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ホワイトデーの返事を貰った新学年初日

2022年02月28日 01時23分00秒 | 物語・小説
 児島 櫂生(こじま かいせい)が住む数軒先の家の2階から、たまに、曲名は解らないが、聞き応えるメロディを奏でる、少女の姿を、児島 櫂生(こじま かいせい)は、見ていた。
 彼女の名前は、増間のぞみ(ますま のぞみ)と言った。増間のぞみ(ますま のぞみ)は、児島 櫂生(こじま かいせい)と同じクラスだった。だが、児島 櫂生(こじま かいせい)は、増間のぞみ(ますま のぞみ)とは、言葉を交わした事は、そうはなかった。
 増間のぞみ(ますま のぞみ)の家は、肉屋を駅前の商店街で、営んでいた。休みの日に、児島 櫂生(こじま かいせい)は、何度か、増間のぞみ(ますま のぞみ)が、店先で仕事の手伝いをしているのを、見たことがあり、個人経営も大変だなあ…と思った事があった。
 
 ピアノ演奏も得意な、増間のぞみ(ますま のぞみ)あるのだが、児島 櫂生(こじま かいせい)は、もう1つ、増間のぞみ(ますま のぞみ)には、特技があった。それは、包丁捌きだった。
 学校の講義で、調理実習と言う、物を食えると言う意味では、人気があるのだが、その講義で、増間のぞみ(ますま のぞみ)が包丁を握って、食材を切る姿に、クラスメイトと担当教諭が、目を奪われた。魔法の様に、素早く、形も美しい切り方なのだった。

――さすがは、肉屋の娘――

 と、誰もが思い、児島 櫂生(こじま かいせい)も例外ではなく、凄いの一言であった。
 また、増間のぞみ(ますま のぞみ)は、家業の肉屋の名前は、真面目、と言った。真面目精肉店であり、増間精肉店、とは、言わなかった。そして、その真面目精肉店では、増間のぞみ(ますま のぞみ)の父親とおぼしき人物が、店内奥で、華麗な包丁捌きで、商売用の肉を切る姿があると言う話もあり、生半可な気持ちで、増間のぞみ(ますま のぞみ)に近づこうものなら、増間のぞみ(ますま のぞみ)の家が営む、肉屋の包丁で、裁かれるのではないか?と言う嘘みたいな噂もあり、増間のぞみ(ますま のぞみ)に、恋人やボーイフレンドがある、と言う話は、なかった。

 そんな中で、児島 櫂生(こじま かいせい)は、増間のぞみ(ますま のぞみ)の容姿と華麗な包丁捌きに、ピアノ演奏、それに、講義にも勤勉で、クラスメイトとのやり取りを、教室の片隅から見ていて、ガールフレンドに出来たら良いな、と、思っていた。勿論、先述の嘘か真かの肉屋の包丁の話を、知った上でも。

 学年進級が迫る3月がやって来て、3月13日のプレホワイトデーを迎えた日の放課後の教室で、児島 櫂生(こじま かいせい)は、1つの決断をした。
(貰っていないけど、貰えなかったけど、やってみよう)
 あり得ない事だが、明日のホワイトデーは、今日と同じく通常講義日である事を、児島 櫂生(こじま かいせい)は、利用し、増間のぞみ(ますま のぞみ)の机の中に、ホワイトデーの贈呈品を、手紙と共に入れた。勿論、差し出し人が、児島 櫂生(こじま かいせい)の名を入れ、もし、来月の4月から、クラスになったら、普通に話せるような関係になりたい、と言う事を書いた。それを読んでなのか、増間のぞみ(ますま のぞみ)は、ホワイトデーを過ぎても、学年が終る最後の日まで、なかった。

(のぞみさん、なんて、書いたのは、失敗だったかな…)
 修了式の日の放課後、児島 櫂生(こじま かいせい)は、無人の教室の中、増間のぞみ(ますま のぞみ)席だった机に立った。
(そう言えば、手紙に、のぞみさん、って書いたけど、そう呼べる日は、決して開かない扉の向こうかな?)
 厨2っぽい、と、児島 櫂生(こじま かいせい)は、自虐的な笑いを浮かべて、教室から出たのだった。


 そして、何事もないままに、児島 櫂生(こじま かいせい)は、学年が1個上がり、クラスメイトも変わった。だが、その中に、物語のお約束で、貼り出された、児島 櫂生(こじま かいせい)の新クラスの名簿の中に、増間のぞみ(ますま のぞみ)の名前があった。
(同じか…そっか…)
 増間のぞみ(ますま のぞみ)に、先月のホワイトデーに伝えた想いが、届いて叶うだろうか?と児島 櫂生(こじま かいせい)が思っていると、
「えっと、児島くんだっけ?」
 増間のぞみ(ますま のぞみ)の声が、背後でしたので、児島 櫂生(こじま かいせい)が、振り向くと、先月までも容姿と雰囲気のままに、増間のぞみ(ますま のぞみ)が居た。
「ホワイトデーのお菓子ありがとう。バレンタイン渡してないのに、貰えたから、驚いたよ」
 増間のぞみ(ますま のぞみ)は、嬉しそうに笑った。
「一緒のクラスになれたし、櫂生くんのガールフレンドとして、よろしくお願いします」
 増間のぞみ(ますま のぞみ)は、児島 櫂生(こじま かいせい)に手を差し出した。
「こちらこそ。ボーイフレンドとして、宜しくお願いします」
 児島 櫂生(こじま かいせい)は、少しうつ向き加減でそう言うと、周囲から、歓声があがり、新学期が始まったのだった。
(完)
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売れない歌手やってみませんか?   その5

2022年02月18日 23時18分33秒 | 物語・小説
 2回目の商業ビル屋上は、1回目の時ほどの瑞々しさが、全体として、消えたものの、出演した各アーティストの今日の舞台と、これからを意識したものが、ライヴの中にあったように、幡山 日光(はたやま にっこう)は、思えた。

 2回目のライヴを終え、また、次も別の商業施設の屋上で行う…と言う話が、作者の都合で、恣意的に出ては来ても、各、アーティスト達としては、嬉しいニュースであった。
「お疲れ様です」
 会場からの帰宅の途、幡山 日光(はたやま にっこう)は、同じ売れない歌手プロジェクトに参加しているアーティスト、
笹生 英輝(さそう ひでき)に、声をかけられた。
「幡山さん、良い歌声してて、好きなんですよ」
 笹生 英輝(さそう ひでき)にそう言われ、幡山 日光(はたやま にっこう)は、本当に?あんたのがイケイケだったでしょうよ、と、今日のステージでの、笹生 英輝(さそう ひでき)を見て思っていた。
「この後、飲みに行きましょうよ。おごるんで」
 と、笹生 英輝(さそう ひでき)に、圧され、幡山 日光(はたやま にっこう)は、否、とは、言えなかった。

 
 笹生 英輝(さそう ひでき)の身にまとうオーラや話し方のレベルの違いを、思い知らされる、サシ呑みの中で、笹生 英輝(さそう ひでき)から、幡山 日光(はたやま にっこう)に歌ってもらいたい曲があるので、明後日あたり、どうですか?と言う事になり、幡山 日光(はたやま にっこう)は、笹生 英輝(さそう ひでき)が指定された場所に、赴いた。
――アコウスティックギター弾けるのって、持ち運びが便利で良いよなあ――
 道すがら、幡山 日光(はたやま にっこう)は、そう胸の中で、つぶやき、笹生 英輝(さそう ひでき)と合流した。
「で、この間話した曲なんですけど…」
 笹生 英輝(さそう ひでき)とのサシ呑みの席で、ある2つの同じジャンルに属する物語の話が、出てきて、その物語の展開や登場キャラクターの
話で、
「そうか、そんな見方もあるか」
 だったり、
「やっぱり、そうですよね」
 と言う話になり、主題歌や挿入歌の話にもなり、お互い、
「いきなりエンディングに、フルで流れて、記憶に残りましたよね?」
 となったあたりで、幡山 日光(はたやま にっこう)に、歌ってもらって聴いてみたい、と、笹生 英輝(さそう ひでき)が、言って、今日を、迎えた経緯があった。

――って、言っても、歌えるのか、俺?――
 集合場所は、小さな貸しスタジオだった。
――わざわざ、こんな所まで、借りてやるなんて…――
 指定の部屋に行くと、笹生 英輝(さそう ひでき)が、既に待機していた。
「お疲れ様です」
 笹生 英輝(さそう ひでき)は、手を挙げて、幡山 日光(はたやま にっこう)に、機嫌良さげに言った。
「で、これが歌詞カードです」
 笹生 英輝(さそう ひでき)は、A4に打ち出したものを、幡山 日光(はたやま にっこう)に渡した。
「じゃあ、歌なしで、ちょっとやってみますんで、雰囲気掴んで下さい」
 笹生 英輝(さそう ひでき)は、手持ちのアコウスティックギターを、歌なしで、奏で始めた。
――なるほど。ここは、こんな、なのね…――
 歌手であっても、楽器演奏は、弾くものの味が出るなあ、と、幡山 日光(はたやま にっこう)は思い、他人の演奏は、いつでも、本物そっくり感が、自分よりも濃くて、巧く感じられた。
「それで、ここの箇所は、前の部分の…」
 笹生 英輝(さそう ひでき)は、歌詞カードを指差して、演奏の流れと歌が入るタイミングを、示した。
「こんななんですが、行けそうですか?他人の生演奏って、自分で楽器出来ると、歌い難いと思うんですが」
 笹生 英輝(さそう ひでき)に、訊ねられた。
「あとは、やってみないと、ですけれど、巧いですね」
 幡山 日光(はたやま にっこう)は、率直にそう思った。
「オッケイです。じゃあ、今回は、歌つきで、お願いしますね」
 笹生 英輝(さそう ひでき)は、そう言うと、演奏を始めたので、幡山 日光(はたやま にっこう)は、歌いに入るタイミングを追いかける。歌うこの曲が持つ、もともとの質が高いと、多少、歌唱力がなくても、それなりの完成度が出るので、歌う方としては、気持ちの良いもの。だが、演奏家は、どうなのだろうか?幡山 日光(はたやま にっこう)は、そんな事を想い笹生 英輝(さそう ひでき)の演奏で、最初から最後まで、歌いきった。
「ギターの音色に忠実に歌われるんですね。思った以上に良いですね」
 笹生 英輝(さそう ひでき)は、嬉しそうに、言った。
「それは、有り難いです」
 リップサービス入ってない?と幡山 日光(はたやま にっこう)が、疑っていると、
「で、リクエストなんですけど、もう1回、歌ってもらえませんか?」
 笹生 英輝(さそう ひでき)が、お願い、と言うと、スマートフォンを取り出すと、録音アプリを立ち上げた。
「次の演奏は、動画サイトにも、アップしたいと思います」
 そう言うと、笹生 英輝(さそう ひでき)は、再び同じ曲を奏で始め、幡山 日光(はたやま にっこう)は、歌い始めたのだった。
(終)
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売れない歌手やってみませんか?   その4

2022年01月21日 07時21分37秒 | 物語・小説
 デビューフリーライヴの日。  大して、人は来ないだろうと、幡山 日光(はたやま にっこう)は、思っていた。  商業ビルの屋上、ひらたく言えば、デパ地下の逆、デパ屋上、でのフリーライヴである。しかも、平日の夕刻時で、土休前日と言う訳でもない。そのあたりも、売れない、に直結するものがあるのが、みえみえなのは、物語の進行上の都合でもあると言う、御約束をお許し願えれば…と言う所。 ――へー、観客、10人くらいか。――  仮設の控場所から、幡山 日光(はたやま にっこう)は、会場の様子をチラ見して思った。 ――有難い事で…――  売れない歌手、と言う企画からしても、この人数では、想定よりも少ないんだろう…そう、幡山 日光(はたやま にっこう)は、思った。  下回りばかりが、当たり前の日常――それは、きっと、自分自身がそのまま変わらずに居る事なのかも知れない。そんな言葉が、幡山 日光(はたやま にっこう)を過った時、ライヴが始まった。  それぞれ出演者が、地味とは言え、華々しい始動と言う場を、最大限に使って、自分自身の存在を大きくPRする姿を、幡山 日光(はたやま にっこう)は見て、凄さを感じたのと同時に、自分も彼らと同じ立ち位置にあるうちのひとりであり、競争相手でもあるのに、既に、自分は、強き想い、と言う面で、彼らに敗れている気がした。  大丈夫だろうか?  そんな言葉が、幡山 日光(はたやま にっこう)をかすめた中で、舞台に立つ時間がやって来た。 ――案外、というか、案の定、というか、うまくいかないもんだったなあ――  講演が、終わった後、幡山 日光(はたやま にっこう)は、自室で今日の事を思い返した。  簡単な自己紹介と曲紹介で、あっさりと終わり、観客は、へー、と言う、可もなく不可もなくと言う、どこにでもある、微妙な空気で終わる結末。 ――うけなかった事は、確か。それでも、曲の仕上がりは、個人的には、うまくいったんだけどなあ――  幡山 日光(はたやま にっこう)は、ため息をついた。  そして、物語の特性上、実は、フリーライヴ第2弾が、別の商業施設ビルの屋上で、行われる運びとなっていた。今回と同じ構成で行うと言う、ありがちで、都合の良い設定が出来るのが、自作創作な物語、である。そして、御約束の、その前に、が、ある。    デビューライヴから数日が経過した日、幡山 日光(はたやま にっこう)が所属している事務所から、映像資料が送られてきた。初ライヴの様子を撮影したもので、先程書いた、2回目の為に、有効に活用せよ、と言う目的が、売れない歌手、だと言うにも関わらず、こうして、幡山 日光(はたやま にっこう)の手元に来るのも、話の水増しの為である。  幡山 日光(はたやま にっこう)は、手元に来た、映像資料であるDVDを自室で、再生をかけた。 ――やっぱ、華があるなあ、それぞれ――  大きく開花。  舞台の上での自分以外のアーティストの姿が、おしなべて、幡山 日光(はたやま にっこう)の目には、そう映った。それに比べたら、自分の出番の様子は、何とも淡白で、ステージの上で、余裕もなく挙行し、他者に劣ったものが、感じられ、凹まされるものが、幡山 日光(はたやま にっこう)にはあった。 ――こんなんで、2回目平気なのか?――  出演と言う機会(きっぷ)は、手には入った。しかし、その先までが手に入った訳ではない。 ――次、と言う、一時の事に、目を奪われ過ぎるな、って事で、このDVD、来たのかもな…――  幡山 日光(はたやま にっこう)は、長くゆっくりと息をはいて、何を思う訳でもなく、自然とデビューナンバーの修練に入った。 (終)
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売れない歌手やってみませんか?   その3

2022年01月14日 20時53分11秒 | 物語・小説
デビューライブで、幡山 日光(はたやま にっこう)が歌うナンバーは、売れない、がつくので、どこにでもある、「これから」と「今より先へ」がテーマな1曲と、ファンをいとおしく、そして、手離したくない者ととらえたLOVEソングが1曲で、合計2曲であった。
 何れの歌も、幡山 日光(はたやま にっこう)の為に、創られた事に、表面的には、なっているが、実は、別人が歌う予定があったと言う。それを、幡山 日光(はたやま にっこう)が、聞かされたのは、今回のライヴの説明を聞かされた時だった。資源の有効活用で、どれも、格段に悪いと言うものではないので、好きなように、歌って良いという事だった。無論、それは、今回のライヴに参加するアーティスト全員で、例外はなかった。

――売れる、売れないに、翻弄されて、アーティストで、一山あてる、って言うやつなんだろうな――
 曲を頂戴出来ると言う有り難さを、幡山 日光(はたやま にっこう)は、痛感しつつも、ベストな傑作の影で泣く、日の目を見なかった、御蔵入りナンバーも多数か…と、ため息をついた。
――その御蔵入りナンバーが、良かったりもする…案外――
 アーティストの自己満足でやるには。それが、観客に伝わったら、それこそ奇跡で、語り草になったら、格好いい、と、幡山 日光(はたやま にっこう)は、思っていた。無論、現実の世界で、起こればの話である。

 
 本番が近づき、歌うアーティストの順番が決まった。幡山 日光(はたやま にっこう)は、最後から1個前と言う、記憶に残るのかと言う所だった。
――記憶に残りにくいだろうから、いっか…――
 自室で、何度目とも知れぬ披露ナンバーを、幡山 日光(はたやま にっこう)は、弾き始めると、早速、間違える。
――相変わらず、集中力乏しいなぁ…――
 そう思いつつも、最初から最後まで、演奏を通す。曲も幡山 日光(はたやま にっこう)自身も、世に知られていないと言う、無名さ。その無名状態から、0が終わり、1にたどり着き、そして、2、3…と進み行く。それがくっきりと解るのは、物語だったり、他人だったりで、自分じゃないと、思う、幡山 日光(はたやま にっこう)と今やっているナンバーの相性は良いかな、と、幡山 日光(はたやま にっこう)思う。一方で、もう1つの持ち歌となったナンバーとの相性が、ちょっと…と思っていた。
――大事な手離したくないものを、いとおしく思う…考えてみれば、恋に縁のない自分には、どんなものなのか?――
 幡山 日光(はたやま にっこう)は、キーボードの譜面台の歌詞を印刷した用紙を、眺めながら、思った。
――こっちのが、完成度、低いんだよな。――
 どうしよう…と、幡山 日光(はたやま にっこう)は、頭をかかえた。
――思えば、友達も大していなくて、かけがえのない、って、綺麗事だろって、思ってた口だもんなあ――
 幡山 日光(はたやま にっこう)は、重い気持ちのままに、弾き始める。間違える回数は、始めの頃よりは、減った。だが、満足行くように、どうしても、いかない面がありながらに、本番を迎える夢を、幡山 日光(はたやま にっこう)は、何回か見ているうちに、本番がやって来たのだった。
(終)
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売れない歌手やってみませんか?  その2

2022年01月13日 12時49分21秒 | 物語・小説
オーディションの日だけが、迫り来る中、幡山 日光(はたやま にっこう)は、課題曲の修練に追われては居ても、お約束の如く、最初から最後まで、ノーミスでたどり着く確率は、上がりはしても、不完全、であった。もし、完全であったなら、俺は、どんな場所でも、求められ、良い成果を積み上げて、行き続けるんだろうな…と、歌詞カードが載ったキーボードの譜面台を、見つめて、あーあ、と、深く息を吐いた。
――もって生まれし天分なし、もって生まれし、向上力なし…今に始まった話じゃない――
 こんな時、泣き言言ってる場合じゃねえ、やれよ…と言う声が、幡山 日光(はたやま にっこう)の心のどこかでして、やってはみるものの、それで、どうにかはなることはあっても、求められる所まで、行き着けたためしは、どれくらい?である。回数少ないなら、印象に残る筈なのに、それを凌駕するくらい、うまくいかなかった記憶のが、強く刻まれ、自己肯定感が、下がるばかり――その時点で、人並み、か、良い意味で、人並みを外れた力は、自分にはない。それを解った上で、駄目を、許容範囲で収めてもらったり、或いは、何とか収まったり…と言う綱渡りは、転倒の連続である。しかし、ここは、幸いにして、物語と言う世界なので、作者の気分次第で、この物語の主人公、幡山 日光(はたやま にっこう)とその廻りを、操る事が出来るから、物語なのである。


 オーディションの当日がやって来た。
――個別に、現地でやると…選りすぐりを、発掘するじゃないから、これでも良いのか?――
 一ヶ所で、複数人でやろうものなら、通らない可能性がより上がりそうな予感を、幡山 日光(はたやま にっこう)はしていた。
 一般的な流なら、「我こそが」が、基本の筈で。けれど、そう言う競争はちょっとなぁ…と、幡山 日光(はたやま にっこう)は、思っていた。だが、それでも、やってみたいと思った訳は、あり得る確証もない、万が一の夢、が現実のものに、なったなら――と言う、言葉にしない方が、良いんじゃないの?と言う物。それを、あえて、言葉にしたのは、文字数稼ぎだろ?と言う正論を、この物語の語り手では、否定することはない。

 指定された場所に、幡山 日光(はたやま にっこう)は、行った。審査員3名の前で、キーボードで弾き語りを、披露し、結果は後日と言う運びになったが、顔色が良い意味でも、変わらなかった審査員の反応に、幡山 日光(はたやま にっこう)は、現実は甘くないか…と思った。だが、それでは、物語としては、それでは、成立しないので、ここは、御約束の王道を行く結果が、幡山 日光(はたやま にっこう)の元に、届くのであった。

 オーディション合格の通知が、幡山 日光(はたやま にっこう)の基に届き、CDも何も出ぬままに、とりあえずデビュー、と言う、パッと見、有り難い切符が手に入った。だが、この企画は、売れない歌手1人をデビューさせると言うものではなく、幡山 日光(はたやま にっこう)の他に5名、計6名が、今回のオーディションに通った事を、後日、所属先のプロダクションから、幡山 日光(はたやま にっこう)は、知らされた。

――それで、いきなり、デビューライブ。しかも、商業ビルの屋上でって、いつの時代の話?――
 幡山 日光(はたやま にっこう)は、自宅で、デビューライブの企画書を見ながら思った。
――しかも、フリーライブ。まあ、そんなもんか――
 観客が見込めないからなんだろうが、来たら来たで、どんな人が?と幡山 日光(はたやま にっこう)は思った。
――2曲演奏と自己紹介がてらのMCで、12分か。ほぼ、歌って終わりって感じか――
 よく出来てるな、と、幡山 日光(はたやま にっこう)は、思いながら、渡された楽曲の資料に、目を向けた。
――売れない歌手、なので、特別な指導はなし。とりあえず、形になるように、構成を…ねえ――
 事前に1回、ちゃんと準備したかの確認の意味で、曲のリハーサルと流れだけは、確認すると言う話だった。
――先ずは、貰った楽曲出来るようにならないとな――
 誰か用につくって、ハネられた曲を活用すると言う企画も、織り込まれていた。無論、歌い手側は、それを選べないので、自分の色が巧く、それにノルと良いな、と幡山 日光(はたやま にっこう)は思いながら、デビューライブ用で行う楽曲の修練に入った。
(終)
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売れない歌手やってみませんか?  

2022年01月12日 07時15分29秒 | 物語・小説

――売れない歌手ねえ――
 幡山 日光(はたやま にっこう)は、ある時、web上で、
「売れない歌手に、やってみませんか?」
 と言うオーディション広告をみた。
――妙な企画だな、これ――
 一体、どんな感じでやろうって言うのだろう…と言う、興味が幡山 日光(はたやま にっこう)に生まれた。
――で、オーディション用の楽曲デモテープを、企画している事務所まで、取りに来い…と。これは、また、アヤシイ――
 だが、冒頭にもあるように、売れない歌手、なのだから、怪しいくらいが、妥当なラインかも知れない、と、幡山 日光(はたやま にっこう)は思い、騙されるの覚悟で、この話に、手を出したのだった。

「連絡頂いた、幡山さんですね。こちらが、オーディション用の楽曲テープになります。詳しいことは、こちらの封筒の中の書類に、書いてありますので、熟読して、受けてください」
 幡山 日光(はたやま にっこう)が、指定された場所で、オーディション用の楽曲テープと、案内が書かれた書類を貰った。

――自分で楽器を奏でる
、か、カラオケ演奏で歌うかを、選択か。どっちにすると良いのかねえ――
 幡山 日光(はたやま にっこう)は、帰りの道すがらに、オーディションの案内書を読みながら、考える。
――使用出来る楽器は、アコウスティックギターとキーボードか。ギターは、無理だから、やるなら、キーボードか――
 その場合、このカセットテープの楽曲の難易度次第だけれど、と、幡山日光(はたやま にっこう)は、思った。幡山 日光(はたやま にっこう)のキーボードの演奏の腕は、そこまで、良いと言う訳ではなかった。

 幡山 日光(はたやま にっこう)は、家に戻って、オーディション用の曲を聴いてみた。歌詞カードと弾き語り参考用の譜面がついていたので、眺めながら聴いてみた。無論、歌声は入っておらず
、メロディが流れる演奏が、テープに入っていた。
――へぇー。結構好きかも、この歌…――
 幡山 日光(はたやま にっこう)は、メロディと売れない歌手募集、とは言えど、始めとその前へを、テーマにした形で、構成された詞が良い、と感じがした。

――これなら、やれるかも知れない――
 幡山日光(はたやま にっこう)は、数度テープを聴き、歌詞カードを、覚える意味も込めて、ノートパソコンでタイプ打ちして、印刷をかけた。
――オッケイ。じゃあ、早速、弾いてみよ――
 幡山 日光(はたやま にっこう)は、キーボードの電源を入れ、自分の歌いやすい様に、音階をいじって、やってみた。人間音を、自由に奏でて、思った通りに、最初から最後まで、周囲の迷惑を考えず、演奏出来ると、至福の一時を、手に入れる事があるからだ。
――うーん、良いねえ…でも、まだ、メタメタだけどな…――
 出来るように、なんのか俺?と、幡山日光(はたやま にっこう)は、思った。100%マスターは、幼い頃より、苦手な幡山 日光(はたやま にっこう)。だから、今、こんななのかもな…と、思いながら、もう一度、頭から、修練に出たのだった。
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空色騎士2 その9

2017年06月22日 23時46分09秒 | 物語・小説

隠しダンジョンを見つけたリッター達は、一度、フランカの家に戻った。そして、今回の探求に必要なものを取り揃え、再びリッター達は、隠しダンジョンの入口にやって来た。
「少し修行と準備が足りないかも知れませんが、お願い致します」
エスパーダがカマラダに、カンヘルから貰った液体を、入口を封印している鳥獣ベルメリョンの像にかけるよう促した。
「さて、どうなる?」
カマラダは、鳥獣ベルメリョンの像に液体をかけると、目が赤く光り、リッターとフランカにその光をあて、消し去った。次の瞬間、鳥獣ベルメリョンの目は今度は、緑色に光り、エスパーダとカマラダを照らすと、2人を消し去った。
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空色騎士2 その8

2017年06月20日 14時15分55秒 | 物語・小説

第2の街が近づくにつれ、晴れていた空が曇天に変わり、湿度が上がってきた。
「曇りか雨、霧しかないのが最近の第2の街なんだ」
カマラダが、移動中のアイラーバタの背の上で言った時、雨が降り始めた。


「ありがとう、アイラーバタ」
カマラダが、小さな透明な瓶を取り出すと、アイラーバタがその中に入った。
「便利だなあ」
透明な瓶に入ったアイラーバタを見て、リッターが言うと、アイラーバタは、瓶の中で鼻を上げた。
「さて、フランカに会いに行こう」
カマラダと共に、リッター達は、第2の街に入った。荒天続きでも、人々の営みはあった。
(店も結構やっているのか)
リッターは、街のそこ・ここを見ながら思った。クエストに必要なものが、揃わないくらいの街になっているのではないか?と少し心配していた。

「ここが、フランカの住んでる所よ」
カマラダに、連れてこられた場所は、3階建ての集合住宅であり、フランカはその住宅の3階に住んでいた。
「フランカ、居るー?」
カマラダは、フランカが住む部屋の扉を開けると、部屋の中央部に女性騎士が椅子に座っていた。
「どうしたの?カマラダ。新しいパーティでも作ったの?」
静かに笑ってリッター達を見た。
「探求やろう。この人達と」
カマラダは、リッター達を指した。
「孤島の大怪物さんとこの街の封印された怪物さんを叩くものに、是非ご協力いただければと」
エスパーダは、自己紹介がてらに、目的を話した。
「解りました。良いですよ」
フランカは、快く今回の探求に承諾した。
「それで、この街に封じられたと言う怪物さんはどこに?」
エスパーダがフランカに問う。
「それが、わかっていないんです」
フランカは、地図をテーブルに広げた。
「今、私達は、ここに居ます。カマラダが言う神像があると言う扉がある場所は、どこにも」
エスパーダは、地図を覗いた。
「なるほど。所で、この街に宿屋、情報屋、易屋はありますか?」
「宿は、ここにあります。情報屋はないんです。易は、宿屋内にあると言う話ですが、信憑性が低いんです」
フランカは、地図上で宿屋の位置を指差しながら言った。
「1度、易に行って占ってもらったんですが、地下1階地上3階建ての建物の最上階と言われ、調べてみたもののそれらしきものはありませんでした」
フランカは、溜め息をついた。
「最上階――屋上もあり得るんですかね?」
リッターが言うと、
「屋上。ありそうですね。地下へ通ずる階段とかが。それで、その目星を着けた建物はどのくらいあるので?」
エスパーダが、フランカに訊くと、今、自分達を入れた所を入れて5箇所あるとの事だった。
「では、ここの屋上からあたってみますか?」
エスパーダが提案する。
「ここの屋上――まっ平らじゃなかったっけ?」
カマラダが顎に指をのせて想いを巡らせつつ言った。


リッター達は、屋上へとやって来た。
「何もありませんね」
エスパーダがあたりを見渡した時、リッターの目に、一ヶ所だけ床の色が違う所が見えたので、行ってみた。そこは、電気系統の点検孔の様だったが取っ手がついていた。リッターは、取っ手を掴み蓋を開けてみた。すると、壁に取っ手があり、下へ降りられる様になっていて、単なる点検孔では無さそうだった。
「何かありましたか?」
エスパーダが、やって来た。
「ほほう。ダンジョンの香りがしますねえ。ちょっといってみますか」
とエスパーダが言い、一行は中に入った。
「灯りを点けましょう」
フランカが松明のようなものに灯りをつけた。すると、そこには石像と扉があった。
「灯台もと暗し、良い勘してますね、リッターさん」
エスパーダを始め、皆、うん、うん――と頷いていた。
(レベル1の探求でも、嬉しいな、こう言うの)
リッターは、心の中で、ガッツポーズをした。
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空色騎士2 その7

2017年06月17日 01時02分40秒 | 物語・小説

「それで、どうしてここに?」
アミスターがリッター達に問いかけて来た。
「何か旅のヒントになるような事がここあると、占い師に言われまして」
エスパーダが応えた。
「ヒント。やっぱり第2の街のアレかな」
アミスターがそう言うと、不意に小屋の扉が開き、忍風の格好の女性が現れた。
「あれ、お客さん来てるの?すごーい。カンヘル達が初っぱなから見えるって人達……かな?」
女性がそう言って、リッターの前にやって来た。
「紹介する。妹のカマラダだ」
アミスターがカマラダを指して言った。
「凄い綺麗な騎士さんね。頼り無さそうな」
カマラダは、リッターを上から下まで見てそう言った。
「頼り無いようでも、力強い騎士なんですよ。リッターさんは」
エスパーダが言う。
「へー、リッターって言うんだ。で、あなたは?」
カマラダがエスパーダの側に来て訊いた。
「エスパーダと言います」
お見知り置きを――と付け加え応えた。
「それで、第2の街のアレとは?」
リッターがアミスターに訊いた。
「今、第2の街は悪天候続きで衰退しつつあるんだよ」
カマラダが言う。
「第2の街の天候の守護像が、何者かによって奪われ、第2の街から少し行った所にある孤島の灯台にあるらしい。だが妖龍ネブリナドレイクがそいつを護っているそうだ」
カンヘルが今度は言った。
「その妖龍の所為で、海は濃い霧で覆われて手出しが、普通の人間達には出しにくい。だが、それは、こいつで解決する」
カンヘルは、小さな液体の小瓶を懐から出した。
「その第2の街は、もともと怪物がひしめいた街だった。それを200年前に、怪物どもの元締めを眠らせ第2の街の地下に閉じ込めたんだが、どうもその眠りが覚めつつあるようだ。第2の街の地下の扉を塞いでいる石像をこいつで溶かすと、鳥獣ベルメリョンになる。孤島へはそいつで行けば良いんだが、怪物の元締めが覚醒し、地下に同時に眠らせた怪物も覚醒するんだ」
カンヘルは、小瓶をエスパーダに渡した。
「第2の街に、私の事が見える女騎士が居て親しい。だから、エスパーダ、力に成ってくれないか?私はリッター共に、孤島に行く」
カマラダがリッターの右肩に手をのせた。
「妖龍ネブリナドレイク、そいつも俺らと同じくして見える人にしか見えない。リッターなら、きっと見える上に、鳥獣ベルメリョンにも乗れる筈だ」
カンヘルがリッターを指差してそう言った。
「僕とカンヘルは、この森の守護者だから動けない。だからリッター達の力で、第2の街の再生をするのが良いんだ」
アミスターは、スマナイと言う気持ちを滲ませて言った。
「第2の街へは、アイラーバタにお願いするから、楽に行けるよ」
「アイラーバタって、あの乗獣の?そんなものまで居るとは凄いな」
かつて訓練時代の図書で見かけたのを、リッターは思い出した。
「じゃあ、第2の街救出探求にGO!」
弾んだ声で、カマラダが言った。
「アイラーバタも、外で待ってるみたいだぜ」
カンヘルが窓の向こうを指差すと、白い大きな像が、鼻を上げて挨拶した。
リッター達は、アミスターの小屋を出て、アイラーバタに乗り込んだ。
「探求の成功を祈ってるよ」
アミスターは、そう言って、リッター達を見送ったのだった。


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空色騎士2 その6

2017年06月14日 23時09分04秒 | 物語・小説

翌日の事。
「さあ、森の忘れ形見に会いにいきますか」
エスパーダに引っ張られる様に、リッターは、横道探求に出た。
「闇雲に行っても移動術は有効だそうですので、良いですよね」
エスパーダは、地図にはない道無き道を、あちらこちらを見ながら歩いていた。
――森の忘れ形見、アミスターに既に会っているとは言えないよな――
宿でエスパーダと入れ違うようにやって来たアミスターそして道端であった赤い鳥。そしてカンヘル。何れもエスパーダは見えなかった。となれば、行く意味はあるのだろうか?とリッターが思った時、怪物レベル4が襲ってきた。
「イデッ!いきなり来るなよな」
人型怪物レベル4は、リッターの左腕めがけて殴り付けてきた。
「おりゃッ!」
リッターは、人型怪物レベル4の右腕を斬り飛ばした。
「ナイスアタックです」
エスパーダは、火炎術レベル2を放ち、人型怪物レベル4を倒した。
――今のホントにレベル2の威力なのか?――
リッターは、目を大きく見開いて、消え去った人型怪物レベル4が居た場所を見ていた。
「いやー、驚きましたね」
とエスパーダが言ったその背後に、またも人型怪物レベル4が現れ、エスパーダに殴りかかった。エスパーダは、軽く降っとんで地面に落ちた。
「ダイジョブですかっ?」
リッターは、そう叫ぶと足元の石を人型怪物レベル4に向かって投げると、運良く顔面に当たったので、リッターは、人型怪物レベル4の首筋を切り裂き、倒した。
「強烈な1撃でした」
エスパーダは、ゆっくりと立ち上がりながら回復術レベル2を自分自身にかけた。
「何事もなくて良かった」
リッターは、剣を鞘におさめてそう言った時だった。不意に頭上から何かが降ってきて、左肩に落ちた。
「赤い鳥!?」
リッターが驚きの声を上げた。
「赤い鳥?そんなものは居ませんよ。大丈夫ですか、昨日から」
エスパーダは、怪訝な顔をしていた。
「どーも様子がおかしいですね」
「いや、実は昨日から――」
とリッターが切り出そうとした時だった。
「おっ、空色騎士リッターじゃねえか」
リッターの背後で、昨日会ったカンヘルの声がした。
「そいつが不意に飛んでいったから、何事かと思ったぜ」
カンヘルは、リッターの右斜め前にやって来て、リッターの左肩を指差した。
「アミスターに会いに来たのか?」
カンヘルの問いにリッターは、頷いた。
「そうか。案内してやろう。ついてきな」
カンヘルは、そう言うと歩き始めた。
「一体、どうしたんです?リッターさん?」
「森の忘れ形見の場所へ行きながら話します。こっちです」
リッターは、エスパーダを引き連れカンヘルを追いかけ、道すがらで事情を話し、森の忘れ形見こと、アミスターのすみかにたどり着いた。そこは、色彩豊かな花におおわれ、3本の大樹に囲まれた所に、木造の小屋があった。
「ここだ。おいアミスター、客人だ」
カンヘルは、小屋の扉を開けると、室内中央にあるテーブルの椅子に腰かけている、コールドラッドのアミスターが居た。
「ああ、昨日の」
アミスターがそう言うと、赤い鳥がリッターの左肩からアミスターの左肩へ飛んで移った。
「ここに、森の忘れ形見が居るんですか?」
エスパーダが室内を見渡しながらリッターに訊いた。
「おっと、見えるようにしないとか」
カンヘルは、右手の指を打ちならした。
「ん?ああ、あなたが森の忘れ形見さんですか」
ようやくエスパーダに、アミスターの姿が見えるようになったようだ。
「アミスターです。よろしく」
アミスターは、右手を上げた。
「そして、本物のカンヘルがここにいると」
カンヘルも右手を上げた。
「凄いですね。レベル1のクエストのレアキャラさん達にお目にかかれて光栄です。私は、エスパーダです」
エスパーダは、その場で一礼した。
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