休み時間。
かつてのクラスメイトが、
「こいつ寝てるあいだにハゲにしてやろうぜ」
とか言いながら寝ているわたしの髪を切ろうとしていたので、
「起きてるよ」
と言ってわたしは顔をあげた。
彼がとっさにハサミを背後に隠して「なにもないよ」という顔でこっちを見ていた。
「………………」
わたしはまた寝る体勢にはいった。
すると彼がふたたびハサミを出す気配がしたのでふたたび顔をあげると彼の右手に光るハサミの刃が見えた。
「ちっ」
彼はそう言ってから、わたしの頭をじろじろと覗いた。
「どうした」
わたしがそう訊くと彼は、
「いや……おまえここにしらががあるぞ。抜いてやる」
わたしが、その言葉に半瞬だけショックを受けているそのスキに、彼はわたしのしらがを抜いた。
ぷち。
「おまえ一本だけ髪染めてんのか」
彼はそう言いながら、わたしに一本のしらがを渡した。
たしかにそれはしらがだった。
髪の毛が抜ける瞬間、ほとんど抵抗なく抜けた。
わたしは悲しくなった。
気持ち悪くてしらがはすぐに捨てた。
それから若しらがの知人を尊敬した。
あいつは、この何百何千倍もの悲しみや苦しみに耐えてきたのか……と。
かつてのクラスメイトが、
「こいつ寝てるあいだにハゲにしてやろうぜ」
とか言いながら寝ているわたしの髪を切ろうとしていたので、
「起きてるよ」
と言ってわたしは顔をあげた。
彼がとっさにハサミを背後に隠して「なにもないよ」という顔でこっちを見ていた。
「………………」
わたしはまた寝る体勢にはいった。
すると彼がふたたびハサミを出す気配がしたのでふたたび顔をあげると彼の右手に光るハサミの刃が見えた。
「ちっ」
彼はそう言ってから、わたしの頭をじろじろと覗いた。
「どうした」
わたしがそう訊くと彼は、
「いや……おまえここにしらががあるぞ。抜いてやる」
わたしが、その言葉に半瞬だけショックを受けているそのスキに、彼はわたしのしらがを抜いた。
ぷち。
「おまえ一本だけ髪染めてんのか」
彼はそう言いながら、わたしに一本のしらがを渡した。
たしかにそれはしらがだった。
髪の毛が抜ける瞬間、ほとんど抵抗なく抜けた。
わたしは悲しくなった。
気持ち悪くてしらがはすぐに捨てた。
それから若しらがの知人を尊敬した。
あいつは、この何百何千倍もの悲しみや苦しみに耐えてきたのか……と。
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