ロンドン野郎

カナダのオンタリオ州ロンドン市で4年半暮らしたロンドン野郎。 この度本家大英帝国ロンドン市(近郊)へ参上。

BATTLESHIP 『みょうこう』 乗艦記 ④

2012-05-28 21:43:55 | 映画

DDG175『みょうこう』乗艦記最終話です。 舞鶴は日本海に面した帝国海軍の拠点として発展した港町です。 旧海軍時代のレンガ造りの建物も点在してなかなか風情のある街並みなんですよ。

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『みょうこう』艦内見学も後部甲板に向かいます。 上方に並ぶ丸い三つの塊。 これ何だと思います。 実は救命いかだ。 非常時に海に落とすと自動的に膨らむ仕組みです。 これは軍艦だけではなく、一般の船にも広く搭載されている装備です。

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こちらの円筒状の物体は。 対艦ミサイル発射機。 その向こうの構造物は一応煙突のような形状の排気管。 と言っても、現代の軍艦を動かす機関は蒸気タービンやディーゼルではありません。 意外にも航空機と同じジェットエンジンなんです。 従って燃料も軽油や重油ではなく、航空燃料のケロシン。 簡単に言うと灯油です。

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舷側に装備されたこの筒は三連装短魚雷発射管。 手作業で45度、目標潜水艦の方に向け、圧搾空気で発射! 意外と古めかしい装備です。

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後部VLS垂直ミサイル発射装置は61セル。 こちらの方が前部のVLSより数の上では圧倒的に多くなっています。

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後部艦橋と消防ホース。 流石に大量のミサイルを一斉発射しようものならそれだけでも艦体に類焼したりする事があるのかも知れません。

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VLTの後部には飛行甲板がありますが。 ヘリが着艦可能というだけで、格納庫は装備されていません。 次級のあたご型からは格納庫も装備されています。

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横付けされているDDH143『しらね』との間にはこんな巨大なゴム風船的な防舷材が挟まれているんです。

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お隣の艦齢32年のヘリコプター搭載護衛艦DDH143『しらね』と比べると、隔世の感がありますね。 ちなみに『しらね』の艦橋の向かって右端の窓に表示されているのは海将補旗。 この時はこちらが艦隊の旗艦だったようです。

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という訳で、映画『バトルシップ』の話から、軍オタ的な話題になってしまいましたが、ロンドン野郎、飛行機だけではなく、船の写真もかなり撮り貯めていますので、少しずつ公開したいと思います。

とりえあず、この話題はお終い


BATTLESHIP 『みょうこう』 乗艦記 ③

2012-05-24 22:40:53 | 映画

映画『バトルシップ』の中で『みょうこう』の長田艦長を演じた浅野忠信さん。 記者会見で、「アメリカ海軍と日本の海上自衛隊の違いは?」という質問に、思わず答えちゃったそうです。 「海上自衛隊の艦の方がキレイですね」って。

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キレイというのはBeautifulという意味じゃなくてClean。 別の言い方をすると5Sが行きとどいているという意味なんですね。 5S。 これは日本の産業界が世界に誇る国際用語「整理 Seiri」、「整頓 Seiton」、「清掃 Seisou」、「清潔 Seiketsu」、「躾 Shitsuke」の頭文字を取った言葉なんです。 これは日本の文化に根付いた部分なので、産業界も軍艦も同じ。  Wikipediaの世界各国語版にも5Sはちゃーんと出ていますよ。

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『みょうこう』自体は1996年3月の就役なので、艦齢16年を経た結構ベテランの艦なのですが、どこを取ってもピッカピカ。 新造艦と見間違うくらい磨き上げられています。 間違ってもゴミなんか落ちていません。

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最初の回でちょっとだけ紹介した前部甲板へ繋がるクローズドの通路の中。 『物置』と称しましたが、こんな意外なものが入っていました。

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材木! いったいこれは何に使うんでしょうね。 材木自体フレキシブルに使える素材なので、ちょっとした艦の補修などにも使うのかも知れませんね。

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壁面にぶら下がっている梯子も見えます。 黄色い球はたぶん防舷材。 艦が岸壁に直接接触したりするのを防ぐものだと思います。

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笑ってしまうのが、デッキブラシ、モップ、ほうき、それにバケツ。 きっと毎日の日課で、若い自衛官が必死になって艦を磨き上げているんでしょうね。

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ね、本当にピッカピカでしょ。 後部甲板へ向かうデッキです。

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基本はロープワーク。 どのロープもすぐに使えるように完璧に整えられています。 ロンドン野郎はその昔ヨットをやっていたことがありまして、今でも舫い結びはすぐにできます。 舫い結びは基本ですよ。

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これはちょっと変形ですが、専門用語でクリート・ノットと言います。 これも海の世界では基本中の基本ですよ。

以下、また次号に続く


BATTLESHIP 『みょうこう』 乗艦記 ②

2012-05-20 21:33:53 | 映画

という訳でイージス艦DDG175『みょうこう』乗艦記その②です。 

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後部甲板から乗船。 右舷のデッキを通り、前部甲板へ向かいます。 上に内火艇(ランチ)がつるしてあります。 サイドのデッキが一部クローズドになっているのは、船全体形状を整え、ステルス性を上げるのが目的のようです。

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ちなみにクローズドの通路の中はただの物置。 特に何があるという訳ではありませんが、上部にはSPYレーダーがそびえ立っているので、構造としては極めて重要。 ”物置”の中に何が入っていたかは、また紹介しますね。

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広い前部甲板。 やはり目につくのは、主砲の127ミリ速射砲。 意外にもこれはイタリア製。 オットーメララっていいう会社で開発されたもんだそうだ。 発射速度何と一分間に45発。 昔の軍艦みたいに沢山の大砲が要らない筈です。

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全体として傾斜のついた艦橋などの艦体の形状はステルス性を考慮したもの。 127ミリ砲は最大仰角83度。 ほぼ垂直にまで砲身を上げ接近してくるミサイルを迎撃する機能もあるそうです。  大砲でミサイルを撃ち落とすというと少々違和感がありますが、個々に小型のレーダー機能を持たせた近接信管を装備した対空用の砲弾が発射されます。

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艦橋の上部のマスト周りはありとあらゆる電子機器で覆われています。 前述のSPYレーダーは正確にはSPY-1Dと呼ばれるイージス・システムの根幹を成す装置で、2009年までに対空ミサイルも含めて弾道ミサイル防衛の機能が強化されています。

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艦首にはアンカー(錨)を巻きあげるためのウィンチが。 日本の艦は停泊中は艦首に日章旗を掲げる決まりになっています。 この日の天候は超最悪だったので、日章旗は雨に濡れてよく見えません。 一方、艦尾には自衛艦旗(軍艦旗)の旭日旗が掲げられます。 これも帝国海軍時代からの習慣。

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主砲の127ミリ砲の後部。 この砲は完全に無人化されていて、砲塔の中に人が入る事はありません。 一方、主砲と言いながらも現代のイージス艦の実際の主要兵器は大砲ではありません。 イージス艦の本来の目的は、空からの攻撃に対して、艦隊を守る事。 そして更に追加された任務が、弾道ミサイルを日本本土の手前の海上で迎撃する事

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その本来の目的の兵器は主砲の後ろに甲板に埋め込まれたVLS(垂直ミサイル発射装置)。 前部甲板に29セル、後部甲板に61セル、合計90セルが配置されています。 この中身については、外からうかがい知ることができません。 通常の対空ミサイルのスタンダードSM-2と弾道ミサイル防衛用のSM-3。 それに加えて対潜水艦用のアスロックが中にはおさめられている筈ですが・・・ この方式の最大の利点は、多数のミサイルの飽和攻撃に対して、一度に対空ミサイルを発射して防御できること。

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前回ちょっとだけ書いた近接防衛用のCIWSは、20ミリ機関砲を6銃身まとめたもので、対空ミサイル、127ミリ砲の迎撃を逃れた対艦ミサイルを、至近距離で多数の銃弾を直接浴びせて最後に撃ち落とす為のもの。 自艦を守る最後の手段になります。

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こんな触り放題、写真撮り放題で、防衛機密は大丈夫か!?という話にもなりそうですが、実は本当の機密はこういう外から見える部分ではなく、其々の機器の性能。 それに艦そのものの性能になるんです。 だから我々の見学も、艦内に入る事はできません。 とりわけ、船の操舵を行う艦橋以上に、CICと呼ばれる戦闘指揮所は、その位置も含めて、極秘中の極秘。 間違ってもロンドン野郎のような部外者が見たり入ったりする事は出来ない訳です。

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映画の方は、こんな場面もありましたが、みょうこうの艦長がこんなところで走り回るようでは、本来はイカンのですけどね。

こんな事を書いていると、軍事オタクと誤解されそうですが・・・

以下、また次号に続く


BATTLESHIP 『みょうこう』 乗艦記 ①

2012-05-19 18:52:54 | 映画

先日、ちょっくら映画を見てきました。 BATTLESHIP。 ハワイ沖で各国の軍艦が集結して行われていたリムパック(環太平洋合同演習)の最中に異星人襲来。 バリアの中に閉じ込められた3隻の軍艦が異星人の船と戦うというかなりすっ飛んだ内容ではあるのですが、なかなか楽しめました。

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そして、その3隻の内一隻が我海上自衛隊のイージス艦DDG175『みょうこう』。 実名で出てきます。 無茶な攻撃を仕掛けようとした米軍の駆逐艦の救援に駆け付け、『みょうこう』自体はあえなく撃沈されてしまうのですが、生き残った浅野忠信扮する長田艦長が少々頭の足りない米軍の主人公を知性を駆使してサポートし、大活躍するんです。

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で、こちらのお話なんですが、実はロンドン野郎2年ほど前にこのDDG175『みょうこう』に乗艦して参りました。 場所は京都府北の舞鶴。 帝国海軍時代から日本海を守る海軍鎮守府が置かれた軍港です。

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あいにくの天候ですが、まずは港内クルーズ船から。 デッキで見張るのは先任伍長さんでしょうか。 こちらに手を振ってくれました。

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環境にはイージス艦の特徴的なSPYと呼ばれる巨大なフェイズドアレイ・レーダー。 北朝鮮の弾道ミサイルもキャッチする能力を持っています。 各種アンテナとと共に、前方の白い円筒は接近するミサイルを叩き落とす為の近接防御兵器の20ミリCIWS

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海上自衛隊協力との表示は映画 の中では出てきません。 そりゃそうですよね。 今の日本のアホな法律では、異星人といえども、攻撃されている同盟国の船を救援に行く事なんか集団的自衛権とかの問題でできないんですからね。 実際には浅野忠信さんの役作りなどには多大な協力はしているようです。

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さて、横付けされているDDH143『しらね』を渡って、ロンドン野郎は『みょうこう』に乗艦です。

次号に、続く


京橋界隈の2011年夏 其の四-いつか見たテアトル東京

2011-10-20 00:35:26 | 映画

これも、京橋界隈をぶらぶら独りブラタモリをしながら偶然発見、というか思い出したのですが、この京橋の古い主柱の向こう側の白い建物。 この建物はホテル西洋銀座が入っている銀座テアトルビルと言います。 この建物の中にはテアトル銀座という小規模な映画館も入っているのですが・・・

実は今を去ること30年前まで、この場所には東京を代表する巨大シネラマ映画館テアトル東京があったんです。 シネラマという方式は今では映画の歴史に向こうに消え去りましたが、レンズを横に3つ並べて撮った3本のフィルムを同期させて上映するタイプの超ワイド画面でした。 だからこの映画館のスクリーンのサイズも音響も半端じゃなくて、シネラマがすたれた後でも、70ミリやシネマスコープの映画が最高の迫力で楽しめたんです。

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ロンドン野郎も学生の頃まで、大作映画を観るとなるとここまで足を運び、『トラ!トラ!トラ!』、『スターウォーズ』、『エイリアン』、『七人の侍』、『2001年宇宙の旅』なんかを観たんです(リバイバルもあります)。 この日ここを通り掛かるまですっかり忘れていましたが、気が付いた瞬間、なにかタイムスリップするような感覚に包まれました。 今のシネコンの設備も素晴らしいけど、ああいった大画面の感動は今ではもう味わう事ができないんですね。

テアトル東京が閉館したのは1981年。 本当にもう30年も昔の話。 昭和は遠くになりにけり・・・ですね。

という訳で、東京独りブラタモリ京橋編は、ここでお終いっと。