心音は語る。
何とはなしに、思い付いたままに。
届け伝えたい人へ
この手紙を貴方が読んでいる時、私は貴方に会えにくい遠く離れた存在になっています。親いと思っていたのは私だけで、実は貴方からしてみたら、私と言う存在はとるにならない単なる、話し相手的な人か何か会えば突然近寄って来るな――程度の存在だったとも思っています。本来ならば、こんな紙ではなく、直接お会いして話をすべきところですが、2度とそこへは近づけず、近づかずとなってしまった事をお許し下さい。貴方にしてみたら、そんな事さえも、どうでもいいや、と思われると思います。単なる私の我が儘でこうして文を送り伝えている事になっているのは言うまでもないですが、どうかお許しを。
月に何回かしかお会いするチャンスがなくて、私には良い偶然だったなと思っています。貴方にとっては、不運な偶然だったかも知れませんが、寡黙な貴方に、私と言う大して面白くなく退屈な話を浴びせてくる迷惑な存在だったかも知れません。極力、不愉快な話はしないようにそれでも努めたのですが、なかなか誰かと話すと言うのは難しいです。そうであるなら、ほっておいてくれよ、で終わるのです――しかし、ほっとけなかったその訳は、貴方からすると不本意かも知れないですが、こんな私をごく表面的にかも知れないですけれど、受け入れて下さった様に感じたからにあります。疲れているなかであくび噛み殺してでも、つまらなそうな顔をせず、短時間の中でも長話に耳をかたむけて下さったこと心から感謝いたします。
孤独を恐れず寡黙であっても、生きる事への力強さがあることは私にはないもので、こんな歳になってもそんなことを言う私はまだまだ子供のままでみっともないですけれど、私は所詮そんな奴なので後々の笑いの種にしかならないです。でもそれでいいです。あんな奴がそう言えば居たっけ?とこれから先の人生のどこかで思い出して頂ける事があるなら。
さようなら。2度と会えても会わない方があなたの為と思い、この手紙は送りたくて届けたくてもかなえてはならない私の戯れ言として、ずっとこのまま私の手の中で生き続くだけで
そんな手紙がどこか人目のつかない場所で見つかってもくずかご行きになりそうな、そんな心音語り。