石の飛行機(1)

2018-07-27 05:32:40 | 童話
小学生の僕は乗り物が大好きだ。
自動車、電車、船、飛行機、全部好きだ。
自動車に乗れば、助手席で運転している様子をずっと見ている。
電車では、一番前の車両に行き、運転手さんのスピードを上げる方法や、ブレーキを掛ける方法を真剣に見ている。
児童公園に置いてある蒸気機関車や電車や消防自動車の運転席で運転手になっている。
しかし、飛行機は僕の住んでいる町の近くの公園に無いし、本物は操縦席に入れない。僕は、今は写真を見て操縦を想像して楽しんでいる。

ある日曜日に、僕は自転車で近くの大きな川に行き、石を並べて飛行機を書いた。
そして、操縦席に座りエンジンをかけた。ブルブルブルブル、エンジンがかかったので、次はスラストレバーを引いた。
ブ~~ン、とプロペラが高速で回転し始めた。そして、車輪のブレーキを戻すと機体が走り始めた。
どんどんスピードが上がってきたので操縦かんを引くと機体がフワッと浮いた。
やった、離陸したのだ。あとは上空に向って一直線。離陸に成功したので、今日はもう帰ることにして自転車に乗った。

次の土曜日に、また自転車で川原へ行き、石の飛行機のエンジンをかけた。今日もエンジンは快調に回転し始めたので、ブレーキを戻し離陸の準備ができた。
今日も快調にスピードが上がり、操縦かんを引くと離陸した。今日は前回より上空まで行こう。
『管制塔、管制塔、こちらはJA123です、応答願います。』
『こちら管制塔、どうぞ。』
『僕はこれから家の上を飛びます。』
『了解、気を付けて飛んでください。』
『はぁ~い。』
僕の家が見える。お父さんが自動車を洗っている。
お母さんは家の中だから見えないや。
どんどん上空になって、僕の住んでいる町全体が見えてきた。校庭では野球部のみんなが練習をしている。

もっと高く上がってみよう。駅が見えてきた。大勢の人が乗り降りしている。
今日は土曜日だから会社の行き帰りしている人より買い物をしている人の方が多いなあ。
あっ、もう帰る時間のチャイムが鳴り始めた。
今日は随分上空まできたなあ。これより上の方は明日の日曜日にしよう。
僕は川原から自転車で家に向った。

日曜日の今日は雨が降っているので石の飛行機には乗れない。
僕は仕方が無いので飛行機の本を見ている。遠くまで行くときの旅客機や貨物専用機、そして、スピードの速い戦闘機、いろいろな種類があるんだね。ほとんどがジェットエンジンだけれど、僕の石の飛行機はプロペラだ。
僕はプロペラの飛行機の方がカッコいいと思う。家にあるゴム動力の飛行機もプロペラだ。