健保のつぶやき

食事、トイレと他人様に頼る必要はないが、薬に頼る生活がソロソロ始まりました。当面は「親鸞さん」に照準。

内閣支持率下がりました。

2020-12-21 06:39:34 | 夏井医師
 先日の「新型コロナアンケート」で気が付いたことです。

 現在の日本は新型コロナについて「感覚の分断」が起きているような気がします。
 最前線で新型コロナ患者を受け入れている病院・病棟の医師・看護師にとって,重症化するコロナ患者は日常そのもので,その対応に追われる日々です。日常的に重症化患者ばかり見ているので,「新型コロナはインフルエンザとは全く別物の恐ろしい伝染病であり,インフルエンザごときと一緒にするな!」と考えるのは当然でしょう。
 まして,新型コロナは2類指定感染症であり,患者に対応する医師や看護師はちょっとした処置をする際にも防護服に二重マスクに手袋で,エボラを相手にしているような重装備が要求されます。これを毎日していたら「新型コロナ=エボラ級の感染症としか考えなくなるのではないでしょうか。。

 一方,私のように新型コロナを診察する機会のない医者や一般市民にとって,新型コロナはかなり遠い世界の話です。身近に患者はいないし,知人や同僚にも患者はいないし,せいぜい,市区町村で患者が出ている程度。毎日報道される「今日の感染者と死者」という数字だけの出来事です。毎年のインフルエンザなら周囲は掃いて捨てるほど患者がいたのに,今回の新型コロナは周囲に患者がいません。

 また,2類感染症である以上,患者は専門病院で治療しなければいけないため,専門病院以外の医者が患者を見る機会はなくなります。だから,同じ医者の間でも新型コロナに対する「感覚」は分断していきます。

 また,新型コロナを毎日治療している専門医が正しく状況を判断しているかというと,それは無理でしょう。
 彼らはいわば最前線で敵と対峙している兵士です。戦場の兵士にに「戦争を終わらせるためにはどうしたらいいか?」,「今後,戦況はどう推移していくと思いますか?」と質問しても,「戦争を終わらせるためには目の前の敵をすべて殺すしかない」と答えるばかりでしょう。兵士ですから当然です。
 この点に関しては,専門家会議もWHOも同じだと思います。誰も目の前の戦闘に精一杯で,広い視野に立って戦況を分析して未来を予測する暇なんかありません。これは政治家も同じでしょう。

 戦闘(battle)に勝つために計画が戦術で,軍隊の指揮官は戦術を立て,兵士はそれに従って戦闘行為をします。
 一方,戦争(war)を勝利に導く計画を戦略といいます。戦略を立てるのは軍人ではなく国家の指導者や政治家であり,彼らは個々の戦闘だけでなく,国全体の経済や同盟国,敵対国の状況を判断し戦略を組み立てます。もしも,外交交渉だけで勝ち(利益)が得られるのであれば,戦争を終わらせて相手と条約を結びます。国全体として「損失が少なく,利益が大きい」結果さえ得られれば,戦闘・戦争を続ける意味はなくなるからです。大きな利益さえ得られれば,個々の戦闘の勝ち負けなんてどうでもいいと考えるのが戦略家です。

 ロックダウンにしろ,「マスク・手洗い・3密回避」にしろ,それは戦術であって戦略ではありません。今は戦術遂行で精一杯な状態ですが,いずれ戦略を組み立てる必要が出るはずですが,問題は新型ウイルス相手に戦略を組み立てられる人が(恐らく)どこにもいないことです。
この記事のアドレス・・・http://www.wound-treatment.jp/new.htm#1221-5