競馬マニアの1人ケイバ談義

がんばれ、ドレッドノータス!

女神「女神の一番長い日」4改定版

2017年06月27日 | 女神
 しばらくしてドアがノックされ、
「上溝です」
 との声が。
「入れ」
 ドアが開き、通信員をやってた女性隊員が入ってきました。
「失礼します」
「よし、全員揃ったな」
 ここで女性隊員が何かに気づいたようです。周りを見渡して、
「あの~ 橋本さんは?」
「辞めた」
「ええ?」
「諸般の事情てやつだ」
 女性隊員はちょっと納得してないようです。
「さて、新規隊員の紹介だ」
 隊長は宇宙人を見て、
「名前は・・・ あ、まだ名前も訊いてなかったなあ。じゃ、こっちから先にやるか」
 隊長はさっき喰ってかかった隊員を見て、
「まずはお前から」
「え?・・・」
「名前だよ」
 隊員はちょっと嫌な顔を見せてから、ぶっきら棒に発言しました。
「倉見だ」
 隊長は次はストーク号を操縦してた隊員を見て、
「次はお前」
「はい、自分は寒川です。よろしく」
 そう言い終わると、寒川隊員は手を差し出しました。が、宇宙人は反応しません。頭の上に?を浮かべてます。
「あ、これは地球特有の儀式で、握手ていうやつです。お互いの手を握りあって、心を通じ合うんですよ」
「わかりました」
 宇宙人は寒川隊員隊員と握手しました。隊長は次に女性隊員を見ました。
「次はお前だ」
「え~と・・・ 上溝です。よろしく」
 ちょっと前に身柄を確保した宇宙人が新規隊員。上溝隊員は何が起きてるのかイマイチ理解できないようですが、とりあえず彼女も宇宙人と握手しました。
「最後はオレだな。オレは香川だ。よろしくな」
 隊長も手を差し出しました。宇宙人は無言ですが、とりあえず握手しました。
「ほんとうはもう1人海老名て隊員がいるんだが、何分まだ中学生でなあ。この時間まだ学校に行ってるんだ。あ、中学生てわかるかな?」
「なんとなくわかります」
「ふふ、そうか。じゃ、今度は君のことを訊こうか。まずは名前を教えてくれないか」
「私の名前は・・・ 女神です」
「ええ?」
 これにはテレストリアルガードの4人が驚きました。
「またずいぶん仰々しい名前だなあ」
「私の星では数万人に1人の割合で超常的な力を発揮するものが生まれます。その中でも特に強い力を発揮するものを神、女は女神と呼ばれます。私は生まれたときから強い力を顕在してたせいか、かなり幼いときから女神と呼ばれてました」
 隊長はちょっと笑って、
「ふふ、なるほどね」
 上溝隊員の質問です。
「なんでこの星に来たの?」
「私の星にも凶悪な宇宙人が攻めてきたんです。それで逃げてきました。
 実は予知能力がある神が、私の星が戦火に見舞われると事前に予知していたのです。いろいろと分析した結果、凶悪な宇宙人が侵略に来ると断定されました。かなり科学技術が進んだ宇宙人のようで、私たちの星は到底太刀打ちできないと判断されたのです。そこで私たちの星は、脱出用の宇宙船をたくさん造りました。でも、乗員できた避難民は、私の星の1%にも満たない人口でした。残った人は武器を取って戦うことにしました。
 そして侵略Xデーの10日前、宇宙船はいろんな方向に向かって旅立ちました」
「実際侵略はあったんですか?」
 これは寒川隊員の質問です。
「ええ、予言通り10日後に集中攻撃を喰らったようです。せっかく脱出できた宇宙船も、かなりの数が撃ち落とされたようです」
「君の星も大変だったんだな・・・」
 今度は隊長の発言です。
「せっかく生き残った宇宙船も、我々が撃ち落としてしまったか・・・。
 これからどうする? 私は私たちの仕事を手伝って欲しいと思ってる。でも、私たちはあなたの数千もの同胞を殺してしまった。とても仲間になれとは言える状態じゃないのも確かだ」
 宇宙人はちょっと下を向いて考えました。そして・・・
「わかりました。私をこのチームに入れてください」
 隊長、寒川隊員、上溝隊員の顔はぱっと明るくなりました。でも、倉見隊員はあまりいい顔をしてないようです。ともかく宇宙からやってきた女神がテレストリアルガードの隊員になったことは確かなようです。
「ところで、このヘルメット脱げる部屋はありませんか?」
「あは、研究室の中に無菌室があったな」
 と言うと、隊長は上溝隊員を見ました。
「おい、連れてってやれ」
「はい」

 上溝隊員と女神が廊下に出ました。2人は歩きながら会話です。
「よかった。あなたが隊員になってくれて。実はテレストリアルガードには元々20人以上の隊員がいたんだけど、次々と辞めちゃってね、今は6人しかいないんだ」
「え?」
「橋本さんも辞めちゃったけど、あなたが入ってきたから、また6人かな?」
「何があったんですか?」
「隊長が次々と死んじゃってね。今の香川さんで4人目なんだ」
「戦死ですか?」
 上溝隊員は首を横に振りました。
「病死。正確に言えば、3人とも心臓麻痺よ」
「心臓麻痺? 3人も?」
「しかも3人とも、なんの前触れもなく突然錯乱状態に陥って、そのまま死んじゃった。そのせいでテレストリアルガードは呪われたチームというレッテルを貼られちゃってね、たくさんの人が辞めちゃったんだ。でも、今の隊長になって不幸は止まったみたい」
 女神は何か話を続けようと思いましたが、特にセリフが思い浮かばないようです。
 2人が1つのドアの前に立ちました。そこで上溝隊員はラミネートされた紙を女神に渡しました。それにはイラストがたくさん描かれてました。
「これが無菌室とエアシャワー室の使い方よ。あ、日本語だから、わからないかな?」
「大丈夫ですよ。イラストをみれば、だいたいわかりますよ。それじゃ」
 女神はエアシャワー室に入りました。上溝隊員は彼女を微笑んで見送りました。

 強い紫外線を浴び、上下左右からの強烈なエアシャワーを浴び、女神が無菌室に入ってきました。この部屋には医療用のベッドしかありません。四面のうち、1つの面には大きなガラスがはめ込んであり、向こうからこの部屋をのぞけるようになってます。その反対側には観音開きのドアがあります。ドアの向こうにはたくさんの機材があるようです。
 女神はドカッとベッドに腰かけました。そして首筋のボタンを押し、両手で挟むようにヘルメットに手をかけました。そのままヘルメットを上げると、彼女の顔があらわになりました。巨大な一つ眼、鼻はなく、大きな口。地球人からみたら不気味で気持ちが悪い顔です。でも、それ以外は標準的な地球人。髪はかなり長かったのですが、ヘロン号に散切りにされてしまったせいか、今はショートになってました。身長は170cmと、日本人の標準的な女性と比べたら、ちょっと高いようです。身体はかなりスレンダーで、胸はそれほど膨らんでません。
 女神は下を向いてため息をつきました。5千もの同胞を殺され、自分も殺される寸前まで追い込まれたというのに、今はそいつらに恭順している。絶対許せない相手だけど、今は他に頼れるものがない。もしあのまま警察に連れていかれたら、かなりひどい目に遭わされていたかもしれないし、今はここに甘んじるしかないのか・・・
 でも、あの橋本て男がテレストリアルガードを辞めてなかったら、きっと別の手段を選んでたと思う。あの男は明らかに私に敵意があった。いや、まだ倉見て男がいたなあ。あの男は隙を見て攻撃してくるかも。ここも安住の地とはなりえないのかも・・・
 女神は再びため息をつきました。

 ここはサブオペレーションルームです。今自動ドアが開いて、身長140cm未満の隊員服を着たおかっぱ頭の女の子が入ってきました。彼女が海老名隊員です。
「ただいま帰りました」
 隊長はテレビモニターでアニメを見てましたが、海老名隊員を見て柔和な顔を見せました。
「お帰り」
 海老名隊員はイスに座るなり、
「宇宙人、来ましたか?」
「ああ、来たよ」
 海老名隊員は興味が湧いたようです。
「どんな宇宙人ですか?」
 隊長は左手の親指と人差し指で○を造り、それを自分の眉間に置いて、
「眼が一つ」
「ええ?」
「巨大化するし、光線技は使えるし」
「うわっ、すっごーい!」
「ほんとうにすごい人材をゲットしたかもしれないな。ふふっ、さっそく試してみるかな」
 隊長は立ち上がると、コンピューターの前に座りました。海老名隊員もその横に座りました。隊長はキーボードをタンタンタンと指で叩きました。
「シークレットコードを入れてと・・・」
 隊長はコンピューターとコードでつながった小さな機械を海老名隊員の前に置きました。
「指紋頼む」
 どうやら指紋認証システムのようです。
「はい」
 海老名隊員はその機械に自分の左手薬指の腹を置きました。するとピッと音がし、コンピューターのモニターに表が現れました。
「さーて、どれにするか」
 海老名隊員はディスプレイの一点を指さして、
「これがいいんじゃないですか?」
「OK」

女神「女神の一番長い日」3改定版

2017年06月26日 | 女神
 ここは小さな会議室のようです。複数の折り畳みの長テーブルが長方形に並べられており、お誕生日席に当たる部分のパイプいすは逆向きに置かれています。そこにさきほどの宇宙人が座らせられています。その両手は後ろ手になってます。よーく見ると、その両手には手錠がかかってます。正確には、腕のサポーターのようなものを鎖でつないだ手錠です。その間にはテーブルの脚があります。つまり、身動きが取れない状態になってるのです。
 宇宙人は先ほどテレストリアルガードの隊員が被っていたフルフェイスのヘルメットを被ってます。ただ、ガラスの部分は強い偏光グラスになっていて、中の顔を見ることはできません。首から下はテレストリアルガードの隊員服です。
 宇宙人の目の前の天井には、ドーム型の監視カメラがあります。宇宙人はそれを見ているようです。
 この宇宙人の姿がモニターに映し出されてます。ここはサブオペレーションルームです。テレストリアルガードの4人の隊長と隊員がそれを見ています。まずは隊長がぽつりと発言しました。
「ふっ、うちも取調室が必要だったとはね」
 ストーク号に乗ってた隊員が、
「あの・・・ これじゃ巨大化して逃げ出すような気がするんですが?」
 それを聞いて、今度はヘロン号に乗ってた隊員が、
「平気平気。この状況で巨大化したら、両手が手錠で引きちぎられてしまうだろ」
 ここで隊長の発言。
「さーて、行くか」
「はい」
 再び会議室です。ドアが開き、テレストリアルガードの隊員4人が入ってきました。宇宙人はそれに少し反応しましたが、あえて振り向かないようにしてます。まずは隊長が発言しました。
「手荒いことしてしまってすまなかった」
 一つ眼の宇宙人は何も言いません。すると隊長は右手を宇宙人に向かって真っ直ぐ伸ばしました。その手にはリモコンが握られてます。隊長がそのリモコンを押すと、宇宙人の手錠がパカッとはずれました。それを見て3人の隊員がびっくり。1人はさっとレーザーガンを構えました。
「た、隊長、何をするんですか?」
 宇宙人は手錠が痛かったのか、右手首に左手を当ててます。隊長はそれを横眼で見ながら、隊員たちに話かけました。
「オレたちは警察じゃないんだ。逮捕状も取ってないし、手錠をかけておく法的理由がないだろ」
「し、しかし・・・」
 隊長は再び宇宙人を見ました。宇宙人はフルフェイスのヘルメットをはずそうとしてます。
「あ、ヘルメットは取らないでくれ。この星にはいろいろと病原菌があるし、あなたがもってる病原菌も、われわれにとっては猛毒になる可能性があるからな。それにそのヘルメットには自動翻訳機が備わってる。被ってた方が会話しやすいだろ」
 宇宙人はヘルメットにかけた手を離しました。
「すまないことをした。あの船には数千もの君の同胞が乗ってたとは、夢にも思わなかった。許せては言わないが、今は怒りを収めて欲しいんだ」
「ふ、ふざけんな! なんで攻撃した! いくらなんでも攻撃する前に警告するだろ! この星じゃ、警告もなしに撃ってくるわけ?」
 ついに宇宙人が口をききました。溜まり溜まったものを一気に吐き出したようです。それを聞いて危険を感じたのか、さらにもう1人の隊員がレーザーガンを構えました。が、隊長は両手を広げ、レーザーガンを構えた2人を押さえました。
「おい、やめろ!」
 隊長は呼吸を整え、
「8年前と5年前、この星はユミル星人と呼ばれる宇宙人に猛攻撃を喰らったことがあった。それでたくさんの人が死んだ。ここにいる4人は、そのとき1人ぼっちになったものから選抜されたんだ。だから宇宙人に対しては、あまりいい印象がないんだ。
 この星の住民は、みんな宇宙からの侵略者を怖がってるんだ。そんなときに君が乗った船が来た。だから無警告に攻撃してしまったんだと思う」
 それを聞いて、一つ眼の宇宙人は黙り込んでしまいました。ここで突然隊長の左手首についてるバンテージのような装置が鳴りました。
「隊長! 警察庁の人が来ました!」
 それは通信員の女性隊員の声です。どうやら手首の装置は無線機のようです。隊長はその無線機に話しかけました。
「なんだ? えっ、宇宙人の身柄をよこせってか? ち・・・ おい、そいつら、絶対ここに入れるなよ!」
「それが・・・ もうそっちに向かってます」
「何?」
 と、突然ドアが開き、3人のスーツ姿の男が現れました。
「お邪魔しますよ」
「おいおい、こっちはまだ取り調べ中だぞ。だいたい宇宙人が襲撃してきたら、第一に防衛する組織は、我々テレストリアルガードじゃないのか?」
 3人の男の中でも、真ん中の特に偉そうな男が話しかけました。
「おやおや、何を言うかと思えば・・・ 確かに宇宙人の侵略行為があった場合は、まずはあなたたちテレストリアルガードの出番だが、身柄を拘束した宇宙人をどの組織がどのように扱えばいいのか、特に規定は設けてないはずだが?」
「てことは、テレストリアルガードが宇宙人を取り調べしても、別に問題ないってことだな」
「ふふ、ご冗談を。こんな会議室で何を取り調べるんですか?」
 男は両側にいた2人の男にあごで合図を出しました。
「おい」
 2人の男は宇宙人を挟むように、宇宙人の両腕を掴みました。
「おい、ちょっと待てよ」
「まだ何か言いたいことがあるんですか?」
「実はその宇宙人は、テレストリアルガードの隊員なんだ」
 そのセリフを聞いて警察の人ばかりか、テレストリアルガードの隊員たちも驚いてしまいました。
「た、隊長?」
「実は30分前に総理大臣に申請書を出していてなあ」
「あはは、こいつはお笑いだ。テレストリアルガードが宇宙人を雇うだと? そんな規定があるわけないだろ」
「アメリカじゃ投降したエイリアンを中心に作られた部隊があってな。それに倣って、あえてテレストリアルガードの隊員は地球人に限るという文言は入れてないんだ。
 テレストリアルガードの隊員はいろいろと身分が保証されていてなあ、今引っ張っていくと、あとあと面倒なことになるんじゃないのか?」
「ふふ、ああ言えばこういうだな。
 テレストリアルガードは総理大臣直属の機関。新規隊員を入れる場合は総理大臣の許可を得ないといけないが、承認は最低1週間はかるんじゃないのか?」
「さあねぇ、承認はもう下りてるんじゃないのかな? まあ、もうちょっと待てや」
「小賢しい。そんな言い訳は聞きたくはないわ!」
 警察の偉い人は、2人の部下を見て命令しました。
「いくぞ」
「はい」
 いよいよ3人は宇宙人を連行するようです。が、ここで携帯の着信音が。それは警察の偉い人の携帯でした。警察の人はスーツの内ポケットから携帯を取り出し、電話に出ました。
「はい、もしもし・・・ ええ、警察庁総監?・・・」
 この一言で部屋の空気が変わりました。
「わ、わかりました」
 警察の人は携帯を切りました。
「ふっ、こんなにも早く承認が下りるとはな」
 警察の人は2人の部下に声をかけました。
「おい」
 2人は宇宙人の腕にかけた手を離しました。そして3人は出て行ってしまいました。
 ドアが閉まると、今度は隊員の1人、先ほど最初に宇宙人に拳銃を向けた者が隊長に喰ってかかりました。
「隊長! ほんとうにこいつをうちに入れるんですか?」
「ああ、そのつもりだ」
「こいつはエイリアンですよ!」
「なんだ、嫌か?」
「ああ、嫌です! だいたい隊長はこいつに甘過ぎです! オレたちはみんな家族をエイリアンに殺されてるんですよ!」
「お前が見た宇宙人は一つ眼だったのか?」
 隊員はなんら応えに窮することなく、さらに語気を荒げて反論します。
「宇宙人には変わりないでしょ!」
「なんだよ、そりゃ? そんなにオレの云うことが聞けないのなら、お前、テレストリアルガード辞めろ! はっきり言って、お前は不快だ!」
 その一言に残りの2人の隊員も反応してしまいました。
「た、隊長?」
「オレは総理大臣からテレストリアルガードの隊長を任せられてるんだ。オレの命令は絶対なんだよ。オレの命令を聞けないっていうのなら、とっとと辞めちまえ!」
「ああ、辞めますよ! 辞めりゃいいんだろ!」
 隊員はついにブチ切れてしまいました。そしてドアに向かいました。本当に出て行くつもりです。それを見て、別の隊員の1人が慌てました。
「は、橋本さん、辞めないでくれ!」
 当の隊員はドアを開けると、振り返らずに、吐き出しました。
「やってられるか、こんなところ!」
 ドアが激しく閉まりました。思いっきり力を込めてバーンと閉めたのです。今度はたった今「橋本さん」と言ってた隊員が、隊長に喰ってかかりました。
「隊長、いったい何を考えてるんですか? 橋本さんはうちのエースですよ! 射撃は百発百中だし、ヘロン号のコントロールはすごいし! 今こんな人はほかにいませんよ!」
 そして宇宙人を横目で見て、
「隊長はこのエイリアンと橋本さんとどっちが大切なんですか?」
「両方とも大事だ。ま、去る者は追わずだ。今はそこにいる宇宙人の方が大事だな」
 隊員はテーブルを思いっきりバーンと叩きました。
「ふざけんなよーっ!」
 ちょっとの静寂。それを切り裂くように、隊長は静かにしゃべりました。
「お前も辞めるか?」
 再び一瞬の静寂。と、今度はさっき語気を荒げた隊員がぽつりと発言しました。
「・・・いいえ」
「そっか」
 隊長は左手首の無線機に話しかけました。
「おい、ちょっと来てくれ」

女神「女神の一番長い日」2改定版

2017年06月25日 | 女神
 再びストーク号のコックピットです。
「うわっ、こりゃあ生存者はいないんじゃないか?」
「いや・・・」
 人影が、巨大な人影が炎と煙の中に立ってるのです。その身長は50mはあるみたいです。ヘロン号の隊員がそれを見て、
「な、なんだ、あれは? 人なのか?」
「おいおい、巨人が乗ってたのかよ?」
 巨人は女性のフォルムです。ストレートなダークグリーンの長髪は、腰のあたりまで伸びてます。首からつま先までワンピースのくすんだ銀の服を着てます。何か声が響いてます。巨大な宇宙人がしゃべってることは確かなのですが、それは地球人には理解できない言語です。隊長が隣の隊員に命令です。
「自動翻訳機を」
「はい!」
 ヘロン号が巨人の真後ろから前方に廻り込んで行きます。そしてついに顔が見えました。なんとその顔は、巨大な眼が1つだけ。鼻はなく、口は裂けるってほどではありませんが、かなり大きいようです。
「うわっ」
「気持ちわるいあ~」
 今度はストーク号の隊員。
「自動翻訳機、用意ができました!」
 ストーク号が一つ眼の宇宙人の前で空中停止しました。宇宙人は再び何かを訴えてます。声からして、やはり女性のようです。
「なんで、なんで撃った? なんで我々を攻撃した!」
 隊長はその質問に答えました。
「スペースステーションの攻撃か? すまないことをした。謝罪する」
「ふざけんな! この船には5千もの難民が乗ってたんだよ! なんで撃ったんだよ! この星は警告もなしに撃つのかよ!」
 一つ眼の宇宙人は右手を引き上げました。その手は地球人と同じ5本指で、親指と人差し指で拳銃の形を作ってます。隊長はそれを見て、
「バリア!」
「はい!」
 人差し指の先から強烈な光弾が放たれました。その光弾がストーク号に向かって行きますが、的中する寸前、魔法円が現れ、その光弾を弾きました。これもヴィーヴルから供与された武器の一つのようです。ヘロン号の2人の隊員はこの攻撃を見て、怒り心頭となりました。
「隊長!」
「くそーっ、ビーム砲を食らわしてやる!」
 ヘロン号の腹から1つの砲塔が現れました。ビーム砲の砲塔です。
「待て!」
 隊長からストップがかかりました。
「え、ええ~? で、でも・・・」
「隊長、撃たせてください!」
「まあ、もうちょっと待て!」
 隊長は再び一つ眼の宇宙人に話しかけました。
「我々はあなたに敵対する気はない。頼む、おとなしくしてくれないか!」
「ふざけんな!」
 一つ眼の宇宙人は両腕をL字に曲げ、両ひじを腋に付けました。その手に光のエネルギーが集まっていきます。隊長はそれを見て、
「ショートジャンプ、スタンバイ!」
「はい!」
 一つ眼の宇宙人はエネルギーを溜めた両手を真っ直ぐ頭上に伸ばしました。次に思いっきりその両手を振り下ろし、両手が水平になったところでその動作を停止。その瞬間両掌を合わせました。すると眩いビームが発生。それがストーク号に向かって放たれました。が、寸前でストーク号は消滅。直後に一つ眼の宇宙人の真後ろに現れました。
 隊長はいよいよ決断したようです。
「仕方がないか、ビーム砲で攻撃しよう!」
 それを聞いてヘロン号の2人の隊員は、ちょっと笑みを浮かべました。
「了解!」
「ただし、出力は20%だ」
「ええっ?」
「隊長、フルで撃たせてください!」
「だめだ、20%で撃て!」
 しかし、ヘロン号の隊員は納得いかないようです。小さく「ちっ」と言いました。と、一つ眼の宇宙人は、今度はヘロン号に向かって指の光弾を撃ちました。
「おっと」
 ヘロン号はこれを魔法円で防ぎました。
「仕方がないな、とりあえず20%で撃とう!」
 ビーム砲の砲塔が一つ眼の宇宙人の方にくるっと回転し、ビームを発射。ビームは一つ眼の宇宙人に向かっていきます。が、宇宙人に当たる寸前、青白いハニカム構造の光のバリアが発生し、そのビームを弾きました。
「なんだ、バリアを張れるのか?」
「くっそーっ!」
 が、宇宙人の真後ろから同じビームが2条飛んできて、その背中を直撃しました。
「うぐぁっ!」
 一つ眼の宇宙人は、悲鳴を挙げて焼け野原に倒れました。
 2条のビームを撃ったのはストーク号でした。ストーク号の腹にはビーム砲の砲塔が2つ縦に並んでおり、それを撃ったのです。
「ナイス、隊長!」
「ふっ、バリアは一方向だけしか張れないのかよ」
 今度はヘロン号がビーム砲を発射しました。
「よーし、こっちも!」
 それが一つ眼の宇宙人のうなじに命中。
「うぎゃっ!」
 ヘロン号はビーム砲を撃ち続けます。一つ眼の宇宙人は這いずって逃げようとしますが、ビームはずーっとうなじを捉えてます。さすがに隊長の横槍が入りました。
「おい、もういいだろう」
 が、ヘロン号はなおをビームを撃ち続けます。隊員がコンソールのスライド式のボリュームを上げました。どうやらビーム砲の出力を勝手に上げたようです。一つ眼の宇宙人は断末魔の声を挙げっ放しとなりました。
「おい、いい加減にしろ!」
 隊長がついに一喝しました。
「ちっ」
 やっとヘロン号のビームが止まりました。一つ眼の宇宙人は完全にグロッキー状態です。これを見てストーク号の一般隊員は青ざめました。
「ひ、ひどいことするなあ・・・」
 と、その隊員の目の前の計器が何かに反応しました。
「む、何か来ます。これは・・・ 自衛隊のヘリコプターです」
「はぁ、自衛隊のヘリコプターだと? ふざけんな。こいつはテレストリアルガードの仕事だぞ!」
 隊長はそう言うと、目の前のコンソールのスイッチを入れました。
「こちらテレストリアルガード! こちらテレストリアルガード! 応答願います!」
 が、何も反応しません。
「ち、ホットラインに反応しない気か? これじゃホットラインの意味がないだろって!
 おい、自衛隊官房、反応しろ! 反応しないと、またあんたの孫娘が熱発するぞ!」
 すると無線から声が聞こえてきました。ちょっと焦ってるようです。
「ま、待て!」
「ようやく反応したか、このボンクラ官房!
 今未確認飛行物体墜落現場にいるが、なんか自衛隊のヘリコプターがこっちに向かってるようだが、なんのつもりだ?」
「それは情報収集だろ」
「宇宙からの侵略行為があった場合、第一に防衛責任があるのは我々テレストリアルガードだ。我々の要請がない限り、自衛隊は動かないて約束だろ?」
「戦闘には直接参加しないつもりだ。我々の目的は、あくまでも情報収集だ」
「そうか・・・ あんたの孫娘、今7歳だったっけ? ふっ、かわいそうにな」
「わ、わかった。ヘリコプターは引き返させる。それでいいだろ」
 無線は切れました。
「わかりゃいいんだよ」
「隊長・・・」
 突然のその隊員の呼びかけに、隊長は振り返りました。
「あの宇宙人の身体ですが・・・」
 ストーク号の眼下、たった今ストーク号とヘロン号に敗れた巨大な一つ眼の宇宙人の身体が消えてました。
「なんだ、消滅したのか?」
「いいえ、縮小です」
 モニターに地面に横たわる人の身体が映し出されてます。服装からして一つ眼の宇宙人のようです。
「我々と同じサイズになりました」
「今まで巨大化してたのか? とりあえず降りてみるか」
 ストーク号が垂直着陸を開始しました。しばらく降下したあたりで、隊長の命令です。
「水平停止!」
「了解!」
 ストーク号は地面から10mくらいで完全停止。ストーク号の腹のハッチが開き、そこから真下に淡い光が2条放たれました。その光がまるでエレベーターのシャフトのようになり、隊長と隊員がゆっくりと降下してきます。これもヴィーヴルから供与された技術のようです。ただ、ヘロン号にはこの機能はないらしく、焼け野原に直接垂直着陸するようです。
 ストーク号の2人は先ほどとは違うフルフェイスのヘルメットを被ってます。この2人が地面に到達しました。と同時に、光は消えました。
「よし、行こっか」
「はい」
 2人が倒れている宇宙人のところに来ました。うなじにビーム砲を喰らったせいか、長髪はボロボロです。隊長が宇宙人の首筋に触れました。
「まだ息があるな。毒と放射能は?」
 一般隊員は計測器をかざして、
「ありません」
「何かあるといけないから、ヘルメットは被ってよう」
「はい」
 そこにヘロン号の2人が到着。2人は先ほどのヘッドアップディスプレイとは違うフルフェイスのヘルメットを被ってます。ストーク号の2人と同じヘルメットです。隊長が命令しました。
「収容しろ」
「はい」
 2人は宇宙人の身体に触れました。そのとき上半身に廻った隊員が宇宙人の身体を表に返したのですが、その瞬間まぶたを閉じている宇宙人の一つ眼をまともに見てしまいました。
「うわっ、きも」
 その発言を聞いて、隊長はその隊員を横目で見ました。フルフェイスのヘルメットのせいでわかりづらいのですが、どうも怒った眼のようです。2人の隊員は宇宙人の両腋の下と両足を持ち、宇宙人の身体を運んで行きました。
「隊長!」
 隊長が振り返ると、ストーク号の隊員が無残な姿を晒した巨大な宇宙船を見ています。その近辺には2mくらいの長さの円筒形のカプセルが散らかってます。隊員はそのカプセルを見て、
「隊長、これはなんでしょう?」
 隊長は1つのカプセルの前でしゃがみ込みました。そのカプセルは一部破れていて、子どもらしき身体が見えてます。
「子ども?・・・」
 隊長は先ほどの一つ眼の宇宙人のセリフを思い出しました。
「ふざけんな! この船には5千もの難民が乗ってたんだよ!」
「この船はほんとうに難民船だったのか?・・・」
「ええ、我々は難民船を攻撃してしまったんですか?」
「ああ、ジェノサイドやっちまったようだな」

女神「女神の一番長い日」1改定版

2017年06月23日 | 女神
 8年前宇宙人が攻めてきました。攻めてきた宇宙人はユミル星系出身なので、ユミル星人と名付けられました。
 ユミル星人はまず十数発の核融合弾を地球に落としました。放射能が出ない水爆です。突然そんなものが降ってきたので、地球は大混乱となりました。
 その直後、今度はユミル星人の軍隊そのものが舞い降りてきました。彼らは主にアメリカとヨーロッパに降りてきました。地球人たちも残った兵器で迎撃を試みましたが、まったく歯がたたず、防戦一方となりました。
 が、2日も経つと、形勢が逆転しました。ユミル星人たちが次々と病気で倒れて行ったのです。実は彼らは数年前から十数人の偵察隊を地球に送り込んでました。彼らの目的の1つが、ユミル星人に害をもたらす病原菌の調査でした。そこで集められたデータを元にユミル星人はワクチンや抗生物質を作り、地球侵略の日に備えてました。が、見落としたウイルスがあったのです。それは地球上の動植物にはまったく無害なウイルスなのですが、ユミル星人から見たら発病から数時間で死に至る恐ろしいウイルスでした。これが原因でユミル星人は一度撤退しました。地球人はこのウイルスをキラーユミル星人ウイルスと名付けました。
 それから3年後、再びユミル星人が攻めてきました。今度はまず50発以上の核融合弾を地球に降らせました。地球側は今度は待ち構えていてそれら核融合弾を迎撃しましたが、それでも地上で数発の核融合弾がさく裂しました。続いてユミル星人の軍隊が降下してきました。今回は欧米だけではなく、地球上のほとんどの国に降りてきたのです。もちろん、日本にも。
 ユミル星人の武器は地球の武器をはるかに超えていて、しかもこのとき襲ってきたユミル星人はユミル星人本体ではなく、ユミル星人の植民地になってた星の人々によって結成された軍隊でした。当然ユミル星人キラーウイルスが効くわけがなく、地球の敗北は決定的とみられました。が、日米両政府が宇宙の傭兵部隊ヴィーヴルと密かに交渉していて、ユミル星人第二次襲来とともに急遽契約。ヴィーヴルの介入によりユミル星人の軍隊はあっという間に駆逐されてしまいました。
 その後日米両政府は、ヴィーヴルからいくつかの技術供与を受けました。それはヴィーヴルから見たら10%も満たない技術でしたが、地球の既存の技術をはるかに凌駕する軍事技術だったのです。
 しかし、このことで日米両政府は世界的非難を受けました。この技術があれば世界征服が簡単に成し得てしまうからです。そこで日本政府は自衛隊等、他の組織から完全に切り離された地球防衛組織、テレストリアルガードを創設。ヴィーヴルから供与された軍事技術は、テレストリアルガード以外では絶対使わないと宣言しました。
 テレストリアルガード本部は東京近郊に設置。また宇宙空間にはテレストリアルガード宇宙支部であるスペースステーションJ1を設置。再びのユミル星人の襲来に備えました。

 そしてここはテレストリアルガード本部。現在は真夜中のせいか、しーんと静まり返ってます。が、それを破壊するように、けたたましいアラームが鳴り響きました。
「緊急通信! 緊急通信! スペースステーションJ1より入電! スペースヘロンが未確認飛行物体1機と交戦。現在未確認飛行物体はコントロールを失い、地球に落下中!」
 これを聞いて1人の男が目を醒ましました。彼の名は香川洋和。テレストリアルガードの隊長です。
「ふっ、ついに来たか」
 隊長はさっとベッドから下りました。なんと彼はテレストリアルガードの隊員服を着たまま寝てました。
 ここはオペレーションルームです。奥には巨大なモニターやコンソールが設置されており、その前に座ってる女性隊員がヘッドホンで通信を聴いてます。今自動ドアが開き、香川隊長が入ってきました。まずは女性隊員に質問です。
「今どういう状況だ?」
「未確認飛行物体が地球に落下中です。もう少しで大気圏に突入します。現状だと日本に墜ちてくる可能性が高いです。迎撃ミサイルで撃ち落としますか?」
「いや、核融合弾じゃないなら、その必要はないだろ」
 でも、女性隊員はちょっと懐疑的なようで、心の中でつぶやきました。
「東京や大阪に墜ちてこなきゃいいけど」
 再び自動ドアが開き、3人の男性隊員が入ってきました。
「隊長!」
 隊長は3人の隊員を見て、
「宇宙から未確認飛行物体が墜ちてくるようだ。全員、出動だ!」
「はい!」

 遠くの空が青くなってきました。未明から夜明けに移る時間です。ここは空港のようです。はるか向こうまでアスファルトが伸びてます。アスファルトの脇には3つのカマボコ型の格納庫が見えます。
 今1つの格納庫のシャッターが開き、巨大な軍用機が出てきました。さらに隣の格納庫からは、F-35戦闘機より2廻り大きな軍用機が現れました。巨大な飛行機はストーク号、戦闘機型の飛行機はヘロン号と呼ばれてるテレストリアルガード専用の機体です。もちろんたくさんのオーバーテクノロジーが搭載されてます。
 ストーク号のコックピットは横に2座席。今その1つに香川隊長が、もう1つには一般の隊員が座ってます。2人ともヘルメットをしてますが、フルフェイス(ヘッドアップディスプレイ)ではありません。隊長はヘルメットと一体になったヘッドセットに話しかけました。
「落下箇所は判明したか?」
 マイクの向こうは、さきほどの女性隊員です。
「それが・・・ 未確認飛行物体は多少コントロールされてるようです。落下箇所はまだ判断できません」
「だいたいでいい。教えてくれ!」
「はい!」
 少し時間が開き、
「鵜取町です! 詳しい経度・緯度の情報を送ります!」
 隊長は隣のシートの隊員に声をかけました。
「よし、離陸!」
「離陸します!」
 ストーク号が垂直に離陸を開始。ヘロン号も垂直離陸を開始しました。
 隊長は再びヘッドセットのマイクに向かってしゃべりました、
「ヘロン号、位置情報を入力したか?」
 ヘロン号は縦に2座席の軍用機で、今2座席ともテレストリアルガードの隊員が座ってます。こちらは2人ともヘッドアップディスプレイにマスクを装着しています。
「はい、いつでもジャンプできます!」
「よし、ジャンプ!」
 すると、なんとストーク号もヘロン号もぱっと消滅してしまいました。

 ここは山に囲まれた町。空の青さがさらに増してきました。その上空にストーク号とヘロン号が忽然と出現しました。瞬間移動、テレポーテーションです。これはヴィーブルから技術供与された軍事技術の1つです。
 ストーク号のコックピットです。テレストリアルガードの隊員がモニターを確認てします。
「チェック、オールグリーン。問題ありません!」
「よし!」
 一方こちらはヘロン号のコックピット。隊員の1人が下を見てます。下は新興の住宅地、鉄道の駅も見えます。
「おいおい、ここに墜ちてくるのか?」
 再びストーク号のコックピット。今女性隊員から無線が入りました。
「隊長、墜落地点はさらに西になりました」
「よし、通常飛行で西に行くぞ!」
「はい!」
 ストーク号とヘロン号のジェットエンジンが点火。2機が急発進しました。
 西へ西へと向かうストーク号とヘロン号。その真後ろから太陽が昇ってきました。さらにその太陽の中から巨大な何かが飛び出してきました。
「未確認飛行物体です!」
 ストーク号より数倍はある大きな宇宙船です。それを見て隊長は驚きました。
「おいおい、これはまたずいぶんと大きいんじゃないか?」
 未確認飛行物体は長方形な物体ですが、かなり被弾してます。スペースステーションJ1に攻撃された跡のようです。
 飛行物体の先頭には青い光が見えます。青い光は先頭部分を包み込んでます。ストーク号の一般隊員がそれに気づき、
「あの青い光は?」
 それに隊長が応えました。
「さあ・・・ そーいや未確認飛行物体は多少コントロールされてると言ってたな。あの光がコントロールしてるのか?」
 ストーク号とヘロン号が果てしなく続く森林地帯の上を飛んでます。ヘロン号の隊員が再び下を見ました。
「よかった。ここなら人は住んでなさそうだ」
 が、同じヘロン号の別の隊員の意見は逆のようです。
「いや、わからんぞ。登山者がいるかもしれないし」
 未確認飛行物体がストーク号とヘロン号を追い越しました。ストーク号の一般隊員がそれを見て、
「まもなく地上に激突します!」
「爆風に気を付けろ!」
「はい!」
 宇宙船がついに落下。尾根に接触するように墜落して、そのまま山を猛スピードで駆け降り、渓谷に激突。大爆発。とてつもなく巨大な火柱が上り、衝撃波が発生しました。あたりの森林はこの衝撃波ですべて吹き飛んでしまいました。

女神序章

2017年06月22日 | 女神
また拙い小説を書いてしまいました。タイトルは女神。巨大なヒロイン「女神」が登場する話です。まあ、ウルトラマンみたいな話です。科学特捜隊みたいなチームも出てきます。もちろんひねくれた私が書いた話です。読者を不快にする話ばかりです。

私はウルトラマン・ウルトラセブンは再放送で、帰ってきたウルトラマンはリアルタイムで見た世代です。この3作品ではウルトラマンもウルトラセブンも帰ってきたウルトラマンも絶対正義として描かれてました。また地球側の対怪獣・宇宙人チームの科学特捜隊・ウルトラ警備隊・MAT(モンスターアタックチーム)も絶対正義でした。でも、この3作品で思い出に残ってる話と言えば、故郷は地球(ジャミラ回)・超兵器R1号(ギエロン星獣回)・ノンマルトの使者(ノンマルト・ガイロス回)・怪獣使いと少年(メイツ星人・ムルチ回)。これらの話はすべて正義を完全否定する話で、特にノンマルトの使者ではウルトラ警備隊が悪として描かれてました。
そんなものを見て育った私が書いた話です。当然何が正義なのかわからない話になってます。

今のところ1話だけ書き上げていて、4話までプロットができてます。とりあえず1話は当ブログに上げ、2話以降は完成次第上げていきます。来週から順次上げていく予定です。

6月22日追記
今女神第2話を書いてるところで、あともうちょっとで書き上げます。で、その2話を挙げたいのですが、2話を書いてると1話と整合性のない表現が多々現れてしまいました。また1話を読み返すと、誤字脱字がたくさんありました。そんなわけで、大幅に書き直してます。
そこで女神1話をあらためて挙げます。よろしかったら見てやってください。明日から1話1話挙げていきます。

女神「女神の一番長い日」6

2017年05月19日 | 女神
 狭い路地が続く街並み。パトカーがサイレンを鳴らしながら行き交ってます。さらに狭い道では、警官隊隊があたりを見回しながら小走りで移動してます。その後ろに女神がいます。
「おい!」
 その声に女神は歩みを止めました。女神が振り返ると、そこには倉見隊員が立ってました。その手にはレーザーガンが握られています。
「お前、何様のつもりだ!」
 これを見て、女神はこう思いました。「もう来たか」
「お前、テレストリアルガード辞めろ! お前なんかより橋本さんの方がずーっと使えるんだよ! テレストリアルガードは橋本さんが必要なんだよ!」
「私は・・・ 私はここを辞めません」
「なんだと?」
「私の居場所は今ここにしかないからです」
 と、これを聞いて倉見隊員は苦笑してしまいました。
「がははぁ、お笑いだぜ、エイリアンのくせして!
 なあ、知ってるか? 日本の法律てーのは、地球人を保護するためにあるんだぜ。お前みたいなエイリアンには適用されないんだ。今お前を殺したって、オレは完全無罪なんだよ!
 死ねーっ!」
 倉見隊員はレーザーガンの銃爪を引きました。光弾が女神に向かって行きます。が、女神の身体に光弾が当たる寸前、女神の前に青白いハニカム構造の光のガードが現れ、その光弾を弾きました。女神はバリアを張ったのです。倉見隊員は悔しそうです。
「く、くそーっ!」
 次の瞬間、女神はふっと消えました。倉見隊員はそれを見て唖然としてしまいました。
「テレポーテーション?」

「くそーっ、どこに行ったんだ?」
 複数の警官が路地を小走りに過ぎて行きます。警官隊が通り過ぎると、建物の影から1人の男が現れました。その顔は先ほどのタブレットに写ってた顔の1つです。
 男は警官隊が行った方向を見ています。その背後で空間に歪みが発生してます。それに合わせて、空間を引き裂くような不気味な音が。男はその音に気付き、ゆっくりと顔だけ振り返りました。そこにはヘルメット姿の女神が立っていました。
「うわぁ」
 男は女神に拳を振り上げました。
「うぐぁーっ!」
 が、女神は顔面に飛んできたその拳を避け、逆に男の足を蹴飛ばしました。
「うわぁっ!」
 男の身体はうつぶせのまま、思いっきりアスファルトに叩きつけられました。次に女神は左ひざでその男の背中を押さえつけ、右手を捻り上げました。激しい痛みで男は思いっきり悲鳴を上げました。そこに隊長と海老名隊員が駆け付けました。
「おお、ナイス!」
「すごーい!」
 さらに警官隊が駆け付け、男に手錠をかけました。先ほどテレストリアルガードの基地内で女神にかけられた手錠と同じ、手首のサポーターに鎖が付いた手錠です。警官に囲まれ、男が立ち上がりました。隊長はその警官を見て、
「じゃ、あとはお願いします」
「はい。
 ほら、歩け!」
 警官は鎖を思いっきり引っ張りました。そのせいで男の身体はよろけました。このとき男の眼が鈍く光りました。反抗的な眼です。男は全力で警官にタックルしました。警官の身体は無残に吹き飛ばされました。
「うぐぁ~」
 警官は鎖を離してしまいました。男は他の警官の手をかいくぐりながらダッシュしました。突き飛ばされた警官はそれを見て、
「ふっ、バカなやつ!」
 警官は手にしたスイッチを押しました。すると手錠に思いっきり電気が流れました。
「ぐあーっ!」
 男は崩れ落ちました。無残にも白目をむいてます。その一部始終を見てた女神は、恐ろしいものを感じてしまいました。もしあのとき手錠をかけられたままだったら、自分もこうなってたかもしれない。あのとき手錠を解いてくれた人は、今私の横にいる香川隊長。香川隊長がいなかったら、私はどうなってたんだろう?
 隊長が考え込んでいる女神に声をかけました。
「ん、どうした?」
 女神は倒れている男を見て、
「あの人、どうなってしまうんですか?」
「さーな、オレにもわからんな。ただ、逮捕後のエイリアンがどこに行くのか、見た者は1人もいないんだな」
 ここで女神は先ほどの倉見隊員のセリフを思い浮かべました。
「なあ、知ってるか? 日本の法律てーのは、地球人を保護するためにあるんだぜ。お前みたいなエイリアンには適用されないんだ。今お前を殺したって、オレは完全無罪なんだよ!」
 そうです。今女神に人権はありません。日本の法律の保護下にないのです。テレストリアルガードの隊員という身分だけが、女神を法的に守ってるだけです。誰がなんと言おうと、女神はテレストリアルガードを辞めるわけにはいかないのです。
 ここで海老名隊員があることに気づきました。
「そう言えば、もう1人のエイリアンは?」

 ここは同じ地区の別の路地です。今寒川隊員がもう1人の男を追いかけてます。
「待てーっ!」
 男は角を曲がりました。が、袋小路、行き止まりでした。寒川隊員がレーザーガンを構え、1歩1歩迫ってきます。
「ふふ、終了だ。おとなしくお縄についてくれよ」
 男はほぞを噛みました。そして・・・ 男の身体は鈍く光り、そのシルエットはあっという間に巨大化しました。寒川隊員はそれを見て、腰を抜かしてしまいました。
「う、うわーっ!」
 再び隊長、女神、海老名隊員です。3人は破壊的な音を聞いて、その音がした方向を見ました。そこには巨大化した男がいました。巨大化したとき服は一瞬で砕け散ってしまったらしく、素っ裸です。海老名隊員はそれを見て、びっくりしてます。
「うわっ、すっごーい!」
「おいおい、マジかよ。巨大化するエイリアンは、初めて見たぞ」
 それを聞いて女神が隊長に声をかけました。
「あ、あの・・・」
 隊長は女神を見ると、こう言いました。
「ああ、2人目か」
 巨大化した男は、眼の前にある木造建ての家を蹴飛ばしました。家は空中でバラバラになり、その破片が3人の頭に降ってきました。
「うわっ!
 くそーっ、ストーク号でくればよかったなあ・・・」
「隊長、私が行きます!」
「巨大化するのか?」
「はい!」
「巨大化したら、宇宙人だってことがばれるぞ」
「ふっ、いつかはバレます。構いません」
「ふふ、そうか、じゃ頼む!」
「はい!」
 女神は巨大な男に向かって駆け始めました。
「あの~、隊長。あの人、巨大化したら素っ裸になっちゃうんじゃないですか?」
「ああ、そう言えば・・・」
 でも、海老名隊員はとっても期待してます。巨大化すれば間違いなくヘルメットが砕け散ります。そうなれば女神の巨大な単眼を見ることができるからです。

 人々が次々と家から逃げるように出てきます。それを追いかけるように巨人になった男が道をのっしのっしと歩いてます。寒川隊員がレーザーガンを撃ち、それが男の背中にヒットしますが、あまり効いてません。男が振り返りました。その殺気だった眼にビビッて、寒川隊員はまたもや後ずさりです。
「うわーっ!」
 その男の背後で巨大化した女神が現れました。女神は隊員服もヘルメットもそのまま巨大化してます。それを見て海老名隊員は残念がってます。
「ええ、ウソ! 服もヘルメットもそのままじゃん!」
女神はジャンプして男の背中にドロップキック。
「うぐぁっ!」
 男はよろけて木造家屋を蹴飛ばしながら2・3歩動き、ついに転倒。そのとき、3階建てのコンクリート造の建物に顔面を強打。痛みでのたうち回ります。そのせいでさらに木造家屋が壊れていきます。隊長はこれはまずいと思ったのか、女神に大声で声をかけます。
「おい、一気にたたみかけろ!」
「はい!」
 どうやらフルフェイスのヘルメットに内蔵された自動翻訳機もそのままのようです。
 女神は先ほどの手錠の電気ショックで悶絶した男を思い出しました。
「この男は私が葬ってあげないと!」
 女神は両手をL字に曲げ、両肘を腋に付けました。その手には光が集まってきます。女神は光に満たされた両手を一気に前に突き出しました。その掌が合うと強い光線が生まれ、その光線がのたうち回ってる男の身体を直撃。とてつもない火花がさく裂。それが収まると、そこには男の巨大な死体が転がってました。
 しかし、たくさんの木造家屋が壊れてしまいました。女神はそれを見て、こいつは自分が恨まれるなあと心配しました。けど・・・
「やったーっ!」
「すごぞっ!」
 人々が歓声を挙げてくれてるのです。
「ニューヒーロー誕生だ!」
 それを言った男の子に、その隣にいた女の子が、
「バカねぇ、ヒロインでしょ」
「あは、そうか」
 それらを聞いて女神は戸惑ってます。こんなに歓迎してくれてるなんて、まったく想像してもなかったからです。これを見ていた倉見隊員も戸惑ってるようです。
「おいおい、そいつはエイリアンなんだぞ・・・」
 女神はその倉見隊員を見つけ、縮小化して、倉見隊員の前に立ちました。
「な、なんだよ!」
 倉見隊員はレーザーガンを構えました。
「私の居場所は今ここにしかありません。あなたには都合が悪いのかもしれませんが、しばらくはここにいさせてもらいます」
 倉見隊員はレーザーガンを降ろしました。女神にそれは効かないとわかってるからです。
「す、好きにしろよ」
 倉見隊員は後ろを向いてしまいました。と、遠くに数人の市民が現れ、女神に指さしました。
「おっ、いたぞーっ!」
「あ、まずい」
 女神は細い路地に入り込みました。
「ちょ、ちょっと待ってー!」
 市民たちもあとを追って路地に入り込みました。が、なぜか女神の姿は消えてました。
「あれ、どこに行ったんだろ?」
「あの人、なんだったんだろ?」
「さあ、宇宙人か、ミュータントか・・・」
「人造人間かも・・・」

 テレストリアルガードのサブオペレーションルームです。今隊長がテーブルのイスに座ってる女神に数枚の資料を渡しました。
「あんたの生体データが出たよ」
 隊長はイスに座り、
「この星のばい菌はなんら問題ないらしい。あんたが持ってるばい菌も、この星にはすべて無害だそうだ。もうヘルメット取っても大丈夫だぞ」
「そうですか」
 女神は首筋のボタンを押しました。そして両手で挟むようにヘルメットを掴みました。それを見て海老名隊員がドキドキわくわくしてます。上溝隊員も初見なので、かなり注目してます。でも、倉見隊員は見たくないらしく、横を向いてしまいました。
 ついに女神はヘルメットを脱ぎました。巨大な一つの眼。鼻はなく、口は巨大。海老名隊員はそれを見て思わずイスから立ち上がってしまいました。
「すごーい!」
 女神はちょっと苦笑してるようです。そして何かを言いました。が、地球人には理解不能な言語です。女神は慌ててヘルメットを被り直しました。
「あれ、なんでまたヘルメット被っちゃうの?」
 ここで隊長が一言。
「言葉だよ」
「え?」
「ヘルメットには自動翻訳機が仕込んであるから、ヘルメットを被ってる方がいろいろと便利なんだよ」
 今度は女神を見て、
「ま、どっちにしろ外出するときは、まだヘルメットを被ってた方がいいな」
「わかりました」
 こうして女神隊員のあまりにも長い一日が終わりました。

※第2話はプロットはできてるんだけど、まだ1ページもできてません。完成はたぶん2か月先になると思います。

女神「女神の一番長い日」5

2017年05月18日 | 女神
 館内に放送が鳴り響きました。隊長の声です。
「緊急招集! 緊急招集! テレストリアルガードの隊員はサブオペレーションルームに集合せよ!」
 それを聞いて自室で寛いでいた倉見隊員と寒川隊員は顔を挙げました。女神も慌ててヘルメットを被りました。女神はそのまま廊下に出て走り、サブオペレーションルームに入りました。中にはすでに5人の隊員が集まってました。女神はその中の海老名隊員に注目しました。女神と海老名隊員はここで初対面です。海老名隊員はなぜか喜んでるようです。
「あなたが今度うちの隊員になった宇宙人でしょ!」
「ええ、あなたが海老名隊員?」
「はい。あの~、顔を見せてくれませんか?」
 女神はそのセリフにびっくりです。さすがにここで隊長が横槍を入れました。
「おい、今は仕事中だぞ」
「は~い」
 テレストリアルガードの隊員とは思えないキャビキャビとした女の子です。ただ、女神は感じました。この女の子が放ってるオーラを。そのオーラは自分たち神や女神が持ってるオーラと同じだったのです。海老名隊員には何か秘密があるようです。
 ここから本題です。
「エイリアンの残党が見つかったと、たった今警察経由で通報があった。身柄を確保しに行くぞ!」
「はい!」
 と、隊長は女神を見ました。
「行けるか?」
「はい」
「今日はいろいろあってすまないな」
「いいえ」
 と言っても、一つ眼の宇宙人は今断ることができません。断ればテレストリアルガードクビになる可能性があります。クビになればその後どんなひどい目に遭うのかわからないからです。
 上溝隊員が部屋の隅にある造り付けの金庫の扉を開けました。そこには38口径くらいの大きさの光線銃が収納してあります。
「みなさん、レーザーガンです」
 まず隊長がレーザーガンを受け取りました。
「ありがと」
 次に倉見隊員、次に寒川隊員が受け取り、その次の海老名隊員は一回り小さいレーザーガンを受け取りました。最後に女神がレーザーガンを受け取ろうとしましたが、倉見隊員が、
「ちょっと待ってくれよ。たった今加入したやつに、そんな危険なものを渡す気か?」
 女神はレーザーガンを受け取る手を止めました。隊長はそれを見て、
「仕方がないなあ。すまないが、今日は丸腰で頼む」
「大丈夫ですよ」
「よし、出動だ!」

 ここはテレストリアルガードの基地です。と言っても、巨大な滑走路の傍らにある3階建てのふつーの建物です。でも、地下には巨大な施設があるようです。滑走路と反対側には玄関があります。玄関の横には格納庫のような駐車場があり、数台のクルマが駐まってます。今セダンタイプのクルマに隊長と海老名隊員と女神が乗車し、その横のオフロードタイプの4WDには倉見隊員と寒川隊員が乗車しました。セダンも4WDもストーク号やヘロン号と同じカラーリングが施されてます。
 今セダンの屋根の小さなハッチが開き、パトロールランプが出現。サイレンを鳴らしながらセダンが発進しました。それに続いて4WDも発進。こちらもパトロールランプが現れ、サイレンを鳴らしてます。
 セダンの中です。運転席には隊長、助手席には海老名隊員、後部座席には女神が座ってます。女神の発言です。
「すみません。エイリアンの残党狩りてなんですか?」
 隊長はハンドルを握りながら、
「5年前この星はユミル星人に総攻撃を喰らったことがあったんだ」
「ええ、それは先ほど聞きました」
「実はそのとき、我が国はヴィーヴルという軍隊と交渉してたんだ。ヴィーヴルというのは、宇宙の傭兵軍団みたいなものだな。
 ユミル星人第二次襲来で我が国は急きょヴィーヴルと契約し、彼らは地球にやってきたんだ。ヴィーヴルの軍事技術はユミル星人をはるかに超えていて、ユミル星人は蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったんだ。そのせいか、地球に取り残されたユミル星人の兵隊がたくさんいたんだ。残党狩りていうのは、そいつらを見つけて逮捕する、または処分することだよ」
「5年も経ってるのに、まだ残党がいるんですか?」
「ユミル星人が攻めてきたと言っても、実際攻めてきた連中はユミル星人の植民地となった星の住民ばかり。ご丁寧にこの地球の住民と姿形が酷似した人種ばかり選んできたんだ。そのせいで、未だに残党がいるんだよ」
 女神はちょっと考えてしまいました。自分はあまりにもこの星の住民と顔が違うからです。
 ここで海老名隊員の発言です。
「あの~、宇宙人さん、お願いです。ヘルメット脱いでくれませんか?」
 隊長はちょっと呆れてるようです。
「おいおい、この星の空気に宇宙人をさらしたら、最初に襲来したユミル星人みたいにあっとゆー間に病気になって死んじゃうかもしれないんだぞ。それに女神隊員のもってる病原菌だって、地球人にどんな災いを起こすのかわからないし」
「ちぇっ。でも、報告書読んだら、一度顔を晒したことになってますよ」
「それは山奥での話。町でやっちゃだめだろ。もしどうしても見たいのなら、今女神隊員が住んでいる無菌室でやれ。そんときはお前がヘルメットを被るんだぞ」
「はーい」
 で、女神ですが、フルフェイスのヘルメットを被っていてどんな表情でこの会話を聞いていたのか、てんでわかりませんでした。
 今度は後ろを走る4WDです。運転手は寒川隊員、助手席には倉見隊員が座ってました。まずは倉見隊員の発言です。
「お前、あの女、どう思う?」
「女神さんのことですか? まあ、巨大化するし、光線技も使えるし、すごいじゃないですか」
「オレは嫌だな。あいつなら、橋本さんの方が1万番マシだ。
 考えてもみろよ、あいつはエイリアンだぜ。エイリアンは侵略者だ。そんなやつ、テレストリアルガードに入れていいのかよ?」
「彼女は母星を侵略されてこの星に逃げてきたんですよ」
「それがどうした! エイリアンはエイリアンだろ!」
 その急な大声に寒川隊員は何も返答ができません。倉見隊員は自分より年齢が上です。ここは逆らわない方が得策だと判断し、ただ黙ってハンドルを握ることにしました。

 ちょっと古い住宅街です。はるか向こうに高架橋の線路が見えてて、そこまで家が並んでいます。背の高いマンションも点々と見えます。ここはその中にあるマンションの工事現場。仮囲いに沿ってテレストリアルガードのセダンと4WD、それに数台のパトカーが駐まってます。ゲートが開いていて、工事現場の監督さんがテレストリアルガードの隊員と警官たちに囲まれ、質問を受けてます。
「いや~、10分前までこの現場にいたんですがねぇ・・・」
 香川隊長はここで悔しそうな顔をするかと思いきや、別に表情は変わってないようです。
「ふっ、そうか」
 警官の中の1人が隊長に話しかけました。
「すみません。最初に駆けつけた警官がここでガードマンに質問したのですが、どうやら本人に聞かれてたようで・・・」
 寒川隊員はタブレット端末をその監督さんに見せました。
「この2人ですか?」
 その画面には2人の男が写ってます。
「ええ、この2人です。今まで一度も声を発したことがなかったから、何かの病気かなあと思ってたのですが、まさかエイリアンだったとはねぇ・・・」
「仕方がないなあ。全員で捜索するか。相手は重火器を持ってる可能性もあるから、みんな、十分気を付けめこと!」
「はい!」
 テレストリアルガードの隊員たちと警官隊が散って行きました。隊長も海老名隊員を連れて捜索に出ようとしましたが、先ほどの警官に呼び止まられました。
「あの~」
「ん、なんだ?」
 警官は警官隊とともに駆けて行く女神を見て、
「あの人はなんでヘルメットをしてるんですか?」
「ああ、彼女は5年前の戦争で顔を潰されてね」
「ああ、なるほど」
 海老名隊員はそれを聞いて、うまいこと言うなあと、関心したようです。

 狭い路地が続く街並み。パトカーがサイレンを鳴らしながら行き交ってます。さらに狭い道では、警官隊隊があたりを見回しながら小走りで移動してます。その後ろに女神がいます。
「おい!」
 その声に女神は歩みを止めました。女神が振り返ると、そこには倉見隊員が立ってました。その手にはレーザーガンが握られています。
「お前、何様のつもりだ!」
 これを見て、女神はこう思いました。「もう来たか」
「お前、テレストリアルガード辞めろ! お前なんかより橋本さんの方がずーっと使えるんだよ! テレストリアルガードは橋本さんが必要なんだよ!」
「私は・・・ 私はここを辞めません」
「なんだと?」
「私の居場所は今ここにしかないからです」
 と、これを聞いて倉見隊員は苦笑してしまいました。
「がははぁ、お笑いだぜ、エイリアンのくせして!
 なあ、知ってるか? 日本の法律てーのは、地球人を保護するためにあるんだぜ。お前みたいなエイリアンには適用されないんだ。今お前を殺したって、オレは完全無罪なんだよ!
 死ねーっ!」
 倉見隊員はレーザーガンの銃爪を引きました。光弾が女神に向かって行きます。が、女神の身体に光弾が当たる寸前、女神の前に青白いハニカム構造の光のガードが現れ、その光弾を弾きました。女神はバリアを張ったのです。倉見隊員は悔しそうです。
「く、くそーっ!」
 次の瞬間、女神はふっと消えました。倉見隊員はそれを見て驚きました。
「テレポーテーション?」