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アベノミクス効果の限界とポスト・アベノミクスの議論へ

2014-11-23 12:55:58 | Weblog
周知のとおり、安倍政権は、9月から10月のGDPがマイナスであったことから、消費税増税を先送りにして、衆議院を解散した。アベノミクスの是非を問うという建前であるが、安定政権の維持のための解散という意図は明らかである。
他方、野党は、大義がない解散、アベノミクスは失敗だとの主張を大きくするが、第三極の瓦解、民主党の党勢の減少など弱体化は著しい。
よって、選択の受け皿が乏しい以上、選挙は、反自民、アベノミクスに対する潜在的不満層、つまり無党派層は、棄権するか、消極的支持として自民党にいれるか、野党に入れるかの順位となり、結論的に自公民の組織固定票と合わせて、自公政権の過半数以上の維持は手堅いということは、各ニュース解説のとおりであろう。
つまり、政権延命措置、正確には、従前の2年プラス新規の4年の長期政権維持が保証されるということである。選挙結果によって、またアベノミクスの存続への期待値から株価は上がるであろう。また、手前味噌で政権は、市場が評価したといって、政策の正当化を図っていくであろう。
ここまでのシナリオはだれでもよめる。

問題は、そのあとである。
アベノミクスの2年間の実績のポイントは、第一の矢とよばれる金融緩和政策である。これはアメリカのバーナンキなどからここ10数年いわれていた緩和政策をリフレ派の学者のテコ入れと日銀人事の大幅な変更により、実現したものである。黒田総裁による異次元緩和、バズーカとよばれた効果は、円安の誘導と株価の上昇、そして、インフレ・ターゲットによる物価上昇である。これより、輸出産業の収益のアップ、賃金の上昇、個人消費の活性化をもたらし、景気を循環させることを目論んだ。その景気の下支えとしての第2の矢とよばれる公共事業への財政支出、第3の矢としての経済成長政策である。しかし、建築業界の人手不足、円安による原材料のコストアップ、規制緩和政策の低迷、輸出企業の海外への産業移転が進んでいたことから、伸びは大きくなく、内需も消費増税とくわわり、減少し、中小企業の収益、とくにサービス産業は苦しい状況にある。生活実感としても、年金等の公的給付の引き下げ、物価上昇に賃金上昇が追いつかないなど景気がよくなっているというより、悪くなっているとの感覚も根強い。そして、GDPのマイナスという結果は、これを生活実感を裏付けるものとなった。
こういったことから、現時点のアベノミクスの評価としては、効果があったのは、第一の矢による円安、株価上昇にしかすぎない。実体経済の景気は良くなっていない。むしろ「悪いインフレ」になりつつある。これは金融緩和政策の限界でもある。すなわち、アベノミクスは、日本社会の産業構造の変化、つまり少子高齢化という現実を全く無視した政策をとっているからである。実体経済を動かしているのは、金とモノと人である。昭和30年代の高度成長モデルの復活は、この人的基盤からはありえないのである。この労働人口減少の補填をするには、外国人単純労働者の受け入れしかないが、移民の効果より差別など悪影響で苦しんだヨーロッパ諸国の例もある(移民への悪感情が民族主義と右傾化を促す)。他方、日本の預貯金高は世界的にトップレベルであり、国債の信任とあいまって、不景気ながらも日本が破綻しないのも、このおかげである。しかし、年金の運用の失敗や、財政赤字の改善がすすまない場合は、最後のとりでもクラッシュする可能性はある。
よって、選挙前後を通じて与野党が真剣に議論しなければならないのは、アベノミクスの評価や維持ではなく(それはもう限界に来ている)、ポスト・アベノミクス政策の具体的な政策論争である。消費税増税延期(消費税悪玉論)も「身を切る改革」も「ばらまき給付金」といった、使い古された耳障りの良いフレーズではない中長期展望に立った議論が望まれる。

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