随分と日が短くなり、
会社を出ると、外は黄昏ていた。
おはようございます。
駐車場に出来た水溜りは、2日経ってもまだ乾かず、
そのおかげで、自分の車に乗り込むために20歩だ。
水溜りを避けるための20歩。
忌々しい。
たった20歩が忌々しくて、私は水溜りを睨みつけた。
黄昏時に見る水溜りは、まるで真っ黒でピカピカの石床みたいだ。
「あっ、お金持ちの家にお邪魔した時の玄関の床。」
あれは、なんという名前の石だったんだろう?
きっと、さぞやお金が掛っただろう。
恨めしい。
あの、ピカピカな玄関を作る金があれば、私だったら・・・。
私だったら、その金でなにをしよう?
そう考えていると、私は石のように固く動かない水溜りを、避ける20歩が悔しく思えた。
「こんなもん、避けてたまるか。」
靴を濡らしたって、まっすぐ歩こう。
決意を固めた、ちょうどその時、水溜りに浮かぶイチョウの枯葉がスーッと動いた。
湖の水面を滑る帆船のようだ。
けれど、突っ立っている私の体には、風は感じない。
動いた枯葉を不思議に思い、
私は水溜りの前で両手を着き、めいっぱい低くしゃがみ込んで目を凝らした。
すると、真っ黒に見えていた水溜りは、私の頭上を映し出した。
まだ微かに残る青空と、細長い雲。
そこへ染み込んでいく淡い夕焼け。
私は、水溜りが映す自分の頭上に、息を飲んだ。
そして卑屈なまでに俯く私の忌々しさと恨めしさは、
地面に着いた指先から水溜りの空へ伝い、吸い込まれて消えていった。
「これだから、人生は止められない。」
もう一つ、私には止められないことがある!
たれ蔵~
たれ蔵を、抱っこしちゃうことだ。
たれ蔵の意志ではなく、私が抱っこしちゃうかんね。
うふふ、うふふ、絶景なたれ蔵だ。
たれ蔵「母ちゃん、トイレ中の模様を皆さんに見せて大丈夫なの?」
大丈夫!
謝るから!!