YB&YBRダイアリー

中国ヤマハのYB125SPとYBR125でバイクライフを満喫するブログ
(自己責任を伴う整備・改造を多く含んでいます)

純正キャブレターBS25メンテナンス

2018年09月01日 | YB&YBR関係雑記

 9月になってしまったのだ。
死蔵している純正キャブレターBS25型を完全整備して保存
する事にしたから、その手順を書いてみる事にしたよ。

11年式以降のYBRやYXも同型キャブを使ってるから少しは参考
になるだろう。

 基本工具はこれ。

2番+ドライバーとマイナスドライバー。
できれば電工ドライバーのように柄が太くて緩める時に力を入れ
やすい物を使いたい。

 車体から外すための手順は以前紹介した記事を参考にどうぞ。
リンク BS25型キャブレターを開けてみた

 ピストンバルブの確認。

上部のフタを外す。
このネジが結構固いという話をあちこちでされてるので、回しや
すい柄のドライバーをお勧めしたわけだ。

 スプリングが出て来る。

中にある物を抜く。

 これがピストンバルブ。

ゴムの膜がダイヤフラムと呼ばれる部品で、劣化して穴や亀裂
が発生すると、異常動作になって加減速や最高速がおかしくなる。
よく目視確認しよう。

 亀裂や穴が見つかったら新品交換しか修理方法は無い。

このように引っ張るとダイヤフラムがバルブから外せるので、
タオバオでダイヤフラム単体を入手するか、このピストンバルブを
アセンブリごと購入交換すれば良いと思う。
年数が経った過走行車は特に確認すべき部品だよ。

 ついでにジェットニードルを観察してみたよ。

中の固定部品をピンセットで押し下げながら左に回すと外れる。
構造を観察すれば何をどうすれば良いか分かるだろう。

 外れたよ。

このジェットニードルは調整可能な多段型では無かった。

 微調整で濃くする方向なら2段分できる。

軸径を測ったら3mm未満なので、小丸M3平ワッシャ(0.5mm厚)
が2枚まで下に履かせて、ジェットニードルの濃さを増す事は
可能だと分かった。
社外マフラーに換装した時の微調整にも使える技だよ。

 戻す時は逆操作。

押し下げてから右に回転させて離せば半月型の溝に引っかかる。
特に用事が無い限り、この分解・組み立ては不必要だね。

 フロート室の中身を確認・掃除する。

もしもこんな感じに腐っていたらw かなり掃除を念入りに行わ
ないと完調しない。
中途半端にやるのが一番不調をいつまでも抱える原因なのだ。

出来ればジェット類を一旦外し、本体は鍋に洗濯洗剤をひとつま
み入れたお湯に漬けて「5分くらい煮る」事で細い経路の固化し
た汚れが溶けだして貫通しやすくなる。
外したジェット類も一緒に煮ると汚れが落ちやすいが、腐食が
酷い時は新品に交換した方が楽だと思う。

 PJ(パイロットジェット)外し。

この中の細い穴が汚れや腐食の影響を受けやすく、しかも始動性
や加速性能にも大きく影響するので最重要箇所だよ。

 MJ(メインジェット)関係。



メインジェットとメインジェットホルダー共に緩めて外す。

 キャブクリーナーをガラス容器に少し溜めてから漬ける。

微細な穴の中の固化した汚れは漬け置きが効くのだ。

 燃料量を調整するフロートバルブ機構を分解。

ネジ1個外すだけでここまで分解できるよ。

 ニードルバルブの先端を確認。

このゴム製の円錐部分が穴を塞いだり開いたりしながら、油面を
自動調整するのだ。
表面に凸凹や段々の凹みなど、消耗状態ならば新品交換必須。

ダンパー機構の確認。

この出っ張を押してみてバネの反発で戻るなら正常。
動きが悪い時に潤滑剤を吹いて往復させて回復を促すか、新品
に交換。

 ニードルバルブホルダーの受け穴を確認。

中を覗き込んでみて錆や汚れを見つけたら竹串や綿棒で掃除した後、
コンパウンドを竹串の先端に少し塗る。ピカールでも構わない。

奥の穴の縁を研磨掃除する。

そっと数回回転させて汚れやサビを除去すれば良い。
その後、パーツクリーナーで良く洗浄する。

 燃料経路の貫通確認。

ガソリンコックからの燃料ホースを受けてる箇所には、樹脂製
の燃料フィルターが仕込まれているのだが、これが外しにくいので
裏から噴射洗浄する。

ニードルバルブホルダー側の穴にキャブクリーナーかパーツクリ
ーナーを噴射し、貫通確認・洗浄をする。
原因不明なオーバーフローはこれら燃料バルブ関係の汚れや動作
不良が原因だったって事が多く、忘れずに整備すべき場所なのだ。

 次の作業をやりやすくするために工夫。

スロットルバルブを半開きにするために8mm用スパナーを挟む。

PJ(パイロットジェット)の経路の貫通確認・掃除。

PJを外した穴に噴射するのだ。

スロットルバルブ付近にある細い噴出口から出るか確認する。

全部な穴から出る必要があるのだ。

PS(パイロットスクリュー)側からも確認。

回転数を数えながらマイナスドライバーをゆっくり優しく右回転
させて、止まった箇所で「何回転」だったかメモした後、左回転
でPSを外す。(中にスプリングがあるが、そのまま紛失しない
ように放置か、あるいは取り出しておく)

パイロットスクリューの先端が折れて短くなっていないか確認。
もしも折れているなら、残念ながらBS25型キャブの構造上改修
が出来ないので、キャブごと新品交換しないとならない。
折れるはPSを強く締めすぎて先端が噛み込んでしまうのが原因。

 PS側から貫通確認・掃除。

これで先ほどの細い穴5か所やPJ装着穴から出れば良い。

右側の穴からも洗浄液が噴出する事を確認。

スロー系エアー経路の貫通・清掃。

ここに噴射させて今までの穴全部に貫通するかが重要なのだ。
汚れなどで一か所でも未貫通だと始動やアイドリングが不安定に
なる。
 大丈夫だったらパイロットスクリューを元に戻す。

この時には一番奥まで締めこんでから、外す前にメモした回転数
まで緩める。

 メインジェットエアー経路を確認・掃除。

左の穴がメインジェットのエアーブリード経路になるので重要。
かなり細いジェットが圧入されている。

噴出先はメインジェット関係部品を組み込む穴なのだ。

 燃料蒸気還元経路の確認・掃除。

キャニスターから来たホースがつながる箇所に噴射。

この小さな穴から噴出すれば大丈夫。

 チョーク機能の確認・掃除。

チョーク機構を外した奥に穴があるので、そこへ噴射。

チョーク用の燃料を吸い上げるパイプから噴出すれば大丈夫。

このパイプにも微細な穴のジェットが圧入されているので、非貫
通の時は後で紹介する方法で貫通掃除をすれば良い。

 一通り本体側の貫通確認・掃除が終わった所でキャブクリーナー
に漬け込んだジェット類の仕上げをする。

用意したのはデンタル用品の歯間ブラシの一番細い物。

 MJ(メインジェット)の貫通確認・掃除。

ゴシゴシやらずに一往復程度で十分。
ギターの弦や魚釣り用テグスでも代用可能。

 PJ(パイロットジェット)の貫通確認・掃除が一番繊細。

あまりに細いので身の回りにある代用品として、電線を剥いて
芯線をほぐして1本にした物を通すしかない。

エアーブリード穴も汚れが残っていたら歯間ブラシか銅線で掃除。

メインジェットホルダーのエアーブリード穴も重要箇所。

チョーク用パイプも貫通していなかった時は配線で掃除。

キャブクリーナーで貫通確認しながら掃除すると良い。

 ジェット類の仕上げ作業が終わったら、それぞれ元の穴に
組み付ける。
この時に締め込み過ぎに注意して、指先で硬くなったと感じたら
終了したほうが良いだろう。本体のネジをナメたらキャブごと
丸々交換しければならないのだ。

 フロート室のドレン経路の貫通確認。

オーバーフロー機構は意外と重要な機能なのだ。w

 いよいよ仕上げにフロート室やピストンバルブのフタを組み付
けるわけだけど、この時にドライバーの持ち方に注意して欲しい。

緩める時は大きな力を掛けやすい握りだけど、締める時は締めす
ぎになりやすいから、この持ち方はやめておいた方が良い。

指先の力で十分なトルクがかかる。

細いボルトと柔らかいアルミボディなキャブレターには、この
くらい繊細な力加減が合っている。

 ピストンバルブを戻す時に方向に注意。

ダイヤフラムのベロをキャブ側のベロ受け溝に合わせて組む。

スプリングと共にフタを「真っ直ぐ」押し下げて指で仮止め。

ダイヤフラムが溝からはみ出てていないか確認。

締めすぎない程度に締めて完了。

 あとは車体にキャブを戻して始動すれば良い。
細かいパイロットスクリュー調整などはエンジンが温まってから。
リンク パイロットスクリュー調整

なお、放置期間が長くない車体ならここまで細かい分解掃除は
必要ないだろうけど、泥化した汚れを非分解で溶かして除去す
る方法に燃料添加系洗浄剤があるので、使ってみるのも方法だ
と思うよ。
リンク 燃料添加剤の効果?

 開けたらあまりにひどい腐り具合の結果、掃除しても不調な
らばキャブを新品丸ごと買った方が楽で早いと思うよ。
個人輸入の2週間待ちにはなるけれど物は安いし、何回も何時
間もかけて開け閉め整備する苦労よりは良い結果が出やすい。

 以上、皆から結構要望が多かったBS型キャブレターの分解
確認・掃除の紹介でした。
バイク屋さんに頼む方が楽だと分かると共の、工賃が高いのも
よく分かるお話でした。w