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観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

キャプテン・ウルフ THE PACIFIER

2008年03月09日 | Weblog
監督:アダム・シャンクマン
脚本:トーマス・レノン、ロバート・ベン・ギャラント
製作:ロジャー・バーンバウム、ゲイリー・バーバー、ジョナサン・グリックマン
製作総指揮:アダム・シャンクマン、ジェニファー・ギブゴット、デレク・エヴァンス、ギャレット・グラント、ジョージ・ザック
撮影監督:ピーター・ジェームズ,A.C.S.,A.S.C.
美術:リンダ・デセンナ
編集:クリストファー・グリーンバリー
音楽: ジョン・デブニー
出演:ヴィン・ディーゼル(シェーン・ウルフ)
ブリタニー・スノウ(ゾーイ・プラマー)
マックス・シエリオット(セス・プラマー)
モーガン・ヨーク(ルル・プラマー)
ローガン&キーガン・フーヴァー(ピーター・プラマー)
ボー&ルーク・ヴィンク(タイラー・プラマー)
ローレン・グラハム(クレア・フレッチャー)
フェイス・フォード(ジュリー・プラマー)
キャロル・ケイン(ヘルガ)
ブラッド・ギャレット(マーニー)
クリス・ポッター(ビル・ファウセット大佐)
2005/米/95min. ☆☆☆☆

 ディズニーらしいハートウォーミングなアクション・コメディで、任務遂行のために《ハウスキーパー》をするハメになった無敵のソルジャーの破天荒な2週間を描いた、エンターテイメント・ムービーです。主演は、『トリプルX』で一躍大ブレイクし、ハリウッドのトップ・スターとなったヴィン・ディーゼル。戦場では無敵な彼が“家事をこなす一方で、敵を撃退しなければならない”という、史上最悪の状況に陥った男、《キャプテン・ウルフ》役を熱演します。おむつ替えや、子守唄のダンスを踊ったりと、鍛え抜かれた頑健な男が右往左往する様は、とてもコミカルで、思わずニヤリとさせられます。ヴィン・ディーゼルによって魂を与えられ、ここに、ディズニー史上最も強く、でも本当は、とても心優しい魅力あふれるキャラクターが誕生しました。
 主演のヴィン・ディーゼルの魅力のひとつはそのセクシーな声にもあります。こういうタイプの作品は、極端な話、台詞をあまり聞かず、画面だけ漠然と眺めていても楽しめますのでファミリーものを志向している作品としては、まず順当な配慮と言えるでしょう。対象を子供から大人まで問わずに作品を構築しようという心構えは、そもそも冒頭の、主人公シェーン・ウルフの普通の仕事ぶりを見せつつ本編へと導くためのシークエンスでいきなり窺われます。首尾良く一端は救出対象である教授を敵の船から奪還、任務を完了させたかに見えたところで、教授は家族に連絡しておきたいと言い出します。安全と言える場所に移動できるまで、と説得しますが応じない教授にシェーンは一歩引き、先にヘリコプターに乗って操縦士に指示を出そうとしますが、操縦士は既に息絶えており、慌てて外に出ようとした直前に銃声が鳴り響き、第二弾がシェーンの躰を弾き飛ばします。ここで教授が死んだことで、シェーンが教授宅に乗り込むための道がつけられることになるのですが、幾らでも残酷に描けそうなこのシーンで、カメラは一滴も血を映しません。操縦士が撃たれるシーン等全然無く、教授が襲われたという事実も銃声のみで示し、シェーンが負傷したことはアングルのなかから彼が弾き飛ばされたことで窺い知れるのみなのです。直接銃口を向けられる場面も、血飛沫が舞うような描写も用意せずに、プロローグを終えています。
 事件の背景は戦争絡みながら、あくまで物語のテーマが、海軍の英雄が何の因果か子守りの真似事をさせられ、抵抗を顕わにする子供や無邪気な赤ん坊相手に苦戦するさまを描くことにあるということをよく訴え、随所にアクションを織り交ぜて、クライマックスも危機の連続ながら残酷さの欠片もなく結んでいます。
 そのうえ、クライマックスにおける事件の解決に、ちゃんと中段の珍妙なホーム・コメディでの出来事や描写がきちんと奉仕しているのです。やもするといたずらに暴力性が強調されたり、大団円がこじつけめくファミリー向けもどきもある中で、本編の作りはかなり誠実です。
 起きていること、やっていることは滑稽だけれど、決して主人公やそれに準ずるキャラクターたちが、他人を侮ることで笑いを生もうとしていないことも評価できます。そうした側面が特に明瞭となっているのは、長男セスへの態度です。選択したレスリングにまるで身が入らず、その理由を詳らかにしようとしない彼ですが、やがてひょんなきっかけからシェーンは事情を知ります。知られたことで卑屈になるセスに、シェーンは決して無理矢理レスリングのほうへと走らせることをせず、彼の夢を追い求めることを薦めます。普通のコメディなら、レスリングに対する苦手が判明したところで即、無理にでも覚え込ませようとする場面だが、そこに一呼吸おくことで、相手の個性を馬鹿にしないという態度が明確になっているのです。
 笑いの見せ方にもメリハリが効いています。前段では子供達の食い違いと、まだろくに意思の疎通も出来ない子供二人の世話に四苦八苦する様をそのままコメディとして描いていますが、後半以降はそれを踏まえて、お互いに対する理解の様子そのものにおかしみを滲ませています。セスに関するくだりもさることながら、ゾーイやルルと心を通わせていくその過程がまた心温まりつつも不思議な感じでいいです。
 そしてちゃんと物語の最後には目頭の熱くなるようなシチュエーションもきちんと用意してあります。これだけ揃っていたらもうほとんど文句はありません。強いて言うならヴィン・ディーゼルにもっと弾ける場面が欲しかったことと、もう少しぐらい突出した箇所が欲しかったぐらいでしょうか。

 米海軍特殊部隊の指揮官であるシェーン・ウルフ大尉(ヴィン・ディーゼル)にとって、それは初めての失態だった。核発射阻止のための特殊プログラム、通称“ゴースト”を開発中だったハワード・プラマー教授(テイト・ドノヴァン)が誘拐され、彼を奪還することが使命だったが、成功間近のところで教授は何者かによって殺害、シェーンもまた銃弾を浴びて重傷を負った。二ヶ月後、怪我から回復したものの屈辱感に苛まれるウルフに、新たな任務が下される。それは、博士自らが"ゴースト"を保管した可能性のあるスイスの銀行にプラマー夫人(フェイス・フォード)が出向き、貸金庫のパスワードを模索している間、ハウス・キーパーになって留守宅を警備せよ!というもの。そこで上司のビル・ファウセット大佐(クリス・ポッター)はシェーンに家の警護と侵入者の捕獲を図ると共に、大佐がプラマー夫人のジュリー(フェイス・フォード)を伴い、スイス銀行にある教授の隠し金庫を開けに行く短い間、子供達の面倒を見るように命じる。教授の死に重い責任を感じていたシェーンに異存はなかった。早速教授宅を訪れたシェーンだったが、この任務、意外にもかなり厄介な代物だった。
 プラマー家の子供は総勢五人。長女のゾーイ(ブリタニー・スノウ)は思春期まっただ中で、実のところ教授宅に現れた侵入者の正体は、彼女のところに忍んできたボーイフレンドだったらしい。着任早々ボーイフレンドを捕まえたシェーンは彼にお仕置きとして腕立て伏せ20回を課したりするが、「これでもう二度と来なくなる」とゾーイは怒り心頭のご様子。愛想のない長男のセス(マックス・シエリオット)は無口で、何を考えているか解らないタイプ。ふらっと姿を消したから部屋に閉じ籠もっているかと思えばただトイレに向かっただけだったり、学校ではやたらと軟弱で、受講しているレスリングの担当・マーニー教頭(ブラッド・ギャレット)はじめ生徒たちにも侮られている。おませな次女のルル(モーガン・ヨーク)は低学年だが早くも大人に見られたい年頃のようで、シェーンが幼児として扱うとつむじを曲げる。ガールスカウトの仲間たち共々、かなりおしゃまなところがあるようで、上のふたりに比べるとややシェーンの存在を受け入れるのは早いようだが。
 そしてシェーンにとって最大の難物は次男のピーター(ローガン&キーガン・フーヴァー)と三男タイラー(ボー&ルーク・ヴィンク)である。まだまだ幼いピーターはシェーンたちの手を焼かせ、タイラーに至ってはまだおむつも取れずハイハイしか出来ない赤ん坊。戦いの世界しか知らなかったシェーンにとってこの二人は完全に異世界の存在だった。
 プラマー夫人が発ったいま、何とかして自分のやり方で彼らを監督しようと、シェーンは軍隊式に子供達とベビーシッターのヘルガ(キャロル・ケイン)とをコードネームで呼び、自分を上官として命令には絶対服従するよう指示するが、当然子供達は反発する。ゾーイとセスは彼を追い出そうと罠まで仕掛けるが、運悪くかかってしまったのはヘルガ。結果として彼女は日頃から溜まりに溜まっていた鬱憤を爆発させ、 職場を放棄してしまう。いよいよシェーンは途方に暮れた―子供の面倒どころかおむつ替えさえ学んだことのない彼らに、護衛と子守りとを兼任するなんて、果たして可能なのだろうか。
 子供たちを学校に送り届けるのも、ウルフの仕事。ウルフは観念して後ろにピーターを背負い、前でタイラーを抱え、子供たちをミニバンに乗せて学校に急行。 出迎えた教頭のマーニー(ブラッド・ギャレット)は嫌がるセスにレスリングを強要し、授業をさぼっているゾーイに停学をちらつかせる一見豪腕な奴だが、美人のフレッチャー校長(ローレン・グレアム)には口答えできない矛盾したキャラの持ち主。ウルフがそんな教頭の弱点を一瞬で見抜いたのは言うまでもない。
ある夜、プラマー邸に謎のニンジャ軍団が侵入する。狙いは定かじゃないが、もしかして"ゴースト"は銀行の貸金庫の中ではなく、邸内のどこかに隠されているのかも知れない。ウルフは側にあったモップやほうきを武器に応戦し、奴らを撃退。子供たちを危険から守り抜く。そして、レスリングとは対極にあるミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の練習にこっそり打ち込んでいたセスを勇気づけたり、そのセスの前で憎いマーニーをレスリング試合で打ち負かしたり、本当はパパを亡くして以降、無理して強がっていたゾーイの悲しみを癒したり、etc,…ウルフは徐々に子供たちの信頼を勝ち取っていく。そしてそれは、なかなか寝付けないピーターの前で、プラマー教授が息子のために作ったという子守歌"ピーター・パンダ・ダンス"をウルフが歌って踊った時、より確かなものになる。歌い終えたウルフに向かって、ピーターが「おやすみ、パパ」と呟いたのだ。ウルフはいつしかハウス・キーパーでもベビーシッターでもなく、子供たちにとって紛れもない"父親代わり"になっていた。そんな時、スイスから一報が入り、遂に"ゴースト"の所在が明らかになる。だが、ウルフと子供たちを繋いだ例の"ピーター・パンダ・ダンス"が謎を解く鍵になろうとは…。
 p.s. 映画「サウンド・オブ・ミュージック」でJ・アンドリュースが訪れるトラップ一家の主人フォン・トラップ大佐を演じたのは、クリストファー・プラマー。今回の作品の舞台がプラマー一家と言うのは、偶然の一致!?


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