黒揚羽

今日の午前、広島で
お世話になった知人の葬儀が行われました。

独身時代、美容師をしていた妹が
最初に勤めた美容室の経営者で、私も何度か遊びに行っては、「先生」と呼んでいた人です。


私の実妹を一人前の美容師に育ててくれた恩人でもあります。


昨日の明け方、亡くなったと連絡があって

重篤な状態だとは聞いていたけれど、あまりの早さに驚くと同時に

急激に衰えていったという壮絶な闘病の様子を実妹から聞き、

あれほど元気だった人が…と、
やるせなさで、胸がいっぱいになりました。


そして、いつもおおらかだった知人の化粧っ気のない少年のような顔と、

あの独特のハスキーで、低めで、ゆっくりした広島弁で話すイントネーション、

それから…
あの大笑いした時の屈託の無い笑顔を思い浮かべていたところでした


…と、その時、私の目の前を、
思いがけないモノが横切って行きました。

よく見ると、それは黒揚羽でした。

黒揚羽は、慣れた場所をあちこち嬉しそうに飛び回っているようにも見え、

庭の隅で大ぶりの花を咲かせているユリにとまるかと思いきや

何故か、

私の目の前の花壇の一画に植えてある草に休息場所を選んでとまりました。

蜜のない草でひと休みして、草についている僅かな水を飲んでいるように見えました。


瞬間、

( あっ…別れの挨拶に来てくれた )

…と、思いました。


お葬式に行けなかった私に、わざわざ会いに来てくれたのかもしれない…。


そう思ったら、嬉しくなって

「先生、ありがとうございました」

と、黒揚羽に向かって声をかけ、そっと両手を合わせました。


どうか、安らかに…
そして、ゆっくりお休みください。