【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

野田佳彦さんが「財務省不信」を吐露する異例の事態に「独立財政機関」で成長率見通し「旧経企庁」念頭か、枝野幸男候補、泉健太候補、吉田はるみ候補が博多に揃う

2024年09月09日 03時21分00秒 | 新・立憲民主党2020年9月15日結党
[写真]党員を対象にした討論会の最後の枝野幸男、野田佳彦、吉田はるみ、泉健太各候補、「オリエンタルホテル福岡博多ステーション」で、きのう2024年9月8日、宮崎信行撮影。

 野田佳彦さんが財務省に不信感を示しました。初めてかもしれません。

 野田、枝野幸男、泉健太、吉田はるみ4氏が立った立憲民主党代表選2日目は、福岡・博多で街頭演説・候補者討論会・記者会見が開かれ、取材しました。

 今回の10会場で「西端」になります。立憲民主党代表に対して「宮崎の質問をはぐらかすと、日本の西端どころか、大陸の西端ジブラルタル海峡まで追いかけてくる」とのイメージをうえつけるのがねらい。東京から行った記者は全メディア含めて私一人だったようです。

 灼熱の博多駅頭で、泉候補は「クーラーを買えない人もいる」、吉田候補は「期数にとらわれず出馬できる自由と多様性の政党だ」、野田候補は「裏金で600万円を引き出しにいれていた自民党議員がいた」、枝野候補は、「郵政民営化の小泉さんから、人間中心の経済に変える」などと演説しました。なお、小泉進次郎さんは郵政に関する公約は出していません。街頭演説は枝野さんが合いの手が多い印象でした。但し、河野デジタル相が主張した「金銭解決などの解雇規制の緩和」を枝野さんが舌鋒鋭く批判しましたが、聴衆の反応はあまりありませんでした。


[写真]聴衆の写真をよく見ると、日よけとはいえ博多駅博多口2階、3階にとどまって聞く聴衆がいた、同。

 写真を見返して気づきましたが、博多駅の2階、3階から見ていた人もいたようで、これはここ10年間にあまりなかった光景です。要警護対象者の泉代表が車で会場を去った、およそ10秒後から、ビーチのような炎天下で警護・警備にあたった福岡県警警察官たちが集合記念撮影を始めました。あそこは「小倉の署長になるから、50代で初めての単身赴任だ」という感じではないでしょうか。福岡は働きやすい県警のようだ、日本にはいろいろな県警があるなとの感想を持ちました。


[写真]演説する野田候補と、演説後に地元の稲富修二議員の引き回しで挨拶する野田候補、宮崎信行撮影。


[写真]演説する枝野候補と演説後に自ら握手を求める枝野候補、宮崎信行撮影。


[写真]演説する泉候補と、演説後に聴衆からオウムの紹介を受ける泉候補、宮崎信行撮影。


[写真]演説する吉田候補と、演説後に、応援弁士として期待していると思われる九州・沖縄ブロックの党員から名刺を渡される吉田候補、宮崎信行撮影。


[写真]福岡県連を代表して挨拶する稲富修二議員。

 きょう一日を通じて、見た国会議員は、野田陣営の手塚仁雄さんと稲富福岡県連代表、枝野陣営の渡辺創さん、おそらく吉田陣営の川田龍平さん、泉陣営の村井宗明元議員、県連の城井崇さん、堤かなめさん、選管の吉川さおり委員長と馬場雄基委員。

 ホテルに移っての候補者討論会ではまず、吉川さおり選管委員長が「沖縄県連からも開催の要望があった」とし、福岡会場のみになったことを詫びました。同日は宜野湾市長選がありましたから那覇市でも開催は難しかったと思います。また「ミズ・パーフェクト」の印象も強い吉川さんですが、「野田候補、えだの候補」を「野田候補、江田候補」と言い間違え会場が少しどよめきました。


[写真]選管の吉川さおり委員長(右)と馬場雄基委員(左)

 タイトルは「20年後を見据えた国家ビジョン」。一部報道の消費税は、きょうは少なかった印象です。泉さんは「取り巻きを同じ人で囲まない、同じ意見の人で囲まない、同じメンバーで囲まない」と2期目の意欲を示し、「政界再編はない、20年後も立憲民主党はあり、政権を担っている」と声を張り上げましたが、この文脈の拍手はまばらでした。

 吉田さんは党員中心ながらも「私の名前と顔を初めて知った人も多いだろう」とし「20年後は正社員の比率を上げる」と強調しました。

 野田さんはテーマから離れ、九州ブロックだとして「水俣病被害者救済加速の法案を提出した」と消化しました。
門しました。

 枝野さんは「子育て、介護を支え合う仕組み」を提唱しました。

 この後、野田さんから枝野さんに対する質問で、「独立財政機関の創設を問いました」ので記者会見と合わせてこの記事の下で詳しく書きます。

 泉さんが1期生・吉田さんに外交を問うと吉田さんは「アッパーハンドを撮れるか、経済規模、食糧自給率、エネルギー自給率を上げなければならない」としました。吉田候補の提出資料では、バーミンガム大学院でMBA、投資・証券会社でシンガポール、ロンドンで働いた経歴があります。

 会場からは、福岡の筑紫野市議の女性からひとり親世帯への支援の政策が問われました。鹿児島の男性からは、消費税が質問され、各候補とも給付つき税額控除を中心とした主張を続けました。泉さんが「長崎県連の人いますか」と問うとおよそ4人以上が手を上げ、山田さんの小選挙区の補選のお礼を述べました。


[写真]記者会見のようす。

[写真]立憲代表に対して「宮崎はどこにでもくる」とのイメージを焼き付ける独自のたたかいにいどむ宮崎信行。

 共同記者会見は4候補に質問してほしいとのことで、読売・福岡・男性から「次期衆院選での九州の位置づけ」が問われ、吉田さんは「もっと学びたい」という答えにとどまりました。

 さて、野田さんのおそらく初めての財務省不信です。ニュースです。

 質疑。宮崎「野田候補だけにお伺いすればいい話なんですが、独立財政機関ですか、そちらの方の設立を提言されました。これどういったものなのか。今例えば総理大臣の下に財政制度等審議会がありますけれどもそういったものとは違うのか。また歳入の方ですと、法人税なんかは、(当初)予算のときに比べて(歳入歩合が)10兆円ぐらい下振れしてくる年もあります。ちょうどリーマン・ショックのときもそれ(9兆円下振れ)で鳩山内閣の野田財務副大臣としてはその流れを受けましたからだいぶつらい方もされたんじゃないかと思います。その点に関して何か財務省の税収の見積もりに関して、不信感とか、ちょっと信用できないなというようなことを感じることは当時あったのか、最近もあったのかいかがでしょうか」。

●野田さん、実質・名目などの成長率見積もりで内閣府・財務省に不信

 野田候補はこう語りました。「政権交代したときの財政運営はものすごく大変でした。これは、その前の政権(麻生太郎内閣)の税収見通しが全然違ってて、リーマン・ショックって蚊に刺された程度だと言っていたんですよね。刺されたところじゃなかったと。そういう後での政権でしたから、えらい苦労しましたけども。独立財政機関の意味はどちらかというと経済の成長とか、例えば米国で3パターン成長率を設定して、それによって税収がたくさん入ってくるという見通しのもとで財政健全化計画ですけど。(日本は)甘すぎるんですよ。これ内閣府です。その見通しが甘すぎるから、それに基づく予算の査定も多額であるということである」とし内閣府とそれを基にする財務省を批判しました。

 そのうえで野田さんは「プライマリーバランス(PB)の黒字化ということはもう小泉政権の頃から言っていて、ずっと延長、延長で、そして2025年度はどうなのかというのが問われてますね。これずっと外れっぱなしだと、いつ日本の国債の信認がなくなってですね、格付けまで下げられる可能性が私はあると思います。一挙に財政破綻というよりも、格付けで下がると要は企業の資金調達だと問題が出てくる。などなどの弊害を考えると、きちっとした見通しを持って財政健全化していかなきゃいけない。これOECDのほぼ3分の2以上が独立財政機関です。政府とかけ離れたところで、参議院に置こうという話があるのか、あるいは(内閣法)8条委員会みたいの作るアイディアがあります」としました。なお私が気付いたのは、「国債の信認、格付け、金利」のくだりで、枝野、泉両候補が下を向いて相槌をいっさいしない表情。

●野田さん、間違いなく過去最大の財務省批判

 野田さんは続けて「アイディアいろいろありますけどいずれにしてもこれは財務省は反対します。内閣府(に置くこと)は絶対反対なんですよ。これ見通しの問題も含めて、自分たちがある種、予算編成の中心だという気持ちがあるんでしょうけども、現実的な数字に基づいた議論をしなければいけないと思いますので、私は独立財政機関は必要だということで主張しています」と語りました。

 時間があわただしかったので、「その不信を抱いたきっかけ」がいつだったかは答えがなく、私が「経済企画庁みたいな感じですか」と問うと、野田さんは「昔はそうですよね」と語り、プロパーの事務次官を出していた官庁エコノミスト軍団の経企庁(橋本行革で廃止)のイメージだとしました。

 消費税に関する内外の質疑が相次いでいることから、残りの選挙戦でも最大の論戦になりそうです。

 以上です。