大雨、雷、洪水、23度、99%
先日の福岡でのこと、実家の荷物も搬出し終えて、随分気持ちが楽になって細々した所用を片付けていました。会わなくてはいけない方もあって、後30分で行きます、などと電話をして急ぎ足。朝早い人通りの少ない商店街をバスを乗り換えるために通りました。昔から変わりばえのしない商店街です。あー、豆を専門に売っている店も健在です。店の造りも昔のまま。急いでいましたから一度は通り過ぎたのですが、戻って硝子の引き戸を開けました。
帰国の度に乾燥豆を買って帰ります。いつもはスーパーで買うのですが、時にはあまりよくない豆に出会います。香港だって、豆はいろいろ種類がありますが、日本の豆は香りがしっかりとしています。この豆の専門店、私が小さい時からあります。母が贔屓にしていた豆屋さんです。引き戸の外からも見えていたのですが、店の中の豆の配列も変わっていません。お店に入るのに、「おはようございます。」などと声を出して入ったのも久しぶりです。奥の部屋から出て見えたのは、私と同じ年配の婦人でした。
いつ見ても、いい豆の品揃えです。北海道産の黒豆と丹波の飛び切りの違いを教えてもらったのも、ここのおばあさんです。お店の人に、おばあさんはお元気ですか?と尋ねたことから、話が弾みました。豆の話、商店街の話、挙げ句は犬の話です。あっという間に時計を見ると30分以上も話し込んでいます。信州の花豆、手亡の白豆、大納言を抱えて急いで店を出ました。
花豆を初めて買ったのも、この店でした。大きな薄紫と紫の斑な豆です。高地で採れる豆で、信州のものが一番味がいいように思います。大きさもひと回り信州の豆が大きいのです。
日本の豆に関わらず、乾燥豆料理が好きです。レンズ豆のスープ、ひよこ豆のカレー、随分古い私のレパートリーです。花豆は、甘い煮豆も、マリネにしてもトマト味で煮込んでもおいしく思います。煮崩れすることがない豆です。私はトマト味でオーブンで煮込む花豆が好きですが、甘い煮豆が好きな主人のために少しだけ取り分けて、マリネを作りました。
乾豆は、一晩漬けて充分に水を吸わせると、後は柔らかくなるまで煮ればいいので、手間がいりません。 タマネギのみじん切りでマリネした花豆です。
くせのある三温糖で甘く煮上げ、最後に蜂蜜で照りを出しました。私はご飯のおかずに甘いものが苦手です。煮豆はいつもお茶請けにいただきます。花豆は大きいので、3時に食べ過ぎると夕飯がいけなくなってしまいます。香港で手に入る花豆、台湾産のものです。日本の花豆は、味も香りもしっかりしています。
久しぶりに入った豆屋さん、昔のままでしたが、ひとつだけ変わっていました。升がなくなって、計りがおかれていました。100gいくらで売られています。
でも、お店の私年配のお嫁さん、おばあさんと変わらずに 紙袋に入れた豆を持たせてくれ、渡し際に手短に豆の炊き方を教えてくれました。豆の味とともに変わらないものがあることに、ホッと安心します。
引っ越しが多く、昔から、とか長年の、というものが皆無の私には、こうして記憶の中に変わらないものがあるのは本当に羨ましいです。
お店の人とどこに行っても、話し込んでしまいます。いつものようにあれあれと慌てる私です。