歪んでいる

　気づいた。
　僕は、きみが消えてあと、ある一人の女性に助けてもらった。きみが消えてあと、彼女以外に僕の支えになってくれる人はいなかった。
　僕は、その人を愛していると感じていた。愛しいものだと感じていた。
　違った。
　たしかに、きみのいないいま、かけがえのないひどく大事で大切な存在ではあるけれど、僕は愛してなどいなかった。
　愛が歪んでいたんだよ。
　僕は、いつしか、きみの代わりとして彼女を、愛していたんだ。
　きみへの愛が、歪んで、彼女への想いになっていたんだ。
　よく思い出してみた。彼女への想いに違和を感じたから、それが本当に愛であるのか、きみへの想いと比べてみたんだ。きみに対する自分の気持ちを、思い起こしてみたんだ。
　一緒だった。
　彼女への想いは、本当はきみに対する想いだったんだよ。
　愛したい。愛したい。愛したい。
　きみを愛したい。
　愛している。
　きみがいなくなって、その気持ちが所在を失ってしまったんだね。
　僕自身どうしてよいかわからず、暴走してしまったんだね。
　彼女には迷惑をかけてしまった。
　僕がもっとしっかり、自分の気持ちを整理していれば、好きだとか愛してるだとか、きみじゃない彼女に言ったりしなかったはずだ。
　想いが暴走している。
　愛が、歪んでいる。
　僕は、この気持ちをもてあましているよ。
　信じたい。
　きみが帰ってくると、信じたい。
　信じていないと、僕は崩れてしまう。
　……待っています。　あなたの帰りを。