山の洋服(2)

2018-06-04 05:40:14 | 童話
そして、僕達は山に頼まれたとおり、小さな苗木を植える植林を始めた。
緑の羽根の募金が植林に使われているのを知って募金活動にも参加した。

ある日、僕が寝ている時に、遠足に行った山に起こされた。
『君達が一生懸命に植林と、植林のための募金活動をやってくれているので、お礼を言いたくて来たんじゃ、ありがとうね。
これから君達が努力してくれた事をみせてあげようね。』
そう言った時に、パッと目の前の風景が変った。

昔行った事のある山が目の前に広がった。あの時は山の半分くらいが枯れ木だったが、今、目の前の山は全部が大きな木で覆われていた。
『これは君達が植林をしてくれて、大人の人が木の枝を切ったり、木に絡み付くつる草を取って手入れをしてくれたから、木がみんな元気になったんじゃよ。だから山のわし達も元気になったんじゃ。』
『ふぅ~ん、すごいね、良かったね。』
『たくさんの山が君達に感謝しているじゃ。』

また目の前の風景がパッと変って、山が赤や茶色になった。
『さっきのは夏の山だったが、これは秋の山じゃよ。』
『すごいね、山全体の色が変った。』
『そうなんじゃ、みんな秋の色に変ったんじゃ。つぎは冬だが、冬は雪で真っ白になるのはいつも同じなので、春の風景にしよう。』

山がそう言うと目の前が、全体が黄緑色の山の風景になった。
『わぁ、すごいなぁ。』
『そうなんじゃ、春が山の一番元気なことが分かるんじゃ。』
『僕達が手伝ったから、みんながこんなに元気になったの?』
『そうじゃよ、木がみんなこんなに喜んでいるんじゃ。』
『良かったね。』

『ところで、君達は山が元気になると海が元気になるのを知っているかな?』
『知らないよ。』
『山に雨が降ると、山の栄養分が川を伝わって海に流れ込むんじゃ。そして、その栄養分を海草や小さな海の生き物が食べて大きくなり、その大きくなった海草や海の生き物たちを大きな魚が食べて、海のみんなが元気になるんじゃ。』

その時、目の前が急に海の中になった。海草がユ~ラユラと揺れていて、小さな魚やエビがいっぱい泳いでいる。
『このように山が元気になると海も元気になるんじゃ。』
『ふぅ~ん。もっともっと山が元気になるように頑張るよ。』
『君達のような若い人が頑張ってくれると、わし達も元気でいられるので頼むね。』
『もう起きないと学校に遅れるわよ。』

僕はお母さんに起こされたが、目の前はいつもの僕の家の中だった。
僕は学校で友達に山の夢の話をしたが、
『僕も同じ夢を見たよ。』、
『私も見たわよ。』
と友達みんなが言った。そ
して、今も山や海でゴミ拾いや、植林を続けている。これは僕たちと山との約束だから。

     おしまい