青い花

読書感想とか日々思う事、飼っている柴犬と猫について。

はっさくジャムと焼き菓子

2017-02-09 07:17:17 | 日記

はっさくを沢山頂きました。
生食や寒天ゼリーでは食べきれそうもないので、ジャムを作ってみましたよ。


本当はマーマレードにしたかったのですが、皮の状態が良くないので、実だけを使ってジャムにしました。はっさく五つ分です。
袋から実を取り出して、鍋に入れ、弱火で25分煮ました。


その後、砂糖を投入。
あまり煮詰めると冷めた時に固くなってしまうので、少しユルイかなというくらいの状態で火を留めました。


このくらいの大きさの瓶3つに詰めました。
試食したら案外苦味が強くて、オレンジ・マーマーレードと変わらないくらい。皮を入れなくて良かったと思いました。


瓶に入りきらなかった分は、その日のうちに、パウンドケーキにしてみましたよ。
はっさくの甘苦さを活かしたかったので、油分は控えめにしました。


切り口です。思ったより粒々が目立っていますね。うまくいきました。


つい最近、知り合いから頂いた手作りのオレンジ・マーマレードをチーズと一緒にクッキーに練り込んだら、酸味の爽やかな仕上がりになったので、はっさくジャムも同じ要領でクッキーにしてみました。味はほとんど変わりません。


はっさくジャム×ココア×アーモンドのクッキー。ココアの甘さにほんのりジャムの酸味が混じっています。味的にはアーモンドを入れても入れなくてもどちらでも構いませんが、入れないと見た目が地味になるので飾りとしては有用かと思います。
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凜&桜、六歳

2017-02-06 07:09:32 | 日記
今月で凜と桜が六歳になります。
凜は一八日が誕生日、桜はお野良さんだったので不明。もう中年ですが、相変わらず可愛い二匹です。シッポちゃんズ最高!







散歩コースの公園で撮影。
白梅が三分咲きでした。梅には日本犬が合うと思います。


今年のプレゼント。
凜はフラワーモチーフの首輪。桜はお猿さんの玩具。桜、さっそく玩具に興味津々。


毛皮がモフモフなのでキラキラフラワーが見え難いです。
前の首輪もピンクだったので、なんだか代り映えしない感じ。ブルーかグリーンにしておけば良かったかも…。


桜、アタック!そして、キャッチ!!
丸い部分に音の鳴る玉が入っているのが楽しいらしいです。持ち手についているお猿さんに抱き着いてカミカミしたりもしています。
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きつねのはなし

2017-02-02 07:13:25 | 日記
森見登美彦著『きつねのはなし』は、裏登美彦氏とでも言うべき漆黒の京都怪奇譚。
登美彦氏と言えば、黒髪の乙女、キュートな狸一族、非モテ過ぎて逆に愉しそうな大学生など、フワフワと軽妙洒脱な品が多く、私の好きな作家の一人であるが、本作は地面から少し浮き上がっているような雰囲気はそのままに、その向こう側に得体の知れない生き物が潜んでいる闇を感じさせる薄気味悪い作品集だ。

収録されているのは、「きつねのはなし」、「果実の中の龍」、「魔」、「水神」の四作で、内容は少しずつ繋がっている。
表題作の「きつねのはなし」が最も完成度が高く、これ一作だけで独立した作品として読める。他の三作はこの「きつねのはなし」に寄り掛かった作風だが、連作短編集だと思えば、別に問題はない。

「きつねのはなし」は、大学生の〈私〉が、一乗寺にある古道具店・芳蓮堂でアルバイトをしていたころの話。

店主のナツメさんは30過ぎの美人で、以前は東京に住んでいた。芳蓮堂を営んでいた母親が病に倒れたことを機に京都に移り、芳蓮堂を継いだのだ。
芳蓮堂のバイト代は高くはなかったが、〈私〉は店が暇な時に交わすナツメさんとのお喋りと彼女の振る舞ってくれる手料理が楽しみだった。

鷺森神社の近くに屋敷を構える天城さんは、年は50くらい。芳蓮堂とは古い付き合いだ。
私は、度々天城さんの所に使いに出された。
着流しの袖から骨ばった白い手首を覗かせて薄暗い座敷に座す天城さんは、少し怖い感じがする。あの座敷の雰囲気をいったん味わってしまうと、〈私〉にはナツメさんを行かせる訳にはいかないという義務感が湧いてきた。

ある時、〈私〉は須永さんに渡すはずだった皿を落として割ってしまった。
須永さんは70を超えたお爺さんで、北白川に住んでいる古くからの地主だ。芳蓮堂とも先代から付き合いがある。よく肥えて、布袋様のように朗らかな雰囲気を纏った人だった。

途方に暮れる〈私〉に、ナツメさんは天城さんの所に行くように指示した。
天城さんなら代わりのものを見つけてくれるという。あの人はこういう面倒事を収めるのが得意なのだと。
その際、〈私〉はナツメさんから、お礼は後日ナツメさんが直接持っていくので、〈私〉はどんな些細なものでも決して渡す約束をしないように、と念を押されたのだった。

この後、〈私〉は天城さんの口車に乗って、まんまと電気ヒーターを渡す約束をしてしまう。電気ヒーターは中古のポンコツだったので、〈私〉は気軽に手放した。ナツメさんには話さなかった。そのまま、緩やか年は暮れるかと思われた。
しかし、その時にはもう、〈私〉と恋人の奈緒子は天城さんに絡めとられていたのだ。

天城さんからの電話で、〈私〉は再び屋敷を訪れることになった。
縁側には大きな籠が伏せてあり、そばに寄ると、雨に濡れた犬のような臭いが鼻を突いた。覗き込むと、網目の隙間から一瞬、こちらを睨む人間の眼が見えたような気がした。

知り合いに貰ったケモノだが始末に困る、と言う天城さんに促され、〈私〉は届け物を渡すために例の座敷に上がった。〈私〉は天城さんから、暖房の無い寒い部屋で〈私〉と奈緒子がどうやって温め合ったかを見てきたように語られて苦笑いする。そして、天城さんからある狐の面を探してきてくれたら、電気ヒーターを返そうと持ち掛けられるのだった。

狐面をめぐるナツメさんと須永さん、そして天城さんとの因縁。
ナツメさんが小学生の頃、吉田神社の節分祭で出会った狐面の男は、何故突然泡を吹いて死んだのか?その場に居合わせた天城さんは男が芳蓮堂の主人だったというが、ナツメさんには何故それが分からなかったのか?天城さんともう一人その場にいた須永さんとは、男の死にどんな関わりがあるのか?須永さんが首を吊った理由はそこにあるのか?

天城さんは、どうやって蛙の絵が描かれたスウプ皿に奈緒子を閉じ込めたのか?
ナツメさんは、〈私〉と引き換えに天城さんから何を貰ったのか?
奈緒子を取り戻すために、ナツメさんは天城さんとどんな取引をしたのか?その後、ナツメさんがどうなったのか?座敷で溺死した天城さんの口から転がり出た紅い金魚は、須永さんの黒塗りの盆に描かれた金魚だったのか?
店を辞めて以来、〈私〉は芳蓮堂の界隈に足を踏み入れていない。だから、すべては謎のままだ。天城さんはもういないのに、〈私〉は狐の男の記憶に囚われたままなのだった。

「果実の中の龍」は、〈私〉が大学生の頃に、半年間ほど親交のあった先輩の話。

〈私〉の眼に先輩は随分と博学で経験豊富な人と映った。そんな先輩の話を聞くのが、〈私〉は好きだった。
青森の素封家だという祖父と失踪した兄の確執の話。先輩の同人誌仲間と彼が勉強を教えていた剣道少女が胴の長いケモノと関わり合いになる話。先輩が芳蓮堂でバイトしていた頃に出会った米国人蒐集家の話。その米国人の繋がりで果心居士の如き大道芸人になっていた兄と再会した話。兄と二人でシルクロードを旅した話。
それから、芳蓮堂の使いで鷺森神社そばの屋敷にからくり幻燈を運んだ時に見た狐面をつけたナツメさんと細長いケモノの話。

そのケモノは琵琶湖疎水が堀削された時代に捕らえられたという。
ナツメさんは、ケモノをいずれ元の場所に返してやるのだと言った。その時、先輩はナツメさんから、果実の中でとぐろを巻く龍の根付を貰ったのだ。

それらはすべて、先輩の嘘だという。
先輩は、南禅寺のそばで拾ったシルクロードの旅行記に魅せられ、それを自分の体験談として語り、祖父や兄など架空の人物を作り出し、話に矛盾が生じないように常に自分の言動を黒革のノートに記録していたのだと言う。
嘘だと種明かしされても、〈私〉は最後まで先輩に話をねだった。

「魔」は、〈私〉が御苑の緑がすぐ西に迫る入り組んだ町中の西田酒店でバイトをしていた頃の話。

最初は店員として雇われていた〈私〉だったが、すぐに高一になる次男・修二の家庭教師も務めるようになった。
修二と一つ年上の兄・直也は剣道少年で、御霊神社に近い清風館という道場に入門していた。同門の秋月は、「果実の中の龍」の先輩の話の中に出てくる寺の息子だ。道場には武道具店・夏尾堂の娘・美佳も通っていたが、中学三年の夏に彼女は突然剣道を辞めてしまっていた。彼女も「果実の中の龍」の先輩の話に出ている。

西田酒店のある界隈では、近頃通り魔事件が頻発していた。そして、胴の長い謎のケモノの目撃情報も。
〈私〉は、直也・修二兄弟と秋月、そして夏尾と共にケモノをめぐる騒動に巻き込まれていくのだったが…。

「水神」は、今から五年前、〈私〉の祖父の通夜での出来事。

祖父は鹿ケ谷の屋敷に一人で暮らしていた。
祖父の枕辺では、〈私〉の他に弘一郎伯父、考二郎伯父、そして〈私〉の父である茂雄の四人が寝ずの番をしていた。

祖父の趣味は骨董の蒐集だった。骨董と言ってもほとんどがガラクタばかり。妙ちくりんな幻燈とか、薄気味悪い胴の長いケモノの剝製とか…。11時には芳蓮堂が祖父から預かっていた家宝を持ってくるという。その家宝について祖父以外は誰も何も知らず、二番目の妻・花江さんが亡くなってからは禁句となっていた。

京都における樋口家の開祖は、東京から移り住んだ直次郎である。
〈私〉の高祖父にあたるこの人は、琵琶湖疎水の隧道掘削に蒸気ポンプの技師として携わっていたという。しかし、まだ疎水が完成しないうちに手を引いて事業家に転身した。本家と絶縁した若者がどうやって資金を工面したのか?

大正の終わりに直次郎が開いた盛大かつ奇妙な宴会。その宴会で彼は、死神をもてなしたと噂になった。それから一月後に彼は急逝した。
直次郎に倣うように、曾祖父と祖父も謎の宴会を開いた。曾祖父はそれ以降狂気に至り、祖父は吸い寄せられるように死に近づいて行った。彼らは、誰をもてなしていたのか?

琵琶湖畔出身の花江さんの謎めいた溺死。
その時、屋敷には花江さんと、まだ幼かった茂雄、家事を仕切っていた和子さん、それから祖父しかいなかった。
和子さんは、それから程なくして屋敷を出て行った。
彼女はよく溺れる夢を見て深夜に目を覚ましたという。何処からか聞こえる水音に耳を澄ましていると、澱んだ水の底から何者がじっと自分を見つめている気配がする。花江さんはそれに殺されたに違いない。早く屋敷を出なさい。そう言い残した和子さんは、二度と屋敷を訪れなかった。

水の気配は、私も感じていた。屋敷いっぱいに置かれた水の入った硝子の器。天上で揺らめく水の光。水ばかり欲しがった祖父。幼い茂雄が見た中庭の人魚。この屋敷には何が潜んでいるのか?
それから、芳蓮堂の女主人が持参した百年前の琵琶湖の水。何故こんなものが家宝なのか?

芳蓮堂主人の辞去後、中庭の闇が渦を巻いた。
地面から引き抜かれた竹が宙を飛び、硝子戸を割る。水がドッと座敷に流れ込んできた。放流と竹が祭壇を突き破って〈私〉たちに襲い掛かる。屋敷全体を揺さぶる水は、庭を横切りどこかへと向かって行った。水音に何者かの咆哮が混じっていた…。

物語としての完成度が一番高いのは「きつねのはなし」だが、人物として一番面白いのは「果実の中の龍」の先輩だ。他人の物語を剽窃し、嘘をまぶして自分の物語とした先輩は、ついには姿を消してしまった。奇妙な連中や、謎めいた冒険や、架空の実家の話、嘘と分かってもなお、魅力的な物語を残して。

“「僕はときどき分からなくなる。僕自身のわずかな経験が、自分の作った嘘に飲み込まれてしまうんだ。僕は古本屋でも古道具屋でも働いたことなどないし、シルクロードどころか琵琶湖へ行ったことさえない。骨董をあさる米国人も、読書家の菓子屋も、自伝に取り憑かれた祖父も、大道藝をやる兄も、狐面の怪人も存在しない。それなのに、僕はふと彼らのことを、本当の記憶のように、ありありと想い出している。街中を歩けば彼らに出会うような気がする」”

下宿に立て籠り、京都の街灯と暗闇に思いを馳せた先輩は、自らの嘘に幻惑され、現実を捨ててしまったのだろう。先輩の辿った道の先にあるのは、彼のように熱心に嘘をつき続けた者にしか辿り着けない暗くて神秘的な地点なのだ。
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