倉本聰監督、中村龍史演出の舞台『走る』の初日と2日目を北海道の富良野まで観に行ってきました。
初めて訪れた冬の富良野は、見渡す限り雪、また雪。
富良野演劇工場で舞台があるときは、駅前から各所を回る無料巡回バスが出ているようです。
雪の道を、いろいろなホテルを回って、最後小高い丘のようなところを登っていくと、富良野演劇工場はありました。
そして駐車場にはたくさんの車。
そうですよね、おそらく歩いてくる人は一人もいないでしょうから。
人々が吸い込まれていった演劇工場の中には、たくさんの著名人の花が飾られておりました。
劇場は、とても観やすい劇場でした・・・と言っても、私の席は初日最前列のほぼ真ん中、2日目2列目の同じ場所。
席を予約するときに劇場の方に、片方は俯瞰で見られる後方が良いですか?と聞かれたのですが、両方前列にしていただいて大正解でした。
舞台っていろいろと種類があると思います。
派手な舞台の転換や、衣装音響効果などがダイナミックな舞台とか・・・
でもね、この『走る』は、演者の質感こそが勝負だと思うんです。
いままで、幾度となく富良野塾生たちによって再演されてきた『走る』の舞台を、今回倉本聰さんは、なぜ中村龍史さんに演出を依頼したのか。
きっと中村JAPANのファンの方たちだったら、『走る』が始まったらすぐに「なるほど」と思うことでしょう。
私はスポーツを見ることは大好きです。
そして幸せなことに、スポーツから自分が得られた感動と同じか、もしくはそれを凌駕するほどのものを舞台から得ることもあります。
しかしながら今回、私は『走る』の舞台を観て、美しいと思いました。
あのヤンキースタジアムで観た、松井秀喜のレッドソックス戦で9回の裏に放った起死回生のサヨナラホームランの、弧を描いてライトスタンドへ飛んでゆく打球のように、あのFIFAクラブワールドカップの決勝で、ゴールネットに突き刺さるクリスチアーノ・ロナウドのシュートのように、『走る』は美しかった。
今まで何回も、chanceというグループを通して演者の方たちを観てきました。
中村ジャパンの舞台もありました。
あのマウントレーニアの初演から、はたしてもう何度舞台に足を運んだことだろう。
そんな私が、舞台が始まってスタートラインに向かって、演者たちが集まってきたと同時に、絶句しましたから。
もうね、これがあの目の前でかわいらしいイルカの絵を描いてくれた人と同じなのかと。
バッグを作ってくれた人は、得意の分野で本領を発揮してる。
そういえば横に座ってた年配のご夫婦が、パンフレットを見ながら「この子”あいまい もこ”っていうんだって、おかしいね」なんて笑っていましたが、彼女のあんな内に秘めたような抑圧された演技を見ることが出来るなんて・・・
でもね、確かに彼女は海原を自由に泳ぎ跳ねるイルカのように美しかった。
倉本聰さん、『走る』は、とても美しかったです。
と私は言いたい。
そして帰ってきて、早速富良野の千秋楽のチケットを購入しようと、演劇工場に電話してみるも、当然のことながら売り切れで(T_T)
CHANCEスタジオの距離で『走る』を観られたことは本当にラッキーでしたが、何処かであともう1度でも観られれば良いのだけどなあと思う今日この頃なのです。