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京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 余呉の湖畔に

2013年05月16日 | 今日も生かされて
どちらかと言えば体調の維持管理には極力努力するタイプではないかと思っています。あまり無理をしない、疲れたら手を抜くし楽をすることを考えもします。向上心も前向き思考もあったほうがいいけれど、あり過ぎてもいけないのです。無理をして辛い思いをするのは御免こうむりたくて、その一歩手前で「疲れた~」とブレーキがかかりだすのです。それなのに、この数日気分がすぐれずで突然の不調に陥っています。身体を横にしていると楽なので、日がな気ままに過ごしてしまいました。

図書館への返却日が迫る『湖の琴』(水上勉著)を読み終えました。不快感を忘れて思わず夢中になりました。昭和40年7月から翌6月まで、読売新聞に連載された小説をかなりの削除をして結構し全集に収めたと「あとがき」にあります。

          かつて電車から眺めた時の余呉湖 

滋賀県長浜市にあって、琵琶湖の北側にそびえる賎ケ岳を越えて約1キロ半ばかり山を入った地点にあるという余呉湖が舞台です。当時の余呉の湖(うみ)は、南から賎ケ岳・大岩山・赤子山・行市山と「四囲がすべて山であった」と書かれています。山から注ぐ川がなく、昔から湖底には湧水があるといわれ、いかなる干ばつの年でも水は涸れたこともなく、鏡面のような湖面であると。

琵琶湖東岸は桑畑の多い一帯で繭作りが栄えた所のようでしたが、余呉の大音、西山の二村も昔から繭をとり、この地でとれる糸だけが三味線や琴の糸に向いていたとあります。
その西山の養蚕農家に奉公にで、糸とりをしている間に桐屋紋左衛門に見初められ京で奉公して暮らす、若狭出身のさくという女性が主人公です。さくは再び西山に戻りますが、ある日突然姿を消して行方不明に。彼女にずっと思いを寄せていたのが男衆の宇吉です。
「自分でよった琴糸で首をくくって死んでしまったのだから、糸箱におさめて余呉の湖の深い淵に葬てやろう」と宇吉は思いつくのです。悲しくも美しく、さくの冥府への旅立ちに月光が明かりを添えています。そして宇吉もあわれです。最後の最後まで、さくがよった琴の糸が役割を果たして、湖底に向かって沈んでいくのです。

羽衣伝説でも名高い余呉湖ですが、はたして、湖底の遠くから琴の音がひびいてくるか。余呉の湖畔に立ってみたくはありませんか。できるなら晩秋の夕暮れにでも。
周囲約6.4キロ。JR北陸線余呉駅下車徒歩5分です。ゆっくりと時間をかけてハイキングコースを楽しみ、水面を眺めてみたくなりました。
こんなこと思っているうちに、どうやら復調の兆しです。
コメント (12)
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