「22時間耐久レースをしよう!」
ぼくは思った。
夜中の1時前に目覚めて睡眠薬の無能さを知ったぼくは、可能不可能を別にして次の睡眠薬服用時間までゼッタイに寝ない眠らないと決めたのだ。
起きてまずしたのはトイレに行ったこと。
行っただけ。
ふと思い付いてサンダルで散歩に出掛ける。
少し肌寒いが動けばちょうど良かろうという空気。
心配していた虫もまったくおらず、平穏というか安穏(あんのん)な一人歩きが始まった。
まず大きな道に出る。
国道439号線。
途中見つけた標識に書いてあった。
制限速度は50キロ。
暗い夜道。あるていど外灯がぽつぽつある程度。どんな程度なんだか。
人気(ひとけ)はまったくない。
虫の鳴く声さえも気にならない静けさ。というか鳴いていたのか? 虫。
一車線の国道を思索しながら歩いてゆく。
センターラインの上。
どうせ車は通らない。通るかもしれないというスリルがあり、愉(たの)しい。
あまりにもしんとした暗い夜道が、喧騒嫌いのぼくには心地がよかった。
とにかく歩く。アルクじゃない、真祖の姫ではない。……そういえば月は見えなかったなぁ。
途中、夜中の2時だというのに無灯火でない自転車とすれ違う。こんな夜更けに何の用があるのだろう。まぁ、どうでもいいことだ。
歩いていると、モーニング娘。の「歩いてる」を思い出すことなど本当にまったく皆無で、ただひたすらなにかを思索していた。
国道439号線……よんさんきゅー……しさく……思索……試作……死策……失策……
足を運んでいると(決してバラバラ死体の足ではない)、ひきこもって歩きなれないせいか、ズボンとこすれて、かゆくなった。
脚のかゆみが我慢できなくなってきたところで、ちょうど田んぼに続く橋まで来た(道は川沿いに走っている)。
そこで折り返して我が家を目指す。
思索してもろくなことがないので、とにかく歩数をかぞえることにした。
少し大股(おおまた)ぎみにふらふらとセンターラインを踏みしめてゆく。
数字に弱いぼくは、三桁かぞえるのにも一苦労するため、100までかぞえては指を折っていった(決して関節脱臼などの拷問ではない)。
国道しさくを思索することなく歩き切る。
ちょうど900歩だった。往復だから1800歩か。
国道から家まで歩数をかぞえるのはメンドーだったので、ただひたすらに歩いた。
途中、今度は無灯火の自転車とすれ違う。
田舎の人間はよくわからないことをするなぁと、自分の奇行を棚に上げて思った。
そしてようやく、家にたどり着く。
2キロにも満たない散歩が幕を閉じた。
家に入るとどうしてだか部屋の電気がついていた。夜中に電気がついているなんて初めてで、不審に思った。
戸の鍵をしめると、外から父の呼ぶ声がした。
「鍵あけてくれー」と父。
こんな時間にどうしたの、と問うと「散歩」という返答があった。
親子で散歩とは、あまりおもしろくない偶然だなと、そのときは思った。
明かりのついた部屋に入ると祖父がいて、驚いた。夜中に祖父が自室以外の場所で佇(たたず)んでいるなんて、これまた初めてのことである。
そこでようやくピンと来た。ひきこもってぼーっとしてばかりいると脳味噌のしわも減り思考力が低下するようだ(単に元からアホなんだと思う)。
出て行ったきり長いこと帰らない孫(ぼく)を心配して待っていたという。
さらに言えば、途中すれ違った自転車の男は、二回とも父だった。
祖父に頼まれて捜索に出ていたらしい。
だったら声をかけてくれればよかったのに、とぼくは思ったが、口下手な父にとってはめんどくさかったのだろう。
こうして、ぼくの22時間耐久レースは始まった。
死ぬ気で頑張る所存である。
※読者様へ
つまらない駄文ばかりですみませんでした。
ぼくは思った。
夜中の1時前に目覚めて睡眠薬の無能さを知ったぼくは、可能不可能を別にして次の睡眠薬服用時間までゼッタイに寝ない眠らないと決めたのだ。
起きてまずしたのはトイレに行ったこと。
行っただけ。
ふと思い付いてサンダルで散歩に出掛ける。
少し肌寒いが動けばちょうど良かろうという空気。
心配していた虫もまったくおらず、平穏というか安穏(あんのん)な一人歩きが始まった。
まず大きな道に出る。
国道439号線。
途中見つけた標識に書いてあった。
制限速度は50キロ。
暗い夜道。あるていど外灯がぽつぽつある程度。どんな程度なんだか。
人気(ひとけ)はまったくない。
虫の鳴く声さえも気にならない静けさ。というか鳴いていたのか? 虫。
一車線の国道を思索しながら歩いてゆく。
センターラインの上。
どうせ車は通らない。通るかもしれないというスリルがあり、愉(たの)しい。
あまりにもしんとした暗い夜道が、喧騒嫌いのぼくには心地がよかった。
とにかく歩く。アルクじゃない、真祖の姫ではない。……そういえば月は見えなかったなぁ。
途中、夜中の2時だというのに無灯火でない自転車とすれ違う。こんな夜更けに何の用があるのだろう。まぁ、どうでもいいことだ。
歩いていると、モーニング娘。の「歩いてる」を思い出すことなど本当にまったく皆無で、ただひたすらなにかを思索していた。
国道439号線……よんさんきゅー……しさく……思索……試作……死策……失策……
足を運んでいると(決してバラバラ死体の足ではない)、ひきこもって歩きなれないせいか、ズボンとこすれて、かゆくなった。
脚のかゆみが我慢できなくなってきたところで、ちょうど田んぼに続く橋まで来た(道は川沿いに走っている)。
そこで折り返して我が家を目指す。
思索してもろくなことがないので、とにかく歩数をかぞえることにした。
少し大股(おおまた)ぎみにふらふらとセンターラインを踏みしめてゆく。
数字に弱いぼくは、三桁かぞえるのにも一苦労するため、100までかぞえては指を折っていった(決して関節脱臼などの拷問ではない)。
国道しさくを思索することなく歩き切る。
ちょうど900歩だった。往復だから1800歩か。
国道から家まで歩数をかぞえるのはメンドーだったので、ただひたすらに歩いた。
途中、今度は無灯火の自転車とすれ違う。
田舎の人間はよくわからないことをするなぁと、自分の奇行を棚に上げて思った。
そしてようやく、家にたどり着く。
2キロにも満たない散歩が幕を閉じた。
家に入るとどうしてだか部屋の電気がついていた。夜中に電気がついているなんて初めてで、不審に思った。
戸の鍵をしめると、外から父の呼ぶ声がした。
「鍵あけてくれー」と父。
こんな時間にどうしたの、と問うと「散歩」という返答があった。
親子で散歩とは、あまりおもしろくない偶然だなと、そのときは思った。
明かりのついた部屋に入ると祖父がいて、驚いた。夜中に祖父が自室以外の場所で佇(たたず)んでいるなんて、これまた初めてのことである。
そこでようやくピンと来た。ひきこもってぼーっとしてばかりいると脳味噌のしわも減り思考力が低下するようだ(単に元からアホなんだと思う)。
出て行ったきり長いこと帰らない孫(ぼく)を心配して待っていたという。
さらに言えば、途中すれ違った自転車の男は、二回とも父だった。
祖父に頼まれて捜索に出ていたらしい。
だったら声をかけてくれればよかったのに、とぼくは思ったが、口下手な父にとってはめんどくさかったのだろう。
こうして、ぼくの22時間耐久レースは始まった。
死ぬ気で頑張る所存である。
※読者様へ
つまらない駄文ばかりですみませんでした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます