ぼく(2)

2018-06-20 05:35:30 | 童話
ぼくは生まれる前からいろいろな事を知っていたし、妖精とお話しをしていたんだよ。
今も妖精が見えるけれど、大人の人には見えないんだって。
お姉ちゃんやお兄ちゃんも大きくなったので、妖精は見えないと思うよ。
お父さんもお母さんもお姉ちゃんもお兄ちゃんも、小さい頃にはみんな見えていたんだけれど、見えていた事を忘れてしまっているんだ。

ぼくもみんなと同じように、大きくなると忘れてしまうのかな?
きっとそうだよね。
だからいろんなものが見えている今が一番忙しいんだ。
大人の人は、ぼくが忙しくしている事を知らないだけなんだ。
昨日は家で飼っている犬とお話しをしていたし、今日は、さっきまで遠い外国の赤ちゃんと楽しくお話しをしていたんだ。
遠い所と何も使わないでお話をする事を、大人の人はテレパシーと言っているみたいだね。

お母さんがお父さんに、新生児健診でぼくを病院へ連れて行くと言っていたけれど、他の赤ちゃんとお話しができるから楽しみだなぁ。
大人の人は僕達がお話しをしていることが分からないけれど、病院に居る時みんなとたくさんお話しをしているんだよ。

何のお話しかって?
みんな、自分のお母さんの自慢をするんだ。
『ぼくのお母さんが一番美人だよ。』
『ぼくのお母さんの方が優しいよ。』
『ぼくんちの方が、兄弟が多いよ。』

僕達は、まだしゃべることができないけれど、みんなとは目と目でお話しをしているんだ。だからたくさんの赤ちゃんでお話しをしている時は、あっちを見たり、こっちを見たり、忙しいんだ。

ぼく(1)

2018-06-19 05:58:06 | 童話
今、産まれて十日目のぼくは、お母さんに抱っこをしてもらって幸せです。
あれっ、お父さんとお姉ちゃんとお兄ちゃんが居ないよ。
そうか、今日は、お休みの日ではないんだ。

お父さんは電車に乗って会社へ行ったのかな?
ぼくは、生まれてから外へ出たことが無いので電車に乗ったことがありません。
だけれど、お母さんのお腹の中に居る時にお母さんと一緒に電車に乗ったことは覚えているんだ。電車はゴトンゴトンと楽しかったよ。

お姉ちゃんは自転車に乗って中学校へ行ったのかな?
ぼくがお母さんのお腹の中に居る時は転ぶと危ないので、お母さんは自転車に乗らなかったんだ。
だから、ぼくは自転車は知りません。

お兄ちゃんは歩いて小学校へ行ったのかな?
ぼくもお母さんのお腹の中に居る時に、お母さんといっぱい歩いたよ。歩くのも楽しいよね。
だけれど、お母さんが歩いていない時に、お腹の中のぼくだけが歩いて、お母さんのお腹を中からギュ~と押したことが有ったんだ。その時、お母さんは
『あらあらっ。』
と言っていたんだ。

ぼくがドンドン大きくなっていくと、お母さんのお腹の右側や左側がニュー、ニューと膨らんで、そのたびにお母さんが
『あらあらっ。』、
『あらあらっ。』
と言っているのを、ぼくはお腹の中で聞いていたんだけれど、楽しかったよ。

空のイルカ、夢のイルカ(3)

2018-06-18 05:43:03 | 童話
僕が目開けると、僕はジェット旅客機の操縦席にいた。
『乗客のみなさん、これから離陸しますので、シートベルトをシッカリ締めてください。管制塔、管制塔、これから離陸します。』
僕の操縦するジェット旅客機がゴーと音をたてて空高く上がって行きました。
『こちらは機長です、上空に来ましたのでシートベルトを外しても構いません。』

僕の操縦するジェット旅客機はしばらく飛行して着陸の準備を始めました。
『乗客のみなさん、これから着陸しますので、シートベルトをシッカリ締めてください。』
『管制塔、管制塔、これから着陸します。』
『乗客のみなさん、空港に着きました。お疲れ様でした。』

そして、目の前が急に明るくなった。
『すごいね。僕は夢の中でジェット旅客機を操縦していたよ。』
『まだ夢の中だよ。今度はどこへ行きたい?』
『写真で見たんだけれどオーロラがきれいだったので、オーロラが見える所へ行きたいなぁ。』
『いいよ。目を閉じていて。』
『もういいよ。』

僕が目を開けると、僕は北極にいた。
『少し寒いね。』
『今は夢の中だから、あまり寒くないけれど、本当はもっともっと寒いんだよ。』
『ふぅ~ん、そうなんだ。』
『空をみてごらん、オーロラがきれいだよ。』
『わぁ~、きれいだね。オーロラはじっとしていなくて、次から、次から形が変わるんだね。』
『寒いから、もう帰ろうか?』
『うん、いいよ。』

そして、目の前が急に明るくなった。
『もう夢の中から外に出たよ。』
僕とイルカは、さっきの海にいた。
『本当に夢の中に行けるんだね。』
『あっ、お家でお母さんが呼んでいる。もう帰るからね。またここで遊ぼうね。』
『いいよ、バイバイ。』
『バイバ~イ。』

僕は、宿題が終ると、今もイルカと仲良く遊んでいる。

      おしまい

空のイルカ、夢のイルカ(2)

2018-06-17 09:08:19 | 童話
『あんなに高く上がったら取れないよ。風に流されてドンドン高く上がって行くよ。』
『よしっ、一緒に取りに行こうか?』
『あんな高い所へ、どうやって取りに行くの?』
『僕の背ビレにつかまっていて。』
『うん、いいよ。』
『それでは行くよ。』

イルカは力いっぱい尾ビレで水をたたきました。すると、イルカと僕は空へ上がり始めました。そして、イルカは尾ビレを何度も何度も動かして、ドンドン高く上がって行きました。そして、ビーチボールに近付きました。
『イルカ君、もう少しだ、がんばって。』
『うん、もう少しだね。』
『あっ、届いたよ。』
『ビーチボールをつかんだら降りて行くよ。』
『うん、いいよ。』

僕とイルカは海に戻って来ました。
『イルカ君はどこまで高く上がって行けるの。』
『ずっと空高く行けるよ。空だけでなく夢の中へも行けるんだよ。』
『夢の中へは、どうやって行くの?』
『僕が頭の上で1回転すると夢の中へ行けるんだよ。』
『やってみてよ。』
『いいよ。僕が頭の上を飛び越えるから、海の中で立っていてね。』
『うん、いいよ。』

イルカがすごいスピードで泳いで来て、立っている僕の上を飛び越えて、1回転しました。その時僕の目の前が少し暗くなりました。
『今、夢の中に来たよ。これから、どんな夢の中へ行こうか?』
『どんな夢の中へも行けるの?』
『行けるよ。』
『飛行機を操縦している夢へ行きたいな。』
『いいよ。目を閉じていて。』
『うん。』
『もういいよ。』

空のイルカ、夢のイルカ(1)

2018-06-16 09:11:52 | 童話
『お~い、お~い。』
誰かが呼んでいる。
『なぁ~に? だぁ~れ?』
小さな島の、海の見える家に僕がいると、海の方から僕を呼ぶ声がした。
『お~い、お~い。』
とまた呼んでいる。
『誰なの?』
海の中を見ると、イルカがいて、ヒレで水をバシャバシャとやっていた。
『やぁ、イルカ君、な~に?』
『一緒に遊ぼうよ。』
『今、宿題をやっているから、1時間くらいあとでね。』
『うん、待っているからね。』

そして、宿題が終るころにまた『お~い、お~い。』とイルカが呼んでいる。
『まだ宿題は終らないの?』
『今終ったよ。』
『一緒に遊ぼうよ。』
『いいよ、今行くからね。』
『僕は泳ぎがうまくないので、海の深い所へは行けないから、一緒に遊べるのは、海の浅い場所だよ。』
『うん、いいよ。』
『何をして遊ぶの?』
『軟式野球のボールを投げるよ。それっ。』
『よしっ、僕はヒレでポンッ。』
『今度は、僕はバットでボコン。』
ポンッ、ボコン、ポンッ、ボコン

『もう少し大きなビーチボールで遊ぼうか? 僕が海の方へボールをけるから、イルカ君は海の方からボールを投げ返して。』
『いいよ。それっ。』
僕がポンッ。
そして、イルカが尾ビレでボンときつく打ちました。
『うわっ、そんなにきつく打ったら取れないよ。』
『ゴメンゴメン。』
イルカが尾ビレで打ったビーチボールは風で空高く上がりました。