らびおがゆく Vol.3

山形県を中心とした演奏活動等

プロオーケストラのオーディション

2007年12月06日 01時42分05秒 | 音楽
 プロのオーケストラに奏者として入団(就職)したい場合は、オーディション(入社試験)を受けなければならない。管楽器などのように定員が一応決まっている楽器(パート)は、団員が辞めるとか、増員するなどの状況がないとオーディションは行われない。山形響の場合20年以上募集をしていないパートもある。ベテランの山形響団員さんの話によると昔は、団員募集の告知をしてもなかなか受験してくれる人がいなかったそうである。

オーケストラの業界では音楽大学を卒業した後、現場実地(エキストラ等の仕事)をして経験を積むというフリーの演奏家という立場の若い人達がいる。今社会的問題になっているフリーターやニートとは違い、フリーの演奏家はオーケストラ業界にとって必要不可欠な昔からの職業の一つであるが、世間はその安定しない職業を認めない。私の両親も早く就職しろと会う度に言っていたものだ。自分から自由な活動をしたいということでフリーという立場を選択する人達もいる。バブルの頃ならいざ知らず、崩壊後は演奏家はフリーの仕事が減ってきており、そういった音大卒業生を誰でも彼でもオーケストラ側は使用出来なくなってきている。ちょっとしたコネクションみたいなものが必要になる。師事していた先生の紹介とか、仲良くしていた先輩の紹介とか。新音大卒業生は、少ない仕事先で真面目にやって信用を積み重ねていかないと次の仕事にありつけない。バブルの頃は、例えば豪華結婚式などの祝宴演奏や豪華客船のレストランでの演奏、スタジオ系の録音のお仕事、歌手の全国ツアーなどのどさまわり仕事、オーケストラも大編成の曲をよくプログラミングするなど、オーケストラの団員よりフリーの方が稼ぐ事が出来た時代もあった。しかし今は仕事が無い。

仕事が少なくなればフリーの演奏家たちも安定した職に就こうとするが、オーケストラの団員は辞める人は少ない。オーディションがあれば、毎年必ず生みだされる多くの音楽大学卒業生とフリーの演奏家達で、その限られた席を争う事になる。例えばこの間聞いた話では、都内のオケがオーボエを募集すればたった1つの席に100人以上の人が受験に来るそうである。オーディションによっては合格者がでないときもある。フルート、クラリネットなどの人口が多いパートや一つのオケに1人しか必要ないチューバなどのオーディションには特に人が集まるそうである。

今回のオーディションが駄目だったら、次のオーディションまでにまた新たな卒業生が出てくるのでプロオケに入団したい人は増々増えていくだけである。しかしこの不景気でオーケストラも増員は無いし、新しいオケが出来るという話も聞かない。今のフリーの人は大変なのだろうと思う。ほとんどのオケの受験資格は年齢制限があるので、それに達すると優秀なプレイヤーなのに生活のために廃業する人が出てしまう厳しい世界なのだ。

ただこの状況のおかげ?かここ数年の山形響のオーディションにはたくさんの優秀な方が応募してくださる。地方のオケにとっては悪いばかりではない。

受験者の人生(生活)までかかっているのでいい加減なオーディションは出来ない。団員には投票権が与えられているので、仲間になれる人を真剣に選ぶのだ。ただ自分がオーディション受けた時を思い出すので、会場は今でも嫌なものだ。お客さんの前で演奏するのとプロの団員の前で弾くのは気持ちが全然違う。足は振るえ、冷や汗の連続なのだ。

2度と経験したくないことの1つである。

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5 コメント

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足はふるえ、冷汗が (narkejp)
2007-12-09 05:36:29
私もUターン経験者ですので、一度退職し、再就職しました。学生時代なら、面接なども怖い物知らずでしたが、社会人となり再び面接を受けるのはいやなものです。ましてや音楽家の場合はいわば実技試験を課されるようなものでしょうから、その緊張たるや推して知るべし、でしょうね。
ただし、この種の緊張感は、怠惰な生活にはほどよい喝!になるかもしれず、わが息子にはぜひ味わってもらいたいところです(^o^)/
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>narkejpさん (らびお)
2007-12-09 20:07:35
コメントありがとうございます。
オーディションの緊張は、コンクールなどでの緊張も比較になりません。特に倍率が高ければ高いほど、自分の演奏に対する穴探しをプロフェッショナルな人たちが大勢で目や耳をフル稼働させてするのですから。少ない時間の中で、一緒に受験した人たちよりいかにアピールするかにかかっていますからね。

心臓が口から出そうだったとかみなさん言いますよ。不合格でも死ぬわけではないのですが。

音楽を演奏する事の難しさは、出した音は修正できないことにあるからだと思います。できればこの種の緊張はなしでいきたいです。
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チェコフィルのトップ (balaine)
2007-12-10 19:37:05
フルートの首席が定年で退官したため、次の首席を決めるオーディションが昨年あったそうです。アフラートゥスのフルートで私の友人のロマン・ノヴォトニーはまだ30代後半ですが、10年近くセカンドを勤めて来てトップを望んでいたと思います。その他にも男性奏者が自分のプライドとチェコフィルの威信をかけて鼻息荒くオーディションに望んだのですが、まだ20代の女性がさらさらと爽やかに演奏したら彼女が首席になってしまったのだそうです。肩に力が入って自然な演奏が出来なかったロマンの気持ちも痛い程わかります。首席になった彼女がどこかに移るなどして辞めない限り、トップの座は空かないのです。
これはプラハ響のピッコロ奏者フィンダ氏の奥さんから聞いた実話です。いろんなオーディションがあり、いろんな思いがあり、必ずしもベストの人が選ばれるとは限らないというところがあります。一発勝負の恐ろしさであり、音楽という時間芸術の醍醐味でもありますね。
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>balaineさん (らびお)
2007-12-10 22:12:07
コメントありがとうございます。
オーケストラのオーデションについては、色々な話がありますね。ただ言える事は、強権の音楽監督などがいない限り日本ではかなり民主的にオーディションが行われるところが多いので、受験する人は公平に受験できると思います。誰か一人の考えで団員さんを入団させてもその一人の思い込みになりかねないからです。だから全員投票という形をとるのでしょう。音楽は数値化出来ないし、好みというのは人それぞれで、さらに付け加えれば投票する人たちの投票の基準んもバラバラなのが当たり前なのです。

balaineさんの友人さんは残念でしたが、そういうものなんですねオーディションって。もちろん今の発言はチェコフィルが山形響と同じようなオーディションを行っているという前提での発言です。

フォローではないですが、個人的な意欲とは別に管楽器の下吹き奏者の重要度はそんじょそこいらの新人演奏者にはなかなか務まりません。下が安定して初めて上が自由に吹けるものだと思っています。チェコフィルもそんな事を考慮した可能性もありますね。アンサンブルの難しさです。

ウィーンフィルは上吹きの人がベテランになり下を吹き、上には優秀な新人を入れて、鍛えるという事を聞いた事があります。上吹き、下吹きはそのままの上下ではなく、下の方に先生格がいるというのも良いと思います。
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上と下 (balaine)
2007-12-11 21:50:45
チェコフィルではブラインドでの試験だったと聞きました。
N響のフルート神田さんも芸大での先生である細川順三さんが「下」になる時に大変緊張したそうですが、「君はトップなんだから堂々とやりなさい」というような事を言って下さって落ち着いたそうです。
確かに下が安定してこその上です。わたしもオケで2番を吹いている時の楽しみや喜びを感じています。
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