディナ・メイヤー :ケリー
エマニュエル・ヴォージア :アディソン
ビヴァリー・ミッチェル :ローラ
エリック・ナドセン :ダニエル
ティム・バード
トニー・ナッポ
ノーム・ジェンキンス
(2005/米/100mins.)  ☆☆☆☆

 低予算にもかかわらず、斬新なアイデアと巧みなストーリー展開が評判を呼び、世界的に大ヒットしたサスペンス・スリラーの続編です。ある共通点をもとに出口のない家に監禁された者たちが、凶悪犯“ジグソウ”の仕掛けた残酷な“ゲーム”の数々に翻弄され、逃げ場のない死の恐怖を体感していきます。前作で監督・脚本を担当したジェームズ・ワンとリー・ワネルのコンビは製作総指揮に回り、新たに新鋭ダーレン・リン・バウズマンがメガフォンを取ってます。
 元々は荒くれ刑事で今は内勤に甘んじているエリック。彼はある日、猟奇的連続殺人犯ジグソウを執拗に追う女刑事ケリーに呼び出され、凄惨極まりない殺人現場に立ち会う。その残忍な手口から、これもジグソウの仕業に違いないと思われた。しかも死体はエリックが使っていた情報屋、マイケルだった。犯人が現場に残したヒントから、エリックはアジトを推測、SWAT、ケリーとともに急行する。案の定、そこにいたジグソウは、思いがけずあっけなく捕まったが、それはジグソウが仕掛けた新たなゲームの始まりに過ぎなかった。その部屋に設置されたモニターには、どこかの部屋に監禁された男女8人が写っており、その中にはエリックの息子ダニエルも閉じこめられていたのだった…。
 100分を感じさせない展開の脚本に脱帽します。暇な時、スリルを味わうのにもってこいの一篇。

ヤマカシ Yamakasi

2007年09月06日 | Weblog
監督:Ariel Zeitoun アリエル・ゼイトゥン
製作:Didier Hoarau ディディエ・オアラウ 
製作総指揮:Virginie Silla ヴィルジニー・シラ
原案:Charles Perriere シャルル・ペリエール
Luc Besson リュック・ベッソン
脚本:Luc Besson リュック・ベッソン
Philippe Lyon フィリップ・リヨン
Julien Seri ジュリアン・セリ
撮影:Philippe Piffeteau フィリップ・ピフトー
音楽:Joeystarr et DJ Spank ジョーイスター・アンド・ディージェイ・スパンク
美術:Frederic & Caroline Duru フレデリック・アンド・キャロリーヌ・デュリュ
Fred & Fred Lapierre フレッド・アンド・フレッド・ラピエール
衣装(デザイン):Olivier Beroit オリヴィエ・ベロワ
キャスト:
Chau Belle Dinn チョウ・ベル・ディン (Baseball)
Williams Belle ウイリアムス・ベル (L'Aragnee)
Malik Diouf マリク・ディウフ (La Blette)
Yann Hnautra ヤン・ノウトゥラ (Zicmu)
Guylain N'Guba Boyeke ギレイン・ヌグバ・ボイェケ (Rocket)
Charles Perriere シャルル・ペリエール (Sitting Bull)
Laurent Piemontesi ロラン・ピエモンテージ (Tango)
Maher Kamoin マエル・カモウン (Vincent)
Bruno Flender ブリュノ・フランデル (Michelin)
Afida Tahri アフィダ・ターリ (Fatima)
Amel Djemel アメル・ディアメル (Aila)
Nassim Faid ナッシム・ファイド (Djamel)
Frederic Pellegeay フレディク・ペレジェ (Fretin)
Gerarld Morales ジェラルド・モラレス (Medicin Chef Le Trong)
Pascal Leger パスカル・レジェ (Commissaire Orsini)
2001/仏/97min. ☆☆☆★

 「ジャンヌ・ダルク」などの監督として知られるリュック・ベッソンが脚本・製作総指揮を担当して実在のストリート・パフォーマンス集団“YAMAKASI”をフィーチャーして製作した異色のアクション・アドベンチャー映画です。あるテレビ番組でヤマカシの存在を知ったベッソンが、映画『TAXi2』の忍者役に彼らを使ったのが両者のつながりの発端。その後、彼ら自身を主役にした映画を作ろうと考えるのに時間はかからなかったようです。監督は新人のアリエル・ゼトゥン。本作はリュック・ベッソンが設立した会社、ヨーロッパ・コープの第1作目。音楽はフランス ヒップホップ界の象徴であるシュプレームNTMのジョーイスターと、彼の相棒DJスパンク。
 PUMAのウェアとシューズを身にまとう7人の若者集団YAMAKASI。リーダー格のブル(シャルル・ペリエール)を筆頭に驚異的な運動能力と恐れを知らない冒険心でパリの街中で高層ビルを昇り降りする彼らは、警察の目の敵であり、パリっ子たちの憧れだった。だがある日、心臓に疾患を持ちながら彼らを真似た少年ジャメル(ナッシム・ファイド)が高所から転落し24時間以内に大手術が必要な重傷を負う。ドナーの手配はしたものの、臓器輸送の実費は家族の負担になる。少年の家族にはとてもそんな金は払えない。「貧乏人に死ねという世の中は間違っている」と憤慨するヤマカシのメンバーたちは、国の医療行政を取り仕切り、40万フランをそろえない限りジャメルの手術を行なわない、と言い張る病院の理事会メンバーの家から費用をかき集めようと決意。順調に計画を進めていくYAMAKASIだったが、その姿をある屋敷の監視カメラにとらえられ、警察にマークされはじめる。刑事でありながら彼らの気持ちを理解しているヴァンサン(マエル・カモウン)は、このままじゃ逮捕もやむを得ないとブルに警告。しかし彼らは後に退くことをせず、最後の目的地である厚生参事官邸へ。ヴァンサンの通報で彼らは警察に囲まれ、絶体絶命の危機に立たされる。だが口裏を合わせてそれを切り抜け、見事にジャメルを救うのだった。
 映画に登場するヤマカシは、幼なじみ7人組によるストリート・パフォーマンス・チームという部分こそ実際の彼らと同じだが、個々のキャラクター設定などは映画用に随分と脚色されているし、物語も当然フィクション。しかし映画の中で演じられている飛んだり跳ねたりのパフォーマンスそのものは、日頃から訓練を積んでいるヤマカシ7人が体を張って披露している正真正銘の本物です。準備段階ではさまざまな安全策を講じたそうだが、いざ本番となると命綱なしで高いビルをすいすいよじ登り、フェンスを飛び越え、ビルとビルの間をジャンプし、獰猛な犬たちと追いかけっこをしたそうです。
 ベッソンの映画は同時期にジェット・リー主演の『キス・オブ・ザ・ドラゴン』も劇場公開されたが、2本の映画の共通点は、肉体的に鍛練を積んだ人間がトリックなしで本物のアクションを見せるという部分です。ハリウッド資本の下でSFXたっぷりの映画も作っているベッソンだが、この2本の映画では「観客を本当に驚かせるのはCGではなく生身のアクションだ」というメッセージが聞こえてくるようでした。
 警官隊から延々逃げ続けるヤマカシたちが、建物の中と外を自由に往来する様子は、ツイ・ハークの映画みたいですが、こっちはトリックなしの本物です。