昨日と同じ場所で千可ちゃんと戸村くんが話し合ってます。千可ちゃんはまるまる太ったボストンバッグを戸村くんに渡しました。
「これ、全部書いて」
戸村くんはそのボストンバッグのチャックを開け、中を見ました。と、なんか不満顔です。
「これ、全部っすか?」
「うん」
この2人のやりとりを物陰から見ている人影があります。森口くんです。森口くんの表情には、なにか悲愴感があります。
「羽月さんですかぁ、あの映像潰したのは?」
その戸村くんの質問に千可ちゃんは満面の笑みをたたえ、答えました。
「うん。昨日幽体離脱…」
と、ここで千可ちゃんは何かを感じ、右手の人差指を自分の唇に重ねました。戸村くんもそれを見て、何かに気付いたようです。
「じゃあね」
「うん」
2人は別れました。
下駄箱に向かって千可ちゃんが歩いて来ます。それを物陰から森口くんが待ち構えてます。森口くんは何か言いたいことがあるようです。しかし、いつまで経っても千可ちゃんは来ません。いい加減しびれを切らした森口くんが顔を出そうとしたら、その反対側から声がしました。
「そこで何やってんの?」
森口くんが慌てて振り返ると、そこに千可ちゃんがいました。
「は、羽月さん?」
「なにか私に言いたいことがあるの?」
森口くんは黙ってます。
「いいよ。遠慮しないで言って」
「その…。
なんで羽月さんはあいつと付き合ってんですか!?」
「あいつって、戸村くんのこと?。そりゃあ、同じ部の仲間だもん。森口くんだって、彼とうまくやってたじゃん」
「は、羽月さんはぼくの気持ちがわかってない!。
ぼくは羽月さんが好きだ!。大好きなんだ!!」
千可ちゃんは下を向きました。ちょっと笑ってるようです。と、千可ちゃんはいきなり森口くんの目の前に来ました。千可ちゃんの背丈は140cm。森口くんの背丈は160cm。20cm差を埋めるように思いっきり背伸びして、千可ちゃんは森口くんの唇にキスをしました。その瞬間、森口くんはかなりびっくりしたようです。
千可ちゃんはすぐに唇を離しました。千可ちゃんはちょっと上気してるようです。
「ねぇ、ぎゅっとして」
「えっ?」
「ぎゅっとしてよ」
森口くんは一瞬ためらいましたが、次の瞬間小さな千可ちゃんの身体を強く抱き締めました。そしてキス。2人の舌が絡み合うのが見えます。しばらくして森口くんが身体を離しました。千可ちゃんはさらに上気してるようです。
「ごめん。今日はこのへんで許して」
「いや、あの、別に…」
森口くんは自分が思っていた以上の展開になって、かなり戸惑っているようです。
「ねぇ、戸村くんと仲良くやってよ」
「うん」
「ありがと」
千可ちゃんは下駄箱から靴を取り出しました。
「あ、今の私のファーストキスだからね」
千可ちゃんは足早に出ていきました。森口くんはまだ茫然としてます。
今の千可ちゃんの行為は、自分でも思ってもみなかった暴走だったようです。自分でも恥ずかしくなってしまい、それで足早にここを立ち去ったようです。
その日の夜です。千可ちゃんがベッドに寝てます。しかし、目がらんらんとしてます。千可ちゃんは右手の指で自分の唇に触れました。千可ちゃんは森口くんとのキスが頭から離れないようです。それで眠られないようです。
「あ…」
千可ちゃんはため息とは違う声を発しました。
しかし、千可ちゃんは眠らないといけません。千可ちゃんは熟睡しないと幽体離脱できないのです。
が、千可ちゃんはついに睡眠を諦め、携帯電話を手にしました。戸村くんに電話しようとしたのですが、しかし、番号が思い浮かびません。当たり前です。千可ちゃんは戸村くんの電話番号をまだ知りません。仕方がないから、目を瞑りました。テレパシーです。
「戸村くん、聞こえる?」
「あ、はい」
なんと戸村くんは千可ちゃんのテレパシーをキャッチし、返してくれました。
「ごめん、今から例のとこに行って欲しいんだけど、いいかなあ」
「こんな真夜中にですかぁ?。まぁ、いいですけど」
「あは、よろしくね」
例の女の子の家の前です。今夜もまた女の子が自転車で走り出しました。女の子の自転車は街を駆け抜け、山道に入り、そして鳥居の前に停まりました。ここはみみずく神社です。女の子は石段を駆け登り、絵馬掛けが見える場所にきました。
「いない…」
どうやら千可ちゃんの存在を気にしてたようですが、千可ちゃんはいません。次に女の子は監視カメラを睨みました。で、そこにあった脚立を持ち出し、それを持って監視カメラのところに行き、それに乗って監視カメラに黒い布を被せました。
「これでよし!」
女の子はどこからか絵馬を取り出し、絵馬掛けに向かいました。女の子は満足な顔を浮かべてます。が、その顔が一瞬で驚きの顔となりました。絵馬掛けに掛かってる絵馬のすべてが同じ文面だったのです。
ぼくが傷つけた女の子が早くよくなりますように。1年2組戸村。
それを読んだ女の子がくすくす笑い出しました。その笑い声は次第に大きくなり、最後は腹の底からの大爆笑になりました。
「わかったわよ。わかったって」
女の子はそのまま帰りました。
翌日千可ちゃんが通う高校です。まだ朝のホームルームの前のようです。例の女の子が机に座ってます。女の子は友達としゃべってます。その女の子を廊下からそーっと見てる人影があります。千可ちゃんと戸村くんです。
「やっと来たわね」
「羽月さん、彼女の前に何度も幽霊になって出たけど、大丈夫なんですか?」
「ふふ、彼女、口が軽くなさそうだから、きっと大丈夫だって」
「あの~、オレ、どのタイミングで謝ったらいいんですか?…」
「それは自分で決めてよ」
これで小説「千可ちゃん」はお終いです。最後まで読んでくれたみなさん、ありがとうございます。
「これ、全部書いて」
戸村くんはそのボストンバッグのチャックを開け、中を見ました。と、なんか不満顔です。
「これ、全部っすか?」
「うん」
この2人のやりとりを物陰から見ている人影があります。森口くんです。森口くんの表情には、なにか悲愴感があります。
「羽月さんですかぁ、あの映像潰したのは?」
その戸村くんの質問に千可ちゃんは満面の笑みをたたえ、答えました。
「うん。昨日幽体離脱…」
と、ここで千可ちゃんは何かを感じ、右手の人差指を自分の唇に重ねました。戸村くんもそれを見て、何かに気付いたようです。
「じゃあね」
「うん」
2人は別れました。
下駄箱に向かって千可ちゃんが歩いて来ます。それを物陰から森口くんが待ち構えてます。森口くんは何か言いたいことがあるようです。しかし、いつまで経っても千可ちゃんは来ません。いい加減しびれを切らした森口くんが顔を出そうとしたら、その反対側から声がしました。
「そこで何やってんの?」
森口くんが慌てて振り返ると、そこに千可ちゃんがいました。
「は、羽月さん?」
「なにか私に言いたいことがあるの?」
森口くんは黙ってます。
「いいよ。遠慮しないで言って」
「その…。
なんで羽月さんはあいつと付き合ってんですか!?」
「あいつって、戸村くんのこと?。そりゃあ、同じ部の仲間だもん。森口くんだって、彼とうまくやってたじゃん」
「は、羽月さんはぼくの気持ちがわかってない!。
ぼくは羽月さんが好きだ!。大好きなんだ!!」
千可ちゃんは下を向きました。ちょっと笑ってるようです。と、千可ちゃんはいきなり森口くんの目の前に来ました。千可ちゃんの背丈は140cm。森口くんの背丈は160cm。20cm差を埋めるように思いっきり背伸びして、千可ちゃんは森口くんの唇にキスをしました。その瞬間、森口くんはかなりびっくりしたようです。
千可ちゃんはすぐに唇を離しました。千可ちゃんはちょっと上気してるようです。
「ねぇ、ぎゅっとして」
「えっ?」
「ぎゅっとしてよ」
森口くんは一瞬ためらいましたが、次の瞬間小さな千可ちゃんの身体を強く抱き締めました。そしてキス。2人の舌が絡み合うのが見えます。しばらくして森口くんが身体を離しました。千可ちゃんはさらに上気してるようです。
「ごめん。今日はこのへんで許して」
「いや、あの、別に…」
森口くんは自分が思っていた以上の展開になって、かなり戸惑っているようです。
「ねぇ、戸村くんと仲良くやってよ」
「うん」
「ありがと」
千可ちゃんは下駄箱から靴を取り出しました。
「あ、今の私のファーストキスだからね」
千可ちゃんは足早に出ていきました。森口くんはまだ茫然としてます。
今の千可ちゃんの行為は、自分でも思ってもみなかった暴走だったようです。自分でも恥ずかしくなってしまい、それで足早にここを立ち去ったようです。
その日の夜です。千可ちゃんがベッドに寝てます。しかし、目がらんらんとしてます。千可ちゃんは右手の指で自分の唇に触れました。千可ちゃんは森口くんとのキスが頭から離れないようです。それで眠られないようです。
「あ…」
千可ちゃんはため息とは違う声を発しました。
しかし、千可ちゃんは眠らないといけません。千可ちゃんは熟睡しないと幽体離脱できないのです。
が、千可ちゃんはついに睡眠を諦め、携帯電話を手にしました。戸村くんに電話しようとしたのですが、しかし、番号が思い浮かびません。当たり前です。千可ちゃんは戸村くんの電話番号をまだ知りません。仕方がないから、目を瞑りました。テレパシーです。
「戸村くん、聞こえる?」
「あ、はい」
なんと戸村くんは千可ちゃんのテレパシーをキャッチし、返してくれました。
「ごめん、今から例のとこに行って欲しいんだけど、いいかなあ」
「こんな真夜中にですかぁ?。まぁ、いいですけど」
「あは、よろしくね」
例の女の子の家の前です。今夜もまた女の子が自転車で走り出しました。女の子の自転車は街を駆け抜け、山道に入り、そして鳥居の前に停まりました。ここはみみずく神社です。女の子は石段を駆け登り、絵馬掛けが見える場所にきました。
「いない…」
どうやら千可ちゃんの存在を気にしてたようですが、千可ちゃんはいません。次に女の子は監視カメラを睨みました。で、そこにあった脚立を持ち出し、それを持って監視カメラのところに行き、それに乗って監視カメラに黒い布を被せました。
「これでよし!」
女の子はどこからか絵馬を取り出し、絵馬掛けに向かいました。女の子は満足な顔を浮かべてます。が、その顔が一瞬で驚きの顔となりました。絵馬掛けに掛かってる絵馬のすべてが同じ文面だったのです。
ぼくが傷つけた女の子が早くよくなりますように。1年2組戸村。
それを読んだ女の子がくすくす笑い出しました。その笑い声は次第に大きくなり、最後は腹の底からの大爆笑になりました。
「わかったわよ。わかったって」
女の子はそのまま帰りました。
翌日千可ちゃんが通う高校です。まだ朝のホームルームの前のようです。例の女の子が机に座ってます。女の子は友達としゃべってます。その女の子を廊下からそーっと見てる人影があります。千可ちゃんと戸村くんです。
「やっと来たわね」
「羽月さん、彼女の前に何度も幽霊になって出たけど、大丈夫なんですか?」
「ふふ、彼女、口が軽くなさそうだから、きっと大丈夫だって」
「あの~、オレ、どのタイミングで謝ったらいいんですか?…」
「それは自分で決めてよ」
これで小説「千可ちゃん」はお終いです。最後まで読んでくれたみなさん、ありがとうございます。