伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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地方自治体にとって、与件としての国の財政赤字

2017-05-06 15:48:09 | 大きな時代の変革期
次のような理由から、私は国の財政状況に強い関心を持っています。

 1 日本政府が財政破綻する可能性が高い。
 2 国が破綻した場合、自治体及び国民へマイナスの影響が大きい。

上記のように考える主な背景について説明します。

  歳入の半分近くを借金に依存し、将来世代に負担をつけ回しているという
  我が国予算の異常な構造は未だ解消されておらず、政府債務が累増し続ける
  深刻な状態が続いています。既に国及び地方の長期債務残高の対GDP比が
  200%を超える中で、このように債務残高の累増に歯止めがきかない
  現状のままでは、日本の財政は持続不可能と言わざるを得ません。
  (財政制度等審議会「財政健全化に向けた基本的考え方(平成26年5月30日)」)

これは財務省の資料です。国の財政をつかさどる財務省なら、
本来は「日本の将来は安心です」と書くべきなのですが、
「日本の財政は持続不可能と言わざるを得ません」と宣言するほど悪いのです。


2016年8月14日、日経新聞は一面で「日本国債」について
次のように報じました。

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  太平洋戦争敗戦の半年後、国民は大蔵大臣のラジオ演説で
  「国家財政の敗戦」を知らされた。
  預金の支払い制限=世帯主三百円。
  新日銀券を発行(タンス預金の旧札は使用不能にするという意味)

  米経済学者カーメン等が書いた金融危機の歴史の本
  「国家は破綻する」では、日本の終戦直後は
  事実上の国内債務不履行(デフォルト)だったとしている。

  同書によれば、1945年の日本のインフレ率は568%。
  日本政府は国民の財産を吸い上げ、インフレにより
  債務を目減りさせて、戦時国債を返済した。

  70年後の現在の日本。ネット上には
  「発行残高1000兆円の国債は政府の債務で国民は1000兆円の債権者」
  「国債のほとんどは国内で消化しているから財政破たんしない」
  という言説があふれる。

  戦時国債もほぼ国内で消化され、国民は債権者だったが紙くず同然になった。
  今の日本の財政状況は異常だ。
  日本のGDPに対する債務残高は249%で、ギリシャの178%を上回る。
  第2次世界大戦中の204%より高く、大戦中でもないのに史上最悪に近い。

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歴史を振り返ると、国の財政破綻は各国で起こっています。
日本でもわずか70年前に起こっているのです。
では「財政破綻は起こりうる」という認識で、
日本の財政状況を示すデータを見てみましょう。


1 日本の財政状況

(1)国際比較
国の経済力(GDP)に対する負債の大きさは、
日本は先進国の中で飛びぬけて悪く、
財政危機のギリシャと比べても、もっと悪い状況です。



(2)時間比較
下のグラフは財務省の資料です。
財政赤字は太平洋戦争末期よりも大きいのです。
国の財政を説明するのに、戦時中を例に出さなければならないとは、
いかに今の日本の財政が異常な状態なのか、
国民も自治体もしっかり自覚しなければなりません。



(3)基礎的財政収支(プライマリー・バランス)
日本は財政法により赤字国債の発行は禁止されているにもかかわらず、
特例法により巨額の国債が発行されています。平成22~24年の3年間は、
国の予算は借金による収入が税収を上回るという異常事態でした。

プライマリーバランスとは、
税収・税外収入と、国債の支払いにあてられる費用を除く
歳出との収支のことを表し、その時点で必要とされる政策的経費を、
その時点の税収等でどれだけまかなえているかを示す指標です。

国は2020年度(平成32年)に
国と地方の基礎的財政収支を黒字化する目標を公表し、
国際公約しましたが、達成は困難になったと、
2017年1月26日の日経新聞等が報じています


プライマリーバランスを達成するために、
税収の範囲で予算を組む試算をしたところ、
平成24年度の予算では、地方交付税と厚生労働省予算だけで、
税収額を超えてしまいました



厚生労働省予算と地方交付税(交付金)を優先的に残すならば、
ムダを削るどころか、「他の全ての省庁は丸ごと廃止」しなければ
プライマリーバランスは達成できません。
どれほど厳しい目標かお分かりになると思います。

消費税の値上げは2度先送りしました。
財政再建よりも景気刺激が優先だという主張がまかりとおれば、
財政再建の可能性は遠のき日本国債の格付けは下げられます。

(参考:国債格付け引き下げの影響)古川元久「財政破綻に備える」から
 ・格付けが下がっても、長期金利は上昇しないし、株価も下がっていないので
  影響は全くないと言う人は見方が甘い。
 ・現在、バーゼル規制の下では、自国通貨建て国債は、
  金融機関が保有してもリスクウエイト0だが、
  海外金融機関が日本国債を保有する場合、
  下から2番目の格付けを踏まえたリスクウエイトとなる

 ・海外金融機関には、日本国債はリスクフリー資産だったが、
  リスクに見合う自己資本をつむか、他の資産を圧縮する必要がでてきた。
  当然、日本国債の保有を減らす方向の影響がある。
 ・ムーディーズは、日本国債の格付け引き下げ後に、
  日本の大手都市銀行や生命保険会社の格付けも引き下げた。
  国債の格付けがキャップとなり、地方債や日本の民間企業債は、
  日本国債以上の信用格付けは取れない。資金調達に影響がある。


(4)長期金利の問題
国の年間予算が100兆円ですから、
1,000兆円を超える借金はその10倍以上の規模。
税収は40兆円ほどしかありませんので、現在の長期金利は1%未満ですが、
もし国債の金利が上昇して3%に近づくと、
それだけで財政破綻の要因になります。
政府と日銀は一体となって2%のインフレを目指していますが、
物価が上昇すれば、必然的に長期国債の利率も上昇します。


(5)日本は特別か
外国と違って日本の場合は大丈夫だ、
という意見もありますが、私の見解を述べます。

①国債は国内で買われているから大丈夫?

金利が低すぎて投資のメリットがないため、
外国人投資家は日本国債を買いません。
国内の銀行や生命保険会社は、長期国債を手放し始めており、
現在は日銀が買い支えている状況です。

日本国内の借金だから大丈夫という意見もありますが、
返す義務があるのは国で、返してもらう権利があるのは国債所有者です。
外国から見れば日本国内でのお金のやり取りですが、
注意しなければならのは、国の財布と、個人の財布は別だということ。
国が国債の支払いは一切やめますと言って、
はいそうですかと全ての国債所有者が応じるでしょうか。
そうは思えません。


②将来の子どもたちは債務者でなく債権者?

「政府が国民からお金を借りているので、将来の日本の子どもたちは
お金を返してもらう方である、借金の先送りではない」という意見があります。

国債による収入で国の予算を組んでそれを使っているのは現在の我々です。
その借金はいつだれが返すのかというと、10年国債であれば
10年後の国民の税金からです。10年後の国民にとっては、
国債返済分の納税はしなければなりませんが、
その分のお金はすでに10年前に使われてしまっている状況。
納税負担だけおしつけられるのは詐欺ですね。

10年後に国債の返済を受けるのはすべての国民ではなく、
国債を持っている人だけ。
債務者と債権者はけしてイコールではありません。


③いざとなったら日銀がお札を刷ればよい?

国家の借金を、その国の通貨を発行する中央銀行が肩代わりすることを
財政ファイナンス(マネタイゼーション)といい、
過去の苦い経験から先進国では禁じ手です。

財政ファイナンスを行うと、その国の政府の財政節度を失わせると共に、
中央銀行による通貨の増発がとまらなくなり、通貨の価値が暴落し、
ハイパーインフレ(物価上昇)を引き起こす恐れがあります。
そうなると、その国の通貨や経済運営そのものに対する
国内外からの信頼も大きく損なわれ、円の為替レートも暴落します。

日銀が大量にお札を刷って国債の返済にまわせば、
額面上は1,000兆円の借金でも返済可能ですが、ハイパーインフレが起きて
物価が10倍、100倍になっていれば、そのときに返済されるお金の価値は
10分の一、100分の一です。
この状態であっても返済できるのだから問題ないと考えるのか、
実質的に国債が紙切れになってしまうのだから問題があると考えるべきなのか。

例えば、国の赤字は1000兆円以上ですが、
日銀が「1,000兆円札」なんてものを一枚印刷して国に渡せば
赤字は解決するでしょうか?
世界中の誰もが1,000兆円札の価値を認めるでしょうか?

そんな「子ども銀行券」みたいなお札は通用しないでしょう。
ところが、日銀が1万円札を、何百兆円分も印刷し、
国から国債を買う形で国へお札を渡しているのが現在の姿です。
これはおかしいと金融市場が思いはじめたら、
国債価格と円の暴落が始まります。
(国債価格の暴落とは、具体的には国債の金利上昇です。
 金利上昇分、国債本体価格が下落します)



2 自治体・国民への影響

(1)自治体収入
独自の税収が多い財政力の強い自治体もありますが、
中には歳入のほとんどを国からの交付税に頼っている自治体もあります。
もし国が財政破綻すれば、交付税や補助金がかなりカットされますので、
自治体の財政基盤を直撃します。


(2)社会保障制度等
もし国の財政破綻という事態になれば、あらゆる分野において
可能な限り予算の削減が行われます。生活保護を受けている方はもちろん、
福祉制度や介護・医療などにおいて、現在よりもはるかに
自己負担が大きくなるでしょう。


(3)物価及び為替レート
国の財政が破綻すると円の信用が下落します。
国債の債務不履行(デフォルト)を防ぐために中央銀行が円を
大量に増発した場合にも円の価値は暴落しますので、
ハイパーインフレ(物価上昇)の恐れがあります。

そうなると、円の為替レートも暴落し、
輸入品が高くなるので物価上昇の要因となります。
ハイパーインフレの元では、給与所得者の賃金の上昇は
物価の上昇に追いつかないので生活は苦しくなります。
年金生活者などは更に苦しくなります。



(財政破綻を防ぐために)

財政健全化計画等に関する建議(H27財政制度等審議会


(参考)
伊勢崎市の場合、私が議会質問で確認したところ、
市長さんも「国の財政破綻はありうる」という認識をもって
自治体経営にあたられています








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