うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

爪切りの儀式

2022年07月06日 | カズコさんの事

そろそろ、爪を切ろうと思い、

私は忘れないように、メモを書いた。

『爪切り かずこさん』

 

おはようございます。

普段、猫の爪を切るのに、わざわざメモを書いたりはしない。

そろそろ伸びてきた頃だと気付いた時でもなく、

なんとなく、やる気が出た時に切る程度だ。

 

けれど、きくが居た頃は違った。

きくの爪だけは、切った日時を必ずメモしていた。

あの子の爪は、放っておくと肉球に爪が刺さってしまうくらい、

酷い巻き爪だったからだ。

そんな子に限って、皮肉にも爪切りが大っ嫌いだった。

嫌いという言葉で片付けられないくらい、嫌いだった。

だから、私の気持ちも書いたメモも、実にじれったいものだった。

『10月11日 右手の人差し指』

『10月13日 右手の薬指』

『10月15日 きく激怒により一旦休止』

『10月20日 左手の親指、やったぜ!』

 

きくに騙し討ちは効かない。

何度も騙されれば、折れて諦めてくれるような猫じゃない。

騙せば騙すほど、扱いづらくなる。

きくは、そういう猫だった。

だから私は、きくの機嫌が良さそうな時を見計らって、

あえて、爪切りを見せて、

「1本、切らせて。お願い。」

と、内緒話をするみたいな声で、きくを説得した。

そこで、きくが納得しなければ、切ることは叶わなかった。

逆に言えば、納得すれば切らせてくれたということだ。

 

当時の私は、まるで綱渡りみたいな気持ちで日々を過ごしていた。

あの時、きくが、どうあっても納得しなかったら、

私は、どうしていたんだろう。

捕獲機を使ってでも捕まえて、獣医へ連れて行ったのだろうか。

 

そんなわけで、

私は、『爪切り かずこさん』と書いた時、

ふと、きくを思い出していた。

かずこさんは、昔から身だしなみに余念のない人だったが、

ある日、足の爪が酷く伸びていることに気が付いた。

「かずこさん、足の爪が伸びとるよ。切ったろか?」

「まんだ、そんな伸びとらん。わし自分で切るでええ。」

きっぱりと断われた。

でも、次の日もその次の日も、爪は伸び続けている。

母は、ますます認知機能が衰えてきている。

もう自分で爪の管理は出来なくなっているのだ。

それでも、我が母かずこは、昔から人に頼ることを、誰よりも嫌う。

何でも一人で達者に生きていると思っているのだ。

昔っから、どうしようもなく世話の掛かる人なのにだ。

まるで、あの猫みたい。

そう、ほんと、きくみたい。

とはいえ、

そろそろ、本気で切った方がいいなぁ。

そう思った私は、明日こそは切ろうとメモを書き、

次の朝、カバンに爪切りを入れ、実家へ向かった。

なんだか、ドキドキする。

あぁぁ、このドキドキ感、懐かしい。

また、ピシャリと断られるだろうか・・・

 

「かずこさん、足の爪、切ろうか?」

私は、きくにやっていた時のように、

爪切りを見せて、内緒話をするみたいな声で言った。

すると、椅子に腰かけていた、かずこさんは

「うん」

と頷いて、右足をピーンとこちらへ伸ばした。

「かずこさん、足が高く上がるな~凄い!」

まるで体操選手みたいに美しく伸ばされた右足に、私は笑っちゃった。

笑いながら、足の爪を慎重に切り始めた。

 

この感覚も、知ってる。

きくが死ぬ前の数か月間に味わった感覚だ。

ゴロゴロと喉を鳴らしながら、大人しく抱かれて爪を切らせてくれた時だ。

何年も、爪切りの死闘を繰り返してきたのに、

あの日を境に、きくは爪切りも抱っこも、なんでもさせてくれるようになった。

久し振りに抱いたきくは、子猫みたいに小さくなっていた。

私に体を委ねるきくの頭の上に、私の目から零れる涙が落ちないように

焦って上を向いた。

それでも気付いた頃、きくの頭上は濡れていたというのに、

そんなことは気にもせず、きくは無垢な子猫のように目を細めていた。

あの神経質な猫が、身体を投げ出すように委ねる姿に、

私はさらに泣けてきた。

嬉しいんだか、切ないんだか、よく分からない涙。

 

私は、かずこさんの足の爪を切りながら、

不覚にも泣きそうになって、顔を上げた。

その時のかずこさんは、やっぱり、あの時のきくみたいに

無垢な子供のようだった。

 

そんな、今の我が家のたれ蔵は、

爪切りなんて、へっちゃらぴーで切らせてくれる。

ぴーのぴーだ。

なんかさっきから、ピーピー、ピーピー鳴ってるけど・・・

 

何の音だろうか?

たれ蔵「ピーピー、ピーピー」

 

たれ蔵のイビキなのね?

たれ蔵「ん?」

ごめんごめん、寝てちょうだい。


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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (桜吹雪)
2022-07-06 10:57:06
こんにちは
爪切りと言えばちょうど昨日、九州にいる夫の母親も訪問看護師さんに足の爪を切ってもらってる、そんな映像を見たところです。認知症が進むとそうなんですね、もう伸びていることすら気がつかない。
暑さ寒さも鈍くなって、清潔、不潔もわからなくなって、どんどん、えらいこっちゃ状態になってまいりましたが。
カズコさんは、こうしておかっぱさんがお世話してくれて幸せですね♡
そして、年をとり病気をし、徐々に大人しく小さくなっていく姿は、猫も人間も
同じなんですね。
何だか切ないけど、それが極自然な流れですね。

ちなみにウチの子まうどんは、爪切り拒絶派です。(>_<)
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Unknown (ひいな)
2022-07-06 13:34:09
こんにちは。
私は足の巻き爪を深爪し、出血したのに
「放っておけば治るさぁ~」なんて、
2年も拗らせました。
大きな絆創膏を貼って、冬でもサンダルしか
履けなかったというのに、「治るさ~」と。
結局病院へ行き、日帰りの軽いオペをし、
その流血で貧血を起こしましたが、
1週間で治りました(^^;
何だったんだろう…あの2年間は↓

うちの子達もたれちゃんと同じで、
チョロいです。
でも蓮が拒絶派でした。
きくちゃんと同じく、巻き爪になるので、
危険なのに、爪が犬のように太くて硬いんです。
自力ではどうしようも出来ず、
動物病院で切って貰っていました。
毎回、普段は大人しい子が大暴れしていた苦い想い出です。
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Unknown (チコ)
2022-07-06 14:56:44
こんにちは

爪切り 一つでも色々な思いがある事に感動ですよ(^ー^)
私なんてピーちゃんに半強制でやっています(*_*)💦

おかっぱさんのブログを読みながら、自分の反省点ばかり!
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Unknown (小豆ママ)
2022-07-06 17:02:13
今朝 一番に拝見し 涙が出ました
脳梗塞で寝込んでいた祖母の爪切りをお手伝いしたことを思い出しました
伸びて固くなった爪を爪切りでパチンパチンと切りながら 涙が出ました
更にご飯が食べられなくなった祖母を見舞った時 小さくなった姿を見て 涙が止まりませんでした
大切な人が弱っていく姿を見ることは辛いことです
毎日 おかっぱさんが様子を見てくれるお母さまはしあわせです
お仕事をしながらなので ご無理しないでくださいね
忘れていた祖母との想い出を思い出させてくださり ありがとうございます
朝から しあわせな気持ちになりました
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Unknown (solo_pin)
2022-07-06 19:50:22
こんばんわー。

本当に、おかぱちゃんは
言葉を紡ぐのが上手いなあ。
極上のワインのようだな。
こんな凄まじい表現力の人が
なんで中部の山奥でイノシシ狩って
ひっそり住んでるんだろうなあ。
(中部の山奥でもイノイシ狩りでもねーわ)

きくさんの話も
お母様の話も混ざり合って
切なくて、嬉しくなりますね。
きゅーっと胸が締め付けられるけれど
それでも、顔がほころんでしまいます。

たれちゃんは、ぴーぴーと
いびきかくのですね。
可愛いなー。ぴーぴー。
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Unknown (ポンまま)
2022-07-06 21:49:38
なんかさぁ、不思議だよねぇ。
あんなに母のこと、恨んだり憎んだりしてたのに
無垢な子供みたいになっちゃって
いつの間にかそんな気持ちはすっかり消えてる。
でもそれって、最後には
お前のつまらぬ煩悩を残すなよ、って
仏様がはからってくれてる気がする。
きくさんのこと、思い出すね~。
特に爪切りをなかなかさせてくれなくて
おかっぱさんが懇願してたの、常だったものね。
今日の記事で、あたしはかずえさんの
足裏のタコを、10日に一度くらいケアしてたこと
思い出したよ。それ専用の道具を買ってね。
同居するまでは、病院で切って貰ってたらしいんだけど
「あんたが切ってくれるのが一番痛うのうて
気持ちがええ。こんな汚い足やのに、ごめんね」
って毎回言ってた。切って直ぐは、歩くのも
凄く楽になるみたいでね、厄介な足だったのよ。
そんな小さな出来事が、のちに思い出されて
あたしの気持ちをほっこりさせてくれる。
おかっぱさんも、今の内に沢山沢山思い出を
作ってね。生きてても、離れてしまうと
思い出も作れないからね。
色んな思いもあるだろうけど、やっぱりさ
今こうしておかっぱさんに沢山の手間暇や
愛情を掛けて貰って幸せに過ごすカズコさんは、
悪意のない無垢な人だったんだってことが、
証明されたみたいだなってあたしは思うよ。
無垢なカズコさんだから、無垢なおかっぱさんが
誕生したって訳よね。笑
たれちゃんはいい子!!鳴き声もピーピだけど
いびきもピーピーだったのね~(*^。^*)
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桜吹雪さんへ (おかっぱ)
2022-07-07 05:59:56
桜吹雪さん、おはようございます。
お義母様も、爪はもう自分では切れないんですね。
かずこさんも、ついにそうかっと思いました。
衣服もネズミみたいに、いろんなところに
詰め込んでいて、この土日、とりあえず、
下着類を発掘すべく、かずこさんの部屋をひっくり返そうと
思っております(笑)。
進行が新たなステップへ進むごとに小さな衝撃が走りますよね。
でもほんと、丁度考えてました。
これは、自然な流れ。受け入れて行こうって。

あらら、まうどんは爪切り拒否派なんですね?!
実は、うちののん太も~(笑)。
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ひいなさんへ (おかっぱ)
2022-07-07 06:06:56
ひいなさん、おはようございます。
ひいなさん、巻き爪を2年も自力で我慢していたんですね。
あるある。私も以前は、歯の痛みとかも、
どうにかこうにか我慢してたりしてました。
あれですよ、機が熟さないと行けないんですよね。
いつ行く?今だーって、そういう時が来るんですよね。
そんな私も、巻き爪なんですが、私のは
猫と同じ、
脇ではなく肉球に刺さるタイプなんです(笑)。

れんれんちゃんは、爪切りは苦手だったんですね。
でも肉球に刺さるくらいなら、無理にでも
獣医さんに切ってもらわないと、もっと大変になりますもんね。
ひいなさん、よくぞ踏ん張られましたね。
そうやって、れんれんちゃんは、ひいなさんに
護られていたんですもん。
彼はきっと、それは分かっていたんでしょうね。
それでも、爪切りは嫌なの!ってのが、
猫ってもんですよね。
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チコさんへ (おかっぱ)
2022-07-07 06:10:49
チコさん、おはようございます。
うふふふ、でも、ピーちゃん切らせてくれるんですよね?!
うふふふふ、可愛い~。
きくは狂犬みたいで、とっても恐ろしかったの(笑)。

チコさんは、なにも反省すること、ないですよ~。
ご自身が感じ、選択したこと、
それが、いつだって自分にとってのベストなんですから。
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小豆ちゃんママさんへ (おかっぱ)
2022-07-07 06:17:05
ママさん、おはようございます。
遅れましたが、まめちゃん、2歳になりましたね。
おめでとうございます。
ママさんは、お祖母ちゃんの爪を切って差し上げたんですね。
あのパチンという音は、なんとも切なくて、
でも優しいBGMのようでもありますよね。
静かで愛おしい記憶ですよね。
私こそ、ママさんのそんな思い出を聞かせていただき、
胸がジーンと温かくなりました。
ありがとうございます。
はい、私お得意の「適当」さをフルに発揮して、
これからも、頑張ります!
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