脆い心

　そろそろ限界かもしれない。
　他人の群れの中で過ごすのは、怖い。
　劣等意識が、いやに強く感じられる。
　私は居丈高に高圧的態度で日常を生きているけれど、それは弱い心を守るための虚勢にすぎない。
　威嚇。
　人間を恐れて吠える犬。
　私はみすぼらしい野良犬のようなものだ。
　できるなら野良猫になりたかった。自由気ままな野良猫に。
　今朝の夢が酷かった。
　自分が死ぬ夢なら幾度となく見てきたけれど、自分の体が醜く爛れてゆく夢は初めてだ。
　死は一瞬にすぎない。死んで終わりだ。
　それよりも、まるで強力な酸の液体をふりかけられたように全身に穴の空くあの光景が、何倍も恐ろしい。
　なぜあのようなおぞましい夢を見たのだろう。
　そういえば昨日、足に無数の痣があるのを発見さた。
　蚊に刺された赤疹が、黒くくすんで痣のように痕を残しているのである。
　まるで醜い自身の心を体現しているような……。