ロンドンもそうですが、オンタリオ州には本家イギリスの地名にちなんだ町があちらこちらにあります。 ロンドンから北東に車で一時間弱くらい行ったところに、ストラットフォードという人口約3万人の小さな町があります。 このストラットフォードという地名は本家イギリスではシェークスピア生誕の地としてとてもよく名前が知られています。 オンタリオ州のストラットフォードが本家と元々どのように関係があったのかは定かではないのですが、今この町は「芝居の街」として北米では大変な知名度を持っています。
1953年。トム・パターソンというジャーナリストが思い立って、ここでシェークスピアの芝居を本国にストラットフォードに倣って始めたのが事の起こりです。 その後、この芝居は夏の恒例の行事となり、著名な俳優や演出家も集まるようになってきました。 それと共に名声も上がり、今ではオンタリオ州ストラットフォードの演劇フェスティバルには全米から毎年50万人もの観光客が集まります。
街の中に3つの本格的な劇場があり、5月から11月のシーズンにシェークスピアの芝居を中心にいくつもの出し物が上演されます。 シェークスピア劇だけではなく、ミュージ カルのプログラムも含まれているので、多少言葉が分からなくても大丈夫です。 一番大きなFestival劇場は2,300名、Avon劇場は1,100名、一番小さいTom Patterson劇場が500名と、出し物によって使い分けられています。
ロンドン野郎が行ったFestival劇場では、上演の時間になると開始を知らせるファンファーレが高らかに演奏され、雰囲気を盛り上げます。 劇場の内部は五角形のステージを囲む形で、客席とステージの一体感が生まれる設計になっています。 芝居の幕間には、テラスに出てワイン なんかを楽しむ余裕もあります。 但しこれをやると、英語の台詞が子守唄になりがちな日本人は確実に睡魔に襲われるので要注意です。
町の中心街も「シェークスピアの街」らしく演出されています。 中心には本家と同じエイボン川が流れ、 白鳥が優雅に泳ぎ、こぢんまりとした街ながらも、アンティーク・ショップやレストラン、それにチョコレート屋等が軒を連ね、観光客をあきさせないようになっています。 レストランの一軒は日本人の経営で、日本と全く同じカツカレーの裏メニュ ーが我々の間では密かに有名です。
この芝居による「町おこし」が無ければ、きっとオンタリオ州ストラットフォードなんて、地元の人以外は誰も知らない農業地帯にポツンとある小さな田舎町だったと思います。