「肝臓のために…」と飲んだウコンに落とし穴!
脂肪肝の人は有酸素運動で脂肪を燃やすのが王道、サプリに頼らない
2016/9/15 村山真由美=フリーエディター・ライター
シジミやウコンのサプリメントは逆効果?
ちまたには、「肝臓にいい」といわれるサプリメントがたくさんある。こういったものを利用して、手軽に脂肪肝を改善することはできないのだろうか。
実際、飲み会の前後にウコンやシジミのサプリメントを飲んでいる人は少なくないだろう。しかし、浅部さんは、ウコンやシジミのサプリメントには注意が必要だという。
「脂肪肝の人には、シジミとウコンについてはすすめていません。なぜなら、これらは鉄を多く含むことが多いからです。明確な理由はまだわかっていませんが、肝臓に炎症があると鉄がたまることがわかっています。鉄は酸化ストレスの原因になって肝臓の細胞にダメージを与えます。私のこれまでの治療経験では、脂肪肝の人の血液を調べると、ほとんどの人が鉄が過剰でした。鉄が過剰だと肝臓での炎症が悪くなりやすく、『NASH』(非アルコール性脂肪肝炎※詳しくはこちらを参照)になる危険性が高くなるため、脂肪肝の人はむしろウコンやシジミのサプリメントは制限したほうがいい。さらに、ウコンによる肝障害は数多く報告されているので注意が必要です」(浅部さん)
肝臓のためによかれと思って飲んでいたのに、なんと、この習慣は脂肪肝の人にとっては逆効果だったのだ!
さらに、「お酒を飲むときに、つまみを食べない人は肝臓を悪くしやすいので要注意です。つまみを食べないとアルコールの吸収が早くなり、肝臓に負担がかかります。お酒を飲むときは肝細胞を修復する働きのあるたんぱく質を摂るといい」(浅部さん)
たんぱく質は、肉、魚、卵、大豆製品に多いが、肉は摂り過ぎに注意が必要だ。脂肪の多い部位や揚げものをガッツリ食べてしまうとエネルギー(カロリー)オーバーになりやすい。食べるなら、牛や豚なら赤身、鶏なら胸肉やささみなどを選ぼう。
L-カルニチンやビタミンEも、摂り過ぎは避ける
「肉の脂肪の摂り過ぎは控えたいが、たんぱく質をしっかり摂りたいという場合には、アミノ酸のサプリメントを使う方法があります」(浅部さん)。アミノ酸はたんぱく質の材料で、肝細胞を修復したり、肝臓でのアルコールの分解を促す働きがある。
また、肉に多く含まれるアミノ酸の一種に「L-カルニチン」がある。特に、ラム肉に多く含まれることで有名だ。「L-カルニチンは、細胞のミトコンドリア内への脂肪の取り込みをよくして、脂肪の燃焼を促します。不足している人が摂ると基礎代謝が上がりますが、足りている人が過剰に摂ったからといって、より脂肪がたくさん燃えるわけではありません。摂り過ぎは避けましょう」(浅部さん)
「肝臓にいいといわれるサプリメントの効果には個人差があるため、万人に効果があるものはないと考えたほうがいい」と浅部さんはアドバイスする。肝機能値が改善されたという報告があり、エビデンスの質が高いとされるビタミンEについても、摂り過ぎには注意が必要だと指摘する。
「NASHの人にビタミンEを投与すると、医薬品と同等の肝機能値の改善効果が見られたという海外の研究があります(N Engl J Med;362,1675-85,2010)。これは、ビタミンEに抗酸化作用があるからだと考えられています。しかし、ビタミンEは脂溶性で、摂り過ぎると肝臓にたまってしまう可能性もあるため、私は患者さんに投与する 際には慎重に行っています」(浅部さん)
ビタミンEを豊富に含む食品には、植物油、モロヘイヤ、かぼちゃ、ナッツ類、うなぎの蒲焼きなどがある。これらは比較的高カロリーのものが多いため、摂り過ぎに注意しながら、適度に取り入れてみてはいかがだろうか。
脂肪肝の改善には、今のところ近道はない。食べ過ぎに気をつけて適度な運動も行い、ゆっくり地道に脂肪を燃やし続けよう。
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自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科 准教授
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