mapio's STREETS OF MOVIE

観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

閉ざされた森 BASIC

2008年06月21日 | Weblog
監督:ジョン・マクティアナン
製作:マイク・ミダヴォイ
    アーノルド・メサー
    マイケル・タドロス
    ジェームズ・ヴァンダビルト
製作総指揮:モリッツ・ボーマン
    ベイジル・イワニク
    ジョナサン・D・クレイン
    ナイジェル・シンクレア
脚本:ジェームズ・ヴァンダビルト
撮影:スティーヴ・メイソン
音楽:クラウス・バレルト
出演:ジョン・トラヴォルタ:トム・ハーディ『ママの遺したラヴソング』
    コニー・ニールセン:ジュリア・オズボーン警部補
    サミュエル・L・ジャクソン:ネイザン・ウェスト軍曹
    ティモシー・デイリー:ビル・スタイルズ大佐
    ジョヴァンニ・リビシ:リーヴァイ・ケンドール『コールド マウンテン』
    ブライアン・ヴァン・ホルト:レイモンド・ダンバー『蝋人形の館』
    テイ・ディグス:パイク『シカゴ』
    ダッシュ・ミホク:ミューラー『ロミオ&ジュリエット』
    クリスチャン・デ・ラ・フェンテ:カストロ
    ハリー・コニック・Jr:ピート・ヴィルマー博士
    ロセリン・サンチェス:女性兵士ニューネス
    マーガレット・トラヴォルタ(ジョン・トラヴォルタの姉):看護婦『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
    クリフ・フレミング:ヘリコプターのパイロット『悪いことしましョ!』
2003/米/93min.   ☆☆☆☆

 『閉ざされた森』は『ダイ・ハード』『レッド・オクトーバーを追え!』のジョン・マクティアナン監督が初めて挑んだサスペンス大作です。熱帯雨林のジャングルで起きたレンジャー隊教官殺人事件の謎が、マクティアナン作品らしいダイナミックでハイテンションな映像で描かれてゆきます。ひとつの証言が前の証言を覆し、その度に異なるバージョンの“真相”が展開されてゆくという、黒澤明の『羅生門』の伝統を引くスタイルを、マクティアナン監督がどう自己流にアレンジしているかが見どころです。ラストの大どんでん返しは『氷の微笑』『シックス・センス』を超える驚きと『スティング』に通じる爽快感を約束します。観終わった後、真実を確かめるため、そしてなおも未解決の謎にチャレンジするために、もう一度、観直さずにはいられない作品です。難事件に挑む探偵役の女性大尉オズボーンをクールに演じるのは『 ミッション・トゥ・マーズ』『グラディエ一夕ー』のコニー・ニールセン。彼女に協力するため外部から呼ばれる尋問のエキスパート、元レンジャー隊員のハーディに、減量で見違えるほど体を絞ったジョン・トラボルタ。彼が復活を遂げた『パルプ・フィクション』で相手役を務めていたサミュエル・L・ジャクソンは、サディスティックな教官のウエスト軍曹役で、同作以来のトラボルタとの共演を果たしています。嵐のジャングルの困難な撮影に挑んだのは『ダンシング・ヒーロー』『タップ・ドッグス』の撮影監督スティーヴ・メイソン。ロケ地に熱帯雨林をゼロから作り上げたプロダクション・デザイナーは『ディアボロス―悪魔の扉―』『ディープ・インパクト』で美術監督として腕をふるったデニス・ブラッドフォード。衣装デザインは『トーマス・クラウン・アフェアー』『ローラーボール』のケイト・ハリントン。誰が誰をどうしたかという供述がみんな違って真実が分からないという話は、黒澤明監督の『羅生門 (1950)RASHOMON』に原型があると、アメリカでは複数のメディアが意見を同じにしています。日本の名作映画『 羅生門 』は故・黒澤明氏の監督・脚本で、芥川龍之介の小説 「藪の中」が原作です。芥川龍之介の小説「羅生門」を少しだけ加えた内容で、タイトルとして『ラショウモン』の響きは海外でも覚えやすく、ストーリーと映像美は世界の映画人を衝撃的に魅了しました。事実、1951年度ヴェネチア国際映画祭 金獅子賞を受け、その名はいまだに世界中の知識人の間で輝いています。
 ジュリー・オズボーン大尉(コニー・ニールセン)にとって、それは長い夜の始まりだった。昨夜、彼女が所属するパナマの米軍クレイトン基地から密林での訓練に出た米軍レンジャー隊が、ハリケーンによる風雨の中、嵐の森で消息を絶った。17時間後、3名が発見されるが、彼らはなぜか味方同士で撃ち合い、捜索ヘリの目の前で1名が殺された。救助された2名のうち、ひとりは重傷、ひとりはオズボーン大尉の尋問に対してかたくなに黙秘を続けている。訓練を率いたウエスト軍曹(サミュエル・L・ジャクソン)を含め、なお4名の行方がわからない中、オズボーン大尉の上官スタイルズ大佐(ティム・デイリー)は、非公式にひとりの男を呼び寄せた。麻薬取締局捜査官トム・ハーディ(ジョン・トラヴォルタ)は、元レンジャー隊員。最近、麻薬組織に買収された容疑を受け、待機処分中の身である。スタイルズ大佐が現在は軍属でないハーディに頼ることにした理由は、ひとつには彼の尋問の腕を見込んでのこと。そしてもうひとつは、ハーディ自身、ウエストの訓練を受けた過去を持っていたからだった。だが、本来なら軍の中のことは軍の担当官がやるべきことであり、その担当者であるジュリー・オズボーン大尉は部外者であるハーディに不本意な気分をあらわにしながらも、現況を説明すると、彼の方法に従って生還した2名の尋問を開始した。やがてウエスト軍曹と兵士との間の感情的対立と、森でのサミュエル・L・ジャクソン演じる憎たらしい鬼軍曹ウエストの不可解な死、そして誰が殺人犯かをめぐって争う兵士たちの動揺が明らかになってゆく。しかし肝心な部分で、2名の証言は矛盾する。どちらかが嘘をついているのか、あるいは共同謀議なのか。新たな事実が浮かび上がっては、ストーリーが二転三転する中、ハーディに反発し、あくまで真実を追求しようとするオズボーン。彼女が最後にたどりついた密林の中の“真実”とは。生還した2名が示した“8"のナンバーが意味するものは。果たして森の奥深くで、7人の兵士たちの間に何が起きたのか。閉ざされた森の中の回想シーンと現在の光景が入れ替わりに映し出される。トラボルタ演じるハーディのいい加減なくせに、魅力的な雰囲気、オズボーン大尉の冷静さ、ウエスト軍曹の憎たらしさ、出演者の魅力が溢れかえって最後まで引き込まれてしまいます。

ラブソングができるまで MUSIC AND LYRICS

2008年06月14日 | Weblog
監督/脚本:マーク・ローレンス 
製作:マーティン・シェイファー、リズ・グロッツァー 
製作総指揮:ナンシー・ジュボーネン、ハル・ギャバ、ブルース・バーマン 
共同製作:スコット・イライアス、メリッサ・ウェルズ
撮影:ハビエル・ペレス・グロベット 
美術:ジェーン・マスキー 
編集:スーザン・E・モース、A.C.E. 
音楽:アダム・シュレシンジャー 
出演:
ヒュー・グラント (アレックス・フレッチャー)
1980年代に一世を風靡したバンド、PoPの元ボーカル。バンドが解散してからは、PoPのもう一人のボーカル・コリンが成功する一方で"PoPの元ボーカル"という肩書きから変化が無く、ナッツベリーなどの遊園地や同窓会のイベントで巡業をしている。
ドリュー・バリモア (ソフィー・フィッシャー)
姉と痩身ビジネスをしている。アレックスの雇っている植木の世話係の代理で部屋に来た時に作詞の才能をアレックスに見出され、一緒に曲を作ることになる。
ヘイリー・ベネット (コーラ・コーマン)
人気歌手でアレックスに新曲の作成を依頼する。ブリトニー以上のスター。
ブラッド・ギャレット (クリス・ライリー)
アレックスのマネージャー。
クリステン・ジョンストン (ローンダ)
ソフィーの姉。アレックスの大ファン。
キャンベル・スコット (スローアン・ケイツ)
ソフィーが行っていた大学の文芸講座の講師。ソフィーと交際していたが、婚約者が帰国したため修羅場となり別れる。1年後ソフィーとの交際を書いた本『サリー・マイケルズ』がベストセラーとなる。
2006/米/104min.  ☆☆☆☆☆

 80年代に人気絶頂だった元ポップスターと失恋で書くことをやめてしまった作家志望の女性が、ラブソングを作ることになる王道的ラブコメディ。『ブリジット・ジョーンズの日記』『ラブ・アクチュアリー』のヒュー・グラントがワム!のアンドリュー・リッジリーを彷佛させる元ポップスター役を、『チャーリーズ・エンジェル』のドリュー・バリモアが作家志望の女性を演じ、初共演しています。家族や周囲の人々を含めた日常の描写を含め、二人の魅力を活かしきった監督は『デンジャラス・ビューティー』の脚本を手がけ、ヒュー・グラント主演の長編『トゥー・ウィークス・ノーティス』でデビューし、監督兼脚本を務めたマーク・ローレンス。冒頭からノリノリで、あの頃に流行ったミュージックビデオそのものに、歌い踊りまくるヒュー・グラントの姿(何と言ってもいちばんの見どころ!)に喝采を浴びせずにはいられません。歌もダンスも初挑戦という彼が、衣装も髪型も微妙な80年代の装いで歌って踊り、“愉快な腰の振り方”も完全にマスター。弾けなかったピアノにも果敢に挑み、「自分でも惚れ惚れするような」弾き語りを披露してます。そこで十分に見る側のテンションを上げておき、落ちぶれたしがない中年男とちょっとエキセントリックな女の子の、恋の芽生えを展開させます。ふたりの恋とラブソングができていく過程がシンクロして最後まで観客のテンションを下げず、ラストのホロリ感動にまで引っ張ってくれます。デビー・ギブソン、ティファニー、スモーキー・ロビンソン、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドなんて懐かしい名前であの頃に引き戻されます。冒頭にその80年代バンド“POP”のプロモーションビデオが流れますが、これがワム! とデュラン・デュランを足して2で割ったようなチープで陳腐なポップバンドで、しかもリック・アストリーの"Never Gonna Give You Up"みたいな歌を歌っていて笑えます。でも観終わった後に口ずさんでしまいそう♪是非是非お薦めの1篇です。
 ところで、アレックスのマネージャーがコーラ・コーマンを紹介する時に「この世界でブリトニーや、クリスティーナ・アギレラよりもビッグなスター…。」と言いますが、この台詞の字幕は「この世界でブリトニーよりもビッグなスター…。」とクリスティーナ・アギレラを省略していて不満に感じました。比較するスケールが全然変わってしまうので残念です。因みにクリスティーナだけセカンド・ネームを言ったのは、同時期に活躍したクリスティーナ・ミリアンを意識しての事と思われます。

 82年、M.ジャクソン「スリラー」をリリース。83年、マドンナ鮮烈デビュー。84年、人気絶頂の5人組バンドPoP、熱狂のワールドツアーを敢行。ダブルボーカルのひとり、コリンは、その後ソロ・アーティストとして活躍し、グラミー賞、アカデミー賞を受賞したばかりか、ハリウッドの殿堂入りも果たし、おまけに“サー”の称号まで手に入れた。では、もうひとりのボーカル、アレックス・フレッチャー(ヒュー・グラント)はどうなったのか?彼もコリンに続いてソロ・デビューをしたのだが、解散後に発売したソロアルバムが泣かず飛ばず、今やすっかり「あの人は今」グループの仲間入り。80年代を懐かしむ元“ギャル”たちが集まる小さなイベントに時折お呼びがかかるものの、その手の仕事も減る一方のジリ貧状態。そんなアレックスのもとに、返り咲きのチャンスが訪れた。当代きってのインドかぶれエロエロカリスマ歌姫、コーラ・コーマン(ヘイリー・ベネット)から、新曲を提供してほしいというオファーが入る。最近カレと別れたばかりだというコーラは、新曲のタイトルを 「Way Back IntoLove(愛を取り戻す方法)」と指定。コンサートが2週後に迫っているため、曲作りにかけられる時間はほんのわずかしかない。さらに、他にも7 人のアーティストに同じオファーが出されており、彼女が曲を気に入らなければそれでボツ。とはいえ、彼の作曲の才能は長いあいだ放ったらかしにされたまま。しかも、作詞は大の苦手。マネージャーに背中を押され、一流という触れ込みの作詞家とコンビを組んでみたものの、彼とはどうしてもフィーリングが合わない。そんな時、アレックスのアパートに鉢植えの世話に来ていたアルバイトの女性ソフィー・フィッシャー(ドリュー・バリモア)が口ずさんだフレーズが、アレックスのハートにジャストミート。ふだんは姉の経営するダイエット専門店を手伝っているというソフィーは、もともとは有望な作家の卵だったにもかかわらず、失恋の痛手から今は書くことをいっさいやめてしまっていた。彼女をふった元カレは、創作の師でもあった有名作家。実は彼に は婚約者がいたことが発覚したうえ、彼が書いた小説の内容がさらに彼女を傷つけた。主人公は、有名作家を利用してのし上がろうとする才能のない性悪女。その外見や癖がソフィーそっくりに描かれていたのだ。それ以来、何も書けなくなってしまったソフィーは、一緒にラブソングを作ってほしいというアレックスの頼みを断固拒否。それでも彼女の才能を確信するアレックスは、PoPの追っかけだったソフィーの姉も巻き込んでしぶとく説得を続け、ついに彼女の心を動かした。
期限まではあと3日。波乱だらけのラブソング作りはまだ始まったばかり……。

☆80年代ミュージックをテーマにした映画「ラブソングができるまで」。そのサウンドトラックは、まさに80sミュージックの美味しいところが詰め込まれたものに仕上がりました。とはいっても当時流行ったヒット曲を集めたわけではないのです。80sテイストの楽曲をすべてオリジナルで作ったのです。主演のヒュー・グラントが演じるのは80年代に絶大なる人気のあったスーパー・グループ、POPのボーカリスト。そのPOPのかつてのヒット曲という設定の「恋は突然」を聴くだけで、その80sサウンドの秀逸な散りばめ具合には舌を巻いてしまいます。ほかにもワム!、スパンダー・バレエ、ディペッシュ・モードやブロンディなどのテイストを、実に絶妙のパロディ具合で織り交ぜているのはまさに職人技と言えます。このサウンドトラックをプロデュースするのは、グラミー賞にもノミネートされたこともあるファウンテンズ・オブ・ウェインのアダム・シュレシンジャー。ヒュー・グラントのボーカルも素晴らしいので、このアルバムだけでも十分に聴くに値する一枚に仕上がっています。
「愛に戻る道」(Way Back Into Love):ヒュー・グラント、ヘイリー・ベネット
映画はアレックスとソフィーがこの曲を作り上げていく過程を軸としている。またこの曲には、ヒュー・グラントとドリュー・バリモアが歌ったバージョンもあり、そちらは、劇中でアレックスがコーラに渡したデモ音源という扱いです。
「恋は突然」(Pop! Goes My Heart):ヒュー・グラント
1984年のPoPのヒット曲という設定で、曲だけでなく1980年代風の安っぽく、下手な芝居のドラマが混ざったPVも製作されました。これについてヒュー・グラントはデュラン・デュランを参考にしたとメイキングで語っています。
原題のMusic and lyricsは直訳すると「楽曲と歌詞」という意味である。
■本サントラでは、ヒュー・グラントのヴォーカルが大フィーチャー!ヒューが演じるのは、80年代のスーパー・ポップ・グループ:POPのヴォーカル:アレックス・フレッチャー。そしてそのPOPが大ヒットさせたという設定のポップ・ソング「恋は突然」に始まり、ワム/ジョージ・マイケルやスパンダー・バレエ、ディペッシュ・モードやブロンディ等のビッグ・ヒット曲の、極めて良心的なパロディ的要素が、見事に各収録曲に反映されています。また、この映画のハイライトともいえるバラード「愛に戻る道」は、2007年のベスト・ソングという声も高い、シンプルながら心に響く名曲です。この曲のソングライティングを始め、サントラのBAND-3,9はアダム・シュレシンジャー(ファウンテンズ・オブ・ウェイン)が書き下ろしています。かつ、彼はサントラのアルバム・プロデューサーも勤めており、アダムの卓越したポップ・センスが全編を貫き、心温まるサントラに仕上がっています。
ちなみにこのサントラは、アメリカのiTunesでは、映画公開直後から大反響で、iTunesの総合アルバム・チャートでナンバーワンを記録する大ヒットとなりました。
01. 恋は突然/POP! GOES MY HEART/ヒュー・グラント
02. ブッダの悦び/BUDDHA'S DELIGHT/ハーレイ・ベネット
03. ミーニングレス・キッス/MEANINGLESS KISS/ヒュー・グラント
04. エンターリング・ブーツィータウン/ENTERING BOOTYTOWN/ハーレイ・ベネット
05. 愛に戻る道(デモ・ヴァージョン)/WAY BACK INTO LOVE(DEMO VERSION)/ヒュー・グラント&ドリュー・バリモア
06. トニー・ザ・ビート/TONY THE BEAT/ザ・サウンズ
07. 僕と踊って/DANCE WITH ME TONIGHT/ヒュー・グラント
08. スラム/SLAM/ヒュー・グラント
09. ドント・ライト・ミー・オフ/DON'T WRITE ME OFF/ヒュー・グラント
10. 愛に戻る道/WAY BACK INTO LOVE/ヒュー・グラント&ハーレイ・ベネット
11. ディファレント・サウンド/DIFFERENT SOUND/テディベアーズ・フィーチャーリング・マルテ
12. ラヴ・オートプシー/LOVE AUTOPSY/ヒュー・グラント