mapio's STREETS OF MOVIE

観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

閉ざされた森 BASIC

2008年06月21日 | Weblog
監督:ジョン・マクティアナン
製作:マイク・ミダヴォイ
    アーノルド・メサー
    マイケル・タドロス
    ジェームズ・ヴァンダビルト
製作総指揮:モリッツ・ボーマン
    ベイジル・イワニク
    ジョナサン・D・クレイン
    ナイジェル・シンクレア
脚本:ジェームズ・ヴァンダビルト
撮影:スティーヴ・メイソン
音楽:クラウス・バレルト
出演:ジョン・トラヴォルタ:トム・ハーディ『ママの遺したラヴソング』
    コニー・ニールセン:ジュリア・オズボーン警部補
    サミュエル・L・ジャクソン:ネイザン・ウェスト軍曹
    ティモシー・デイリー:ビル・スタイルズ大佐
    ジョヴァンニ・リビシ:リーヴァイ・ケンドール『コールド マウンテン』
    ブライアン・ヴァン・ホルト:レイモンド・ダンバー『蝋人形の館』
    テイ・ディグス:パイク『シカゴ』
    ダッシュ・ミホク:ミューラー『ロミオ&ジュリエット』
    クリスチャン・デ・ラ・フェンテ:カストロ
    ハリー・コニック・Jr:ピート・ヴィルマー博士
    ロセリン・サンチェス:女性兵士ニューネス
    マーガレット・トラヴォルタ(ジョン・トラヴォルタの姉):看護婦『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
    クリフ・フレミング:ヘリコプターのパイロット『悪いことしましョ!』
2003/米/93min.   ☆☆☆☆

 『閉ざされた森』は『ダイ・ハード』『レッド・オクトーバーを追え!』のジョン・マクティアナン監督が初めて挑んだサスペンス大作です。熱帯雨林のジャングルで起きたレンジャー隊教官殺人事件の謎が、マクティアナン作品らしいダイナミックでハイテンションな映像で描かれてゆきます。ひとつの証言が前の証言を覆し、その度に異なるバージョンの“真相”が展開されてゆくという、黒澤明の『羅生門』の伝統を引くスタイルを、マクティアナン監督がどう自己流にアレンジしているかが見どころです。ラストの大どんでん返しは『氷の微笑』『シックス・センス』を超える驚きと『スティング』に通じる爽快感を約束します。観終わった後、真実を確かめるため、そしてなおも未解決の謎にチャレンジするために、もう一度、観直さずにはいられない作品です。難事件に挑む探偵役の女性大尉オズボーンをクールに演じるのは『 ミッション・トゥ・マーズ』『グラディエ一夕ー』のコニー・ニールセン。彼女に協力するため外部から呼ばれる尋問のエキスパート、元レンジャー隊員のハーディに、減量で見違えるほど体を絞ったジョン・トラボルタ。彼が復活を遂げた『パルプ・フィクション』で相手役を務めていたサミュエル・L・ジャクソンは、サディスティックな教官のウエスト軍曹役で、同作以来のトラボルタとの共演を果たしています。嵐のジャングルの困難な撮影に挑んだのは『ダンシング・ヒーロー』『タップ・ドッグス』の撮影監督スティーヴ・メイソン。ロケ地に熱帯雨林をゼロから作り上げたプロダクション・デザイナーは『ディアボロス―悪魔の扉―』『ディープ・インパクト』で美術監督として腕をふるったデニス・ブラッドフォード。衣装デザインは『トーマス・クラウン・アフェアー』『ローラーボール』のケイト・ハリントン。誰が誰をどうしたかという供述がみんな違って真実が分からないという話は、黒澤明監督の『羅生門 (1950)RASHOMON』に原型があると、アメリカでは複数のメディアが意見を同じにしています。日本の名作映画『 羅生門 』は故・黒澤明氏の監督・脚本で、芥川龍之介の小説 「藪の中」が原作です。芥川龍之介の小説「羅生門」を少しだけ加えた内容で、タイトルとして『ラショウモン』の響きは海外でも覚えやすく、ストーリーと映像美は世界の映画人を衝撃的に魅了しました。事実、1951年度ヴェネチア国際映画祭 金獅子賞を受け、その名はいまだに世界中の知識人の間で輝いています。
 ジュリー・オズボーン大尉(コニー・ニールセン)にとって、それは長い夜の始まりだった。昨夜、彼女が所属するパナマの米軍クレイトン基地から密林での訓練に出た米軍レンジャー隊が、ハリケーンによる風雨の中、嵐の森で消息を絶った。17時間後、3名が発見されるが、彼らはなぜか味方同士で撃ち合い、捜索ヘリの目の前で1名が殺された。救助された2名のうち、ひとりは重傷、ひとりはオズボーン大尉の尋問に対してかたくなに黙秘を続けている。訓練を率いたウエスト軍曹(サミュエル・L・ジャクソン)を含め、なお4名の行方がわからない中、オズボーン大尉の上官スタイルズ大佐(ティム・デイリー)は、非公式にひとりの男を呼び寄せた。麻薬取締局捜査官トム・ハーディ(ジョン・トラヴォルタ)は、元レンジャー隊員。最近、麻薬組織に買収された容疑を受け、待機処分中の身である。スタイルズ大佐が現在は軍属でないハーディに頼ることにした理由は、ひとつには彼の尋問の腕を見込んでのこと。そしてもうひとつは、ハーディ自身、ウエストの訓練を受けた過去を持っていたからだった。だが、本来なら軍の中のことは軍の担当官がやるべきことであり、その担当者であるジュリー・オズボーン大尉は部外者であるハーディに不本意な気分をあらわにしながらも、現況を説明すると、彼の方法に従って生還した2名の尋問を開始した。やがてウエスト軍曹と兵士との間の感情的対立と、森でのサミュエル・L・ジャクソン演じる憎たらしい鬼軍曹ウエストの不可解な死、そして誰が殺人犯かをめぐって争う兵士たちの動揺が明らかになってゆく。しかし肝心な部分で、2名の証言は矛盾する。どちらかが嘘をついているのか、あるいは共同謀議なのか。新たな事実が浮かび上がっては、ストーリーが二転三転する中、ハーディに反発し、あくまで真実を追求しようとするオズボーン。彼女が最後にたどりついた密林の中の“真実”とは。生還した2名が示した“8"のナンバーが意味するものは。果たして森の奥深くで、7人の兵士たちの間に何が起きたのか。閉ざされた森の中の回想シーンと現在の光景が入れ替わりに映し出される。トラボルタ演じるハーディのいい加減なくせに、魅力的な雰囲気、オズボーン大尉の冷静さ、ウエスト軍曹の憎たらしさ、出演者の魅力が溢れかえって最後まで引き込まれてしまいます。

ラブソングができるまで MUSIC AND LYRICS

2008年06月14日 | Weblog
監督/脚本:マーク・ローレンス 
製作:マーティン・シェイファー、リズ・グロッツァー 
製作総指揮:ナンシー・ジュボーネン、ハル・ギャバ、ブルース・バーマン 
共同製作:スコット・イライアス、メリッサ・ウェルズ
撮影:ハビエル・ペレス・グロベット 
美術:ジェーン・マスキー 
編集:スーザン・E・モース、A.C.E. 
音楽:アダム・シュレシンジャー 
出演:
ヒュー・グラント (アレックス・フレッチャー)
1980年代に一世を風靡したバンド、PoPの元ボーカル。バンドが解散してからは、PoPのもう一人のボーカル・コリンが成功する一方で"PoPの元ボーカル"という肩書きから変化が無く、ナッツベリーなどの遊園地や同窓会のイベントで巡業をしている。
ドリュー・バリモア (ソフィー・フィッシャー)
姉と痩身ビジネスをしている。アレックスの雇っている植木の世話係の代理で部屋に来た時に作詞の才能をアレックスに見出され、一緒に曲を作ることになる。
ヘイリー・ベネット (コーラ・コーマン)
人気歌手でアレックスに新曲の作成を依頼する。ブリトニー以上のスター。
ブラッド・ギャレット (クリス・ライリー)
アレックスのマネージャー。
クリステン・ジョンストン (ローンダ)
ソフィーの姉。アレックスの大ファン。
キャンベル・スコット (スローアン・ケイツ)
ソフィーが行っていた大学の文芸講座の講師。ソフィーと交際していたが、婚約者が帰国したため修羅場となり別れる。1年後ソフィーとの交際を書いた本『サリー・マイケルズ』がベストセラーとなる。
2006/米/104min.  ☆☆☆☆☆

 80年代に人気絶頂だった元ポップスターと失恋で書くことをやめてしまった作家志望の女性が、ラブソングを作ることになる王道的ラブコメディ。『ブリジット・ジョーンズの日記』『ラブ・アクチュアリー』のヒュー・グラントがワム!のアンドリュー・リッジリーを彷佛させる元ポップスター役を、『チャーリーズ・エンジェル』のドリュー・バリモアが作家志望の女性を演じ、初共演しています。家族や周囲の人々を含めた日常の描写を含め、二人の魅力を活かしきった監督は『デンジャラス・ビューティー』の脚本を手がけ、ヒュー・グラント主演の長編『トゥー・ウィークス・ノーティス』でデビューし、監督兼脚本を務めたマーク・ローレンス。冒頭からノリノリで、あの頃に流行ったミュージックビデオそのものに、歌い踊りまくるヒュー・グラントの姿(何と言ってもいちばんの見どころ!)に喝采を浴びせずにはいられません。歌もダンスも初挑戦という彼が、衣装も髪型も微妙な80年代の装いで歌って踊り、“愉快な腰の振り方”も完全にマスター。弾けなかったピアノにも果敢に挑み、「自分でも惚れ惚れするような」弾き語りを披露してます。そこで十分に見る側のテンションを上げておき、落ちぶれたしがない中年男とちょっとエキセントリックな女の子の、恋の芽生えを展開させます。ふたりの恋とラブソングができていく過程がシンクロして最後まで観客のテンションを下げず、ラストのホロリ感動にまで引っ張ってくれます。デビー・ギブソン、ティファニー、スモーキー・ロビンソン、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドなんて懐かしい名前であの頃に引き戻されます。冒頭にその80年代バンド“POP”のプロモーションビデオが流れますが、これがワム! とデュラン・デュランを足して2で割ったようなチープで陳腐なポップバンドで、しかもリック・アストリーの"Never Gonna Give You Up"みたいな歌を歌っていて笑えます。でも観終わった後に口ずさんでしまいそう♪是非是非お薦めの1篇です。
 ところで、アレックスのマネージャーがコーラ・コーマンを紹介する時に「この世界でブリトニーや、クリスティーナ・アギレラよりもビッグなスター…。」と言いますが、この台詞の字幕は「この世界でブリトニーよりもビッグなスター…。」とクリスティーナ・アギレラを省略していて不満に感じました。比較するスケールが全然変わってしまうので残念です。因みにクリスティーナだけセカンド・ネームを言ったのは、同時期に活躍したクリスティーナ・ミリアンを意識しての事と思われます。

 82年、M.ジャクソン「スリラー」をリリース。83年、マドンナ鮮烈デビュー。84年、人気絶頂の5人組バンドPoP、熱狂のワールドツアーを敢行。ダブルボーカルのひとり、コリンは、その後ソロ・アーティストとして活躍し、グラミー賞、アカデミー賞を受賞したばかりか、ハリウッドの殿堂入りも果たし、おまけに“サー”の称号まで手に入れた。では、もうひとりのボーカル、アレックス・フレッチャー(ヒュー・グラント)はどうなったのか?彼もコリンに続いてソロ・デビューをしたのだが、解散後に発売したソロアルバムが泣かず飛ばず、今やすっかり「あの人は今」グループの仲間入り。80年代を懐かしむ元“ギャル”たちが集まる小さなイベントに時折お呼びがかかるものの、その手の仕事も減る一方のジリ貧状態。そんなアレックスのもとに、返り咲きのチャンスが訪れた。当代きってのインドかぶれエロエロカリスマ歌姫、コーラ・コーマン(ヘイリー・ベネット)から、新曲を提供してほしいというオファーが入る。最近カレと別れたばかりだというコーラは、新曲のタイトルを 「Way Back IntoLove(愛を取り戻す方法)」と指定。コンサートが2週後に迫っているため、曲作りにかけられる時間はほんのわずかしかない。さらに、他にも7 人のアーティストに同じオファーが出されており、彼女が曲を気に入らなければそれでボツ。とはいえ、彼の作曲の才能は長いあいだ放ったらかしにされたまま。しかも、作詞は大の苦手。マネージャーに背中を押され、一流という触れ込みの作詞家とコンビを組んでみたものの、彼とはどうしてもフィーリングが合わない。そんな時、アレックスのアパートに鉢植えの世話に来ていたアルバイトの女性ソフィー・フィッシャー(ドリュー・バリモア)が口ずさんだフレーズが、アレックスのハートにジャストミート。ふだんは姉の経営するダイエット専門店を手伝っているというソフィーは、もともとは有望な作家の卵だったにもかかわらず、失恋の痛手から今は書くことをいっさいやめてしまっていた。彼女をふった元カレは、創作の師でもあった有名作家。実は彼に は婚約者がいたことが発覚したうえ、彼が書いた小説の内容がさらに彼女を傷つけた。主人公は、有名作家を利用してのし上がろうとする才能のない性悪女。その外見や癖がソフィーそっくりに描かれていたのだ。それ以来、何も書けなくなってしまったソフィーは、一緒にラブソングを作ってほしいというアレックスの頼みを断固拒否。それでも彼女の才能を確信するアレックスは、PoPの追っかけだったソフィーの姉も巻き込んでしぶとく説得を続け、ついに彼女の心を動かした。
期限まではあと3日。波乱だらけのラブソング作りはまだ始まったばかり……。

☆80年代ミュージックをテーマにした映画「ラブソングができるまで」。そのサウンドトラックは、まさに80sミュージックの美味しいところが詰め込まれたものに仕上がりました。とはいっても当時流行ったヒット曲を集めたわけではないのです。80sテイストの楽曲をすべてオリジナルで作ったのです。主演のヒュー・グラントが演じるのは80年代に絶大なる人気のあったスーパー・グループ、POPのボーカリスト。そのPOPのかつてのヒット曲という設定の「恋は突然」を聴くだけで、その80sサウンドの秀逸な散りばめ具合には舌を巻いてしまいます。ほかにもワム!、スパンダー・バレエ、ディペッシュ・モードやブロンディなどのテイストを、実に絶妙のパロディ具合で織り交ぜているのはまさに職人技と言えます。このサウンドトラックをプロデュースするのは、グラミー賞にもノミネートされたこともあるファウンテンズ・オブ・ウェインのアダム・シュレシンジャー。ヒュー・グラントのボーカルも素晴らしいので、このアルバムだけでも十分に聴くに値する一枚に仕上がっています。
「愛に戻る道」(Way Back Into Love):ヒュー・グラント、ヘイリー・ベネット
映画はアレックスとソフィーがこの曲を作り上げていく過程を軸としている。またこの曲には、ヒュー・グラントとドリュー・バリモアが歌ったバージョンもあり、そちらは、劇中でアレックスがコーラに渡したデモ音源という扱いです。
「恋は突然」(Pop! Goes My Heart):ヒュー・グラント
1984年のPoPのヒット曲という設定で、曲だけでなく1980年代風の安っぽく、下手な芝居のドラマが混ざったPVも製作されました。これについてヒュー・グラントはデュラン・デュランを参考にしたとメイキングで語っています。
原題のMusic and lyricsは直訳すると「楽曲と歌詞」という意味である。
■本サントラでは、ヒュー・グラントのヴォーカルが大フィーチャー!ヒューが演じるのは、80年代のスーパー・ポップ・グループ:POPのヴォーカル:アレックス・フレッチャー。そしてそのPOPが大ヒットさせたという設定のポップ・ソング「恋は突然」に始まり、ワム/ジョージ・マイケルやスパンダー・バレエ、ディペッシュ・モードやブロンディ等のビッグ・ヒット曲の、極めて良心的なパロディ的要素が、見事に各収録曲に反映されています。また、この映画のハイライトともいえるバラード「愛に戻る道」は、2007年のベスト・ソングという声も高い、シンプルながら心に響く名曲です。この曲のソングライティングを始め、サントラのBAND-3,9はアダム・シュレシンジャー(ファウンテンズ・オブ・ウェイン)が書き下ろしています。かつ、彼はサントラのアルバム・プロデューサーも勤めており、アダムの卓越したポップ・センスが全編を貫き、心温まるサントラに仕上がっています。
ちなみにこのサントラは、アメリカのiTunesでは、映画公開直後から大反響で、iTunesの総合アルバム・チャートでナンバーワンを記録する大ヒットとなりました。
01. 恋は突然/POP! GOES MY HEART/ヒュー・グラント
02. ブッダの悦び/BUDDHA'S DELIGHT/ハーレイ・ベネット
03. ミーニングレス・キッス/MEANINGLESS KISS/ヒュー・グラント
04. エンターリング・ブーツィータウン/ENTERING BOOTYTOWN/ハーレイ・ベネット
05. 愛に戻る道(デモ・ヴァージョン)/WAY BACK INTO LOVE(DEMO VERSION)/ヒュー・グラント&ドリュー・バリモア
06. トニー・ザ・ビート/TONY THE BEAT/ザ・サウンズ
07. 僕と踊って/DANCE WITH ME TONIGHT/ヒュー・グラント
08. スラム/SLAM/ヒュー・グラント
09. ドント・ライト・ミー・オフ/DON'T WRITE ME OFF/ヒュー・グラント
10. 愛に戻る道/WAY BACK INTO LOVE/ヒュー・グラント&ハーレイ・ベネット
11. ディファレント・サウンド/DIFFERENT SOUND/テディベアーズ・フィーチャーリング・マルテ
12. ラヴ・オートプシー/LOVE AUTOPSY/ヒュー・グラント

少林少女 Shaolin Girl

2008年05月30日 | Weblog
監督:本広克行
製作:亀山千広
エグゼクティブプロデューサー:チャウ・シンチー
脚本:十川誠志、十川梨香
音楽:菅野祐悟
撮影:佐光朗
照明:加瀬弘行
美術:相馬直樹
装飾:田中宏
編集:田口拓也
アクション監督:野口彰宏
選曲:藤村義孝
武術指導:マーク武蔵
主題歌 mihimaru GT『ギリギリHERO』
出演:
「国際星館大学女子ラクロス部」
柴咲コウ:桜沢凛(背番号0,AT)
山崎真実:清水真実(背番号1,MF)
工藤あさぎ:近藤あさぎ(背番号2,MF)
原田佳奈:北野佳奈(背番号3,AT)
乙黒えり:黒岩えり(背番号4,AT)
蒲生麻由:山田麻由(背番号5,AT)
いとう麻見:田伏麻見(背番号6,DF)
千野裕子:加地裕子(背番号7,DF)
千代谷美穂:琢磨美穂(背番号8,G)
西秋愛菜:緒方愛菜(背番号9,MF)
キティ・チャン:ミンミン[劉](背番号10,MF)
沢井美優:金川美優(背番号11,DF)
柳沢なな:松本なな(背番号12,DF)
石井明日香:志井明日香(背番号13,G)
尾家輝美:中野輝美(背番号14,DF)
桂亜沙美:長野亜沙美(背番号15,MF)
渡辺奈緒子:湯浅奈緒子(背番号16,DF)
花形綾沙:二階綾沙(背番号17,MF)
満島ひかり:高橋ひかり(背番号18,DF)

岡村隆史:田村龍司(教務課、ラクロス部監督)
仲村トオル:大場雄一郎(学長。自らも武道の達人)
江口洋介:岩井拳児(店長。凛の祖父の門下生で、かつての凛の師匠)
ティン・カイマン:ティン(店員):
ラム・チーチョン:ラム(同上)
麿赤児:凛の師匠
富野由悠季:凛の祖父(劇中では既に故人となっており、遺影での登場)
トータス松本:電器店の店主

2008年/日本・香港/107min. ☆☆

 『踊る大捜査線』シリーズの亀山千広プロデューサーと本広克行監督のコンビに『少林サッカー』で脚本・監督・主演を務めたチャウ・シンチーが、エグゼクティブプロデューサーとして加わって送り出す、痛快カンフーエンターテインメントと銘打たれて公開された作品ですが、2匹目の『少林サッカー』を期待して観るといささか拍子抜けします。少林拳の達人・桜沢凛(りん)が、兄弟子の岩井やラクロス部の仲間たちの中で成長し、真の強さに目覚めていく姿を描きます。主演の柴咲コウはこの作品のために1年間の武術特訓を敢行し、実際の撮影ではアクションシーンも吹き替え殆ど無しで臨むという気合いの入れ様です。その結果、とても女優とは思えない見事なカンフーアクションを披露してくれます。彼女の脇を固める江口洋介、岡村隆史ら個性的な面々の演技も光り、ギャグに笑ってアクションで爽快になれる作品の筈ですが…。

 本広監督と製作者の意向により撮影手法、合成方法等は「極秘」とされており、「広報」「ブログ」等でもあまり具体的な製作過程は公開されませんでした。出演者女優の多くが特撮番組出演経験者であるのも特徴的です。また柴咲コウが単独主演としてクレジットされる映画は『着信アリ』以来4年ぶりです。それだけ話題性が有ったとはいえ、完成したフィルムからは、その期待大なイメージの10分の1も感じられないのです。それが本作、最大の問題です。
さらに、チャウ・シンチーをエグゼクティブ・プロデューサーに迎え、なま卵ネタ他、キャラクターもギャグも『少林サッカー』を引き継ぎながら、観客が期待する“ラクロス版『少林サッカー』”というコンセプトは全く感じられません。その代わりに焦点が当てられたのは、柴咲演じる主人公・凛の持つシリアスな精神人情世界。カンフー映画を製作するうえで、決して間違いとは思いませんが、そこに比重がかかり過ぎると、作品全体のバランスに支障をきたします。ホラー映画もそうですが、日本映画は漂う雰囲気から暗いのです。“豪華キャスト共演のアクション映画”としての醍醐味は、味わう事はできます。でも話がバラバラでまとまりに欠けます。その割には、無駄にセットやCGは凝っています。mihimaru GTの“ギリギリHERO”音楽クリップを先に見て大いに期待しましたが、残念ながらあれ以上は有りませんでした。チャウシンチーはどの位製作に関わったのでしょうか。『少林サッカー』の時の「楽しめる映画を作りたい」というビシビシ伝わってきた気持ちがこの作品では感じられませんでした。柴咲コウが、努力してあんなに格闘シーン頑張っているのに可哀そうです。悪役をしてもソフト感の抜けない仲村トオル、『アンフェア』のようなキレが出てない江口洋介。この二人は活かされていません。脚本のせいかな。対照的に岡村隆史は実に活き活きと楽しんでいるように感じました。ラスト・エンドクレジットは香港映画にありがちなNG集かと思いきや、みんなで仲良く少林ラクロス部を応援するようになってハッピーエンドな幕切れ。そう、これは誰も死なないファンタジー映画なのでした。

 中国・少林拳武術学校――三千日の修業を終えた少女が 今まさにこの地を旅立とうとしていた。「日本で少林拳を広めたい」という願いを持つこの少女のことを老師たちを心配していた。それはこの少女の体には未知数の力を持つ気が潜んでいたから、それが闇の力に落ちることを恐れていた…。彼女の名は、桜沢凛(柴咲コウ)。 日本へと戻ってきた凛は、少林拳を世に広めるという自分の夢のために祖父が開いた懐かしの少林拳練功道場へと向かう。しかしかつて学んだ祖父の道場はすでに廃虚と化し、門下生も道場の閉鎖と共に散り散りに。道場がなぜ閉められることになったのか知りたい凛は兄弟子のところを訪ね歩き、先生と慕った岩井拳児(江口洋介)が町外れで中華食堂を営んでいることを知る。中華食堂を訪れた凛は、中華食堂の店長として料理を作る岩井の変わり果てた姿にショックを受けながらも、道場に何があったのかを問い詰める。しかし岩井は「少林拳はもうやめた」と突き放すばかりで理由を答えてはくれない。凛は「私の居場所は道場です!」と店を飛び出していく。凛は岩井に反発して朽ちた道場に1人寝泊りすることを選ぶ。その翌朝、朽ち果てた道場でひとり眠っていた凛をひとりの女のコが訪ねてくる。岩井の中華食堂で働いていた劉(キティ・チャン)だ。彼女は凛が店に入ってきた時に彼女を止めようとした店員のティン(ティン・カイマン)とラム(ラム・チーチョン)を軽くさばき、飛んできたチャーハンをラクロスのクロスでキャッチした腕前を見て、彼女をラクロスへと誘おうと考えていた。
が少林拳を習うことを交換条件にラクロスをやることになった凛は、に連れられ、彼女が通う国際星館大学へ。そこで女子ラクロス部のメンバーに紹介された凛は、すかさず「私、ラクロスやります!そのかわり、みんなで少林拳もやろう!」とアピール。そのKYな感じにラクロス部員たちはあきれるが、試し打ちしたボールを少林拳仕込みのパワーで空高く飛ばした凛にはド肝を抜かれてしまう。そのボールを拾ってきた教務課職員・田村龍司(岡村隆史)の機転で部員として無事申請される。そんな凛の能力を肌で感じ取っていたのが国際星館大学の学長・大場雄一郎(仲村トオル)。常に最強であることを願い、強い者を追い求め、闘い続けてきた彼は凛に秘められた恐ろしいほどの気の力を感じ、次第に彼女と闘いたいと願うようになっていく…。

ホステル2  HOSTEL: PART II

2008年05月21日 | Weblog
監督・脚本:イーライ・ロス
製作:マイク・フレイス/イーライ・ロス/クリス・ブリッグス
撮影:ミラン・チャディマ
美術:ロブ・ウィルソン・キング
音楽:ネイサン・バール
衣装:スザンナ・プイスト
出演:ローレン・ジャーマン
ロジャー・バート
ヘザー・マタラッツォ
ビジュー・フィリップス
リチャード・バージ
ヴェラ・ヨルダノーヴァ
ミラン・クニャシュコ
スターニスラフ・イワネフスキー
2007/米/97min. ☆☆☆★

 全てを手に入れた金持ちたちが集う拷問殺人同好会「エリート・ハンティング」に、生贄となる若者を提供するホステル経営者を荒唐無稽さを抑えて映画にした『ホステル』のイーライ・ロス監督以下、製作チームが再集結して作り上げた、戦慄のホラー第2弾。今回のターゲットはローマで美大に通う美しいアメリカ人女子大生。なぜならアメリカ人の若い娘は、誰よりも高く売れるから。良質な天然温泉があると聞いてスロバキアのブラティスラバという街のホステル(秘密拷問クラブと提携する悪夢の館)にやってきたアメリカ人留学生少女3人組が標的となり、彼女らが自分の知らぬ間に世界中のセレブ会員相手のオークションにかけられ、いつのまにか誰かに“好きなやり方で拷問して殺してよい”権利を買われてむごい拷問にかけられるさまを徹底的に見せます。不運な留学生役に『テキサス・チェーンソー』のローレン・ジャーマン、『プリティ・プリンセス』シリーズのヘザー・マタラッツオらが扮し、命がけの名演を披露します。よりパワーアップした拷問シーンと、思いがけないストーリー展開に目が釘付けになります。特筆すべきは、1作目と同じホステルを舞台にしながらまったくマンネリ感を感じさせない脚本にしたところでしょう。具体的には、犠牲者視点ではなく加害者視点(少女を買った金持ちセレブの視点)でメインに描いた事です。また犠牲者の美少女たちが自分たちの運命と必死に戦う緊迫感溢れるストーリーと並行して、前作の血塗られたホステルの舞台裏も一見させてくれる辺りが今回の見所でしょう。R-18指定なのは裸もヘアも残酷シーンも遠慮なく出るからです。『ホステル2』は傑作の続編として、二番煎じにならずに正しい方向性を見つけることができた、成功パターンの作品と言えます。
 廃工場から逃亡したパクストン(ジェイ・ヘルナンデス)は元カノのステファニー(ジョーダン・ラッド)を頼る。その頃ローマで美術留学中の美しいアメリカ人女子大生、ベス(ローレン・ジャーマン)とホイットニー(ビジュー・フィリップス)はプラハへの小旅行を予定していた。出発の日、ご令嬢のベスはホームシックで泣いていた同国人ローナ (ヘザー・マタラッツォ)を一緒に連れだし、3人での旅行がスタートする。プラハ行き国際列車の中で、彼女らの美術の時間に出逢った美しい裸婦モデルだったアクセル(ヴェラ・ヨルダノーヴァ)が、イタリア人旅行者に絡まれた三人を偶然救うことになる。そしてアクセルから、天然のスパの情報を聞いた3人は、早速行き先を変更、スロバキアへと向かう。美しい温泉療養地ブラティスラバという街のホステルにチェックインした3人は、街の祭りに参加し休暇を楽しむ。そのホステルで自分たちがオークションにかけられるとは知らずに。一方、サーシャ(ミラン・クニャシュコ)率いるエリート・ハンティングでは活発なオークションが行われ、ホイットニー(ビジュー・フィリップス)はトッド(リチャード・バージ)に、ベスはスチュアート(ロジャー・バート)に落札される…。

インサイド・マン Inside Man

2008年05月15日 | Weblog
監督:スパイク・リー
脚本:ラッセル・ジェウィルス
製作:ブライアン・グレイザー
製作総指揮:ダニエル・M・ローゼンバーグ 
ジョン・キルク 
カレン・ケヘラ・シャーウッド 
キム・ロス
撮影:マシュー・リバティック, ASC 
プロダクション・デザイン:ウィン・トーマス 
編集:バリー・アレキサンダー・ブラウン
音楽:テレンス・ブランチャード
共同製作:ジョナサン・フィリー
衣装:ドンナ・バーウイック
キャスト:
デンゼル・ワシントン:キース・フレイジャー(NY市警)
クライブ・オーウェン:ダルトン・ラッセル(銀行強盗のリーダー)
クリストファー・プラマー:アーサー・ケイス(銀行の取締役会長)
ウィレム・デフォー:ジョン・ダリウス(警部)
キウェテル・イジョフォー:ビル・ミッチェル
カルロス・アンダース・ゴメス:スティーブ
キム・ディレクター:スティービー
ジェームス・ランソン:スティーブ-O
ピーター・ジェレティ:コフリン
2006年/米/138min. ☆☆☆★

 ニューヨーク、マンハッタン信託銀行で立てこもり事件が発生。頭脳明晰な犯人グループのリーダーは人質全員に自分たちと同じ格好をさせ、警察側の目をくらますと同時に、人質同士でも誰が犯人で誰が人質なのか判別できない状態にしてしまうという陽動作戦をとり、やがて神経をすり減らすような心理戦が繰り広げられていく。警察の包囲にも焦りを見せない犯人。これはただの強盗なのか?彼らの本当の狙いは?ところが計算し尽くされているこの計画には、信じられないような衝撃的結末が用意されているのだった…。
 この映画界の常識を覆すようなプロットを最初に手にしたのは『ビューティフル・マインド』でアカデミー賞に輝き『フライトプラン』から『ダ・ヴィンチ・コード』まで、数々の名作・話題作を手がけている名プロデューサー、ブライアン・グレイザーと、代表作『マルコムⅩ』をはじめ、常に社会派の問題作を作り続けるフィルム・メイカー、スパイク・リーでした。脚本に魅せられた二人は、極限まで研ぎ澄まされた時間・空間の中で目まぐるしく展開していく完璧な犯罪ドラマには、完璧な演技力が必要であると考え、今回のキャスティングを実現しました。映画史上に残る究極の“完全犯罪”で犯人と渡り合うキース・フレイジャー捜査官役には『グローリー』『トレーニングデイ』で2度のアカデミー賞に輝くデンゼル・ワシントン。時間の経過とともに変化していく“犯人側からのルール”に翻弄されながらも次第に事件の核心に迫っていく姿は流石です。観客は彼を通して完全犯罪を目撃していくことになります。映画の展開はダルトンの仕掛けたものではありますが、ラストに待ち受けているカタルシスはフレイジャーが支えているといっても過言ではありません。冷静沈着な頭脳犯ダルトン・ラッセルを演じるのは『クローサー』でゴールデン・グローブ賞受賞、アカデミー賞ノミネートのクライブ・オーウェン。知的でクールな演技の中に激しさと圧倒的な存在感を包みながら、ストーリーの全てをその手に握っています。冒頭の彼の独白から始まる本作。まっすぐにこちらを見据える彼の瞳に宿る揺るぎない自信が、これから起こる完全犯罪の成立に期待を抱かせます。向こうを張るデンゼルに、一歩も引けを取らない、このオーウェンの油の乗りっぷりが、作品のバランスを保たせました。そしてストーリーを刑事と犯人の“双方向の物語”だけに終わらせないキーパーソンとして登場するのが、『告発の行方』『羊たちの沈黙』のオスカー女優であり、近年では『フライト・プラン』『パニック・ルーム』などサスペンス映画でも実力を発揮しているジョディ・フォスター。本作品はその集大成ともいえます。彼女が演じる女性弁護士マデリーン・ホワイトは銀行からの極秘ミッションという“爆薬”を携えて現場に登場し、立て籠もる側と包囲する側の神経戦に拍車をかけます。更に、この完璧なドラマを創造しているのは3人のメイン・キャストだけでなく、緊迫感を高めるに相応しい演技派の俳優たちも脇を固めています。『プラトーン』『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』でアカデミー賞にノミネートされ、最近では『スパイダーマン』でも強い印象を残したウィレム・デフォー(個人的には『ストリート・オブ・ファイヤー』が一押し)が、現場を統括するダリウス警部を演じています。また事件の舞台となる銀行の会長役には『インサイダー』で全米映画批評家協会賞、LA映画批評家協会賞を受賞し『シリアナ』にも出演しているベテラン俳優クリストファー・プラマー。そして『堕天使のパスポート』『ラブ・アクチュアリー』のキウェテル・イジョフォーがフレイジャーの相棒役で出演しています。
 本作の驚くべき世界観を構築している脚本は、これが初の映画化作品となるラッセル・ジェウィルスとアダム・エルバッカーが共同で執筆。プロデューサー、監督、俳優陣からも絶賛された新感覚の感性は、一躍ハリウッドの注目を集めています。編集のバリー・アレクサンダー・ブラウン、音楽のテレンス・ブランチャード、プロダクション・デザイナーのウィン・トーマスは、これまでもスパイク・リー監督と組んだ経験を持ち、撮影は『フォーン・ブース』『ゴシカ』等、緊張感溢れるカメラワークを得意とするマシュー・リバティックが担当。彼らをはじめとして職人的ともいえるスタッフが監督の下に結集し、見事なチームワークを披露しています。R・A・ラフマーンのリズミカルなインド音楽もスリリングな雰囲気を高めるのに貢献しています。眠い時には見ない方がいい、考えながらゆっくり長編を見るのが好きな人にお薦めの1本。

 「目に見えるもの全てがキーワード」であるが、「目に見えるものだけが全て」ではない。今までの映画のルールはまったく通用しない!タイトルこそが最大のヒント!? 
「私はダルトン・ラッセル。二度と繰り返さないからよく聞け。私は銀行を襲う完全犯罪を計画し、そして、実行する…。」
 “パーフェクト塗装サービス”のバンがマンハッタン信託銀行の前に停車し、ジャンプスーツを着た男たちが降りてくる。やがて彼らは銀行の中へと進む。それが史上空前の完全犯罪の始まりだった。完全武装した犯人たちは銀行内にいた従業員と客を人質に取り、全て計画通りに素早く行動を開始。「全員床に伏せろ!これから我々はこの銀行から多額の金を引き出す。」。犯人グループはリーダーのダルトン・ラッセル(クライブ・オーウェン)以外に3人。互いに“スティーブン”“スティーブO(オー)”“スティービー”と呼び合い、駆けつけた警官に「ヒトジチトッタ。チカヅイタラ、ヒトジチコロス」と外国なまりで伝えるのだった。急報を受けたのは、NY市警のフレイジャー(デンゼル・ワシントン)とミッチェル(キウェテル・イジョフォー)。フレイジャーは以前かかわった麻薬事件で14万ドルの小切手が紛失するという事態に巻き込まれ、内務調査課から汚職の疑いをかけられていた。それだけに今回の事件は汚名返上のチャンスであり、意気揚々と現場に駆けつけたのだった。強盗人質事件発生の連絡を受けたのは警察だけではなかった。マンハッタン信託銀行の取締役会長アーサー・ケイス(クリストファー・プラマー)は明らかに狼狽し、言葉を失っていた。そして彼は警察に事態を確認するよりも先に、ニューヨークでも指折りの有能な弁護士マデリーン・ホワイト(ジョディ・フォスター)を自ら呼び出すのだった。
 強盗人質事件の現場は膠着状態となり、指揮を執る敏腕捜査官フレイジャーですら解決の糸口が見つけられずにいた。犯人グループのリーダー、ダルトンから“型通り”の要求はあったものの、彼らからは焦りが全く感じられない…。徐々に追い詰められていくのは包囲している警官隊の方だった。銀行内ではダルトンたちが着々とプランを進行。人質全員にジャンプスーツと覆面を着用させて、自分たちと同じ格好をさせていた。これでは人質同士でも誰が誰なのか見分けがつかないどころか、人質か犯人かすら区別できない状態となる。犯人グループは想像以上に頭の切れる連中だった。人質と犯人の見分けがつかない以上、突入作戦も不可能。「犯人たちは相当にキレる奴らだ。でも何かがおかしい、時間稼ぎをしているのか…」。やがて銀行の会長ケイスによってネゴシエイター役に指名された女性弁護士ホワイトが現れ“事件の根本”が次第に露呈していく。しかしダルトンは一切の交渉にも挑発にも応じない。ダリウス警部(ウィレム・デフォー)率いる作戦指令車には、犯人との電話回線等、全ての準備が整った。その時、人質の老人が解放され、犯人からのメッセージが伝えられる。「警官がドアに近づいたら人質を2人殺す」。そして犯人グループが4人であることと、ペンキ職人を装っていたことが判明する。一方、ケイスはマデリーンに仕事の依頼をしていた。「銀行の貸金庫には、私にとって大切な物が保管されている。それには誰の手も触れさせたくはない。私だけの秘密なのだ」――ケイスにとって金庫の金を奪われるよりも重要な意味を持つ物とは…。“それ”が露見することは、自分の身の破滅につながることを彼は知っているのだった。人質がまたひとり解放された。そして遂に犯人からの要求が明らかになる。人質の首に下げられたボードに書かれていたのは、《ケネディ空港にジャンボ機とパイロットを用意しろ。夜の9時以降、1時間ごとに人質を殺す。銀行には爆弾が仕掛けてある》。警察側は食料も要求されていたことを逃さず、ピザの箱に盗聴器をセットして銀行内に運び込む。そんな時、マデリーンが市長を伴って現場に現れ、政治レベルの問題をちらつかせながら事件に介入してくる。事件は益々混迷の度を深めていくが、フレイジャーは遂にダルトンとのコンタクトに成功する。ダルトンの声には立てこもり犯特有の焦りが全く感じられず、極めて冷静で自信に溢れていた。主導権は完全に犯人側に握られていた。そんな局面を打開するため、マデリーンが交渉役として銀行内に入ることになった。「依頼人の“ある利益”を守るため、あなたたちの要求をのむことにする」――しかし、結局はマデリーンの交渉も決裂する。やがてフレイジャーの頭に疑問が浮かんできた。時間稼ぎをしているのは奴らの方だ。何かがおかしい…」。今度はフレイジャーが自ら銀行内に入り、中の状況を確認することになった。捜査官と犯人が直接対峙する緊迫した状況。フレイジャーは何とか解決へ の突破口を探るため、様々な言葉でダルトンを挑発。しかし彼は冷静な態度を一切崩さない。それどころか逆に、「そうすべき時が来たら、堂々と正面から出ていくさ」と、フレイジャーに対して挑戦的な言葉を投げかけるのだった。事態は完全に膠着状態だった。そしてついに人質が射殺されるという事態が発生。初めて犠牲者が出たことで、現場の緊張感が一気 に高まる。そして遂に警官隊による突入準備が開始された。問題はどのようにして犯人と人質を見分けるか。全員が同じ格好をしている以上、それは非常に困難だった。ところがまたしてもダルトンの方が一枚上手だった。最初の要求を出したボードに盗聴器を仕掛け、警察の動きを全て知り尽くしていたのだ。しかしすでに警官隊の突入は止められない。そして――。突入と同時に、次から次へと同じジャンプスーツに覆面姿の人々が銀行から飛び出して来る!誰が犯人で、誰が人質なのか…?銃を構えて待ち受ける警官たち。しかし彼らも咄嗟のことに事態が飲み込めず、ただ呆然と立ち尽くすしかない。しかも本当の完全犯罪は、ここから始まったのだった…。


アイ・アム・レジェンド I AM LEGEND

2008年05月12日 | Weblog
監督:フランシス・ローレンス
原作:リチャード・マシスン “I Am Legend”(吸血鬼/地球最後の男/アイ・アム・レジェンド ハヤカワ文庫)
脚本マーク・プロトセヴィッチ、アキヴァ・ゴールズマン
撮影:アンドリュー・レスニー
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
制作:アキヴァ・ゴールズマン、デヴィッド・ヘイマン、ジェームズ・ラシター、 ニール・H・モリッツ、アーウィン・ストッフ
プロダクションデザイン:ナオミ・ショーハン
衣装デザイン:マイケル・キャプラン
VFX:ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス
出演:
ウィル・スミス:ロバート・ネヴィル
サリ・リチャードソン:ゾーイ・ネヴィル
アリーシー・ブラガ:アナ
ダッシュ・ミホク:アルファ・メイル
チャリー・ターハーン:イーサン
エマ・トンプソン:アリス・クルピン博士
2007/米/100min. ☆☆☆☆★

 リチャード・マシスンの小説『吸血鬼(地球最後の男)』の3度目の映画化作品で『コンスタンティン』のフランシス・ローレンス監督が、『幸せのちから』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたウィル・スミスを主演に迎え、人類が殆ど絶滅した近未来を舞台(無人と化したニューヨーク)に、自分以外の生存者を探す科学者が希望と絶望が混在する究極の孤独の中で人類再生の道を模索する使命感に燃える姿を描くSF巨編です。オリジナル版の『地球最後の男』では吸血鬼が集団でゆっくりと歩き、主人公は家に立て籠もる事が多く、それがジョージ・A・ロメロ監督のホラー『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)に登場したゾンビや舞台設定に大きな影響を与えたと言われています。今作は劇場では2007年12月14日、日米同時公開されました。また、この作品は1990年に『グラディエーター』のリドリー・スコット監督でアーノルド・シュワルツネッガー主演の話もありましたが、制作費が膨大なために断念しています。 
 SF独特の設定ながら、視聴者は主人公に心から同情し、強く惹き付けられます。そんな大役を見事にこなしたウィル・スミスは言葉を使わずに、表情や体の動きを通して考えや感情の多くを伝えています。もちろん、誰もいない荒廃したニューヨークの風景(荒廃した街のシーンはCGではなく[一部使用も有り]、5番街で200日の区画封鎖撮影を敢行)、そして肉食性の感染者たちとの戦い(殺人ウィルスに感染して凶暴になり、暗闇でしか生きられないダーク・シーカーズの超人的な動き・強さはCG)など緊迫感あふれるアクション・シーンや斬新な視覚効果も満載ですが、本作のもっともパワフルな要素は、主人公の心の動きを細やかに追っているところでしょう。大規模な話を2時間弱に収めてしまっているので、つっこみ所は多々有ります。日本の宣伝では「唯1人生き残った」ウィル・スミスを強調していましたが、それは「元の体のままの人間」という意味で、圧倒的多数の変異した人間たちは、どうやって生きているのか、凶暴な動き以外は何も描かれていません。マシスンの原作では彼らこそが新人類で、それが『猿の惑星』のように最高の皮肉になっています。ウィルの日常生活、孤独や喪失感などは劇中で分かるのですが、表現されてない部分を考えると、無知の部分のあまりの大きさに驚かされます。コンピューターを破壊するだけでライフラインが停滞する時代にガスや電気が使えるのって何故?みたく思うかも知れませんが、この映画のスケールと勢いある展開の前では気にならない人が大多数でしょう。
余談ですが、本作に登場する米軍兵士はすべて現役で、撮影の10か月前にイラクから帰国したばかりだそうです。

 2009年、女性科学者アリス・クルピン博士(エマ・トンプソン)が、はしかウィルスを元にガンの治療薬を開発。治療薬は1万9人のガン患者に投与され、全員が助かったかに見えたが、米国陸軍中佐であり科学者のロバート・ネヴィル(ウィル・スミス)は治療薬を投与した者の一部が狂犬病に似た症状で死亡したことに疑問を感じて調査した結果、治療薬が人間を死に至らしめる危険なK.V(クルピン・ウィルス)であることを発見する。そしてニューヨークがK.Vの感染源になったことで大統領はニューヨークの封鎖を決定し、軍を出動させる。ネヴィルの妻子を含む非感染者をニューヨークに設置させた検問所から脱出させ、感染者への隔離処置が始まるが、空軍の戦闘機が封鎖を徹底すべくニューヨークと外部を結ぶ橋をミサイルで破壊した際に、パニック状態に陥った群集の一部が離陸直後のヘリコプターに飛び付き、これによってバランスを失い暴走した機が、ネヴィルの妻子を乗せたヘリコプターに空中衝突し、ネヴィルは妻子を失う。その後、K.Vは空気感染によって世界中へと拡散する。ネヴィルの試算によると世界人口60億人中54億人が死滅。ネヴィルを含む1200万人の免疫保有者と、K.Vの影響で理性や知能と太陽光(紫外線)への耐性を失いつつも、常人を遙かに上回る身体能力を持ち、昼間は地下や建物の中に潜み、太陽の光が消え去ると、いっせいにうごめき出す不気味な影、5億8800万人の生存患者、ダーク・シーカーズだけが生き残った…。
 それから3年後の2012年、廃墟と化したニューヨーク。ウイルス感染により、世界人口の60億が絶滅していくなかでネヴィルは3年もの間、シェパードの愛犬サムと共に、動物園から逃げ出したインパラを狩り、公園でトウモロコシを収穫しながらK.Vの研究をしつつ、一日も欠かさず生存者を捜し求めて無線でメッセージを発信し続けていた。最終目標はダーク・シーカーズを人間に戻せる血清の開発であり、そのためにK.Vを投与したマウスや太陽光に晒さないように生け捕りにしたダーク・シーカーズをサンプルにして、実験を繰り返した。だが、部分的に知能が低下し、逆にある程度の知能を有している1人のダーク・シーカーズが放ったK.Vに感染した犬に襲われ、ネヴィルは無事だったが噛まれたサムは治療の甲斐なく感染犬と化し、ネヴィルはやむなく自らの手で絞め殺さなければならなくなった。これに自暴自棄になったネヴィルは夜中に車で街に出かけ、襲い来るダーク・シーカーズを車で次々と轢き殺すが、逆に彼らに車を転倒され、窮地に陥る。だが、ネヴィルが3年間無線で送り続けたメッセージを聞いてやって来たアナとイーサンの親子によって救われる。かくして自分以外の生存者と初めて遭遇したネヴィルであったが、アナがバーモントの山中に寒さでウィルスが死滅したため生存者達が暮らす村があると話したときはそれを信じず、その根拠が神の言葉だという彼女に対して神を否定する発言をした。そして、自分はあくまでK.Vの感染源であるニューヨークで戦うと主張するが、アナの不注意な行動が災いして安全だったはずのネヴィルの家はダーク・シーカーズに突き止められ、襲われてしまう。必死の戦いの末、ネヴィルはアナとイーサンを連れて地下の研究室に逃れ、そこで血清の開発のために捕まえていた女性のダーク・シーカーに回復の兆候があるのを発見する。だが、ダーク・ シーカーズは研究室に入り込み、ネヴィル達を守る強化ガラスのドアを力任せに体当たりで破ろうとする。これに対しネヴィルは「君達を救えるんだ」と叫ぶも、ダーク・ シーカーズは誰1人耳を傾けようとしなかった。何故ならダーク・シーカーズたちにとっては、彼こそが、多くの仲間を誘拐し謎の実験で殺害し続けた敵だったからである。ここに至り、ネヴィルは回復中のダーク・シーカーから採血するとそれを入れたカプセルをアナに手渡し、緊急用の脱出路からイーサンと共に逃がす。そして自らは逃げる親子を守るべく研究室に備えていた手榴弾の安全ピンを抜き、強化ガラスを突き破って襲ってきたダーク・シーカーズに飛び込み、壮絶な自爆を遂げた。
 それからしばらくして、バーモント山中の道路を車で進むアナとイーサンは、道路をふさぐ巨大な壁を発見。2人で車を降り壁に寄ると壁は電子音と共に開き、武装した2人の兵士が現れた。ここでは生き残った者達が山地という地理的条件に加えて兵士達と広く張り巡らされた防御壁によってK.Vからも守られており、平和が保たれていた。新しい生存者として彼等に迎えられたアナはネヴィルの形見になったカプセルを手渡した。かくして、K.Vの治療薬を開発したネヴィルは、アナの証言にてその功績が明らかとなり、伝説(レジェンド)となった…。


ヘアスプレー Hairspray

2008年05月06日 | Weblog
監督/振付/製作総指揮:アダム・シャンクマン『キャプテン・ウルフ』
製作:クレイグ・ゼイダン&ニール・メロン『シカゴ』
作曲/作詞/製作総指揮:マーク・シェイマン
作詞/製作総指揮:スコット・ウィットマン
脚本:レスリー・ディクソン
撮影:ボジャン・バゼリ
編集:マイケル・トロニック
出演:
ニッキー・ブロンスキー(トレイシー・ターンブラッド)
ジョン・トラヴォルタ(エドナ・ターンブラッド)
クリストファー・ウォーケン(ウィルバー・ターンブラッド)
ミシェル・ファイファー(ヴェルマ・フォン・タッスル)
ブリタニー・スノウ(アンバー・フォン・タッスル)『キャプテン・ウルフ』
アマンダ・バインズ(ペニー・ピングルトン)
アリソン・ジャネイ(プルディ・ピングルトン)
ジェームズ・マースデン(コーニー・コリンズ)
クイーン・ラティファ(モーターマウス・メイベル)
ザック・エフロン(リンク・ラーキン)
イライジャ・ケリー(シーウィード)
ジェリー・スティラー(ミスター・ピンキー)
2007/米/117min.  ☆☆☆☆☆

 この2007年版ヘアスプレー(Hairspray)は1987年のオリジナル同名映画(ジョン・ウォーターズ監督によるコメディ映画)を原作に舞台化し、2003年度のトニー賞で8部門を獲得した、大人気ブロードウェイ・ミュージカル劇を『シカゴ』の製作陣が映画化したものです。ジョン・トラヴォルタが特殊メイクで巨漢の女性を演じた事でも話題を呼びました。オリジナル映画から、ヒロインは新人を起用することや、母親のエドナ役は男性俳優が演じること等は、今回もしっかり踏襲しています。ヒロインを演じるのは、1000人以上の中から選出された18歳のシンデレラ・ガール、ニッキー・ブロンスキー。さらにエドナ役には、『シカゴ』への出演を3度断ったジョン・トラヴォルタを、約1年かけて口説き落としたそうです。この母と娘2人の息が不思議なほどピッタリだし、ニッキーから溢れ出る(!)“幸せ”パワーと言ったら、人種差別というシリアスな問題に話がいっても、ハッピーな作品の雰囲気がまったく色褪せません。ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン、「ハイスクール・ミュージカル」で大人気のザック・エフロンなど、豪華な脇役陣の歌う各ナンバーも最高です(※文末参照)。60年代のヒットナンバーをあえて使わず、このミュージカルのために作曲したナンバーにしたのが、より良い結果につながった気がします。また映像は、60年代の小道具を使いつつも、現代のビデオクリップを観ている人でも飽きさせないような躍動感溢れるもので楽しめます。参考までに、1988年版の監督のジョン・ウォーターズは、「近所の露出狂のおじさん」役で少し顔を出しています。また、ジョン・ウォーターズ版で父親ウィルバーを演じたジェリー・スティラーが洋品店の主人役で出演しています。
 映画冒頭からまさに「ブロードウェイミュージカル」って感じのノリのいい曲に元気一杯の歌詞。朝だっていうのに主人公のトレイシーのテンションの高さ。始まってすぐにHAIR SPRAYの世界に引き込まれます。キャラクター達も魅力的です。ダサかっこいい主人公の憧れの人、リンク。見た目はド迫力なのに、実は乙女な主人公のママ。いつもは頼れる存在なのに、天然でどこか抜けてる主人公のパパ。そして、何と言っても主人公のトレイシー。彼女が持ち前の明るさとパワーで困難に立ち向かい、周りの人を変えて、勇気を与える姿があなたにも届きます。冷静に考えるとストーリー的に無理がある所もありますが、これはミュージカル、音楽、テンポの良さ、そして主人公トレイシーのパワーと底抜けの明るさがあれば大丈夫って思えます。彼女はとても活き活きしてます。踊っているときの笑顔と言ったらホントにキュートです。でも一番可愛いのは、なんと言っても母親役のジョン・トラボルタです。スタイルで勝負しているダンサーよりも年齢・性別を通り越して全然素敵なのです。彼女(?)だけでも見る価値があります。歌も踊りも見てるだけで楽しい気分になります。つらい時、ちょっと落ち込んでいる時にでも前向きな気持ちになれる、明るくてハッピーな映画です。
 
 1962年、アメリカ合衆国ボルチモアに住む16歳のトレイシーは、ダンスとおしゃれが大好きなビックサイズの女の子。夢はヘアスプレー企業が贈る、ティーンに人気なボルチモアで最高にホットなダンステレビ番組『コーニー・コリンズ・ショー』に出演して憧れの人気ダンサー、リンクと踊るという、体型など一向に気にしない天真爛漫ぶりであった。
 ある日、ショーのメンバーのオーディションが開催されることを知ったトレイシーは一生のチャンスと思い、受けさせて欲しいと両親にお願いする。巨漢の母親エドナは、体型の事を言われてトレイシーが傷つくのではないかと心配して反対する。しかし父親のウィルバーから「ビッグなのだからビッグになれ」と激励され、明るく前向きに生きるトレーシーは学校を休み、オーディションに飛び込み参加する。結果は、番組のプロデューサーのヴェルマから、太っているとの理由で一方的に落とされてしまう。その日、オーディションのために遅刻したトレイシーは居残りをさせられることになり、教室に向かうと、そこではシーウィードを始めとする黒人の生徒達が踊っていた。すぐに皆と打ち解け、教えてもらったR&Bのステップを踏むトレイシーをリンクが目撃、「君なら番組に出られる」と言われてトレイシーは有頂天。また、トレイシーの親友ペニーはシーウィードと恋に落ちる。その後、学校のダンスパーティーにたまたまいたコーニーのお眼鏡に叶い、コーニー自らのスカウトにより番組出演の夢が叶う。トレイシーのおかげでヘアスプレーは売れ、スポンサーも大喜び。初めは反対していたエドナもテレビで活躍する娘の姿に父親ウィルバーと共に娘を応援するようになる。それと共に、今まで家事とクリーニングの仕事だけで家に引きこもりがちだった生活から、外の世界へと足を踏み出す変化を遂げる。しかしプロデューサーのヴェルマはトレイシーの成功が面白くなく、父親のウィルバーを誘惑しようとしたり、あの手この手でトレイシーを番組から追い出そうとしはじめる。
 『コーニー・コリンズ・ショー』には月に1回“ニガー・デー”(劇中訳では“ブラック・デー”)という黒人のみが出演する日があったが、司会者のコーニー・コリンズは差別の廃止を提案。しかしヴェルマは聞く耳を持たず、“ニガー・デー”自体を廃止してしまう。気落ちした黒人たちは、トレイシーの発案でテレビ局までデモ行進をすることにする。デモはつつがなく進行したが、テレビ局の前で警官ともみ合いになり、逃げたトレイシーは警察から追われる身となってしまう。明日は「ミス・ヘ アスプレー・コンテスト」。トレイシーはコンテストに出場できるのだろうか…?
 

1. グッド・モーニング・ボルチモア:ニッキー・ブロンスキー オープニング場面で、トレーシーがダンサーになる夢を元気いっぱい歌うナンバー。
2. ザ・ナイセスト・キッズ・イン・タウン:ジェームズ・マースデン ボルティモア中の高校生が夢中のTV番組「コーニー・コリンズ・ショー」のオープニング曲。
3. イット・テイクス・トゥー:ザック・エフロン 番組の中でリンクが歌うドゥーワップ・ソング。
4. (ザ・レジェンド・オブ・)ミス・ボルチモア・クラブス:ミシェル・ファイファー 番組のプロデューサー、ヴェルマが昔の栄光を貫禄たっぷりに歌います。
5. アイ・キャン・ヒア・ザ・ベルズ:ニッキー・ブロンスキー 憧れのリンクと急接近したトレーシーが、乙女心を歌ったラブソング。
6. レディーズ・チョイス:ザック・エフロン 映画版のための新曲。オーディション場面でリンクが歌います。
7. ザ・ニュー・ガール・イン・タウン:ブリタニー・スノウ アンバーが番組の中で歌うガールズ・ポップ。ミュージカル版では未使用曲ですが、今回の映画版で陽の目を見ました。
8. ウェルカム・トゥ・ザ・60s:ニッキー・ブロンスキー&ジョン・トラヴォルタ トレーシーが母エドナを外に連れ出す場面で、二人が歌うデュエット。
9. ラン・アンド・テル・ザット!:イライジャ・ケリー トレーシーの友人、シーウィードが黒人の素晴しさを歌うソウルフルなナンバー。
10. ビッグ・ブロンド・アンド・ビューティフル:クイーン・ラティファ 黒人居住区を初めて訪れたトレーシーたちを、シーウィードの母メイベルが迎えるブルース。 11. ビッグ・ブロンド・アンド・ビューティフル(リプライズ):
ジョン・トラヴォルタ&ミシェル・ファイファー
映画版のための新アレンジ。ヴェルマがトレーシーの父ウィルバーを誘惑する場面で使用。
12. (ユアー・)タイムレス・トゥ・ミー:ジョン・トラヴォルタ&クリストファー・ウォーケン
エドナとウィルバーが夫婦愛を確かめ合う、ゴージャスなデュエット。
13. アイ・ノウ・ホエア・アイヴ・ビーン:クイーン・ラティファ
公民権を求めるメイベルたちが、抗議デモで歌う感動的なナンバー。
14. ウィズアウト・ラヴ:ザック・エフロン、ニッキー・ブロンスキー、イライジャ・ケリー、アマンダ・バインズ
リンクがトレーシーへの想いを歌い上げるラブソング。
15. (イッツ・)ヘアスプレー:ジェームズ・マースデン
生放送番組「ミス・ヘアスプレー・コンテスト」のオープニング曲。
16. ユー・キャント・ストップ・ザ・ビート:
ニッキー・ブロンスキー、ザック・エフロン、アマンダ・バインズ、イライジャ・ケリー、ジョン・トラヴォルタ、クイーン・ラティファ
コンテストのクライマックスを盛り上げる、圧巻のアンサンブル・ナンバー。
17. カム・ソー・ファー(ゴット・ソー・ファー・トゥ・ゴー):
クイーン・ラティファ、ニッキー・ブロンスキー、ザック・エフロン、イライジャ・ケリー 映画版のための新曲。エンドロールで流れます。
18. クーティーズ:エイミー・アレン
エンドロール使用曲。
19. ママ、アイム・ア・ビッグ・ガール・ナウ:リッキー・レイク、マリッサ・ジャレット・ウィノカー、ニッキー・ブロンスキー

最後にクィーン・ラティファが歌っていたお気に入りのフレーズを!
 「♪自分を見て あなたは最高に魅力的♪」

グラディエーター Gladiator

2008年04月30日 | Weblog
監督:リドリー・スコット
製作:ダグラス・ウィック
デイヴィッド・フランゾーニ
ブランコ・ラスティグ
原案:デイヴィッド・フランゾーニ
脚本:デイヴィッド・フランゾーニ
ジョン・ローガン
ウィリアム・ニコルソン
撮影:ジョン・マシーソン
音楽:ハンス・ジマー
リサ・ジェラール
美術:アーサー・マックス
編集:ピエトロ・スカラ
衣装(デザイン):ジャンティ・イェーツ
出演:
ラッセル・クロウ:マキシマス
ホアキン・フェニックス:コモドゥス(皇子)
コニー・ニールセン:ルッシラ(皇女:ラテン語的には「ルキラ」)
オリヴァー・リード:プロキシモ(ラニスタ)←遺作となる
リチャード・ハリス:マルクス・アウレリウス
ジャイモン・ハンスゥ:ジュバ(マキシマスと同じ時期にプロキシモに買われた剣闘士仲間):
トーマス・アラナ:クイントゥス(マキシマスの副官)
ラルフ・モーラー:ハーゲン(ゲルマン人の剣闘士)
デレク・ジャコビ:グラックス(元老院議員)
ジョン・シュラプネル:ガイアス(元老院議員)
デービット・スコフィールド:ファルコ(元老院議員)
スペンサー・トリート・クラーク:ルシアス(ルッシラの息子で皇位継承権保持者)
デービッド・ヘミングス:カシウス(ローマの興行師)
トミー・フラナガン:キケロ(マキシマスの執事)

第73回アカデミー賞…作品賞/主演男優賞/衣装デザイン賞/視覚効果賞/音響賞
第58回ゴールデングローブ賞…ドラマ部門作品賞/音楽賞
第54回英国アカデミー賞…ドラマ部門作品賞/撮影賞/プロダクションデザイン賞/編集賞/観客賞
第6回放送映画批評家協会賞
作品賞/主演男優賞/撮影賞/美術賞
第10回MTVムービー・アワード…作品賞
第63回ヨーロッパ映画賞 インターナショナル作品賞 ノミネート
第24回日本アカデミー賞 優秀外国作品賞
第74回キネマ旬報ベスト・テン 外国語映画部門第8位
2000/米/155min. ☆☆☆☆☆

 リドリー・スコット監督が放つ、構想5年、総製作費1億ドルという一大スペクタクル・ドラマです。古代ローマ帝国を舞台に、陰謀に陥れられた英雄であり将軍の死闘をダイナミックに描きます。もともと原案のデビッド・フランゾーニが古代ローマが舞台の物語を作りたいとプロデューサーに相談し、リドリー・スコット監督に白羽の矢が立ちました。 最新のCGIで再現された美しいローマ帝国と迫力溢れるファイト・シーンは観る者を古代ローマ時代へと誘います。それは時として残酷で、狂おしいほど切なく、そして内に秘めた激しい憎しみのぶつかりあいでもあります。巨大コロシアムに響き渡る「殺せ!」という観衆の叫び声、次々と繰り広げられる見るも無惨な殺人ゲーム、このおぞましい競技が実際に紀元80年頃にローマで行われていたと考えるだけで悲痛な思いが隠せません。でも、何より英雄マキシマスの格好良すぎる生き方に惚れ込んでしまうのです。無敵の剣闘士役を演じた、ラッセル・クロウが秀逸です。また、CGで描かれた巨大コロシアムや剣闘シーンの迫力映像も見どころです。グラディエーターとは、古代ローマ帝国時代の大衆への見世物として、巨大コロシアムで人間同士又は猛獣を相手に死ぬまで戦いを強いられた剣闘士のことです。時は西暦180年。巨大コロシアムで戦うグラディエーターの中に、自らの野望しかない皇帝によって愛する妻子を殺され、英雄から奴隷の身におとしいれられたマキシマス将軍がいた。彼は妻子の復讐のために真のグラディエーターとなるべく戦い続けるのであった。真のグラディエターとは?欲望、嫉妬と邪悪な空気が渦巻く中、妻子への愛の信念を貫くマキシマスにラッセル・クロウが扮しています。強さの中に憂いを含む見事な彼の演技によって、戦闘シーンが苦手な女性にもおすすめできます。彼は本作でアカデミー主演男優賞を獲得しました。ラッセル・クロウの日本武士道的な謙虚な将軍の演技と、ホアキン・フェニックスの欲深いが精神的に弱い皇帝の表現が、最高にいかしています。また、リドリー・スコット監督を虜にしたという古代ローマの再現は圧巻。第73回アカデミー賞で5部門受賞(上記参照)しました。<拍手>
 一見、単に「復讐劇」だけと見れば、単なる「娯楽作品」に成るが、そうとは違うと思います。何故、闘技場で2度も殺すチャンスが有りながら殺さなかったか。自分の家族だけの復讐だけなら、その場で殺せば済む筈なのに。それは、きっと家族だけではなく、亡きマルクス皇帝とローマの事を考えての事とすれば理解できます。家族の復習心をおさえてまでも、皇帝が抱いていた真のローマを取り戻す為に最後まで尽くす姿が凄く痛々しいのです。特に、死の瀬戸際まで自らの事よりローマの事を考える姿には涙しました。加えてお薦め出来るのが、この映画の音響&効果音の絶妙なフィーリングの一体感です。この映画がほとんどのシーンには、音楽が流れていて、シーン毎に変わる選曲のセンスが最高です。
 舞台は西暦180年帝政期ローマ、五賢帝の1人マルクス・アウレリウス帝はローマ帝国拡大の最後の仕上げとしてゲルマニア遠征の地にあった。皇帝に絶大な信頼を置かれていた将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)は、次期皇帝の任を依頼される。しかしその晩、皇帝は息子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)によって暗殺。コモドゥスが新皇帝になった時、マキシマスは処刑の危機に陥り、愛する妻子の命まで奪われてしまう。なんとか生き延びたマキシマスはグラディエーター(剣闘士)となって、復讐の時を待つのだった。
北方軍団の長、将軍マキシマスはゲルマン人の族長に使者を通じて降伏勧告をするが、戻って来たのは斬首され胴体のみが馬に括り付けられた使者であった。マキシマスはゲルマン人に降伏の意思が無いと悟り、全軍に攻撃を命ずる。後方からカタパルトや火矢の援護射撃を受けながら統制の取れた重装歩兵部隊が林の中に陣取るゲルマン人陣地へと殺到し、マキシマスに率いられた騎兵部隊はゲルマン人陣地の背後から急襲した。マキシマスの巧みな用兵術により、ローマ軍は鮮やかな勝利を収める。的確な判断で戦況を把握し、かつ端々の一兵卒に至るまでの絶大な信頼を得ているマキシマスに対しアウレリウスは頼もしさを感じた。だがそれに引き換え、戦場に到着しても陣地の奥に引き篭もっているばかりで兵士たちを労おうとはせずに、雄ウシの生贄を神に捧げる事を申し出る皇子コモドゥスにやるせない思いを感じ、帝国の将来を皇子コモドゥスに託す事の不可を確信するのであった。アウレリウス帝はローマ帝国の現状を危惧し、かつ自分の余命がこの先長くない事を悟っていた。帝国を立て直すには帝政を廃し政治を本来の姿である共 和制に戻す以外にないと考えていた。そして、それが実現するまでの暫定的な処置として全ての権限を将軍マキシマスに託そうとし、これを宣言するために皇子コモドゥス、 皇女ルッシラ、元老院議員ガイアス、ファルコを前線に招いたのであった。だが、マキシマスはこの申し出を辞退し、かつ戦いの恩賞として故郷への一時帰還の許しを申し出るのみであった。このようなマキシマスの態度に対しアウレリウスは益々信頼を深めて行った。マキシマスがアウレリウスの陣屋を離れた後、コモドゥスが父アウレリウスに呼ばれて陣屋を訪れるのだが、父の口よりこの意向を聞いたコモドゥスは激昂した。自分が父の後継者に指名されるとばかり思い込んでいたコモドゥスは、怒りに任せて父を抱擁したまま胸の中で窒息死させてしまう。そしてコモドゥスは自分の過ちに気付くのだが、皇帝の地位への野心に蝕まれていた彼は父アウレリウスの考えが議員たちに伝わるのを怖れ、側近のクゥイントスに命じて「皇帝アウレリウス病没」と発表させた。コモドゥスは早速、父アウレリウスの亡骸の前に肉親であり姉の皇女ルッシラを呼び寄せ、皇帝即位の服従を誓わせる。ルッシラはこの事実を察するが保身のため弟への忠誠を誓う。
コモドゥスはマキシマスにも自分への忠誠を求めるが、余りの事態の急変に彼は皇帝の死に疑問を感じこれを拒否する。コモドゥスはこれを「自分への反逆」とするに託けて、父の意図に反して父を暗殺した事実を知っているであろうマキシマスの口封じの為、側近で近衛兵のクゥイントスに処刑を命じる。陣屋に雪崩れ込んで来たクゥイントスと兵たちを前に一時は大人しく従ったマキシマスだったが、故郷の妻子の元に処刑部隊が送り込まれたと知ると逆上する。ローマ軍陣地の外の深い森の中へ連行され、その場で処刑されるマキシマスだったが、処刑の寸前でマキシマスは兵士を倒し、処刑部隊が妻子を処刑する前に救おうと馬を急がせるのだが、故郷に辿り着いた時には時既に遅く、焼き打ちされて破壊された家の前に柱から吊るされた妻と子の 変わり果てた姿を目にする事になる。
その後、ローマ市民権を剥奪され路傍で行き倒れになっていたマキシマスは、奴隷商人により剣闘士としてラニスタ(剣闘士教官)のプロキシモに売られる。初めは頑なに剣闘士になる事を拒むマキシマスではあったが、生きる為に戦いに臨むようジュバに諭される。やがて地方の円形闘技場でイスパーニャ(=スペイン人)の名で剣闘試合に名を馳せるようになった彼は、卓越した剣技で敵を倒し続けた。前歴が北方方面軍司令官(将軍)であったという事も剣闘士仲間の間に知れ渡る様になる。しかしながら、マキシマスの鮮やかではあるが面白味に乏しい闘技のやり方にプロキシモ(プロキシモ自身も元剣闘士で、アウレリウス帝に自由を与えられた過去を持つ)は喜ばず、「自由になりたければ、自分のように観衆を喜ばす術を会得せよ」と忠告する。
その一方、帝位に就いたコモドゥスはローマに凱旋将軍さながら帰還するが、市民の反応は冷やかなものであった。この状況を打開するために彼は、先帝アウレリウスが禁止したローマのコロセウムでの剣闘試合を復活させ、結果的にその事によって民衆の支持を得る事に成功する。噂を聞き付け、もう一旗揚げようと剣闘士を引き連れてローマに乗り込んだプロキシモであったが、当てがわれたのは<一方的な殺戮を受ける事が前提の試合>であった。彼はそのような試合に選り選りの剣闘士を出場させる事は出来ないと興行師のカシウスに抗議するが受け入れられなかった。
試合は第二次ポエニ戦争のザマの戦いを模したもので、ハンニバル率いるカルタゴ軍を演じるプロキシモの剣闘士達は、スキピオ・アフリカヌス軍団を演じるチャリオットに乗ったローマ軍正規兵と思われる兵士たちに射られて嬲り殺しに遭い、ローマの勝利の再現に観客たちが喜ぶという筋書きであった。
ところが蓋を開けてみると、マキシマスが将軍と呼ばれた頃の用兵術を彷彿とさせるかの様に幾多の剣闘を潜り抜けて来た剣闘士たち(この中には嘗ての マキシマスの部下のローマ兵で、ゲルマニアでの苦難を共にしながらも剣闘士に身を落とした部下も混じっていた)を指揮し、密集隊形を組ませて攻撃を楯で受け止め、相手の混乱に乗じて反撃する戦術が功を奏し、結果は予想(史実に沿った筋書き)に反して、プロキシモ側の完全勝利となった。
新皇帝コモドゥスは、顔面を覆う形状の兜を被り、観衆からイスパーニャと呼ばれている男がかつてのマキシマスである事は知る由もなく、彼の卓越した指揮と武勇を賞賛し、自ら闘技場へ降りて行き声を掛けようとした。折れた鏃を隠し持ちその場で皇帝暗殺を企てるマキシマスであったが、近づいてくるコモドゥスの傍らに皇子ルシアスがいるのを見て諦めざるを得なかった。皇帝から名を名乗るよう声を掛けられたイスパーニャことマキシマスは「名も無き剣闘士」とのみ答え、皇帝に背を向け競技場を去ろうとしたが、コモドゥスはこれを非礼と解して激怒し、再び名乗りを上げるよう声を荒げた。それに対しマキシマスはゆっくりとマスクを外して振り返って名を名乗り、更に家族を殺され身分を剥奪されて殺されそうになった恨みを必ず晴らすと伝える。マキシマスの姿を目前にしながら彼は声を上げる事も出来なかった。皇帝の顔色を伺い剣闘士たちを取り囲む親衛隊の間に緊張が走ったが、剣闘士たちがマキシマスの周りを取り囲むように立ったのと同時に観衆の中から「生かせ!」コールが何処からとも無く上がり、その声は闘技場を埋め尽くした。生殺与奪の権限は皇帝にあったが、喚声と親指を立てた拳を上向きに振る(これは剣闘士の助命を求めるサインである。言うまでも無く、下向きは殺す事を示す)動きが沸き起こり、皇帝は彼をその 場で殺す事は諦めざるを得なかった。
皇帝といえども民衆の声に逆らう事は出来なかったのである。親衛隊の兵士も嘗ての英雄に対し尊敬の念を表情から隠すことはできなかった。マキシマスたちは闘技場を後にし、闘技場には鳴り響く民衆の歓喜の声と皇帝の引き攣った形相がそれを見送った。コンモドゥスはマキシマスを抹殺を諦めた訳ではなかった。しかし、民衆に人気が高いマキシマスを抹殺するのに暗殺は出来無い。暗殺は確実ではあるがアンフェアな手段であり、状況として皇帝の信用失墜の恐れがあった。よって、あくまでも民衆の目の前でフェアな状態においてマキシマスに死を与えるしかなかった。そこでコンモドゥスは一計を案じた。それは既に引退していた伝説の剣闘士ガイアのテグネスを再び呼び戻し、マキシマスと戦わせる事であった。ただ単に戦わせるだけでなく、闘技場にはマキシマス抹殺の恐るべき仕掛けが施されていた。それは闘技場の下に獰猛なトラを隠しておき、テグネスとの戦闘の最中に トラを出してマキシマスに向かって放つ事(トラは鎖で繋がれており、その鎖を引っ張って制御する従者たちは、マキシマスが近づいた時だけ力を緩めて襲わせ る)であった。よってマキシマスは、「前はテグネス、後ろはトラ」の二方を相手に戦わなくてはいけなくなった。戦いは終始テグネス有利に運び、マキシマスは跳び掛かって来るトラをかわしつつテグネスと闘っていた。やがてトラに跳び付かれてしまい絶体絶命の窮地に立たされるが、トラの咽喉をグラディウスで貫く。瀕死のトラがマキシマスに覆い被さり、マキシマスは動きが取れなくなる。そこへテグネスが襲い掛かって来る。マキシマスは地面に転がりながらもテグネスの二丁の戦斧を何合かかわすが剣を踏まれてしまい、攻撃も防御も出来なくなる。テグネスは止めを刺そうと近寄って来ていた。振り向くとそこにはテグネスが落とした一丁の戦斧が転がってあり、マキシマスは咄嗟にそれを掴むとテグネスの足の甲に向かって振り落ろした。テグネスは戦斧の尖った側(斧の刃と反対 側)で地面に釘付けになった形になり、絶叫してもんどりうって転がった。それをみてゆっくりと起き上がったマキシマスは、戦斧を抜いてやりテグネスの顔を 隠していた鉄製の面当てを戦斧で押し上げた。「殺せ」とテグネスは呟き、それを聞いたマキシマスは戦斧を高々と振り被ったが、親指を下に向けテグネスに止めを刺す事を求める観衆の声に耳を傾けながら、コモドゥスも同様に拳でテグネスを殺すように合図しているのを遠目に確認した。しかし、マキシマスは戦斧を遠くに放り投げて、それを拒否したのであった。その様子を見た観衆は、残忍な皇帝とは正反対の彼の寛容な態度に感じ入って、更なる賞賛の声を彼に送っ た。
親衛隊と共に闘技場に降りて来たコモドゥスはマキシマスに対し、彼の妻と息子の死に様を辛辣に蔑む事で彼を挑発して見せた。これは観衆の面前で自分に歯向かわせ、それを口実に周囲を取り囲んだ親衛隊に彼を殺させる罠である。しかし、この死に様については考えられない内容である事とこれはコモドゥスの挑発であると、マキシマスは看破した。マキシマスは冷静にこれに応え、皇帝の栄光が長くは続かないであろう事を伝え、最後に「殿下」と敬称で呼び捨てて挑発しておいて、静かに目礼し闘技場を後にするのであった。
マキシマスと再会したルッシラは元老院内部の反コモドゥス派を手引きし、かつてマキシマスに執事として仕えていたキケロを連絡係にしてコモドゥス失脚の計画を練る。しかし、ルッシラ達の反乱計画はコンモドゥスに事前に漏れてしまい、反抗勢力はマキシマスも含めて一網打尽にされてしまう。捕らえられたマキシマスは剣闘士として皇帝自身との一騎打ちの場を与えられるが、これはコモドゥスが巧みに考えた陰謀で、観客の前で合法的にマキシマス抹殺を図ると同時に、皇帝の権威を高めようとする計略であった。武力に自信のあるコモドゥスではあったが、歴戦の勇士マキシマスが相手では容易には勝てないと考 え、直接対決直前に四肢を拘束されたマキシマスと面会し、抱擁すると見せ掛けて短刀で背中に深い傷を負わせるハンディを与えた。試合は始まり傷口からの失血で意識が遠のくマキシマスをコモドゥスは容赦なく痛めつけるが、マキシマスは渾身の力を振り絞って反撃に出る。互いに剣を飛ばし合って素手になった2人は、文字通りの「拳闘」で決着を付ける事になるが、どこまでも卑怯なコンモドゥスは脛当ての中から短刀を取り出し、マキシマスを否が応でも殺そうと挑みかかる。しかし、コモドゥスの短刀の突きを間一髪でかわしたマキシマスはコモドゥスの短刀を持った腕を逆手にとり、咽喉元へと突き刺して止めを刺し、 何とかコモドゥスを倒す。だが、既にマキシマスの体力は限界に達していた。彼は余力を振り絞って、投獄されている仲間を釈放するようかつての同僚であり、 決闘の見届け人でその場に居合わせていたクゥイントスに命じると力無く倒れる。闘技場の中央で仰向けに横たわるマキシマスに駆け寄るルッシラは英雄マキシマスを讃え、「命を捧げるだけの価値があるローマ」を創らねばならないと大衆に呼びかける。そしてマキシマスの骸は、彼を讃える人々の手によって静かに闘 技場から担ぎ出されて行った…。

パーフェクト・ストレンジャー PERFECT STRANGER

2008年04月25日 | Weblog
監督: ジェームズ・フォーリー
脚本: トッド・コマーニキ
原案: ジョン・ボーケンキャンプ
製作: エレイン・ゴールドスミス=トーマス
製作総指揮: ロナルド・M・ボズマン、デボラ・シンドラー、チャールズ・ニューワース
撮影監督: アナスタス・N・ミコス
美術: ビル・グルーム
編集: クリストファー・テレフセン
音楽: アントニオ・ピント
キャスティング: トッド・セイラー
共同製作: ステファニー・ステファニー・ラングホフ、ダニエル・A・トーマス
音楽スーパーバイザー: デニス・ルイソ
衣装: レネー・アーリッヒ・カルフス
出演:
ハル・ベリー(ロウィーナ・プライス:元敏腕新聞記者)
ブルース・ウィリス(ハリソン・ヒル:大手広告代理店社長)
ジョヴァンニ・リビシ(マイルズ・ヘイリー:ロウィーナの元同僚、天才ハッカー)
ゲイリー・ドゥーダン(キャメロン:ロウィーナの恋人(?)グレースの元恋人)
ポーラ・ミランダ(ミア・ヒル:ハリソンの猜疑心の強い妻)
ダニエラ・ヴァン・グラス(ジョージィ:ハリソンの秘書「歩く記憶装置」と呼ばれるサイボーグのように忠実な大女)
ニッキー・エイコックス(グレース:ロウィーナの幼なじみ)
リチャード・ポートナウ(ナーロン)
パティ・ダーバンヴィル(エスメラルダ)
クレア・ルイス(ジーナ)
2007/米/110min. ☆☆☆☆

 インターネットをはじめ、様々なコミュニケーション手段が発達した現代において円滑なコミュニケーションを保つには、誰もが何かしらの秘密を持っており、誰もがダークサイドを隠して生きている、そんな現代社会の問題点に注目して、サスペンスへと仕上げたのがこの作品です。ニューヨーク郊外で女性の変死体が発見された事件をきっかけに、被害者の幼馴染みの女性記者が事件の渦中にはまっていくスリラー。監督は『コンフィデンス』のジェームズ・フォーリー。ヒロインの女性記者を『チョコレート』のハル・ベリーが、事件に関わる大富豪を『ダイ・ハード4.0』のブルース・ウィリスが演じます。甘い言葉を囁きまくる彼の演技もなかなか新鮮です。この映画はハル・ベリーとブルース・ウィリスの初共演が1つの売りですが、そのウェイトは4:1くらいで圧倒的にハル・ベリーが上です。要はブルース・ウィリスは刺身のツマ程度の共演で、ほとんどハル・ベリーの単独主演映画という感じです。犯人は大きな秘密を隠したまま“パーフェクト・ストレンジャー”(完璧な別人)となり、スクリーンに現れます。それが誰なのかを探す映画ではないですが、終わりかと思われた辺りから(ラスト7分11秒)明らかになっていく事件の真相は必見です。最後には驚きと共に、人間を信頼することが難しくなった現代の悲哀が感じられるかも知れません。

 半年かけて上院議員のスキャンダル(同性愛)の決定的証拠を入手、同僚マイルズ(オタクなコンピュータのエキスパート)と祝杯をあげるも、上層部の圧力でボツとなり納得できずに会社を辞めた元新聞記者のロウィーナ(ハル・ベリー)。彼女はある夜、幼馴染のグレース(ニッキー・エイコックス)からオンライン・ チャットを通じて知り合い&不倫関係に陥るも、早々とグレースを捨てた、広告代理店のCEOにして大富豪のハリソン・ヒル(ブルース・ウィリス)の話を聞いた。その数日後、グレースは変死体となって発見されてしまう。死の真相がハリソンの口封じではないかと疑ったロウィーナは、大スクープを得るべく独自の調査を開始。元同僚のマイルズの力を再び借り、ロウィーナはキャサリン・ポーグと名前を変えて、派遣社員としてハリソン・ヒル社に入り込むことに成功する。ロウィーナはどんな会社にも居そうな情報通でおしゃべり好きな女性社員から流される情報と、直接ハリソンと交わすようになったチャットによって、表に見える成功者の顔に隠されたハリソンの裏の顔に徐々に迫っていく。ハリソンは、いわゆる大企業のムコ養子。要はハリソン・ヒル社の事実上のオーナーは、美しいが異常に嫉妬深い妻ミア (ポーラ・ミランダ)の父親だから、離婚されたら今のハリソンの地位はパー。もっとも、彼は世間によくあるバカ社長ではなく、仕事はよくできそうな切れ者で、彼が女好きで浮気話が絶えず、過去何人も愛人がいたことをよく知っていた妻のミアは亭主にこれ以上浮気をさせないように、最近「歩く記憶装置」と呼ばれるサイボーグのように忠実な大女ジョージィ(ダニエラ・ヴァン・グラス:アルマーニ・ジーンズやマックスファクターのモデ ル時代を経て女優になった彼女は一見、ミラ・ジョボビッチを連想させるが生まれはアムステルダム)を、ハリソンの秘書としてつけていた。そんな中、後半に入って突然登場するのが、ロウィーナの恋人のキャメロン(ゲイリー・ドゥーダン)。それまで全くアナウンスされていなかったキャメロンが、後半に至って突然ロウィーナの部屋を訪れ、熱い抱擁とキスを交わしているシーンを見ると「なぜ、今頃・・・」と思ってしまう。しかも、そこにマイルズからの電話が入り、2人の熱い雰囲気を察したマイルズが重大なキャメロンの秘密情報をロウィーナに伝えたため、ロウィーナは突然キャメロンに対してぶちキレル。
 つまり、人は誰でも、あなたにも人に知られたくない秘密があるのは当然。殺されたグレースにはどんな秘密が?そして、ハリソンにはどんな秘密が?さらに、一見ロウィーナの補助役に徹しているように見えるマイルズや、 ロウィーナの恋人キャメロンだって、その本人に注目してみれば、あんなこんなの秘密があるはず?すると、この映画で活躍をするロウィーナだって秘密が…。「結末は決して誰にも言わないで下さい」と宣伝にあったので、この映画のクライマックスは忘れたらまた観ます。
 

ホステル  HOSTEL

2008年04月12日 | Weblog
監督:イーライ・ロス
製作:イーライ・ロス
クリス・ブリッグス
マイク・フレイス
製作総指揮:クエンティン・タランティーノ
スコット・スピーゲル
ボアズ・イェーキン
脚本:イーライ・ロス
撮影:ミラン・チャディマ
特殊メイク:グレゴリー・ニコテロ
ハワード・バーガー
プロダクションデザイン:フランコ=ジャコモ・カルボーネ
衣装デザイン:フランコ=ジャコモ・カルボーネ
編集:ジョージ・フォルシー・Jr
音楽:ネイサン・バー
出演:ジェイ・ヘルナンデス(パクストン)
デレク・リチャードソン(ジョッシュ)
エイゾール・グジョンソン(オリー)
バルバラ・ネデルヤコーヴァ(ナタリーア)
ヤナ・カデラブコーヴァ(スベトラニャ)
ヤン・ヴラサーク(オランダ人ビジネスマン)
リック・ホフマン(アメリカ人ビジネスマン)
三池崇史
(特別出演)ジェニファー・リム(加奈)
2005/米/93min. ☆☆☆★

 壮絶な残酷描写が話題を集めたクエンティン・タランティーノ製作総指揮による全米ヒット(公開時『キングコング』や『ナルニア物語』を抜いていきなり全米TOPを記録!とはいえ2週目には1位から転落。)のスプラッター・ホラーです。淫らな欲望を満たそうとヨーロッパを旅する若者らが、想像を絶する恐怖に直面します。監督は「キャビン・フィーバー」のイーライ・ロス。また、ロス監督たっての希望で「クローズZERO」の三池崇史監督の特別出演も実現しました。近年話題になったホラー作品と言えば、『ソウ』を思い出しますが、その作品設定が非現実的で突っ込みどころ満載に対して、この『ホステル』の設定は、現実味を帯びた“あっても不思議ではない。もしかして存在するかも知れない”と言うリアリティさゆえに、いつまでも消えない変な余韻に満ちた作品です。
 美しい町並みの裏に隠された恐ろしいほどの地下社会の現実。もし舞台設定がアメリカでしたら、これほど惹き付ける事は無かったでしょう。でも舞台が旧東ヨーロッパであり、今だベールに閉ざされた社会主義国では、我々が想像出来ない何かが存在しても決して不思議ではありません。入国にもビザが必要だし、強制両替えなどがあり、西の国々とは違い行動は抑制され思うままにはならない部分が多くあります。そしてマフィアが勢力を伸ばし、裏社会を牛耳っているのも事実です。国家公務員である一般市民は、賃金だけでは西側諸国の物品を買うこともままならない状況で、マフィアにちょっとした手引きをしたり、見て見ぬ振りをすれば、いとも簡単に大金を手にすることが出来るのです。このような仕組みの国家だからこそ、どのような犯罪が行われていようが表舞台に引き出される危険性は少なく、暗黙の了解として成り立っていても不思議ではないのです。
 この映画の舞台は、そんな国のとある美しい町に秘密裏に存在する『拷問・殺人クラブ』です。会員は、さまざまな国の裕福な実力者が連なっています。監督のイーライ・ロスは、1万ドルで拷問殺人が出来るというタイのサイト広告を見て、この映画を思いついたそうです。拷問された若者達の絶叫シーンが妙に生々しく、この作品で使われた血液520リットルというのも類を見ないものです。更に数々の拷問用具。それらを見ているだけで、それらがシーンで使われなくとも、想像してしまうのです。本当に悪夢を見ているようです。被害者に日本人女性も登場するのもミソですが、おかしな日本語を話すので、我々日本人からすると苦笑してしまうかも知れません。この映画最大の特徴は、加害者サイドの情報を極力押さえ、被害者サイドの視点で描いているので、観客は映画の中の被害者とある意味一体化して恐怖を体現してしまうところでしょう。そしてもうひとつ忘れてはならないのが、大人の殺人者以上に恐ろしい無垢な(?)子供達の存在です。忽然と集団で姿を現し、盗みたかりはもちろんのこと、暴行・殺人もいとも簡単にやってのけるマフィア予備軍なのです。表情のない子供達の顔を見ていると、大人の殺人者以上に狂気を感じ、薄ら寒いものを感じます。
 バックパッカーをしながらヨーロッパ各地を旅行しているアメリカ人大学生パクストンとジョッシュ。道中出会ったアイスランド人オリーも加わり、刺激を求める3人の旅は次第に過激さを増していく。そんな彼らはオランダのアムステルダムに滞在中、アレックスという若者から、スロバキアのブラティスラヴァに男たちの求める快楽をすべて提供するパラダイスのような“ホステル”があるという情報を入手する。さっそくそこへ向かった3人は、噂のホステルにチェックインするとすぐ、相部屋の魅力的なナタリーアとスベトラニャに期待以上の対応で迎えられ、夢心地のひとときを過ごす。彼女達と深夜まで遊び歩き、翌日目が覚めると、バーで知り合った女性と一緒に帰ってきたはずのオリーがいない。フロントで聞くと朝早く彼はチェックアウトしたという。何も言わずにチエックアウト?何かあったのだろうかと心配するパクストンとジョシュだったが、やがてジョシュも消えパクストンだけが一人残された。
必死に彼らの行方を探すパクストン。彼らの行方を突き止め、そこで目撃したものは、想像を絶する死の拷問の世界だった。やがてパクストンはすべてが仕組まれた罠だったと気付くが、それはあまりにも遅すぎた。彼もジョシュやオリと同様捕われ、得たいの知れない男の餌食になろうとしていた。果たして、彼はこの悪魔のような場所から脱出することが出来るのか…。