伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

行政経営、地方政治、そのほか人生にプラスの楽しいこと eメールアドレスkucctada@mail.goo.ne.jp

貧困・格差社会の改革に求められること 湯浅誠

2013-06-15 21:03:47 | 大きな時代の変革期

前橋市で、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠氏の講演を聞きました。
「年越し派遣村」の村長や内閣府参与を務めた方です。
以下、湯浅さんの講演から。
(私のメモなので、誤り等ありましたら文責は多田です)


***************************************

(必要なのは社会性)

今は「社会性」を身につけるのが難しい。自分の所属するグループの人間
とばかり付き合い、外の人と交わろうとしない。社会性を広げようとして
自分たちの共有する価値観と違うことを呼びかけると、後ろから矢が飛んでくる。

民間の立場で何かやるのは簡単。
呼びかけて、賛同する人が集まってすぐ実行できる。
しかし行政は税金で行うので、
その施策に反対する人の税金も遣われることになる。

まずは重要な社会問題であるとの認識を
持ってもらわないと議会は相手にしてくれない。
そして反対の人を納得させるだけの議論を積み重ねる
プロセスが必要なので時間がかかる。
しかしいったん制度ができれば、強力な後押しとなる。



(ホームレス)

ホームレスの問題は1995年から取り組んでいた。
90年代の後半には4年間で6倍にも増え、社会の底が抜けてしまったと感じた。
しかし議会は相手にしてくれなかった。
ホームレスになった個人のストーリーを伝えたり、データで示したりした。
それまで社会がホームレスに対して持っていたイメージを揺さぶる必要があった。

民間ボランティアは、取り組んでいる範囲はとても狭いが対応は深い。
逆に行政は守備範囲は広い代わりに対応は浅い。
両者は相手の欠点を避難するのではなく、お互いの長所を活用するのが良い。

日本は社会性が低下し末期的なところまで来ているのではないか。
他のグループとのつながり、社会性を取り戻す必要がある。
財政破綻してIMFの管理下にならないと取り組めないのか。



(コミュニティ・オーガニゼーション)

1960年に、世界の大都市のスラム住民を組織化する
アリンスキー(米)の「コミュニティ・オーガナイズ」の方法論(注)が
日本を除くアジアに広まった。
(注:草の根的活動からはじまる社会変革のためには、創造的で
 直接的行動を伴った現実的な目標獲得が大切で、これを通して
 コミュニティーは組織化され、それによってより一層大きな
 目標獲得ができると言う社会変革のためのサイクルである。)

社会性を持てるようになるということは、自分たちの殻
(グループ内だけのつきあい)を破るということ。
知らない人の中へ、なかなか踏み込めない。
その原因は、慣れていない、ノウハウが無いなど。

日本全体を見れば、地縁、血縁、社縁(会社の同僚)は
重ならないので無縁社会。
地域起こしでは、その地域にあるヒト、モノ、カネ、自然の内、
モノ、カネ、自然は活用してきたがヒトは手付かずだった。
なぜならヒトを動かすには手間と時間がかかり大変なので避けてきた。
ヒトに対する投資はハイリスク・ローリターンという思い込みがあった。
これは、私たちが同じグループ以外のヒトとの交流に踏み出せないのと同じ構造。

広島県安芸高田市の川根地区は、日本一の住民自治。人口は500人。
40年前に激しい人口流出があり、集落は存続の危機にあった。
毎日若いヒトが寄り合って相談した結果、外は誰もやってくれない、
これからは地域の課題に対して自分たちで提案して自分たちで実行していく
「提案型」で行くしかないと決意した。

高齢者への宅配弁当や、遠くの医者への車の輸送などは地域住民が担っている。
早くに(社会資源が)底についてしまった地域は、
取り組みが早かった分、対応の蓄積がある。
そのように学ぶことで他人と交わるノウハウが
日本社会に蓄積していけば日本が豊かになる。



(社会の質を問う)

「成熟型社会」とは、
ガツガツ「成長率」のみを追いかける社会ではなく、
成長の「質」を問える社会。
成長率はたくさんある指標の一つにしか過ぎないのに、
それを相対化して意識できていない。

政府が成長率を政治の目標に掲げ、
株価が下落すれば即座に内閣の支持率が低下して、
犯人探しする社会は異常。このサイクルには希望は無い。

人々が「社会性」(つながり)を取り戻すには、
自分のグループに閉じこもるのではなく、いろいろな人が
他のグループに越境していかなければならない。
新しい縁のコミュニティを社会に作っていくことが必要。
意見の違う人と話せることで社会は活性化し、イノベーションを起こせる。

****************************************
(湯浅さんの話はここまで)



(感想)

湯浅さんの言う「社会性」とは、
私がブログ(「人生の本質」)で述べた、「三つの輪」と似ています。
いろいろなグループが他のグループとつながるには「のりしろ」が必要です。
この部分は本来の仕事の核心ではないけれど、ほかの人たちと
コミュニケーションをとるために必要な時間、空間、機会です。
これは、余裕がないとできません。

社会が、効率や業績、お金儲けなどを追求していった結果、
直接の成果につながらない、集団にとっての周縁部の活動が
切り捨てられた結果、お互いの輪はバラバラとなり、
社会や他の人との繋がりが感じられなくなってしまったのではないでしょうか。

経済優先ではない新しい価値観、
人とのつながりを感じられる社会を作るためには
自分のグループ以外の人と交流することが必要だと湯浅さんは述べました。

私も同感です。組織の変革を起こせるのは、
組織の内部と、外部の両方に足場を持った境界人、「マージナルマン」が必要だと
ブログで提案
しました。マージナルマンとは境界人のことです。
互いに異質な二つの社会・文化集団の境界に位置する人です。

社会の変革をリードするのか行政マンの仕事です。
ぜひ行政職員の方には、職場以外の場にどんどん飛び出して
体験して、感じて、学んで欲しいと思っています。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« -ナルト- 我愛羅の尾獣 「... | トップ | 地産地消を勉強中 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

大きな時代の変革期」カテゴリの最新記事