mapio's STREETS OF MOVIE

観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

ファイナル・デッドコースター Final Destination 3

2007年10月27日 | Weblog
監督: ジェームズ・ウォン
製作総指揮: リチャード・ブレナー
        トビー・エメリッヒ
        マット・ムーア
製作: クレイグ・ペリー
    グレン・モーガン
    ジェームズ・ウォン
    ウォーレン・ザイド
脚本: ジェームズ・ウォン
    グレン・モーガン
音楽: シャーリー・ウォーカー
撮影: ロバート・マクラクラン
編集: クリス・ウィリンガム
出演:
 メアリー・エリザベス・ウィンステッド:ウェンディ・クリステンセン(ウェンディは愛称、正しくはウェンズデー)
主人公。高校卒業記念で遊びに来た遊園地で、ジェットコースターの大事故を予知 し、その事故で恋人のジェイソンを失う。ケヴィンより180便の爆発事故の話を聞か され、遊園地で撮影したデジタルカメラの画像を手がかりに生存者達を救おうとし最後まで生き残るが…。

 ライアン・メリマン:ケヴィン・フィッシャー
ジェットコースターでウェンディの隣に座っており、ウェンディーと同様に恋人を失う。ガス爆発で焼死しそうになるがウェンディーに救われるが、その後の予兆で地下鉄脱線事故で車外に投げ出され即死する。

 クリスタル・ロウ:アシュリン・ハルペリン
1番目の死亡者の1人。アシュリーと一緒に日焼けサロンで焼感電死。ジェットコースターではアシュリーの隣に座っていた。

 シャーラン・シモンズ:アシュリー・フロインド
1番目の死亡者のもう1人。アシュリンと共に出かけた日焼けサロンのマシンがショートし、焼感電死する。

 サム・イーストン:フランキー・チェックス(フランキーは愛称、正しくはフランクリン)
3番目の死亡者。後ろからトラックに追突され、破壊した車のエンジンに斬首され死亡。高校は二年前に卒業済。

 テキサス・バトル:ルイス・ロメロ
4番目の死亡者。トレーニングジムのマシーンが壊れたのに気付かず使用したため、重りに頭を挟み潰されて死亡。

 アレックス・ジョンソン:エリン・ウルマー
5番目の死亡者でイアンの恋人。イアンが勤める日曜大工用具店で机に向かって転び、その拍子に釘打ち機で頭に釘を打たれ、死亡。

 ペリー・マリノフスキー
ジュリーの友達で6番目の死亡者。ジュリーと一緒にジェットコースターに乗っていた。馬に吹き飛ばされた旗の棒が胸に突き刺さり死亡。

 クリス・レムシュ:イアン・マッキンレー
7番目の死亡者。エリンが死亡した際にウェンディーのせいで恋人のエリンが死んだと思い、ウエンディーに怨みを抱く。花火が直撃し、倒れてきた看板に押しつぶされ死亡。

 アマンダ・クルー:ジュリー・クリステンセン
ウェンディの妹。ウェンディは彼女がジェットコースターに乗っている事に気付かなかった。馬に引きずられ、小麦脱穀機に巻き込まれる所をケヴィンに助けられるが、その後の予兆で、脱線事故で破損し飛ばされてきた列車の車輪に直撃され死亡。

2006/米/93mins.   ☆☆☆

 00年の『ファイナル・デスティネーション』、03年の『デッドコースター』に続く人気ホラーシリーズの第3弾。大惨事の予感を信じて九死に一生を得た若者たちが、取り逃がした命を付け狙う「死」に次々襲われて無残な最後を遂げる物語です。1作目の飛行機事故、2作目のハイウェイでの交通事故に続いて、今回は遊園地で起きたジェットコースターの事故がメイン・アクシデント。このシリーズは原題がすべて『Final Destination』なのですが、日本で勝手に付けた2作目の邦題が、この3作目の内容を「予知」してしまったようです。このシリーズが目指しているのは、徹底した死のエンタテインメント化です。私達の日常にある見慣れた空間の中で、人間がいかにして凄惨な死を迎えるのかを、極端なクローズアップで見せつけます。映画の最初にある大事故も見どころですが、それより興味深いのは、運良く(?)事故から逃れた人間たちが、ひとりまた ひとりと無残な死に遭遇する場面でしょう。飛行機事故も、ハイウェイでの交通事故も、ジェットコースターの脱線も、そう滅多に起こるものではありませんが、そこで事故が起きた、と聞くと人は「そうか」と納得するだけのシチュエーションなのです。しかしそこでは事故を免れた人たちも、まったく安全としか思えない日常生活空間の中で、想定外な方法で運命に殺されていくのです。
 製作・監督・脚本は、シリーズ1作目『ファイナル・デスティネーション』を手がけた、ジェームズ・ウォン(他にジェット・リーの「ザ・ワン」など)とグレン・モーガンのX-ファイルで知られる黄金コンビ。X-ファイル初期の作品では、「スクィーズ」「影」「氷」「海の彼方に」「E.B.E.」「続スクィーズ」と全12話中、6話をこの二人が担当しています。そして注目は今回、編集に加わったクリス・ウィリンガム。彼は「24 TWENTY FOUR」で3度もエミー賞を受賞した人物でテンポ良く物語が進んでいきます。またVFXなどの特殊効果には、「アルマゲドン」の製作スタッフも参加してます。製作のクレーグ・ペリーの代表作は「エグゼクティブ・デシジョン」「身代金」「トゥルーマン・ショー」「シンプル・プラン」などがあり、ヒットメーカーとしてハリウッドでも注目株です。ストーリーは「本来事故で死ぬはずだった男女が、生き残っても次々に死んでいく」というシリーズを踏襲するもので、今作は、デジタルカメラ写真が謎解きのキーとなるものの、「どんな死に方を見せるか」を見どころとして、運命に翻弄される男女がより陰惨に、より残酷でグロい死に方をしていきます。次から次に、人が死んでいく様は、まさにジェットコースタームービーです。最初の死の舞台はアミューズメントパーク。ハイスクールの卒業イベントでやってきた高校生の男女は、ジェットコースターに乗り込んだ瞬間に予知夢を見ます。それはジェットコースターが脱線し、乗客全員が死亡するというものでした。間一髪で男女10人が下車したが、実際に脱線事故は起こってしまう。死を逃れた10人だったが、ジェットコースターに着席していた順に、次々に死んでいく・・・。ラストで地下鉄脱線シーンがあるのだが、2005年4月25日に兵庫県で発生した福知山線脱線事故を彷彿とさせて、イヤな思いをされるかも。次々に多種多様な死に方をしていくのだが、実際に同じような事故を目撃したことのある人や、身内や知人が同じような事故で亡くなった人を持つ人には居た堪れないでしょう。
ヒロインを熱演するのは、『ザ・リング2』のメアリー・E・ウィンステッド。その友人役に、ダコタ・ファニングの出世作『TAKEN』に出演していたライアン・メリマン。偶然か二人は『ザ・リング2』でも共演してます。
 学校の卒業パーティーで遊園地を借り切った高校生たち。だがウェンディはジェットコースターが脱線転覆する夢を見てパニックを起こし、大騒ぎの末、同級生ら数人と共にコースターから追い出されてしまう。彼らの目の前で、ウェンディの予告通りコースターは転覆。彼女の恋人も含む、多くの命が奪われることになった。だが本当の恐怖はここから始まる。ウェンディと共にコースター事故を免れた者たちが、次々に不可解で謎めいた死を遂げ始めたのだ。さらに、コースターの事故直前に遊園地で撮られた写真の中に、その後の死の予告となる映像が写り込んでいる事が分かる。主人公たちはこの写真を手がかりに、迫ってくる死を回避しようと奮闘する。写真のメッセージを読み解いてうまく立ち回れば命が助かるが、それができなければ待っているのは死あるのみ。これは命を賭けた謎解きゲームだ。DEATH NOTEならぬDEATH PHOTO の裏をかき、刻々と迫ってくる死を出し抜くことで、主人公たちはその先にある生を摑もうとする。

ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ Hide and Seek

2007年10月20日 | Weblog
監督: ジョン・ポルソン
製作: バリー・ジョセフソン
    ジョン・ロジャース
製作総指揮: ジョセフ・M・カラッシオロJr
脚本: アリ・スクロスバーグ
撮影: ダリウス・ウォルスキー
編集: ジェフリー・フォード
配役: アマンダ・マッキー・ジョンソン
    キャシー・サンドリッチ
音楽: ジョン・オットマン
出演: ロバート・デ・ニーロ :リチャード・グッドマン
    ダコタ・ファニング :エミリー・グッドマン
    エリザベス・シュー :エリザベス・ヤング
    ファムケ・ヤンセン :キャサリン・カーソン
    エイミー・アーヴィング :アリソン
    ディラン・ベイカー :ハファティ保安官
    ロバート・ジョン・バーク :スティーブン
    メリッサ・レオ :ローラ
    ジェームズ・マキャフリィ :デイビッド
    スチュアート・サマーズ :Doctor
2005/米/102mins. ☆☆☆☆

 「もう、いいかい?」「まあだだよ」「もう、いいかい?」「もういいよ……」
 これは、子ども時代に<かくれんぼ>遊びを体験した人には、お馴染みのフレーズです。このフレーズを耳にすると、私達は幼く純粋で無邪気だった頃へと連れ戻されたりします。そのルールはシンプルで、隠れている仲間を見つけるだけでした。非常に簡単、道具もいらず誰もが参加できるゲーム<かくれんぼ>。時には自身の空想の友達とでさえ、楽しく遊ぶことができます。けれど時として、その友達がリアルに見え過ぎてしまうこともあります。存在しないはずの、彼女にしか「見えない友達」がある一線を超えたとき、禁断の扉は開かれるのです(ミステリー・ゾーン風)。
 先の読めない不気味なストーリー展開と、戦慄の映像体験。ラスト15分間の息もつかせぬどんでん返しの連続。予測のつかないクライマックスと、父と娘の絆が生むヒューマニズム溢れる感動のサスペンス・スリラー。主演を務めるのは、アカデミー賞の主演・助演男優賞をはじめ数々の受賞歴を誇る名優ロバート・デ・ニーロ。妻を亡くし、愛する娘を気遣いながらも、精神的に追いこまれていくリチャード・グッドマン役で、鬼気迫る新たな一面を見せてくれます。また、恐るべき秘密を隠した娘のエミリーに扮するのはハリウッドで若干10歳の人気子役女優、ダコタ・ファニングです。出演作ごとに力量を増し、本作品でも充分な存在感を放って、今までのイメージをうち破る“怖いダコタ”を見せつけます。ブロンドの柔らかい髪に黒褐色のかつらを付け、ちょっと不気味な感じで、心を閉ざした少女になりきったダゴタの演技は必見です。まさにハリウッドを代表する新旧スター2人のリアリティに満ちた競演が、恐怖と感動を倍増します。さらにファムケ・ヤンセン、エリザベス・シュー、エイミー・アーヴィングら、父と娘の恐怖と感動の物語をサポートする多彩な女優陣も本作の大きな魅力です。
 監督は、豪州映画界出身の気鋭ジョン・ポルソンで、スリラーの醍醐味を押さえつつ、予想を裏切るエンディングへと観客を導くことに成功しています。ハイド・アンド・シークとは、日本でいう<かくれんぼ>ですが、静かな湖畔の邸宅で、不気味な影に追われる恐怖感がよく表されています。前半は、見えない恐怖が迫るオカルト・ホラー色が強いのですが、後半からはサスペンスへと雰囲気を変え、この父娘に隠された秘密が明らかになっていきます。また恐怖をあおるジョン・オットマンのスコアも非常にマッチしています。
 9歳のエミリー・グッドマン(ダコタ・ファニング)は両親から溺愛されている一人娘で、何不自由しない幸せな日々を送っていた。父リチャード・グッドマン(ロバート・デ・ニーロ)は医師であり心理学者である成功したキャリアを誇っている。母アリソン(エイミー・アーヴィング)は理想的な妻であり、エミリーを可愛がる母親である。そんなデイビッドとエミリー親子に悲劇が突然訪れた。アリソンが、浴室で手首を切り、自ら命を絶ったのだ。血まみれになった母の姿。それはまだ幼いエミリーにはあまりに大きな衝撃だった。娘は母親の喪失のショックから、想像上の友人をこしらえて悲しみから逃避したり乗り越えようとしたりしている様子。それが父親の気に障り、正体をさかんに知りたがる。「ハイド・アンド・シーク Hide and Seek 」つまり「かくれんぼ」みたいに正体を探り出すということでしょうか。そして、すっかり心を閉ざしてしまったエミリーに対して、心理学者であるデイビッドはなんとか娘の心の傷を癒そうと、ニューヨーク郊外の湖のほとりにある静かな町へと移り住む。同僚キャサリン・カーソン(ファムケ・ヤンセン)や隣人夫婦に手を借りて娘の絶望感に対処しようと必死である。その隣人夫婦、夫スティーヴン(ロバート・ジョン・バーク)と妻ローラ(メリッサ・レオ)も最近に同様の悲劇を味わっている。娘さんが亡くなったのだ。だからエミリーの一家の悲劇は他人事とは思えず、十分に同情してくれる。が、エミリーは周囲と打ち解けようとせず、地下室で"見えない友達"チャーリーと遊ぶようになっていく。しかし幼いエミリー・キャラウェイにとって、チャーリーという空想の友達と遊ぶ<かくれんぼ>のゲームは、もはやシンプルで無邪気な遊びとはかけ離れたものになっていた。それどころか、彼女は自分でも気づかないうちにさまざまな常軌を逸した行動をとり始め、しかもそれはだんだんと悪夢のような色合いを濃くしていく。エミリーの父デビッドですら、止められないほどの大胆かつ異常な行動に。そしてチャーリーの存在が、デイビッド親子の生活を脅かし始めていく。愛する娘のために、デイビッドはすべてを投げ打つ決意をするが、それはさらなる悲劇の序章に過ぎなかった。 
 チャーリーはエミリーの父親リチャードがいなければいいのにと思っている。アルバムからもリチャードの写真を切り取ったくらいだ。リチャードをいなくしてエミリーを独り占めにしたいのだ。一方、リチャードは新年のパーティと妻アリソンの死を頻繁に夢に見て、いまだに悪夢に取り付かれている。可愛い娘の痛手を和らげて、再び父と娘の絆と団欒を取り返したいが、なかなか旨く行かない。そんなだというのに、チャーリーは、夫であるリチャードは僕よりも妻アリソンを‘悦ばす’ことができなかったとエミリーに語り、エミリーはそれを父に伝える。この想像上の友人チャーリーは実はひどく恐ろしい男だった。エミリーの母親アリソンは実は自殺したのではなかった。チャーリーが殺したのだ。チャーリーはアリソンを窒息させて、バスタブの中での自殺のように見せかけた。可愛がっていたネコのセバスチャンもチャーリーが殺して、バスタブに置き、アリソンの自殺を余計に本物らしく見せた。チャーリーはエリザベス(エリザベス・シュー)という女性のことを嫌い、窓から投げ捨てて殺した。それから、アリソンを自殺に見せかけたのと同様にバスタブにエリザベスの死体を入れて、やはり自殺と見せかけた。チャーリーは保安官ハファティ(ディラン・ベイカー)も殺す。エミリーは森の中の洞窟に入っていくが、出て来たときは大好きな人形アレックスを持っていない。その人形はバラバラにされてゴミ箱に捨てられているのが後日見つかった。父リチャードが様々な死体を見つけるのはいつも決まって深夜 2:06だ。彼は死体をゴミ袋に詰めては森に埋めに行く。・・・
 父の同僚キャサリンは、チャーリーから来てと電話がかかってきたのでエミリーの家に来た。そしてチャーリーは自分とエミリーとキャサリンとで、一緒にあるゲームをさせる。『 ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ 』のもう一つのキャッチコピーは「 If you want to know the secret, you have to play the game. (直訳:秘密を知りたければゲームをしなければならない)」というが、ゲームというのは怖いゲームなのだ。エミリーはそれをするのを最初は同意したけれど、キャサリンはエミリーの知り合いでお友達だからチャーリーにやめて欲しいと思う。そして遂にチャーリーが悪者だと分かって例の森の洞窟に走って逃げ込んだ。するとそこには死体がゴロゴロ。森に死体を幾つもその度に埋めに行ったのは誰だ? そう、父リチャードである。ということは、エミリーの想像上の友人チャーリーとは、リチャード・グッドマン博士、つまりエミリーの父親だったのだ。博士は人格障害があって、狂気の沙汰を繰り返し起こしてきたのが自分だということを認識できていなかったのである(現実逃避?)。
 今回、出演時間の少ない母役のエイミー・アーヴィングは「キャリー(76)」「フューリー(78)」など怖い女の子系作品のイメージから抜けれないけど、「コンペティション(80)」ではピアノでクラシックを自ら弾くほどの努力家で好きです。

人形霊  THE DOLL MASTER

2007年10月13日 | Weblog
監督・脚本:チョン・ヨンギ
撮影:チョ・チョルホ
美術:チョン・スア
編集:ナム・ナヨン
   ホソ・ベンチャー・キャピタル
製作:シン・ウソン
出演:イム・ウンギョン(ミナ)
    キム・ユミ(パク・ヘミ)
    オク・ジヨン(チョン・ヨンハ)
    シム・ヒョンタク(キム・テスン)
    チョン・ホジン(チェ・ジヌァン(館長))
    キム・ボヨン(ジェウォン(人形師))
    ナム・ミョンニョル(ジェウォン(人形師))
    イ・ガヨン(イ・ソニョン)
    イム・ヒョンジュン(ホン・ジョンギ)
☆☆☆☆   2004/韓国/89分

 幼い頃に人形やぬいぐるみと遊んだ記憶は、誰しもあることでしょう。名前を付け、人間の友達のように接して愛情を注ぎます。生き物ではない"モノ"に愛情を注ぐとそこには必ず物語が生まれます。そんな誰もが身近に感じる人形を題材にし、忘れさられた人形が復讐の為に人間たちを恐ろしい殺戮に導くのが本作『人形霊』です。愛着のある人形でも、ふと不気味に感じた経験は、誰にでもある筈です。特にその人形の作りが精巧であればあるほど、魂を持つかのような雰囲気を醸し出します。球体関節人形は、肢体が球状の部品で接続され、その微妙な動きが非常に人間に近いことで知られていますが、本作はその特徴を存分に活かした悲しいホラーです。
 美と同時に潜む不気味さをゴシック調の映像世界に描き出し、ホラーと悲劇をミックスさせた独特の世界観を作ったのは、武侠アクション大作『アウトライブ─飛天舞─』の脚本で脚光を浴び、本作が監督デビューとなる新鋭チョン・ヨンギ監督です。初監督作品となる本作で、ホラー映画というジャンルの中に、美しさと悲劇という相反する世界を見事に融合させています。製作費の5分の 1を割り当てて収集された球体関節人形は一見の価値があります。本作では、舞台となる人形ギャラリーの洋館、その至るところに飾り付けられた数十体はあるであろう球体間接人形の美術の美しさが印象的で、等身大のものから大きさも様々、可愛らしいもの、リアルなものなど多種多様な人形が見られます。
 そして『人形霊』の世界観を完成させたのは、何と言ってもミナ役のイム・ウンギョン(『リザレクション』)とヘミ役のキム・ユミ(『ボイス』、TVドラマ『ロマンス』)の存在です。美術館内でヘミを静かに見つめる謎の少女ミナを演じたイム・ウンギョン(大きな瞳が印象的)は、ヘミに対する愛情を健気に訴える控えめな演技から、憎悪を顕わにした強い感情表現までをこなし、神秘的な魅力を本作でも存分に発揮しています。本国では多数のCM出演を始め、本作への出演もきっかけとなり、韓国最大規模のキャラクター展示会「ソウルキャラクターフェア2004」の広報大使にも任命されました。また、ストーリー展開の中心となるヘミを演じたキム・ユミは不可解な出来事に襲われ恐怖に怯えながらも、芯の通ったキャラクターを演じ、その豊かな表現力で観客を作品の世界に引きこむ演技を見せています。劇中に、「生霊は目から入って目から出る」というくだりがありますが、人形たちも役者たちも、その目が強い印象を残し恐怖を引き立てています。
 その昔、着物の似合うひとりの女性に恋をした人形作りの男がいた。彼女への想いから、彼は彼女にそっくりの着物人形を作り同様の愛を注いだ。その彼のまっ すぐな気持ちを受け入れ、やがて二人は結ばれるが、人形は忘れ去られてしまう。そのとき男は知らなかった ─人形も人を"愛せる"ということを─。二人の幸せな日々は長くは続かず、やはり彼女に想いを寄せていた別の男が嫉妬に狂い、彼女を殺してその罪を彼にかぶせてしまう。彼は捕らえられ、無実の罪で殺されてしまう。激しく殴られ、息絶えていく男の目に最期に映ったのは...あの人形の顔であった。
 ―60年後―森の奥深くに建てられた古びた人形ギャラリー。新進気鋭の彫刻家のヘミは、人形のモデルになるため、森の奥深くにある美術館を訪れた。他に美術館のチェ館長と人形師のジェウォン氏によってそこに招かれたのは、野心的な写真家のホンと明るい女学生のソニョン、球体関節人形を愛する少女ヨンハと、飛び入りで参加した男性モデルのテスン。ギャラリーに到着したヘミは、遠くから自分を見つめている少女ミナの存在に気づく。初対面のはずなのに、なぜかミナは自分のことを昔からよく知っていると言う。全くそんな記憶のないヘミだが、いつも寂しそうにしているミナを気遣う。館内は、不気味なほどに精巧で美しい人形に埋め尽くされていた。早速、全員の写真撮影が始まるが、突然、ヨンハが何かに怯え気絶してしまう。その夜、ヨンハの人形が、目が飛び出て首を切られた無残な状態で発見された。誰かが、これは大昔に魂を持った人形を殺すときに使われたやり方だと言う。そしてゲストたちは、自分たちが持つ人形に関する知識について語り始める。話しているうちに、全員が知るそれぞれの故郷に伝わる人形の呪いの話が全く同じであることに気づく。偶然という言葉では表せない、何とも言えない不気味な空気に包まれているような感覚に襲われ、思わず言葉を失うのだった。さらに人形をなくしてから、異常に神経過敏になってしまったヨンハが、何者かに殺される。その体は人形に飾り立てられ、天井の扇風機にぶらさげられてい た。誰が殺したのか?怯えるゲストたちは、静けさに包まれた洋館で起こった事件に、お互いへの疑いをつのらせていく。しかしそれは殺戮劇の序章に過ぎなかった。次にソニョンが二人目の犠牲者となってしまう。ちょうどその時間に姿の見えなかったヘミに、向けられる疑惑の視線。ゲストのひとりであるモデルと称していたテスンは、実は刑事だったのだ。2週間前に山で発見された殺人事件の被害者が、このギャラリーで雇われていたことを知り、捜査のために潜り込んだのだった。一連の殺人事件の犯人をヘミだと思い手錠をかけるテスンと、それを必死に否定するヘミ。そして二人の前に人形師のジェウォンが現れ、語り始めるのだった、捨てられた人形の愛と哀しみの物語を…。
 非常に盛んな韓国映画の中で、単なる恐怖映画でくくっては勿体無い、これもお薦めの逸品です。

マーダー・ライド・ショー HOUSE OF 1000 CORPSES

2007年10月07日 | Weblog
監督・脚本: ロブ・ゾンビ
製作: アンディ・グールド
    ダニエル・シリング・ラヴェット 
    ジョエル・ハッチ 
    ロバート・K・ランバート 
製作総指揮: アンドリュー・D・ギヴン
    ガイ・オゼアリー
撮影: アレックス・ポパス
    トム・リッチモンド
音楽: スコット・ハンフリー
    バック・オーウェンズ
    ラモーンズ(ディー・ディー、ジョーイ、ジョニー、トミー)
    ライオネル・リッチー(song "Brick House 2003")
    スリム・ホィットマン(song "I Remember You")
    ロブ・ゾンビ
編集: キャスリン・ヒモフ
    ロバート・K・ランバート
    ショーン・K・ランバート
    ロバート・W・ヘドランド
出演: シッド・ヘイグ: キャプテン・スポールディング
    ビル・モーズリイ: オーティス・ドリフトウッド
    シェリ・ムーン: ベイビー・ファイアフライ
    カレン・ブラック: マザー・ファイアフライ
    クリス・ハードウィック: ジェリー・ゴールドスミス
    ジェニファー・ジョスティン: メアリー・ノウルズ
    エリン・ダニエルズ: デニーズ・ウィリス
    レイン・ウィルソン: ビル・ハドレー
    トム・タウルズ: ジョージ・ワイデル警部補
    ウォルト・ゴギンズ: スティーヴ・ネイシュ
    ロバート・アレン・ミュークス: ルーファス Jr.
    マシュー・マッグローリー: タイニー
    デニス・フィンプル: グランパ・ヒューゴ・ファイアフライ
    ハリソン・ヤング: ドン・ウィリス
    ウィリアム・バセット: ドレイク・ヒューストン保安官
2002/米/89mins. ☆☆☆☆

 殺人鬼一家が巣くう不気味な屋敷におびき寄せられた運の悪い若者たちが、監督の悪趣味全開の残酷でお気の毒な仕打ちをひたすら受ける、B級テイスト満載のホラームービー。監督のロブ・ゾンビは『マトリックス (1999)』『M:I-2(2000)』『 マトリックス リローデッド(2003)』等で楽曲を担当しているように、本来ミュージシャンです。アメコミとホラー映画で育ったロブ・ゾンビは、怪奇テイスト満載のバンド“ホワイト・ゾンビ”としてロック界に登場しました。' The Zombie A Go Go Record Label 'を所有。プロモーション・ビデオでは、監督として映像世界にもホラー要素を打ち出してきたゾンビですが、映画監督と脚本はこの作品が初めてです。苗字が「ゾンビ」だったらこの映画『 マーダー・ライド・ショー 』にピッタリなんて思いそうですが、本名は Robert Cummings だそうです。そんな彼が発表した映画は、毒々しいカーニバル・ネオン、猟奇殺人、フリークス、残虐映像と、悪趣味で強烈なイメージが続々と画面を飾っていきます。熱狂的なホラーマニアでもあるロブ・ゾンビ監督は音楽の面では専門家なので編集技術に関して熟練しており、映像の面でも編集ということでは同様なので手腕を発揮して、この映画『 マーダー・ライド・ショー 』では奇抜な手法を見せています。怖いシーンになると過去のホラー映画からのカットを白黒で一瞬何コマかずつ写すというフラッシュバックを用いています。コメディタッチ・ホラー・エロを交えた懐古風な数々の印象的シーンに、現在の狂った屋敷内の惨状が猛烈に色彩豊かに描かれます。音楽担当で特筆は『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(2001)』も手掛けたパンク界の大御所ラモーンズ RAMONES です。ベイビー・ファイアフライが、部屋でケラケラ笑いながら人を殺すシーンで、彼らの『NOW I WANNA SNIFF SOME GLUE』が鳴り響いています。このバンドのジョーイ・ラモーンはリンパ腺癌で2001年4月に死亡。ディー・ディー・ラモーンは薬(麻薬?)の摂取し過ぎで2002年6月に亡くなっています。メンバー二人の死後、神格化され始めているラモーンズですが、現役の頃はロジャー・コーマン製作の「ロックンロール・ハイスクール(1979)」に出たり「ペット・セメタリー(1989)」の主題歌を作ったりしてました。他にはライオネル・リッチーなんていう大物も携わっています。
 この作品は『悪魔のいけにえ(1974)THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE 』からヒントを得て作った映画です。車の大学生の男女四人が導かれて寄った家は殺人鬼の狂った一家だった。美しいのにトボケて恐ろしいベイビー・ファイアフライ役のシェリ・ムーンはロブ・ゾンビの実生活の恋人です。この映画が2000年に撮影されていたのに、三年間も封切りされなかったのは、一般公開するのに内容が過激という理由で、製作会社のユニバーサル・ピクチャーズが配給に難色を示していたからです。MPAA( Motion Picture Association of America 米国映画協会)で定められているランクが RどころでなくてNC-17になりそうで、ミラマックス Miramax も降りていました。そこで、編集に編集を重ね、Rをもらえるまで何度も作り直し、遂にNC-17 を回避することができたのです。それで配給会社もライオンズ・ゲイトが受けてくれて、ようやく公開への運びとなりました。余談ですが、Rは Restricted(制限あり)の略で、放送禁止用語な4文字言葉の使用、暴力・性交の暗喩を含みます。また、NC-17は No Children under 17(18歳未満の子供は禁止)の略で、明らかに具体的な暴力・性交の描写を含む場合のことです。
 1977年のハロウィン前夜。ユニークな場所を取材し、全米各地を旅していたビルたち2組の若いカップルは、給油のため立ち寄ったガソリンスタンド(フライドチキン販売もしている)に併設されていた「キャプテン・スポールディングのバケモノ博物館」に立ち寄った。その博物館の名物は、全米の有名な大量殺人鬼の犯罪をマネキンで再現した「マーダー・ライド・ショー」という出し物。そこに登場するドクター・サタンの処刑場がすぐ近くにあると聞いて、4人の若者たちは好奇心からその場所に向かう。途中で美人のヒッチハイカーを拾うが、その後車は立ち往生してしまい、ヒッチハイカーの家に避難させてもらうのだったが、そこで4人は見世物ではない身の毛もよだつ恐怖のショーへと引きずりこまれていく。
 クライマックスに地下壕で登場する化け物はヘヴィメタ・バンドのアルバム・ジャケットに出てきそうなルックス(アイアン・メイデンとかメガデスなんかのジャケ絵を想像して下さい)です。最後、デニーズ1人が最後の力を振り絞って、屋敷を脱出し公道まで歩いて出て行きます。疲労困憊、ぼんやり佇む彼女に、ちょうど車が走ってきた。助かった! それは最初に訪れたガソリンスタンドと博物館とが一緒になった店の主、キャプテン・スポールディングの運転する車でした。病院に連れて行って下さいと、か弱く頼む彼女にスポールディングは体を気遣って言う。「ゆっくり眠っていなさい。」The End に「?マーク」がついていたから、この惨劇は終わってはないってことでしょうか。スポールディングは果たして、あの一家とグルだったのか…。
 この『マーダー・ライド・ショー』は、ストーリーよりもキャラクターの奇抜さや独創的な美術、こだわりのある細部のネタを楽しむ作品なので日本では、限られたマーケットでしか受け入れられないかも知れませんが、ハマる人は思いっきりハマってしまうタイプの映画でしょう。実際、続編も作られているので、パート2にも期待します。