軽井沢に紅葉を見がてらドライブに行った帰り、
夕方5:30頃、目の前に大きな月が見えた。
まるで薄っぺらい紙に燻した金箔を貼ったような不気味な色をしていた。
「気味が悪いなぁ…」
と運転席の夫が呟く。
「富士山大噴火とか、南海トラフとか、首都圏直下型とか…、いつ起こってもおかしくないからな、
昔、阪神淡路の前日もあんな大きな月が出ていたんだ…」
月を見て不安になる…と言うのは我が家ではいつもの事だけど、
いよいよ何か恐ろしいことが起こるのではないかと言う不安がこのところずっと頭から離れない。
(もし明日、起きたら…日本はどうなる?)
そんな思いが過ぎる瞬間だ。
危機感を持ったのは月のせいだけではない。
一昨日だったか、
国会中継を流しながらデスクワークをしていた時、
(コレは選挙のためのパフォーマンス?)
(中身のない言葉のあやとりゲーム?)
…問答を聞きながら、ため息が出た。
(この状況で大きな災害が起これば、減税や給付金どころじゃなくなるだろうに…)
と、
これから日本が直面するかもしれない試練を想像する。
黙り込んだ私に、
夫が、珍しく音楽の話をし始める。
「パット・メセニーのSoloライブがあるらしい」
「いいわね、行ってくれば?」
と答える。
最近の夫は、コンサートに行かない。
数年前にブルーノート東京でのキャンディ・ダルファーのコンサートをキャンセルして以来、
全くと言っていいほど出かけようとしなくなった。
「パット・メセニー、行っておいたほうがいいよ」
と再度、勧める。
だって、これからの事を考えれば
有名アーティストのコンサートも
紅葉狩りを楽しく余裕も
ドライブに行く楽しみも
全てできなくなるかもしれないのだから。
今できることを楽しんでおくことも大事だ。
私の不安症候群は子供の頃からの性格だが、
ここ数年は特に酷くなっているようだ。
それに感化されたのか、夫まで遊ぶのが下手になった。
以前は、
夜、飲み会が終わる頃に車で迎えに行ったものだが、
コロナ以降はパッタリとそんな付き合いもなくなったようだ。
パンデミックは、
危機感を増長するだけでなく、
性格や考え方そのものを変えてしまったのだ。
車載テレビのニュースでは、渋谷スクランブル交差点が映し出されている。
「何が面白くって集まるんだろうね」
と言うと、
夫は、
「昔なら、ああ言う場所に行きたいと思ったものだが…今はないなぁ」と言う。
「昔ねぇ…」
どうだったかなぁ…
確かに、人混みを好んで出かけた事もあったなぁ…
昔の鈴鹿8耐だって、物凄い人だったし…
すっかり忘れて、
今は人混みが苦手…だなんて言ってる自分が可笑しい。
変われば変わるものだ。
昔に比べれば観光客は明らかに減っている軽井沢だが、
犬連れで歩くのにはちょうど良い。
次はクリスマスの前に来よう…。