晴れ、10度、44%
今朝の香港、ぐっと気温が下がって10度近くになりました。冷たい空気の中、まだ明けやらない空の下を走っていると、いつも思い出す話があります。
2年いえ、3年前の12月、東京の北の近県で起きた話です。ある家の、認知症のおばあさんが行方不明になりました。家の者は探しますが見つかりません。もちろん警察にも捜索願を出していたようです。その晩は12月にしては珍しく、気温が氷点下にまで下がったそうです。家の人たちは心配だったに違いありません。翌朝、おばあさんは少し離れた街の公園のベンチで発見されました。空腹と寒さで衰弱しているものの、元気で見つかったのです。でも、そのベンチにいたのはおばあさん一人ではありませんでした。中型の雑種の犬が一緒でした。おばあさん発見のニュースとともに、犬もニュースで報道されました。ほどなく、犬の飼い主が見つかりました。犬もまた、家を出て迷子になっていたのです。その犬の名は、うし。
認知症のおばあさん、きっと、あてどもなく街を歩いていたに違いありません。日が暮れること、お腹がすくこと、自分でも意識していたのでしょうか?一方、うしもお腹をすかせて、街を自分の家の明かりを探しながら歩いていたことでしょう。一体どうやって二人は出会ったのか、歩いているおばあさんにうしが付いて行ったのでしょうか。公園のベンチで座っているおばあさんに、うしがすり寄って行ったのでしょうか。おばあさんが、うしにどんな言葉をかけたかも解りません。ただ、間違いなくおばあさんとうしはお互いの目をじっと見て、言葉以上の何かを感じたのだと思います。
北関東の12月、氷点下の公園のベンチで二人は抱き合って夜を過ごしたのでしょう。うしがいなければ、おばあさんは凍え、亡くなっていたかもしれません。冷たい空気と夜空の星たちの下、二人は数時間を過ごしたのです。
後日ニュースで、うしを迎えに来たご家族を見ました。姉妹とお母さん、うしという名前は、ちょっとのろまな犬だったから、と言っていました。今はご自慢の犬です。おばあさんも、うしもまだ元気でしょうかね?
どこで起こったことかも、すっかり忘れています。私が覚えているのは、うしという名前と、どこにでもいそうな雑種の中型犬のその姿です。
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