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原発と経済と安全保障

2014-01-25 19:57:42 | Weblog
都知事選が、細川元首相の出馬により、脱原発論争が争点化されている。
マスコミは、読売、日経、産経が脱原発に否定的であり、朝日、毎日が肯定的だ。
安倍政権は、脱原発勢力が台頭することに警戒をもっており、細川、ひいては小泉元首相の影響力に対する封じ込めに力を注いでいる。
脱原発が都知事選の争点としてふさわしくないとの論調はマスコミ報道、ネットニュースでも多いが、まず、現政権がなぜ原発を重視しているのか、これが都の政策とどう関係するのかを整理して当否を考えるべきであろう。

まず、脱原発の争点は、マクロ的な停止か存続かの議論ではなく、現状のミクロ的な問題、つまり、福島原発の事故処理、原発再稼働の要否、原発輸出の要否の問題に則して考えるべきである。
福島原発の事故処理は現在進行中であり、最重要課題であることは、どの立場からも異論はないと思われる。ただ、原発事故の危険性、裏返しとしての原発の安全性の議論に影響を与えており、これを過小評価することも過大評価することも問題であるが、現実的に事故から3年近くたつのに処理が完了していないという事実の重みは無視してはならない。都政の観点からは、電力供給地という関係から、国政とは別の復興への支援があってよい。なお、安倍政権としては、事故処理がうまく行っているとアッピールしないと、原発再稼働と原発輸出に悪影響を与えるので、この領域は、国政として手が抜けない領域のはずである。

原発再稼働の要否については、現実に数年にわたって原発は全国的に停止状態にある。その補填は、火力発電等により賄ってきているが、アベノミクスによる円高から円安へのシフトにより、原油等の輸入価格は上昇している。電力会社によれば、再稼働がなければ、大幅な値上げとなるといわれている。このことから、コストを抑えるために、経済成長を支えるためには、原発再稼働が必要であるということが、経済界、安倍政権が強く主張することである。再稼働をする場合は、放射性廃棄物の最終処理は、現実的には従前どおり、先送り、棚上げするしかないであろう。なお、再稼働を否定する場合でも、従前の放射性廃棄物の処理及び廃炉の処理の必要せは残るが、現実的にはこれも先送り、棚上げするしかあるまい。
以上を前提にすると再稼働の肯定のメリットは、電力価格の上昇を抑え、エネルギーコストを下げること、経済成長に悪影響を与えないことである。デメリットは、原発事故の危険性、安全性、放射性廃棄物の処理の問題がどうしても残るということである。これに対し、原発再稼働の否定のメリットは、原発をめぐるマイナス(従前の放射性廃棄物の処理)をこれ以上悪化させることはないという意味での現状維持と同時に政策コストを別の領域にむける(例えば、再生エネルギーの開発、省エネルギー政策、スマートシティ構想など)ことができよう。デメリットは、電力エネルギーコストの問題であり、シュールガス等の天然ガスなどの化石エネルギーの輸入確保(天然資源大国の米中露との協調は欠かせない。ただし、最近米国のシュールガスのコスト高がいわれており、天然資源エネルギーの新たな開発も視野に入れる必要がある)、温暖化対策へのコストがかかるなどが考えられる。経済成長に悪影響を与えるかどうかは、エネルギーコストの手当次第ということになろう。都政との関係では、東京都には原発がないので、直接には再稼働の要否には関係しない。ただし、最大の電力供給地であること及び東電の株主であることから、都政固有のエネルギー政策は可能であろう。例えば、省エネ政策のほか、医療施設、福祉施設、老人介護施設等の電力手当があってよい(要保護者の電力コスト負担を軽減する、バックアップ電源の充実化と支援など)。また、都政が非原発電力による都市モデルを構築できれば、周辺地域の原発の再稼働をする必要性がなくなる。

原発輸出の要否については、すでに安倍政権のおけるトップセールスにより、トルコへの輸出が進んでいる。メリットとして、原発輸出は2兆円を超えるビジネスであり、高度の先端技術、原発の寿命である60年に渡る長期の管理等が要求され、日本はその技術を保有しており、経済的に発展してきた途上国に対する大型ビジネスとして有益である。日本の輸出産業、成長産業としてリードする意気込みが、安倍政権において感じられる。デメリットとしては、放射性廃棄物の処理や安全性の保証について、日本側の責任がどうなるか不明瞭なところがある点である。廃棄物処理を引き受けるとすると、現実的にはすでにのべたとおり、最終処分の方法は先送り、棚上げしかない。安全性の保証については、複数の安全基準をパスしている最新技術であるという「保証」=新しい安全神話を構築して輸出するしかないが、いざ事故が起きた場合、メードインジャパンの事故という事実は、消すことはできない。結果的に国内問題を超えて国際問題になりかねない。
都政との関係では、これが一番、関連性をもたすことは難しい領域であろう。

原発を停止し、輸出もやめると、技術が衰退してしまうとの懸念が、持ちだされることがある。これは、原発技術が経済的利益を生み出すと同時に核兵器への転換可能性、つまり潜在的核抑止力を有するという認識から、原発問題は、安全保障にかかわる課題ということが考えられる。
しかし、この考えも矛盾をはらむ。原発が潜在的核抑止力ならば、原発ないしその技術の輸出は、潜在的核抑止力の輸出であり、実質的な核拡散と同じであるという論理が可能であるからである。北朝鮮やイランの核開発は、原発開発の名のもとで行われている。それゆえ、安倍政権が、トルコやサウジアラビアへの原発輸出が潜在的核抑止力の輸出ならば、中東の安全保障上の重要な問題に、日本が積極的に加担し、それが平和をもたらすのか、イスラエルとの緊張をはらむのか、そこまで考えて積極的な輸出を考えているのかどうかは不明である(おそらく何も考えていない)。
また、輸出産業のリードとして、原発のほか、武器輸出禁止を解禁し、武器輸出も想定できる。これは単なる重機等ではなく、無人爆撃機にみられるスマート兵器、ハイテク兵器の輸出である。もちろん、この領域でも日本の技術的優位が確立できるという期待が前提の上である。

いずれにせよ、安倍政権としては原発再稼働と原発輸出は、経済成長の点でも、安全保障の点でも譲れない政策であり、これに対するNOは、たとえ都政であったとしても看過はできないのである。もっとも外交的孤立化は深まるばかりであり、その反動として内向きな右派傾向に世論が染まる中で、都政が反原発的な都知事が誕生するかは、現状では、悲観的である。この傾向がかわるかは、未知数であるが、経済成長の失敗がなければ、変化はないであろう。まだ多くはアベノミクスへの期待感をもっているので…




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