京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

「最高級の文学」

2023年05月20日 | 日々の暮らしの中で
 卯の花の にほふ垣根に
 時鳥 早も来鳴きて
 忍音もらす 夏は来ぬ

冷泉貴美子さんは地元紙1面コラムで、
〈「卯の花の匂う垣根に」と歌う唱歌「夏は来ぬ」は、日本古来の、古今集や新古今集のことばを集め、日本の夏を表す最高級の文学です〉
という一文にしていた。


大岡信さんは、小学生が歌う唱歌の歌詞に古典的な香りの高い詩句が使われていることから、
出所があるのだろうかと疑問に思っていたという。

そこに出会ったのが鎌倉末期の女流歌人・永福門院の歌、
〈ほととぎす空に声して卯の花の 垣根も白く月ぞ出でぬる〉だったそうで、
作詞をした佐々木信綱さん、この歌にヒントくらいは得ていたのではないだろうかと考えた。
仮にそう言えたとしても、あの唱歌の誕生を思えば「すばらしい古典のよみがえりとして祝福すべきこと」と結んでいる。

音楽の時間に歌詞の意味など教わっただろうか。今だって、卯の花の時季だといってこの歌を口ずさむ機会があるかどうかだけれど、知ってはいる。
日本の伝統美をまとった香り高き歌が、子供たちに継がれることなくお蔵入りしてしまうのでは惜しいこと。

こんな優れた歌をなぜ学校教育の中で取り上げなくなったのか残念でならない、の一言もコラムには忘れていない。


コメント (4)
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