写真はガソリンスタンドの価格表示板=MSN産経ニュース
原油高が心配ですが、原油はいずれ必ず安くなるという共通認識が必要だと思います。原油高はあくまでもバブルだということです。WTIも90ドル台前半に落ち着きつつあります。油断大敵ですが。
毎日新聞3面の「クローズアップ2007」という記事がまとまっていて分かりやすかったので、ご紹介します。
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毎日新聞 2007年11月22日 東京朝刊
クローズアップ2007:NY原油100ドル目前 産油国マネー、投資に
原油価格の指標となるニューヨーク先物市場のWTI価格が20日、通常取引後の時間外で、1バレル=99・29ドルをつけ、100ドルの大台突破が目前に迫った。わずか10カ月でほぼ2倍になった急上昇ぶり。バブル状態ともいえる原油相場を操るオイルマネーの流れや実体経済への影響などを点検した。【瀬尾忠義、平地修、ロンドン藤好陽太郎】
◇「需給」超す急騰
ロンドンで1戸10億円を超えるような超高級住宅の売れ行きがいい。米低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題の影響で、不動産市場全般が冷え込む中、超高級不動産だけは好調だ。支えているのは産油国のマネーである。「原油高騰で潤う中東やロシアの資産家が増えている」と英大手不動産会社の幹部。今年上半期に販売された超高級住宅の3分の2を中東・ロシアを中心とする外国人が買ったという。
今月12日、世界最大の産油国、サウジアラビアのアルワリード王子がエアバスの最新超大型旅客機A380を個人で購入した。通常でも約350億円という同機のVIP仕様で「空飛ぶ宮殿」と呼ばれる豪華さだ。
日本など石油消費国が原油高にあえぐ中、産油国の収入は増える一方だ。原油価格が1バレル=70ドル台に急伸した06年の産油国の輸出総額は約170兆円。そのほとんどが原油で、4年間で約3倍にも膨らんだ。
自国内で使い切れない年間約70兆円の巨額マネーが国外に向かう。米国の高級衣料品店、バーニーズ・ニューヨークの買収で、「ユニクロ」のファーストリテイリングに競り勝ったのは産油国、アラブ首長国連邦の政府系投資会社だった。
それでもまだ余る資金の一部は、ヘッジファンドなどを経由して原油や金といった商品市場に流入している。原油価格高騰でオイルマネーが再び原油市場に流入し、価格を押し上げ、自己増殖する構図が見える。
特にサブプライム問題の深刻化で、株式相場が不安定になった夏以降、米株式市場から引き揚げた資金が加わり、原油価格の上昇は加速。9月に1バレル=80ドルを突破すると、わずか2カ月で100ドルの大台に迫った。
原油価格高騰の根底には、世界的な需要の増大に対し、供給量が十分伸びない需給上の問題がある。しかし、今年1月半ばに50ドル程度だった価格が10カ月で2倍になるのを説明できる需給の逼迫(ひっぱく)は起きていない。急上昇をけん引するのは、オイルマネーを含む投資資金で、みずほ総合研究所の吉田健一郎シニアエコノミストは「需給バランスで適正と考えられる価格より40ドル程度上積みされている」と指摘する。
◇省エネ進み、耐える経済
1バレル=100ドルが目前に迫っても、世界経済はパニックに陥っていない。30ドル台で推移した03年3月のイラク戦争開戦前、“恐怖のシナリオ”とささやかれたのは「中東全域に戦争が拡大し、原油が70~80ドルに高騰して世界経済に大打撃を与える」というものだった。その水準を大幅に超えているのに、世界経済は平静を保っている。
その理由は「省エネルギー技術や代替エネルギーの開発などで、原油高騰に耐える力が付いたため」(永田安彦・日本エネルギー経済研究所研究主幹)。安価な製品を大量に世界市場へ供給する中国など新興国が、原油高騰でもインフレを起こりにくくする役割を果たしている側面もある。
特に日本経済は第1次(73年10月~74年8月)、第2次(78年10月~82年4月)の2度の石油ショック体験を経て原油高に揺さぶられにくい構造へと転換した。第1次ショックの時は、便乗値上げなど社会的なパニックが起きたが、これを教訓に政府は原子力や天然ガスへの転換を進め、石油依存度を減らした。
とはいえ、原材料費の上昇分を簡単に販売価格に上乗せできない中小・零細企業の経営は深刻化する。原油高騰の影響は徐々に出てきそうだ。
◇明らかにバブル--シティグループアナリスト、ティム・エバンス氏
ここ数日の原油急騰は大幅なドル安が最も大きな原因だ。ただ、長期的に見ると、現在の原油高は明らかにバブルだ。1月から1年もたたないうち倍近くに上昇しているのは異常だ。この間、供給面で大きな不安はなく、需要にも大きな変化はなかった。極端に政治的緊張の高まった地域もない。つまり、現実の需給バランスから切り離されたところで市場が回っている。原油先物市場はバブルなので、どこまで上がるかは誰にも分からない。ただ、はっきりしているのはバブルはいずれ、はじけるということだ。
◇家計負担、増す一方
「第3次石油ショック」が起きていないとはいえ、家計への負担はじわじわと増している。
本番を迎える冬に、家計を直撃するのが灯油の高騰だ。19日現在の全国店頭平均価格は18リットル当たり1616円で、前週から11円上昇した。原油からつくられる灯油など石油製品の価格は来月、さらに1リットル当たり5円近く上昇する可能性がある。
レギュラーガソリンも最高値を更新し、1リットル=150円を突破。買い物や通勤などにマイカーを利用する人たちの負担は重くなる一方だ。来月3日には都内のタクシー料金も値上がりする。航空会社は燃料の高騰分を国際線の運賃に上乗せしており、ビジネスマンの出張や海外旅行に影響が出ている。
原油高はプラスチック製品全般や、製造過程で重油を多く使う紙類の価格も押し上げる。ティッシュペーパーなどの日用品の価格が上がっているほか、包装資材の高騰は相次ぐ食品値上げの一因にもなっている。来年1月には電気とガスの値上げも予定されており、光熱費の上昇も生活を圧迫しそうだ。
◆原油高で値上がりしたもの◆
ガソリン
灯油
航空機運賃
ティッシュペーパー
トイレットペーパー
ラップ
学習ノート
各種加工食品
クリーニング代
公衆浴場
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東京のタクシー運賃(12月)
電気 (来年1月)
ガス ( 〃 )
【追記2008-1-19】
このエントリには連日たくさんの方々からアクセスをいただいており、原油高の深刻さを感じています。2008年1月の最新情勢をまとめましたので、次のエントリもご覧になってください。
【数字のない経済ニュース】(1)日経平均安、小麦高、大豆高
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【追記おわり】