SGLT2阻害薬投与開始時,インスリンは20~30%減量を
第58回日本糖尿病学会年次学術集会・シンポジウム
インスリン投与中の糖尿病患者にSGLT2阻害薬を追加投与すると重症低血糖を起こす可能性がある。このため,インスリンをあらかじめ減量することが求められているが,具体的な減量レベルは示されていない。北海道大学大学院免疫・代謝内科学診療准教授の三好秀明氏は,これまでの海外の報告や同氏らの施設での検討結果を踏まえ「インスリン量を20~30%減らして併用を開始し,その後調整するのがよいのではないか」と提言した。第58回日本糖尿病学会年次学術集会(5月21~24日,会長=山口大学大学院病態制御内科学教授・谷澤幸生氏)のシンポジウム「SGLT2阻害薬−新たな糖尿病治療の夜明けとなるか−」で報告したもの。
Recommendationを読まずに処方する医師への対策が急務
三好氏は,SGLT2阻害薬の有用性について,血糖降下作用だけでなく「体重減少,血圧低下,脂質改善,尿酸低下,QOL改善,さらにモチベーション向上による行動変容のきっかけになるなど,さまざまな効果が期待できる」と評価した。体重減少に関しては,体組成計と内臓脂肪測定装置を用いた同氏らの検討で,減少した体重の71%が内臓脂肪重量だったことを報告。内臓脂肪型肥満の多い日本人に,より有効である可能性を示唆した。また,内臓脂肪重量減少に有意に相関する因子は食事療法の遵守度だけであったことから,SGLT2阻害薬の体重減少効果を減弱させる原因とされる代償性過食に対する管理の重要性を指摘した。
一方で,安全性に関しては注意すべきことが少なくないとした。特に,脱水とそれに伴う脳梗塞や低血糖(SU薬,インスリン併用時)では,SGLT2阻害薬の関与を否定できない死亡例も報告されており,特段の注意が必要だと強調した。
2014年6月,8月に「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」が発表されたが(関連記事1,関連記事2),同氏は,脱水関連死の中には「Recommendationに従っていれば防げた死亡例が多くありそうだ。Recommendationを読まないで処方する医師への対策が急務だ」と指摘。さらに「販売責任のある製薬企業,"最後のとりで"となる薬剤師も含め,あらゆる関係者の協力が必要だ」と訴えた。
6カ月後25%減で低血糖見られず
脱水対策として三好氏は,ヘマトクリット値のモニタリングが重要だとした。脳梗塞予防の観点からは「男性で49%,女性で46%より低値を維持すべき」とする報告もあるとした。
低血糖に関しては「SGLT2阻害薬は投与初日からインスリン感受性を改善するといわれているため,投与前からインスリンを減量する必要がある」と同氏。Recommendationでも「やむを得ずインスリン製剤と併用する場合には,低血糖に万全の注意を払ってインスリンをあらかじめ相当量減量して行うべき」とされた。しかし,SU薬で示された具体的な減量レベルが,インスリンでは言及されていない。
同氏によると,海外でもエビデンスはない。ただし,1型糖尿病患者を対象に,インスリン量を30%減量してSGLT2阻害薬を追加投与するというプロトコルの試験は報告されている。ここでは,最終8週目のインスリン量は開始時の16%減だったが,症候性低血糖の発生を約3分の1に減少させることができた。
同氏らは,SGLT2阻害薬投与開始前にインスリンを使用していた同大学病院に通院中の2型糖尿病患者16例(男性6例,女性10例,平均年齢58.9歳,BMI 30.1,総インスリン量18.4単位/日)について後ろ向きに解析した。インスリン量はSGLT2阻害薬開始前に比べ,開始時で平均32%減,6カ月後で25%減だったが(図),この6カ月間に低血糖の発生は見られなかった。HbA1cは7.60%から7.34%に低下,体重は77.9kgから74.7kgに減少していた。
こうしたデータから,同氏は「SGLT2阻害薬は,きちんとしたインスリン減量を行えば低血糖を減らせる可能性のある薬剤だ」とした上で「印象としては,20~30%減らして併用を開始し,その後調整するのがよいのではないか」と述べた。
この薬、糖を体外にだす薬。血糖値をあげるのは、食事の中で、糖だけ。インスリンは、たまたま糖を下げる働きのあるホルモン。医者の中で、それすらわかっていないとすれば、糖質制限が劇的に広まることは無い。